福岡に18年間住んでいた人に聞いてみたところ,確かに「~されて下さい」の言い方はよくするそうです。
No.5の回答にあるように,昔から福岡地方で使われていた言い方ではなく,明らかに共通語の影響が見られます。ですから,純粋の方言とは言いがたいですね。
しかし,共通語としては「~なさって下さい」などの言い回しになりますので,純粋な共通語であるともいえないですね。
ならば「誤った敬語」となるかというと…そのへんが難しいところです。
おそらく,共通語に近い方言を使っている関東地方で「~されて下さい」という言い回しを使った場合は,「誤った敬語」と判断してよいかと思うのですが,福岡の人同士で使っている場合はちょっと微妙です。
>東京に住んでいた時は、聞いたことなかったのですが、
>それは、若いフリーターの方と付き合いがなかったからなんでしょうか・・・
若い人たちの間でも東京近辺ではほとんど聞かない気がします。それに対して,福岡では年輩の人の間でも耳にするようです。
それに,この「~されて下さい」はいわゆる「レタス言葉」とは多少違うと思います。
「レタス言葉」とは,(共通語や関東方言において)尊敬語の表現をなんでも「れる・られる」で済ませてしまうもの,例えば「お~になる」(お休みになる等)や固有の「召し上がる」「いらっしゃる」等を「休まれる」「食べられる」「行かれる」で済ますものをいうのではないでしょうか。
それに対して,福岡で使われているこの言い回しは,あくまでも「~されて下さい」に限られている。限られているというと言い過ぎかもしれませんが,後ろに「て下さい」を伴って依頼の意味を表すときに,特に目立っている気がします。
その福岡人に言わせると,「~なさってください」は完全な共通語だが,「~されてください」というとやや方言めいた柔らかさが感じられるので,東京人に東京方言の感覚で「間違い」と決めつけられると不愉快だ,とまで言っていました。
というわけで,私は,福岡地方で使われているかぎりは「共通語のニュアンスを帯びた福岡方言」と考えれば必ずしも誤りとはいえない,と考えています。
似たような例に「おいでる」(←おいでになる)があるようです。(福岡で聞きませんか?)
東京近辺に住んでいると,方言を丁寧にしていくと比較的シームレスに共通語につながるので,なかなかこういう意識は持ちにくいのですが,他の地方ですと,方言と共通語との間に,もう少し微妙な段階があります。
演説とか文章を書くときなど,非常にフォーマルなときは,純粋な共通語を使うことが多い。また,お互い打ち解けた間柄で話すときは,純粋な方言でも大丈夫だろう。しかし,その中間,たとえば街中で知らない人に道を聞いたり教わったりするようなときは,共通語と方言が適度にミックスしたような独自の言い回しになることが往々にしてあります。その言い回しを,東京人の感覚で判断すると,「誤った共通語」となりがちですが,考えようによっては,それって東京方言しか知らない人間の感覚を押しつけてるわけだから,地元の人からすると実は傲慢と思われるのかもしれません。その辺の判断は,南関東から出たことのない私にはなかなかピンと来ないのですが…。
というわけで,最初の質問に戻りますと,共通語の表現をルーツに持ちつつも,福岡地方で一定のニュアンスをもって一般的に用いられている言い回しですので,これは方言といっていいのではないかと思います。(長くなってすみません。)
投稿日時 - 2002-01-25 16:39:00