エスカレーター:片側開けへの対応、鉄道会社で分かれる
毎日新聞 2013年06月06日 15時00分(最終更新 06月06日 17時42分)
さいたま市大宮区の元会社員、上原丘(たかし)さん(52)は、91歳の父親に付き添い外出する時、駅のエスカレーターで苦労する。足元がおぼつかない父のため、できれば横に並びたいが、歩く人のために右側を開け、後ろに回るしかない。「駆け上がっている人と体がぶつかり、転倒しそうになったこともある」と嘆く。
2歳の長男を連れてエスカレーターを利用する東京都の会社員女性(30)も「前後で手をつなぐしかなく、子どものとっさの動きに対応できない」と話す。
一方、福岡県大野城市の会社員(43)は、福岡市まで約1時間かけて電車通勤しているが、仕事が忙しく、早めに出社しなければならないことも多い。「余裕がないと、流れに従ってついエスカレーターを歩いてしまう」と語る。
大阪ガス行動観察研究所の松波晴人(はるひと)所長(人間工学)は、エスカレーターを歩く人の心理について「人間は『得する』ことより『損しない』ことを重視する。『前の電車に乗れず損した』という感情は強烈。『歩くな』と正論を説かれても納得できない」と指摘する。
しかし、東京都身体障害者団体連合会の宮沢勇会長は「エスカレーター歩きが、高齢者や障害者など多くの交通弱者を危険にさらしていることに気付いて」と、鉄道会社の積極的な取り組みを求めている。【太田圭介、中村かさね】
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