▼ 幾千年かかろうと、ぼくはかならず君のもとに辿り着いてみせる…
国土創造の二柱の神イザナギとイザナミの転生として巡り合った、中島朱実と白鷺弓子の物語――。
このシリーズは、【デジタル・デビル・ストーリー(DDS)】として、1986年からスタートした西谷史氏によるジュブナイル小説デス。神の生まれ変わりでありながら、道を外れ、悪魔と現世をつなぐ禁断の穴を開いてしまった中島朱実が、自分の過ちを正すため、何より、愛しいものとの平穏な時間を取り戻すために戦い続ける肉体的にも精神的にも過酷な物語……。
幼いワタシが小説を書き始めようと思った発端は、そもそもこのシリーズの完結編があまりにも不憫で、こんな終わらせ方のままでいいものか?!と反駁した気持ちが原動力でした(今じゃ微笑ましいムカシバナシですな)
完結編【転生の終焉】後、2年を経て、きっと抗議の手紙が殺到したであろう著者の西谷氏は、続編【新デジタル・デビル・ストーリー(NDDS)】をスタート。氏が何を狙いとして書き進めていたのかはわかっていたけれど、どうしても脱線気味にしか見えなかったワタシにとっては新シリーズは不透明で苦痛な物語でしかありませんでした。きっとその道の先に待っているものが、望んでいた完結編だとわかっていても、です。
だってNDDSじゃ、中島くんズーッと死亡中ですよ〜ッ!
そう。
中島朱実は、旧シリーズ完結編で、恋人の手にかかって絶命しました。そうすることでしか、二人を取り巻く狂気の世界から逃れられなかったから。
だから新シリーズが始まっても、朱実くんがいない世界が展開されるばかりでした。前世の影響で死ぬこともできないまま、亡くなった朱実くんを想い悲嘆にくれ続ける弓子。彼が召還した悪魔たちによって侵略された現実世界で抵抗を続ける人間達は、その原因でありすでに自らの意志で死に追いやったはずの朱実くんに呪詛の言葉を吐き続けます。
そら、朱実くんのやったアホーで激烈スゴイことを考えたら当然死刑です。アイツにシアワセになる資格なんかあるかー!と罵倒されます。それでも、彼も一人の人間なのです。人を憎んだり愛したりすることができる感情をもったひとつの命でした。ただ不運にも、世にも稀な明晰な頭脳が引き金となって、未曾有の恐怖をもたらしてしまっただけにすぎない。朱実くんがやらなかったら、DDS2【魔都の戦士】に登場したイスマ・フィード(チャールズ・フィード教授の弟)が代わりに実行していたはずのこと。朱実くんの方が、ほんのわずかに早くそれを実行に移してしまっただけ。
だからそんなに彼を責めないで。憎まないで。罵らないで。
DDS〜NDDSを読んでいるときは、ずっとそう祈り続けるような、辛い気持ちでいっぱいでした。どこもかしこも、誰かを憎む気持ちで溢れてて、誰も誰かを愛してない。どうして人はこんなふうになってしまったの? その原因すらも、やっぱり朱実くんなの? 憎悪と復讐と侵略だけが錯綜する破壊的なNDDSを読んでいる間はずっと、いつか朱実くんが帰ってくる!という希望だけがすべてだった。あの人がシアワセになることで、すべての負の世界が終わるような気がした。朱実くんは、人間が背負った罪の象徴。彼が赦されることで、すべての人間が赦される。
そして、NDDSの終末に、朱実くんは帰ってきた。姿を変えて、新しい命になって。
DDSが終わってから、ひたすら願い続けたことがようやく成就した、そんな瞬間だった。
だからって、エンジェル登場には、お腹の筋肉が痙攣。

▼
復刻版、注目ポイント
西谷センセの修正には、これっぽっちも不安はありませ〜ん。全面的に信頼しちゃってマス。
できれば、愛の戦士(ぶふッ)成川さんに今度こそ下の名前付けてクダサイませね〜!
最大の難関は、あの朱実くんの繊細な肖像を作り上げた神(もはや造形美の神!)・北爪宏幸さんが、
平成の朱実くんをちゃんと描けるのか?!
に尽きます。もうコレだけが何より不安で、不吉なことばかり考えて気絶しそうです。ただでさえ、NDDSの待望の再登場時には「朱実くん、膨れちゃったね…」と多数指摘されて、ワタシは卒倒しそうだったので、できれば細面に描いて欲しいなあ……すごく。いっそあの無機質なティストに更なる磨きをかけた恩田尚之さんとコラボレートして描くってのは、どうでしょうか??(←そーとー動揺してる自分)
▼ 続編NDDSも刊行決定
愛蔵版 デジタル・デビル・ストーリー 女神転生2
愛蔵版 デジタル・デビル・ストーリー 女神転生3

てなもんで、好評だった愛蔵版DDSに続いて、NDDSも愛蔵版DDS2、3として刊行が決定。読んだことのないヒトが、圧倒的に多かったようです。また、今回は西谷センセの加筆だけでなく、北爪さんが表紙を描き下ろすとのこと。ひ〜ッ。お願いですから、今の北爪さんの絵で朱実くんだけは描かないで〜ッ←結構、泣くほど真剣。
ワタシ個人としては、NDDSで涙できたのは、#1【捕らわれの女神】での、霊力を振り絞って根性の登場を果たした朱実くんのシーンだけですねえ。#4【怒りの妖帝】のときにはもう、あんまりアリガタミがなかったというか、あの鋭くも脆い刃のような彼らしさが磨耗してしまったようで、むしろ喪失のカナシミの方が大きかったデス。新シリーズはワタシにとって、朱実くん復活譚というよりは、永遠に彼を見失ってしまったかのような淋しさが大きかったことが否めません。彼が若さの勢いだけで犯した過ちを、自ら赦せる大人になったってことなんでしょうが、やはり罪人であろうとも、DDS2の頃の朱実くんが一番素敵でしたヨ……。あ、でも、フィード教授が朱実&弓子の再会を見届けられたことは、彼にとっても長い戦いの終着点とも云える瞬間だったのでしょうね。
それから残念だったのが、最後まで主人公たる明日香に好感が持てなかったコトでしょう(NDDSではもっと時代が過ぎていて、世界もすっかり変わってしまっていて、第二の中島朱実が誕生するよーな話の方が楽しめたかもしれないナ〜)。なんだか大量にのさばって来た神族や魔族の存在も、妙に俗っぽくてファンタジーなのかSFなのか見分けも付かなくなった世界観が、それに拍車をかけていました。気付いたら、一体どこがデジタル・デビルの話なのか?と……今だから心の底から云える!
NDDSは6巻もかける意味があったのか??
正直なトコ、NDDSよりも介&光の方が楽しめたシリーズ。でも3巻以降も続いていたら、アレも学園物ではなくなっていきそうで、これまた路線を外して暗澹たる世界に落ちていきそうな危うさがアリ。西谷作品はずっと読んできましたが、DDS以降、スバラシイ!と手を叩けるような作品には恵まれなかったカモ…。