ねこは泌尿器系の疾患になりやすく、おしっこが数日出ないと命にかかわることは分かっていました。僕は自分の仕事柄、ガン、感染症、自己免疫病など、重篤な疾患が現れた動物を扱うことがあります。そんな動物を扱うとき、命の重みを真摯に受け止めて、苦しんでいないかを確認しつつ大切に扱っています。手術や組織の扱いをする時も、正確に素早く、冷静にこなしています。
けれども、しおちゃんが病気になると僕の感覚はそんな動物を扱う時とは全く違うものでした。すごく怖いのです。どんなに動物の病気や死に慣れていても、しおちゃんが病気になると、ぞっとして怖くて仕方がないのです。
家に試験管が数本あったので、採取したしおちゃんのおしっこを入れ、尿検査をしてもらうために獣医に行きました。ところが、検査結果は尿結石の形跡無しというものでした。再度尿を採取して再検査しても、異常なし。獣医は首を傾げていましたが、しおちゃんは実際に排尿困難で、時に血尿もして苦しんでいたのです。とりあえず尿道に炎症が起きているのは間違いなさそうなので、抗炎症剤だけを処方されました。
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