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「アフリカの世紀」に乗り遅れる大陸最大の経済大国

南アフリカ経済を苦しめる労使問題と与党内対立

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2013年6月6日(木)

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労働組合に不満を抱く労働者たち

 英資源大手ロンミンが南アフリカのマリカナに所有するプラチナ鉱山で、2012年8月に山猫スト(労働組合本部の承認を得ずに一部の組合員が行うストライキ)が発生。ストの参加者数十人が警察の発砲により死亡した。この事件の背景には、労働組合同士の確執がある。

 全国鉱山労働組合(NUM)の中央幹部らは、鉱山経営者と癒着していると見られている。そのため、NUMに見切りをつけた労働者たちが、新たに立ち上げられた鉱山・建設労働組合連合(AMCU)に流れている。ロンミンのプラチナ鉱山では、NUMはもはや労働者の多数を代表する労組ではない。そのためAMCUは、NUMに対して同鉱山の労組事務所から出て行くよう求めている。

 5月12日には、AMCUの創立メンバーであるマウェトゥ・スティーブン氏が酒場で銃撃されて死亡するという事件が発生した。両労組間の対立は一気に険悪な様相を帯びた。

 NUMは既存の体制の一部をなしている。同組合は、南アフリカの現与党であるアフリカ民族会議(ANC)と同盟関係にある南ア労働組合会議(COSATU)に所属する。しかし今、NUMが鉱山労働者の正当な代表であるかどうかに疑問が向けられているのだ。

 NUMはこの動きに反応して、非熟練労働者について60%、その他の労働者について15%の賃上げ要求を出した。ほかの労組もこれに同調した。全国金属労働組合(NUMSA)は全組合員(多くは自動車産業に従事)について20%の賃上げを要求した。

 企業側が、これほどの極端な賃上げ要求を簡単に受け入れるとは思えない。もしそんなことをすれば、輸出企業がランド安で得ているコスト上の利点が消え去ってしまう。つまり、ストライキが続く可能性は、どうやら高いと言える。

労働者も企業も、既得権益を持つ者が強い

 失業率が高い南アフリカで、労組がこれほどの賃上げを要求できるというのは不思議なことだ。2012年末の失業率は25%を超えていた。働く望みを持ちながら求職活動ができずにいる人まで含めて考えると、失業率は37%に達する。

 南アフリカでは、法律上、労働者を解雇すると高いコストがかかる。そのため、もっと安い賃金で働くであろう失業者が大量にいたとしても、職に就いている労働者は気にすることなく労使交渉で強気に出られる。また、労働者にはたいてい失業中の扶養家族がいる。そのような労働者は、賃上げ要求は正当だと考える。労使関係に苦労する企業は、ますます新規採用を控えるようになる。

 失業問題は、特に若年層において深刻だ。25歳以下の失業率は53%に達する。多くの者は仕事のスキルを身につけていない。高校卒業資格を持つ者は60%にすぎない。


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