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「アフリカの世紀」に乗り遅れる大陸最大の経済大国

南アフリカ経済を苦しめる労使問題と与党内対立

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2013年6月6日(木)

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 アフリカでは、大半の国が繁栄への道を歩み始めている。ところが、アフリカ第1の経済大国である南アフリカ共和国の足どりが重い。5月28日に発表された同国の1〜3月期の国内総生産(GDP)成長率は、年率換算でわずか0.9%だった。

 アフリカ開発銀行(AfDB)と経済協力開発機構(OECD)は最近、アフリカの経済見通しは明るいとする報告書を公表した。その中で、南アフリカの予測成長率は52カ国中48位と、かなり下位に位置する。しかも、2013年に2.8%という同報告書の予測でさえ、既に楽観的すぎるように思える。

 南アフリカ政府は、失業率を抑え、貧困をなくしていくには、5%の成長を維持する必要があるとしている。その達成は、夢物語にしか聞こえない。

生産、輸出、内需、為替、すべてが逆風

 1〜3月期のGDP統計の中で、数少ない好調分野の1つに、鉱業がある。しかし、鉱業生産は再び減少に向かっている。鉱山でストライキが起こりそうなことも、鉱業の当面の見通しを暗くしている。

 南アフリカの輸出は、4分の1が欧州向けだ。その欧州は今、景気後退の真っただ中にある。

 内需も弱い。大手小売業が公表する売上高は軒並み低調だ。米ウォルマートが出資するスーパーマーケットのマスマートもその1例である。小売業の売上高は、銀行の無担保貸付が下支えしてきた面がある。だが、銀行はこのところ、無担保の貸付枠を縮小している。消費者景況感は9年ぶりの低水準に落ち込んだ。

 金利を引き下げれば経済を活気づけられるかもしれない。だが、中央銀行である南アフリカ準備銀行は5月23日に、ベンチマーク金利を5%に据え置くと発表した。理由の1つとして挙げたのが、急激なランド安だ。ランド安はインフレを促す。中銀はインフレ目標を3〜6%としており、インフレ率は既にその上限に近い。

 ランド安には、外的な要因もある。米国経済の信頼が回復しており、新興国の通貨に対するドル高が進行している。また、中国がコモディティー(商品)に対して以前ほど貪欲ではなくなっていることから、コモディティー価格が下落している。

 一方、国内にも数々の問題がある。経常赤字はGDPの6%以上に達する。南アフリカは、その収支の差を埋めるのに外国からの資本に頼っている。そのため、同国経済は投資家の気分の変化に左右されやすい。労働争議が頻発しているのを嫌って、多くの投資家が南ア市場から手を引いた。米シティバンクがまとめたヨハネスブルグ株式取引所の数字を見ると、5月27日までの10日間で外国人投資家は債券や株式を売り越している。


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