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著作権の保護期間はいつ終わるか?【戦時加算は日本の足枷】

日本人が他人の著作物を利用するにあたり、その保護期間を著作者の国籍により3パターンにまとめました。ポイントは日本だけに課せられた「戦時加算」で、相手が第二次世界大戦の連合国の場合は要注意です。※ここで言う日本人・外国人には法人も含まれます。

更新日: 2013年06月05日RSS

IPRWatcherさん

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日本人が他人の著作物を利用するにあたり、その保護期間を著作者の国籍により3パターンにまとめました。ポイントは日本だけに課せられた「戦時加算」で、相手が第二次世界大戦の連合国の場合は要注意です。

※ここで言う日本人・外国人には法人も含まれます。

【その1】日本人の著作物の場合

原則

「著作権(財産権)」の保護期間は、著作者が著作物を「創作したとき」に始まり、原則として著作者の「生存している期間」+「死後50年間」です (第51条)。

原則として、著作権は著作者の死後50年で消滅します。

例外

○無名・変名(周知の変名は除く)の著作物(第52条)
公表後50年(死後50年経過が明らかであれば、その時点まで)

○団体名義の著作物(著作者が法人か個人かは問わない)(第53条)
公表後50年(創作後50年以内に公表されなかったときは、創作後50年)

○映画の著作物(第54条)
公表後70年(創作後70年以内に公表されなかったときは、創作後70年)

著作者不明の作品・団体名義の作品・映画の著作権は、公表後50年が基本です。

期間計算を簡便にするため、保護期間は死亡・公表・創作の翌年の1月1日から起算します。
また、保護期間中でも著作権者の相続人がいないときは著作権は消滅します。

【その2】外国人の著作物の場合(戦時加算対象15ヶ国を除く)

原則

ベルヌ条約上及び万国著作権条約上の保護は、外国人の著作物についても自国民と同等以上の保護を与える内国民待遇の原則によっています。

したがって、原則として、条約上保護義務を負う著作物の保護期間は、我が国の著作権法の仕組みによることとなります。

ベルヌ条約と万国著作権条約によると、外国人の著作物については内国民待遇、つまり日本人の著作物と同じ保護期間になります。

しかし、日本の著作権法には、次に引用する例外規定があります。

保護期間の相互主義

我が国より保護期間が短い国の著作物は、その相手国の保護期間だけ保護されます。

例えば、ある国で著作権の保護期間が著作者の死後25年間であれば、我が国の著作物は当該国では25年間保護される一方、我が国でも当該国の著作物は25年間保護すれば足りることとなります(第58条)。

日本の著作権法第58条によると、外国人の著作物については相互主義、つまり日本と相手国のいずれか短い方の保護期間が適用されます。

結論として、外国人の著作物については、日本と相手国のいずれか短い方の保護期間になります。

但し、次に述べる「戦時加算対象15ヶ国」については、この限りではありません。

【その3】戦時加算対象15ヶ国の著作物の場合

戦時加算対象15ヶ国の著作物についても、基本は日本と相手国のいずれか短い方の保護期間になりす。

しかし、第二次世界大戦中に保護期間内だった著作物については、上記の保護期間に「戦時加算日数」(6年~10年)を加算する必要があります。

但し、戦時加算対象15ヶ国が戦時中に創作した著作物については、創作から平和条約発効日の前日までの日数を加算すれば良いとされています。

戦時加算対象国および戦時加算日数一覧 *1

アメリカ合衆国 3794日(1952年4月28日)
イギリス 3794日(1952年4月28日)
フランス 3794日(1952年4月28日)
カナダ 3794日(1952年4月28日)
オーストラリア 3794日(1952年4月28日)
スリランカ 3794日(1952年4月28日)
ニュージーランド 1607日(1952年4月28日)*2
パキスタン 1393日(1952年4月28日)*2
ブラジル 3816日(1952年5月20日)
オランダ 3844日(1952年6月17日)
ノルウェー 3846日(1952年6月19日)
ベルギー 3910日(1952年8月22日)
南アフリカ連邦 3929日(1952年9月10日)
ギリシャ 4180日(1953年5月19日)
レバノン 2291日(1954年1月7日)*2

*1「戦時加算日数」は、1941年12月8日(日本の第二次世界大戦参戦日)から各「平和条約発効日」(括弧内)の前日までの日数

*2 ニュージーランド、パキスタン、レバノンについては、ベルヌ条約ローマ改正条約の発効日が開戦日以降であるため、以下のベルヌ条約発効日を起算日として戦時加算日数を算出
【ベルヌ条約発効日】
・ニュージーランド:1947年12月4日
・パキスタン:1948年7月5日
・レバノン:1947年9月30日

日本の足枷「戦時加算」

日本にのみ一方的に課せられている義務

戦時加算は、戦争による著作権者の逸失利益の回復を目的に、ヨーロッパにおいて自国の立法政策として始まった制度であり、敗戦国が条約による義務として負う性質のものではありません。

そもそも、戦争により著作物の正当な利用がなされず、著作権者の利益が損なわれた状況は、交戦国双方に共通しているはずです。第二次世界大戦後、イタリアなどが連合国と締結したパリ平和条約では、戦時加算は双務的に行うものとして規定されました。

しかしながら、サンフランシスコ平和条約においては、戦時加算が片務的な義務として日本だけに課せられており、連合国については具体的な義務を負わず、「各国の一般的事情が許す限り日本国に有利に取り扱うことに同意する」(同平和条約第14条2項(V))と規定されているにとどまっています。

同じ敗戦国であるドイツについても、実質的な戦時加算義務を負うことはありませんでした。

日本だけが条約に基づき一方的に戦時加算義務を課せられているのであり、この状態は国際的に極めて異例といえます。

引用元の日本音楽著作権協会(JASRAC)では、日本の戦時加算義務の解消を求め、国の内外に働きかけています。

しかし、戦時加算義務は未だ有効ですので、日本国民は守らないわけにはいきません。

関係法令

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