豊かな国、日本で「餓死」などあり得ない。そう思っているのであれば、あなたの頭は1994年(平成6年)までのイメージで止まっている。
1995年から、実は餓死者が急増していることを産経新聞は2012年2月26日の記事で明らかにしている。(餓死者、バブル崩壊後急増 セーフティーネットの不備映す)
男性の餓死者が増えているのは、男は最期まで助けを求めないからだ。しかし、それが仇になって飢えて、死んでいく。
もちろん女性の餓死者もいる。社会から見捨てられて、死んでいっている。
むしろ、これから本格的に起きる現象
日本でバブルが崩壊したのは1990年からだ。しかし、バブルが崩壊しても、しばらくは「崩壊した」と認めない人も多い。
つまり、「これは一時的な踊り場で、すぐにまた右肩上がりになる」と勘違いする人が多いので、しばらくは惰性で社会がバブル時代のように振る舞う。
しかし、数年経って地価も株式市場も戻るどころか半値以下に落ちても止まらないのを見て、やっと強気派は自分たちがハシゴを外されたことに気がつくのである。
多くの強気派は莫大な借金をして土地転がしをしていたから、買ったときよりも地価が下がると、それですべてを失って死ぬ。
何もかも耐えきれずに全面降伏が起きたのが1994年あたりであり、そこから「餓死」の急増が始まっているのである。
「餓死者の急増はバブル崩壊後、急速に景気が悪化した時期と重なっている。当時、雇用状況の悪化に伴ってリストラなどで失業者が増加した」
このような解説が文頭で解説されているが、そこでよく考えてほしい。
・急速に景気が悪化。
・雇用状況の悪化。
・リストラの増加。
1995年当時は、そういった事態が起きて餓死者が急増したと書かれている。
しかし、これはまさに「今」起きていることであり、むしろ、これから本格的に起きる現象だということが気づく。
1995年、すなわち平成7年から「不景気・リストラ・失業」で餓死者が急増しているのであれば、「これからもさらに餓死者がさらに増えていく」と言い換えることもできる。
朽ち果てるように死んでいく人の姿
2012年2月23日、東京新聞が以下のような記事を載せている。
都会の「餓死」 サイン見逃さず行動を
大都会の外れで家族三人が人知れず亡くなっていた。餓死だったかもしれないというからやり切れない。痛ましい最期を迎える前に、異変を告げるサインを救済に結びつけるすべはなかったのか。
二十日昼すぎ、さいたま市のアパートの一室で三人は見つかった。東北新幹線の高架に程近く、周りは工業団地と田畑に囲まれている。人目は決して少なくない。
警察によれば、六畳の和室に六十代の夫婦が、四畳半の和室に三十代の息子が布団に横たわっていた。食べ物は見当たらず、水の入ったペットボトルが脇に置かれていただけだった。
2012年2月27日、信濃毎日が以下のような記事を載せている。
さいたま餓死 救う手だてはなかったか
さいたま市のアパートで、住人の60代夫婦と30代息子とみられる3人の遺体が見つかった。周囲に気づかれることなく、死後2カ月が過ぎていた。
餓死の疑いがある。室内に食料はなく冷蔵庫も空っぽだった。現金は一円玉が数枚。家賃を滞納しガスと電気を止められていた。
悩ましいのは、この一家が市に住民票を届け出ていなかったことだ。家族は面識のない近所の人に借金を申し込んだものの、市に生活保護の相談をすることはなかった。自治会にも加入していない。福祉の手も、地域の目も届きにくい状況にあった。
毎日新聞では、以下のような記事を載せている。
孤独死:公営団地で1191人 65歳以上は7割超
都道府県や政令市、県庁所在地の計98自治体が運営する公営団地で09年度に誰にもみとられることなく孤独死した人が少なくとも1191人で、このうち65歳以上の高齢者が879人と73・8%を占めていることが毎日新聞の全国調査で分かった。
これとは別に、UR(都市再生機構)団地で起きた65歳以上の孤独死472人を合わせると、1日に4人弱の高齢者が孤独死していることになる。
仕事が見つからず、食べられず、助けを求めることもできず、まるで朽ち果てるようにして死んでいく。
日本はかつては大家族だったが、高度成長期に入ってからは核家族化を目指すようになった。
その状態で日本が衰退すると、どうなっていくのかはあらかじめ予測されていた。老いた人が見捨てられるのである。あるいは、働けない人から社会から捨てられるのである。
団塊の世代の大量死が起きていく
働けない人、仕事が見つからない人から、生活が困窮していく。電気・ガス・水道を止められたアパートの中で餓死したり、ホームレスになったりする。
それが1995年より起きはじめ、今もまだその傾向が続いている。これから団塊の世代が仕事を辞めて、年金生活に入って行く。
そもそも、その年金制度が崩壊寸前になっているからこれから何が起きるのか、想像できる人は想像してみてほしい。団塊の世代の大量死がこれから起きることになる。
政府はどうするのか。
たとえば、景気が破滅的に悪くなって餓死者が急増した1995年以降、政府は何をしたのか。なんと、景気が悪くなっているその最中に、消費税をアップさせているのである。
1997年、橋本内閣の頃の話だ。そして、その結果どうなったのか。この頃から自殺者が急増して、1年間で3万人が自殺する自殺大国となり、その3万人の自殺が14年連続高止まりすることになった。
消費税が3%から5%になったというのは、普通の人であれば大した話ではないのかもしれない。
しかし、消費税が上がれば、消費が減退するので、ますます企業がコストダウンの必要性に迫られて、結果的に人件費を減らすために給料削減やリストラに走る。
物価は上がる。仕事は見つからない。そして給料は下がる。節約しながらつつましく生きている人たちにはそれが死活問題となっていく。だから、餓死者も自殺者も急増して、高止まりするのである。
これで生活保護や年金が破綻していけば、万策尽きて死んでいく人はさらに増えることになるだろう。
日本だけは円高のまま何ら危機感もない
自殺者と言えば、最近では若年層の自殺も増えている。なぜか。これも「仕事が見つからない」からである。(「もうこんな国で生きたくない」という絶望が迫っている)
1997年以降、日本では所得税も法人税もずっと右肩下がりの傾向を示している。
これが意味するところは、バブル崩壊で日本は衰退期に入り、1997年からそれが日本の底辺の人たちを追い詰めるようになり、さらに最近では若年層にまで影響を及ぼすようになっているということだ。
法人税も下がっているというのは、すなわち日本企業も経営が不調であるということを意味しており、企業が不調になれば仕事も給料も増えるはずがないのである。
本当であれば、日本政府はそれをしっかりと察知して、矢継ぎ早に景気対策を打って日本を助けなければならない。
ところが、どういうわけか日本の政治家は日本を助けるのではなくて、日本を逆に追い詰めるような政策を採るか、もしくは無為無策で先延ばししているのである。
たとえば、為替の問題ひとつを取ってもそうだ。
政府が決死の覚悟で円安誘導していれば、日本の景気はこれほどまで悪くなることはなかった。今でも円安誘導は日本を生き返らせる特効薬となる。
中国も韓国も米国もユーロも、自国の通貨を下げるのが「政策」だ。ところが、日本だけは円高のまま何ら危機感もなく、対処すらもしないのである。
日本企業は世界を市場にしなければ生きていけない。それなのに円高が放置される。当然、追い詰められた企業はリストラに走って日本から出て行くしかないから、それがますます日本を衰退させる。
やがて「自壊」してしまう
政府は落ち込んだ税収を補うためにどうするのかというと、国債を湯水のごとく発行する。日本政府はそうしている。
しかし、国債というのは政府の借金証書みたいなものだから、いずれそのツケはどこかで払わなければならない。
国債の信用が国民の貯金なのであれば、ツケは国民の貯金で払うことになる。
つまり、将来のためにと溜め込んでいた国民の財産が、ある日突如として消えてしまうということになる。
そうなったら、現在の、餓死者・孤立死・自殺など、まるで比較にならないほどの爆発的なカタストロフィが起きる。
日本が抱えているのは、そんな地獄なのである。1995年から、日本の底辺では地獄がぽっかりと口を開けているのである。
だから、今起きている「餓死者、孤立死、自殺」のニュースは、他人事だと思って無視してはならないものだ。
仕事も貯金も失ってどうしようもない人が溢れるのだから、これは、やがて日本人全員が巻き込まれる社会的事件になっていく。
新聞を丹念に見れば、日本が毎年毎年、どんどん困窮し、追い込まれているのが分かるはずだ。
社会が金属疲労を引き起こして土台を支えることができなくなっている。そういったものは、やがて「自壊」してしまうのである。
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