強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観とともに成熟し、熱狂とともに消えていく――。米国の著名投資家ジョン・テンプルトンの言葉だ。東京株式市場はどのあたりだ[記事全文]
子どもの貧困対策法案が衆院で可決され、今国会で成立する見通しになった。貧困率削減などの数値目標を法案に入れるかどうかで対立していた与野党が歩み寄り、法案を一本化した。審[記事全文]
強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、楽観とともに成熟し、熱狂とともに消えていく――。
米国の著名投資家ジョン・テンプルトンの言葉だ。東京株式市場はどのあたりだろうか。
きのうは、安倍首相がアベノミクスの要をなす成長戦略について自ら講演した直後から売りが膨らみ、日経平均株価は518円下げて終わった。
「ニュースで買って発表で売る」という相場格言をなぞる展開で、アベノミクスへの期待ははや賞味期限が切れつつある。投機筋が先物市場で売り浴びせれば、緩和マネーは簡単に逆回転する。
日銀が「異次元緩和」に踏み切った4月初めからの上昇分は8割がはげ落ちた計算だ。
株価の上昇それ自体が経済政策の目標ではない。ただ、安倍政権は、とりまとめている成長戦略が力不足であることを認識すべきだろう。
そもそも日本で株高が加速した背景には、米国の金融緩和によるニューヨーク市場の株高という安心材料があった。日米の株式相場が緩和頼みで共振しながら上昇してきた。
だから、日米の金融政策に不透明感が生じれば、影響はてきめんだ。
米国では、量的緩和の第3弾(QE3)が雇用の改善を受けて縮小されることへの懸念が広がった。景気の復調よりも、相場に流れ込むマネーの収縮を嫌がる構図である。
一方、日銀の緩和も国債市場の不安定化と長期金利の上昇という誤算を生んだ。
日銀は2%のインフレ目標を掲げつつ、国債の買い入れを急増させて金利を抑え込むはずだったが、多くの金融機関は歴史的な低金利時代の転換を感じ取り、国債の処分に動き出した。
日銀は国債の買い入れ頻度を増やして相場の安定を図るという。しかし、力ずくで相場を管理しても、市場機能を殺せば金融政策への信頼が失われる。
かねがねバブル頼みの疑念がある異次元緩和の問題点を洗い出し、慎重な政策運営に徹するべきだ。
テンプルトンは不況期に優良企業を見いだす目利きの力で名声を博した。市場から投機マネーが抜けるなかで、本当に投資に値する企業を選別するという市場本来の機能が働く。
企業には試練だが、目先の収益しか眼中にない投資家におもねることなく、中長期的な経営戦略をしっかりと固め直し、市場での理解者を増やす気構えがほしい。
子どもの貧困対策法案が衆院で可決され、今国会で成立する見通しになった。
貧困率削減などの数値目標を法案に入れるかどうかで対立していた与野党が歩み寄り、法案を一本化した。審議を通じ、子どもの貧困という問題が広く世に知られるようになった。その意義は大きい。
大切なのはこれからだ。具体策は、政府が大綱を作って定める。親の就労支援や奨学金などお金の支援だけでなく、子どもの学習そのものを支える手だてをきちんと講じてほしい。
貧困と教育の関係は深い。
国や埼玉県、東京都板橋区の各調査をあわせて読むと、こんな姿が浮かびあがる。生活保護家庭の子どもは、高校への進学率が平均より1割低い。一方で中退率は倍に及ぶ。中学生の不登校率も5倍に近い――。
親が体や心の病気を抱えていたり、周囲に支える人がいなかったりで、子育てに手が回らない。そんな指摘がある。
神奈川県の調査では、生活保護を受けている人の4割は高校中退か中卒だった。親も生活保護を受けていた人も多い。親から子への貧困の連鎖を断つには学びの支援が大切だ。
まず取り組んでほしいのは、貧困のために勉強が遅れがちな子ども向けに、放課後の無料教室を広げることだ。
勉強を教わるという直接の効果だけではない。教室に通うことで、学校にも行ける自信がつく。先生役のボランティアら、親身になってくれる大人と出会える。親の病気や虐待といった家庭の抱える問題を、行政の窓口につなぐこともできる。
民間団体とともに取り組んでいる埼玉県では、参加した生徒の高校進学率が一般の世帯なみに上がった。より多くの自治体がこうした取り組みをできるよう、国は後押ししてほしい。
また、現状では高校進学を控えた中3を対象にする自治体が多いが、学年が上がると追いつくのが難しくなる。低学年にも広げていくべきだ。
もうひとつ忘れてはいけないことがある。「子どもの将来がその生まれ育った環境によって左右されることのないよう(中略)教育の機会均等を図る」。法案にはそう記されている。これは公教育の役割そのものだ。
学力が家庭の豊かさに左右される傾向は、全国学力調査でも明らかになっている。
学力格差の解消には何が効くのか。少人数学級か、習熟度別の授業なのか、読み書き計算の徹底か。文部科学省は検証し、実行してもらいたい。