(2013年6月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
オバマ米大統領は今週、中国の習近平国家主席をカリフォルニア州にある保養地のランチョミラージュに迎えて、同主席とは初の首脳会談に臨む。オバマ氏の任期が4年を切ったのに対し、10年と想定される習新体制は始まったばかりだ。習氏の退任までに中国経済は世界首位に浮上するかもしれない。
両国はイラン、北朝鮮、サイバー攻撃、太平洋地域での米国のプレゼンスなど幅広い問題で対立している。二大国の利害が真正面からぶつかれば、戦争の危機が迫るという悲観論も聞かれる。米政府は、アジア重視は「対中リスク回避」のために必要だとしているが、中国側は露骨なけん制だと見ている。中国外務省高官の何亜非氏が最近指摘したように、両国の間には深刻な「信頼赤字」が存在するからだ。
だが、悲観論者が心配するほど事態は悪化しておらず、軍事分野以外では広範囲に対話を重ねてきた。それは少なくとも両国間に欠如している信頼を構築し、新しい世界秩序に徐々に近づく機会を提供する。
オバマ氏と習氏は個人的な絆を深めるところから始めるべきだ。欧米人から見ると、カリスマ性のある習氏は、無表情で真意を測りかねた前任者の胡錦濤氏よりも付き合いやすい人物と思われる。
■サイバースパイに「協定」締結で関係改善
さらに明るい材料は、中国の勢力拡大に伴う責任について、習氏が今までの指導者より理解している兆候がわずかに見られることだ。同氏は北朝鮮への制裁に少しだけ前向きであり、気候変動に関する政府談話もやや希望の持てる内容だ。妥当性が見られる点においては、米国は中国の努力を認めるべきだ。特に為替の問題では、中国政府は人民元の対ドルレート上昇を容認している。
しかし他の分野では、米政府の譲歩は難しいだろう。例えば、中国のあからさまな人権侵害を見過ごすことや、アジア太平洋諸国との同盟関係を破棄することはできない。
一方、摩擦が大きくなっているからこそ信頼関係の改善を期待できるのが、サイバー上のスパイ活動だ。ハッキング問題を巡るハイレベル協議の定期的開催で合意すれば、少しは展望が開ける。手始めに、妨害行為の「自粛協定」を結び、例えば国内送電網に対する互いの攻撃をやめることなどが考えられる。両国間の「信頼赤字」解消に向けては小さな一歩だが、それこそが事態打開への道を開くものとなろう。
(c) The Financial Times Limited 2013. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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