'13/6/4
分収造林事業の破綻で謝罪
広島県農林振興センターの経営破綻を受け、センターの小原辰男理事長と県の宝来伸夫農林水産局長は県庁で記者会見し、頭を下げた。負債総額は468億円。崩壊した「分収造林」の共同事業者だった山の所有者からは県の対応の甘さを指摘する声とともに、造林の継続を求める意見が聞かれた。
センターは、1965年に発足した県造林公社が前身。当時は高度経済成長期で、住宅向けに大量の木材が山から切り出された。一方で、植林する資力がない山の所有者も多く、木がない「はげ山」が増えていた。
このため58年に分収林特措法が制定され、林業公社が所有者と契約して木を植え、育てた木を販売して収益を分け合う分収造林事業が「国策」として打ち出された。センターは県内の人工林の1割に当たる約1万4800ヘクタールに植林した。
だが、安い外国産材に押され、木材価格はピーク時の1〜2割へと大幅に落ち込んだ。宝来局長は「木を70年間育てて売るという枠組みが、価格の下落に対応できなかった。将来の見通しが難しく、対応が遅れた責任はある」と肩を落とした。
センターが保有する森林は今後、県有林として育成される。分収造林事業に約78ヘクタールを提供する松原自治会(広島県安芸太田町)の小山徹理事長(64)は「センターの運営には非効率な部分があった。過去の経営トップの責任も問わないと県民の理解は得られない」と指摘する。
一方、約26ヘクタールの契約を結ぶ下中央生産森林組合(安芸高田市)の崎岡達登組合長(88)は「分収造林をやめると山が荒れる。住民も高齢化しており県に山を守ってもらうしかない」と話し、事業が果たしてきた環境保全の役割にも言及した。
県によると、現在の木材価格を前提に2067年度までにすべての木を育てると、158億円の収益が見込まれる。「(災害防止などの)公益的機能を発揮するためにも事業を続ける。経営改革を進めて収益を増やし、県民の負担をできるだけ減らす」。県民の理解を得る手法を問われた宝来局長は、そう繰り返した。
【写真説明】広島県農林振興センターの経営破綻について記者会見で謝罪する小原理事長(左)と宝来局長(中)