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ダイバーシティーとは

ダイバーシティー&インクルージョン

ダイバーシティーという言葉は、一般にどのくらい認知されているだろうか。女性の活動を支援する組織、GEWELとセルフ・エスティーム研究所がそれぞれ2009年と2011年、インターネットで実施した調査によると、「ダイバーシティーという言葉を聞いたことがあり、内容も理解している」という回答は2009年で9.8%、2011年で14%と認知度は上がった。だが、一般的に浸透しているとは言い難い。かつ、ダイバシティー=女性活躍推進と誤解されていないことを祈るばかりである。

日本では外資系企業がダイバーシティーを導入し始めて、約10年が経過。女性活用が課題とされる日本企業でも、女性社員の離職率は改善し、中間管理職層には女性が少しずつ増えてきた。ただ、役員の数となると非常に少ない。

経済同友会は2012年5月、「意思決定ボードのダイバーシティーに向けた経営者の行動宣言 –競争力としての女性管理職・役員の登用・活用」を公表した。政府も日本再生国家戦略の一つとして、「女性の活躍推進による経済活性化行動計画」をまとめ、これまでのような福利厚生の名目からだけでなく経済効果も期待しつつ、各省庁ごとにポジティブアクションを発表している。

一方、ダイバーシティー推進先進国といえるアメリカでは、21世紀初頭から、「ダイバーシティー&インクルージョン」と併記されることが一般的。最近は、インクルージョン(受容)が先として「インクルージョン&ダイバーシティー」とする企業も増えてきた。その背景として、アメリカのダイバーシティー施策はおもに人種的な切り口で、人口構成や顧客構成を従業員比率に反映させ、企業活動や組織の意思決定を行うRepresentation(代表制)の意味が強いということがある。従業員の採用、昇進・昇格などにダイバーシティーが反映されるよう、ポジティブアクションを実現させるなどの努力をしてきたのである。しかし、せっかく採用したマイノリティーの人々が組織に定着しないことが課題となり、その解決にはインクルージョン(受容)が必要で、インクルーシブ(包括的)な職場環境づくりの重要性が認識されるようになった。

インクルージョンを考える上で欠かせないのは、「自分自身が持っている無意識の思い込み」に対する気づきである。「女性だから」、「外国人だから」、「新入社員だから」などと先入観で相手を類型化し、「こうであるに違いない」という思い込みで接することがインクルーシブな職場環境づくりの阻害要因になっている。

日本では、企業が女性の定着とキャリアアップのために、福利厚生制度を充実させ、研修などを行なっているが、「制度は作ったが、期待したような効果が得られていない」、「育児休暇明けで職場復帰し、短時間勤務制度を選択したものの、何となく居づらく、結局退職した」、「女性活躍推進といっても管理職志向の女性は少ない」という意見を聞くことが多い。一人一人が無意識の思い込みを自覚し、意識して行動を変えるインクルーシブな職場環境を醸成することが不可欠である。

昨今、日本企業による外国企業のM&A(合併・買収)を含めてグローバル化がすすみ、「グローバル人材の育成」が緊急課題となっている。そんな中で、外国人社員を雇用する方がてっとり早いと考える企業も増えてきている。性別だけでなく、文化背景、年代、価値観などこれまでと異なる切り口で「ダイバーシティー&インクルージョン」へ取り組むことが優秀な人材確保に必要である。

大企業を中心に、ダイバーシティー推進の気運は日本でも高まっているが、一過性のもので終わらないために、「組織は人なり」という哲学を持って、「多様な人々がそれぞれを尊重し、能力を発揮できるような風土づくりこそ、組織の持続的成長、成功に不可欠である」というメッセージの発信が必要である。そして経営トップは、ダイバーシティー&インクルージョンを自らの問題としてとらえられるよう、企業や組織の社会的存在価値、目的を明確にし、組織構成員が成長し、価値実現に貢献できるようリーダーシップを発揮して欲しい。

(GEWEL 代表理事 藤井幸子)


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