By YUKA HAYASHI
【東京】日本は、第2次世界大戦中の行為をめぐる国際的な批判の高まりを鎮静化しようと腐心している。
国連の拷問禁止委員会は先週、日本の当局者に対し、戦時中に性奴隷として強制的に働かされた元「慰安婦」を再び苦しめるのをやめるよう要求した。またニューヨーク州下院は先月、同州ウェストベリーに建てられている慰安婦記念碑に敬意を表するとともに旧日本軍が「人道に対する罪」を犯したことを非難する決議を採択した。カリフォルニア州グレンデール市は、市議会が「韓国人慰安婦の日」と宣言した7月30日に独自の記念碑の除幕式を行う見通しだ。
日本が70年前の行為に対する非難の声はますます高まっているが、この根底には「慰安婦」問題が今日まで解決しないまま続いていることがある。この問題は長年水面下にあったが、2011年に韓国の裁判所が異例の判決を下したことを受けて再燃した。また、最近数カ月間は、辛辣(しんらつ)な政治家たちによる一連の問題発言のなか激化し、日韓関係を険悪化させるとともに、米政府の東アジア政策を複雑化させている。
日本は第2次大戦の後遺症をめぐり近隣諸国との意見の相違を埋められずにいる。それは日本の政治的な孤立を招き、米国をもいらだたせている。中国の領有権をめぐる野心や、北朝鮮の核の脅威といった課題に直面しているにもかかわらず、だ。安倍晋三首相は昨年12月の就任以来、多くの国の指導者と会談したが、同首相の歴史観に不満を抱く韓国と中国の最高指導者との会談はまだ実現していない。
米軍の最高幹部、マーティン・デンプシー統合参謀本部議長は、北朝鮮が核ミサイルの発射準備をしているかにみえた4月末に訪日した際、日本の自衛隊と韓国軍がこの北の脅威にもかかわらず、緊密に協力できないでいることに公然といら立ちを表明した。主に「慰安婦」問題をめぐる両国の緊張から生じた疎遠が原因だ。同議長は、米軍が東アジア地域最大の同盟国である日韓両国と防衛協力するための「共通の精緻な運用上の構想」をそれぞれの国と持っていると強調した。しかし、問題は「この(米韓、米日という)2つの構想が融合していないことだ」と語った。
こうした日韓緊密化は当面、実現しそうにない。日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)は棚上げされたままだ。また韓国の朴槿恵大統領は5月初め、ワシントンを訪問して米議会で演説し、「歴史に起因する(日韓両国間の)相違は広がっている」と述べた。
橋下徹大阪市長は先週の記者会見で、戦争に負けたとの理由だけで、ありとあらゆる誤解を前にして常に口を閉ざす必要はない、と述べた。この会見は、慰安婦制度は戦争行為の一環として必要だったとの橋下氏発言を受けて、アジアや米国で噴出した怒りを鎮めようとして行われたものだった。同氏はまるで何かにとりつかれたかのように自らの発言を擁護し明確にするため、5月14日に57件、翌15日に54件のツイートを発した。
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橋下氏の発言に対し、国連拷問禁止委員会は厳しい声明を発表した。日本に対し、「政府当局者や公人による事実の否定や、そうした否定を繰り返すことによって被害者を再び傷つける行為に反対する」よう勧告した。
小野寺五典防衛相は影響を鎮めるため、週末に行われた国際会議で橋下氏を批判。日本は戦争の犠牲者に対する過去の謝罪を引き継いでいると強調した。安倍首相は日本の植民地支配と侵略を認めた村山談話を軽視する姿勢を示していたが、これが隣国の怒りを買ったため、最近になって継承する方針に転換した。
元慰安婦の金福童さん(87)は、橋下氏の「妄言」への抗議として、5月の日本訪問中に予定していた同氏との面談をキャンセルした。
金さんは、韓国政府が把握する元慰安婦の1人。恥ずかしさのため長い間沈黙してきた元慰安婦らだが、1990年代初めに234人が名乗りをあげた。今では存命者は59人にすぎない。被害者数については歴史学者の間で議論があり、アジア全体では数十万人に上るとの推定もある。
韓国は、日本が女性それぞれに謝罪し、強制売春における政府の役割を確認するような補償制度に改めるよう要求している。
一方、日本は、戦争被害に対する補償をめぐる問題は何十年も前に解決しているうえ、政府首脳らが1990年代初め以来謝罪を表明し、その謝罪で十分だとの見解を示している。日本の当局者は、慰安婦の強制連行に対する軍の直接の関与を示す証拠はないとかねて主張してきた。
2000年代から、米国と欧州の政府はこの問題を取り上げ、日本政府に一段の対応を求めてきた。米議会は07年、「帝国陸軍が若い女性を脅して性の奴隷に追い込んだことについて、明確かつ絶対的な様式で歴史的責任を正式に認識し、謝罪し、受け入れるよう」日本に訴える決議を採択した。この決議は、第1次内閣の安倍氏が過去の公式謝罪を取り消す意向を表明したことを受けたものだ。この一件は安倍氏がすでに抱えていた様々な問題に拍車をかけ、2カ月後の辞職につながった。
慰安婦に関する韓国政府の動きは米国で再び勢いを得つつあるが、これは韓国系米国人社会の影響力拡大を反映している。昨年にはニュージャージー州に慰安婦記念碑が建てられた。これを受け、「歴史事実委員会」と首相選出前の安倍氏を含む日本の議員らが地元紙に全面広告を出し、日本軍が若い女性を強制的に性の奴隷にしたとの主張は徹底的かつ意図的な事実のわい曲だと訴えた。
ニューヨーク州クイーンズ区にあるクイーンズ・ボロー・コミュニティーカレッジのホロコースト・センターのインターン生は、6月の韓国訪問の準備をしている。元慰安婦の女性に話を聞き、文章として残すためだ。
ニューヨーク州の決議案を提案したチャールズ・ラビン氏は「過去の過ちを思い出し、認識することによってのみ、将来の過ちを避けることができる」と述べた。同市のロングアイランドの選挙区では、韓国系の住民が急増している。
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