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皇軍(明治〜WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますたvol.14
1 名前:名無し三等兵@F世界:2007/03/06(火) 23:55:02 ID:4m2gyPIc0
自衛隊ではない日本の軍隊のスレッドです。
議論・SS投下・雑談 ご自由に。

ローテク兵器VS剣と魔法

戦国自衛隊のノリでいて新たなジャンルを開拓すべし
銃を手に、ファンタジー世界で生き残れ!

・sage推奨。 …必要ないけど。
・書きこむ前にリロードを。
・SS作者は投下前と投下後に開始・終了宣言を。
・SS投下中の発言は控えめ。
・支援は15レスに1回くらい。
・嵐は徹底放置。
・特定の作者専用スレは板として不可。
・以上を守らないものは…転移世界の大日本帝國に飛ばされます。 嘘です。

2 名前:名無し三等兵@F世界:2007/03/06(火) 23:56:03 ID:4m2gyPIc0
暫定ガイドライン(分家皇軍Ver.)

1.「皇軍がファンタジー世界に」とあるように、あくまで「大日本帝国の軍事組織」が「ファンタジー世界」に関わる話であること。
2.大日本帝国というからには、日本軍の組織・装備は実在もしくはその延長上にあるものに限る。
実在しないが延長上にあるものを出すには、そこに至る流れを説得力のある理由つけてハッタリかますこと。
3.核兵器(含む動力源)・大陸間弾道弾・人工衛星、巨大人型兵器・海底軍艦・飛行戦艦・陸上戦艦など当時の日本が配備するにはナンセンスなものは極力避ける。
しかし確信犯(誤用)的トンデモ架空戦記としてならまた別かも知れない。
4.あくまで「ファンタジー世界」の話であり、F世界側の設定は作者が自由に決めることが出来る。
ただしそれ単独でパワーバランスを大きく揺るがす存在(兵器・魔術・キャラクター等)は作らない事が望ましい。
5.日本・F世界双方の人間をきちんと描写する方が好ましい。
一方の主観という演出などであえて描写しないのはこの限りで無い。
6.戦略・戦術としてありえないものを避ける。例えば一人の帝国陸軍軍人が軍刀一本で100人斬りとか。
7.萌え・エログロはあくまで表現手段であり、目的ではない。安易に狙ったり、しつこく要求するのは流石にウザイので自粛すべき。
どうしてもそれ主体でやりたい場合は各専用スレでやる事。
8.叩き・煽り・嵐は徹底放置。嵐認定を受けた後に、かまった者も同罪とする。
9.SS作者は、抽出がしやすいようにトリップ装着を推奨。
なお、二次創作の可否については原SS作者の判断に一任とする。現在、SS「帝國召喚」では公序良俗を乱す作品でない限り問題なし。
10.感想書き込む人も節度や口調を考えるべし。作品が気に食わないなら透明あぼーん汁

3 名前:名無し三等兵@F世界:2007/03/06(火) 23:57:10 ID:4m2gyPIc0
過去スレ
01 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1116672903/
02 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1125644871/
03 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1130199183/
04 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1134983039/
05 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1139108925/
06 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1142596115/
07 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1145757330/
08 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1148549150/
09 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1151766955/
10 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1155287974/
11 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1157915129/
12 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1161151313/
13 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1167373446/

SS「帝國召喚」関係

作者くろべえ氏のサイト
KUROのどこかでみたような世界
ttp://www.geocities.jp/wrb429kmf065/

ここまで読んだ氏による公開済み設定まとめWiki
帝國資料館
ttp://www12.atwiki.jp/kokomadeyonda/pages/1.html

4 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/07(水) 00:00:10 ID:KCTjxJ8.0
スレ立て乙。

5 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/07(水) 00:49:03 ID:Rg95j0iI0
スレたておつおつ。

6 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/07(水) 09:44:51 ID:U1uACm8A0
 名無し三等兵様、スレ立て乙です。

>>988
 陸士長様、有難うございます。

>おお志村よ、弓にやられてしまうとは情けない。
 完全に敵を舐めてましたね。
 まあ最低でも直線距離で200mは離れてるし、高さも5m+高台分ですから無理も無いのですが。

>照準付きの九十二式重機関銃なら安全に狙い撃ち出来たでしょうね。
 劣化版二〇三高地の再現ですね。

>そう言えば、この世界でも故障した物体の左上約60度の角度でチョップを喰らわす修理法は誕生するんでしょうかね。
 さて、どうでしょう?
 そういえばこれ、何処から広まった伝説だろ? やはりTVのネタかな?

>>995
>志村伍長も騎士のみを狙うべきでした。
 狙い易い目標から狙っていきました。

>>996
>弾はありますけど肝心の小銃がどーなってるのか気になりますね。
 そんなに高くはありませんが、当たり所が悪かったり体重がかかれば壊れますからねえ。

>>997
名無し三等兵様、有難うございます。

>狙いました?
 それは秘密です(笑)

>軽く迷子になって、相手国の真後ろに出たら、双方びっくりだな(笑)。
 一応道路上を走っていますから、迷う心配はありません。
 意外と――あくまで『意外と』です――道路網が整備されているのですよ。祖父王が条約で他国とかにも整備させましたから。
 『全ての道はシュヴェリンに通ず』って感じで。

>>998
>しかし、見張り台には全く遮蔽物が無いんだろうか。狙われそうな場所ですが。
 組み立て式なので、ありません。筏の上に乗っかっている様なものです。
 まあ本当は矢防ぎ用の盾とか置くのですが、邪魔なので……

>>999
 999様、有難うございます。

>カナ姫自身はしばらくの間は恨んでるでしょうねぇ。
 大丈夫です。買収されましたから(笑)

7 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/08(木) 12:36:49 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 外伝1「カナ姫様の細腕繁盛記」

「志村――っ!」

 平野少尉は慌てて志村伍長の元に駆け寄る。
 ……が、志村伍長は既に事切れていた。恐らく即死だろう。

「鉄兜を被せていれば――」

 そう考えると、悔やんでも悔やみきれない。

 が、喩え鉄兜を被っていたとしても、やはり死は免れなかっただろう。
 これ程の衝撃を受ければ、何の支えも無い台の上――筏の上の様なものだ――から吹き飛ばされるのは目に見えている。
 頭部に大きな衝撃を受け、意識を失っている様な状態でこの高さから堕ちれば、まず助からない。
 第一、鉄兜を被っていれば、射手は当然狙う部位を変えていた筈だ。これ程の大矢、四肢ならばまだしも胴体に喰らえば――

 ……が、それでもそう思わずにはいられなかったのだ。
 『重くて邪魔ですし、この距離じゃあ連中の手は届きませんよ』
 ――そう志村伍長は笑って言ったあの時、命令してでも被せていれば、と。

「畜生! 畜生! 蛮族共が!!」

 こんな蛮地で、弓を扱う様な蛮族共に、栄光ある皇軍兵士か殺されるだと!?
 ……認めん、俺は断じて認めんぞ!!

「殺してやる……」

 平野少尉は落ちていた三八式歩兵銃を拾い、壊れていないことを確認すると、志村伍長の遺体から弾薬盒を外して身につけた。

8 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/08(木) 12:37:21 ID:U1uACm8A0


 神技――彼等の常識に従えば――ともいえる砲術を見せていた狙撃手を、やはり神技ともいえる弓術で討ち取ったことにより、メクレンブルク兵の士気は大いに上がった。彼等は勢い付いて攻め立てる。 ……それに対し、シュベリン兵にとっては物心両面に手痛い損害であり、士気の低下は避けられなかった。
 が、僅かとはいえ一息つけたのは大きい。敵の攻勢が僅かなりとも緩んだ隙に補給の弾薬を運び込めたし、多少なりとも銃の手入れが出来た。この間に、戦闘開始以来初めて水を飲むことができた兵も少なくない。志村伍長のやったことは決して無駄では無かったのである。
(逆を言えば、『それすらする暇がなかった』ということだ)


 勢い付いたメクレンブルク軍は攻勢を今まで以上に強め、迂回しようとキル・ゾーンに殺到した。
 多方向から銃弾が降り注ぎ、防盾の死角を突かれた少なからぬ兵が倒れるが、殺到する兵の数は徐々に増えていく。

 ドン!

 その時、今まで隠蔽されていた虎の子の大砲が火を噴いた。大重量の鉄球は、防盾ごと兵を吹き飛ばす。
 が、次弾装填まで時間がかかるため、聴覚・視覚的な衝撃のわりに戦果はほとんど挙げられない。
(シュヴェリンが保有する砲は青銅製の鋳造砲だ。前装式滑腔砲で、装填に時間がかかる上に射程も短い、弾は球形弾のみなので威力範囲が狭い、重量なので陣地転換が困難である――等の理由から、野戦では威嚇以上の役割は難しいだろう。加えて、初期収得費用もさることながら貴重な火薬(装薬)と鉄(弾)を大量に消費するため、滅多やたらと使えるものではない。このため、『最後の切り札』として隠蔽されていたのである。 ……まあ、本来は攻城用に購入したものだ。野戦で役立たずでも非難はできないだろう)

9 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/08(木) 12:37:52 ID:U1uACm8A0
 轟音と大重量弾の着弾による土煙に一瞬驚愕するメクレンブルク兵。
 が、彼等は何年も鍛え抜かれた常備兵である。直ぐに『張子の虎』と見抜いて前進を再開する。
 そして、遂に一部の部隊がキル・ゾーンを突破。『陣地の間隙』に到達した。




 シュヴェリン軍は、草原の中でもやや隆起した地――中央最高部でも5m程の高さに過ぎないが――に陣地を構えている。
 この周囲を一〜三重の『木槍付の柵』で囲んでいるのだが、『周囲を完全に一本の柵で囲んでいる』という訳では無い。所々に出入り口が造られているし、ある程度の長さの柵を組み合わせているので、隙間も多い。
 これはその内側を守る防壁も同様……いや、それ以上に隙間が多い。連結した『荷車』を防壁としているのだが、全周囲を覆える程の『荷車』も人員も無いため、『荷車』も人員も重要拠点に集中配備しているのだ。このため、重要拠点間を結ぶ空白地帯には、各々1台の『荷車』がトーチカの様にポツンと置かれ、数人の監視兵を配備しているに過ぎない。
 ……まあ、いざ敵が来襲すれば予備の『荷車』が急派され、防壁が展開されることになってはいるのだが。

 が、予備の『荷車』が展開するにはある程度の時間を必要とする為、早期の察知が不可欠である。加えて予備の『荷車』自体が少なく一箇所分しかない上、とても重要拠点並の防護は施せない。勿論、人員に関しては更に深刻である。
 固いが薄い防衛線と雀の涙の貯金(予備隊)――これがシュヴェリン軍の台所事情だった。

 敵が死角に到達した為、遂にシュヴェリン軍はなけなしの貯金を放出する。
 シュヴェリン軍本陣は予備隊の出撃を命じた。

10 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/08(木) 12:38:54 ID:U1uACm8A0


――――シュヴェリン軍本陣。

 本陣には、20頭程の竜達が集められていた。
 竜達は戦の空気と轟音に怯え、きゅるきゅると悲鳴を上げながら身を寄せあって震えている。ストレスで倒れてしまう竜すらいる程だ。何故この竜達が前線に立たされないかが良く判る光景だろう。竜と言えば凶暴なイメージがあるが、その大多数はこんなもの、『気は優しくて力持ち』……どころか犬に吼えられても驚く様な臆病な生き物である。戦竜になれる種など、極一握りに過ぎないのだ。
 この為、たとえ輸送用とはいえ、戦場に連れて行くには訓練が不可欠――そうでなければとても使い物にはならない――である。 ……まあ、訓練してもこのざまではあったが。


「予備隊、出ろ!」

 隊長の命令により、御者が嫌がる竜に『荷車』をつなげ、何とか動かそうと必死になる。
 竜は行きたくないと必死で突っ張ったが、嚮導犬共に吼えられて嫌々動き出す。残された竜達はそれを見て大きな悲鳴を上げるが、やはり嚮導犬に吠え立てられて大人しくなった。
 ……こうしてなんとか予備隊を送り出し、誰もがホッと一息ついた正にその時、一つのの報告がもたらされた。

「監視哨より緊急報告! 左陣の『間隙』に敵が現れました! 至急増援を、とのことです!」

 それは、正に最悪の報告であった。

11 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/08(木) 12:40:13 ID:U1uACm8A0
 SS投下終了。
 次位には、いい加減この戦争を終わらせたいものです。

12 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/08(木) 14:39:50 ID:VA69TXLM0
投下乙です

目には目を頭には頭を!
とかいっているうちに戦車が着たらあっという間に終わってしまうのかも
と思う一方で、数十キロ走っただけで3台中3台とも止まってしまった戦車
では、あまりたくさん砲撃する前に何か故障してしまうのではないかと心配
です。

13 名前:名無し三等兵@F世界:2007/03/08(木) 16:22:45 ID:Ft8EYybM0
くろべえさん、投下乙です。

黒色火薬の青銅砲(しかもただの球)じゃ威嚇・対物にしか使えませんねえ。

騎馬隊ならぬ、有馬隊はどのタイミングで来るかな。

この場面だと、うるさいエンジン音も逆にありがたいですね。敵も遠距離でこちらに気がつくでしょうし。

14 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/08(木) 21:24:07 ID:b2UVusg20
左陣が決壊寸前で、有馬隊がくると予想
なぜそんなにタイミングよく来ると思うのかって?
それは「お約束」だからに決まってるじゃないか!

>うるさいエンジン音も逆にありがたいですね。敵も遠距離でこちらに気がつくでしょうし

それはいくらなんでも無理がある
中世レベルでも、戦場はかなり五月蝿いものですよ
怒号や悲鳴、人馬の足音や金属のぶつかり合う音、その他もろもろでね
今回はそれ+鉄砲と大砲が加わってます
後方で余裕持って待機してる人ならともかく、前線ではかなり近距離まで来ない限り気づかないと思う

15 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/09(金) 00:01:41 ID:6IYjC78Q0
この時期すでに狙撃銃ってあったはずだけど全く配備されてなかったのかな?
それ使えばもそっと遠くから撃てるのにね

16 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/09(金) 00:53:08 ID:yCBE4nww0
当時の日本軍の狙撃銃にしたって、大量生産された三八式歩兵銃の中から、
比較的精度の高いモノを選び出して、職人のレベルにまで達した専門工が調整したのを使用してた訳で・・・

一丁一丁、鍛冶師が手作業で作るマスケット銃では、狙撃に使える程度の銃は余程幸運が無きゃ作れんでしょ。

17 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/09(金) 01:04:26 ID:Pusv3SwY0
>>15
まともに狙撃ができるようになったのは尖頭弾(椎の実型)になって、施条が打たれてから。
それ以前はいわゆる才賀銃のように長銃身で、十分に訓練をした上でも、
100m程度で『特定の誰か』を狙える程度で、
それ以上は『性能』の問題ではなく『才能』に準ずる形になった。

18 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/09(金) 01:17:08 ID:DFVLs1wM0
某板から丸々転載するところによると

ttp://mltr.e-city.tv/faq22.html#01783
【質問】
 戦国時代の火縄銃は、狙撃ができたのでしょうか?
 もしできた場合、弓矢で狙撃することができる距離よりも遠くを狙うことはできたのでしょうか?

 【回答】
 堺筒こと火縄銃の威力は、おおよそ現代の拳銃と同等です。
 具体的には数百メートルの殺傷距離を持っており、百メートル以内ならば狙撃も可能です、
 一般的な火縄銃は殺傷可能距離200メートル、50メートル以内では鎧の貫通も可能で、良い銃と射手ならある程度の狙撃も可能でした。
 また,これとは別に,長距離狙撃用の火縄銃も存在し、信玄を狙撃したと伝えられる信玄鉄砲(但しこれは伝説と目されています)は弾頭径20_(普通のは12_),殺傷距離500mで名手なら200m程度の狙撃が可能だったようです。
 一説には,武田信玄の死因は,狙撃された事による外傷か鉛中毒とも言われています。

この世界のマスケット銃は火縄銃レベルの精度でしたっけ?

19 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/09(金) 02:02:41 ID:7j9K2w6M0
シュヴェリンの装備をナポレオニックと表現してたから、火縄銃よりは発展してるんじゃないかな

20 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/09(金) 04:18:04 ID:QF9ZmqI20
志村伍長の戦死がキッカケで、帝國は当初の予定より派手にやる事になるんでしょうか?

21 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/09(金) 09:06:42 ID:U1uACm8A0
>>12
 12様、有難うございます。

>戦車が着たらあっという間に終わってしまう
 ですね。メクレンブルクに戦車を撃破する力はありませんし、その攻撃を防ぐ術もありませんから。
 ……あえて機動力は持ち出しません(笑)

>数十キロ走っただけで3台中3台とも止まってしまった戦車
>では、あまりたくさん砲撃する前に何か故障してしまうのではないかと心配
です。
 機関はアレですが、砲と砲弾は平気でしょう。多分。

>>13
 名無し三等兵様、有難うございます。

>黒色火薬の青銅砲(しかもただの球)じゃ威嚇・対物にしか使えませんねえ。
 それだけではありません。輸入モノで滅茶苦茶高い上に、1発撃つのに大金が要ります。再利用できる弾は兎も角、必要な装薬は小銃の比じゃあないですから。

>>14
>「お約束」
 伝統芸でもあります(笑)

>>15〜19
>フリントロック式/マッチロック式マスケットの差
 これ、色々な説がありますよね。
 くろべえとしては、(素人考えですが)構造上は同じで、着火方法が火打石か火縄かだけの違いだけですから、同じ材質・人(技術)で造り、同じ弾と火薬で発射すれば、性能――威力、射程、命中精度――は同じになると考えています。後はそれぞれの長所と短所をどう評価するか、でしょう。

 しかし、作中のシュヴェリンの小銃(フリントロック式)とメクレンブルクの小銃(マッチロック式)では、シュヴェリンの方が性能は上です。
 これは両国の銃を造った文明圏が異なり、シュヴェリンの小銃の方が材質と工作精度で上だからです。あと、シュヴェリンは輸入物の火薬を使用しており、これが性能を更に底上げしています。(この火薬は緊急輸入したものです)

>>20
>志村伍長の戦死がキッカケで、帝國は当初の予定より派手にやる事になるんでしょうか?
 平野少尉はキレたみたいですね。

22 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/10(土) 00:09:47 ID:VSkvh91s0
この世界の銃製造技術は、祖父王が開発したモノなのでしょうか?。

他国の銃技術は、祖父王がシュヴェリン富国強兵化の為に必要な初期資金を得る為に、
売却した銃器が元になってるとか。

23 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/10(土) 00:19:16 ID:aVSy9.WQ0
近距離なら大砲で散弾は使えませんかね。
門数が多くなさそうなので、焼け石に水といった感じはするけど。

24 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/10(土) 03:00:05 ID:JMaqfyPo0
>>前スレ973 陸士長どのありがとうございます

>早期停戦
ここまでやらかしたら望み薄…です

くろべえどの 投下乙です
青銅砲とはなかなか贅沢な輩ですな
それにしても弓による狙撃とは…腕前が異常なのはわかりますけど志村伍長油断しすぎ…

25 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/10(土) 03:14:37 ID:JMaqfyPo0
本編がなかなか纏まらないので小ネタでも投下しときますね

ユフ戦記 小ネタ

月刊 世界軍事 ―世界で一番売れている軍事情報誌―   昭和31年11月号
(10月16日発売、本土からの持ち出しを禁ず)

目次

総天然色写真集 
ついに捉えた、これが信濃型戦艦だ!  神州島沖で訓練中の信濃を激写
 9月就役の新艦艇群 
 遅々と進まぬ空母建造 川崎・神戸造船所から
 新型艦戦・雄風と烈風64型模擬空戦 
 神州島火力演習 

特集T 概算要求からみる帝國軍     海軍篇              12頁
 総記                                  12頁
 次期主力艦、500号艦級は計四隻要求の見込み 気になる主砲は?      14頁
 昭和38年に就役? 600号艦級の部内検討をスッパ抜く         20頁
 潜水艦の大型化は一段落                         24頁
 駆逐艦の大型化は天井知らず、次期水雷戦型・防空型共に主機関の選定終える 26頁
 新型重爆は見送り、連山・生産続行                    30頁

特集U 概算要求からみる帝國軍    陸軍篇               34頁
 総記                                  34頁
 噂は本当だった! 昭和32年から軍靴変更完全・オーダーメイドか?     38頁      
 新型戦車32年度は120両、気になる配備先は?             46頁
 空挺師団新設へ向け作業本格化 陸軍・専用輸送機の開発を目指す      50頁

26 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/10(土) 03:16:15 ID:JMaqfyPo0
本職に聞く、帝國軍の現状と展望                      56頁
 牟田口陸相、本誌記者に大いに語る
  〜陸軍の未来は暗い、正面戦力拡張のためには輜重の規模を抑制すべき〜  56頁 
 陸軍参謀本部・某参謀激白!
  〜4単位師団は重過ぎる、混成旅団の時代が来る〜            62頁
 山本GF新長官
  〜艦載機のジェット化と母艦の大型化は避けられない〜          65頁
 岡軍令部総長、戦艦の未来を語る
〜大型化の限界は近い1隻の20万トン級よりも2隻の8万トン級を〜       68頁

シリーズ連載                               72頁
 艦隊戦闘の基礎 第42回 艦隊防空陣形を考える             72頁
 陸上戦闘の基礎 第42回 これで貴方も塹壕堀の名人           78頁
 列強戦力チェック第22回 知られざる清華の魔術師たち、その実力は?   85頁
 聯隊訪問    第55回 本土を遠く離れて〜フェンダートの第62聯隊〜 90頁
 転移前は    第12回 アメリカの底力                96頁

小ネタ終了

27 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/10(土) 03:18:10 ID:JMaqfyPo0
あれ?右が揃わないのはなぜ?

28 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/10(土) 08:01:45 ID:BnoyqRGQ0
そりゃあ陸海軍の仲の悪さは折り紙つきですからw

29 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/10(土) 10:12:46 ID:U1uACm8A0
>>22
>この世界の銃製造技術は、祖父王が開発したモノなのでしょうか?。
 いえ、違います。元から大砲も小銃も存在します。
 ただ、先進文明圏の軍においても小銃は殆ど装備されていません。飛竜や戦竜、大砲に予算をとられているためです。 ……まあ、マスケット如きじゃあ防御結界に守られた戦竜の突撃を阻止できませんからねえ。
(社会的に好ましくない、ということもあります)

>>23
>散弾
 技術的問題から、あまり複雑な弾は……
 せいぜい緊急防御用に、石とか詰めてぶっ放す程度でしょうか?

>>24〜37
 猫じゃらし様、投稿乙です&有難うございます。

>なかなか贅沢
 奮発して攻城用に購入しました。歩兵だけじゃあ損害続出ですからねえ。

>あれ?右が揃わないのはなぜ?
 あー、自分もそれで苦労しとります。

>4単位師団は重過ぎる、混成旅団の時代が来る
 史実でも混成旅団を重宝してましたからねえ。

>これで貴方も塹壕堀の名人 
 海軍と落差ありすぎ……(笑)

30 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/10(土) 11:20:46 ID:KCTjxJ8.0
右揃えはAAの中でもかなり面倒な部類に入りますからなぁ。
MSPゴシックってプロポーショナルフォントですから、文字幅が一定じゃないんスよ。

シリーズ連載                                            72頁
 艦隊戦闘の基礎 第42回 艦隊防空陣形を考える               72頁
 陸上戦闘の基礎 第42回 これで貴方も塹壕堀の名人               78頁
 列強戦力チェック第22回 知られざる清華の魔術師たち、その実力は?  85頁
 聯隊訪問     第55回 本土を遠く離れて〜フェンダートの第62聯隊〜   90頁
 転移前は    第12回 アメリカの底力                       96頁

調整の仕様によってはこんな感じでそろえることは可能です

31 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/10(土) 13:21:19 ID:l9V4ccXk0
で,今度はMSゴシックなんかで見るとガタガタになるという,ステキな罠が

32 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/10(土) 13:48:18 ID:mKwYd0BE0
>猫じゃらし氏
アスキーアートエディタでググると幸せになれる

33 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/10(土) 17:28:24 ID:TEbBKebA0
>散弾
別に専用のショットシェルを作るわけではなく、砲弾代わりに銃弾を多数装填するだけで出来るんですよ。
ナポレオン戦争時の葡萄弾とかが有名ですが。
別に銃弾でなくてもよくって、それこそ石だろうが釘だろうが、火薬の爆発に耐える強度があり、殺傷力があれば何でもいいんですが。

34 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/10(土) 18:42:07 ID:5yhZbieg0
俗に言う「ラッパ銃」なんかそうっすね。

ここの戦争の仕方だったら、当時の迫撃砲持ち込むだけで勝てそうな気が・・・

35 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/10(土) 22:58:59 ID:GNpz2S0A0
迫撃砲とか擲弾筒とかもう大好きでたまらない

36 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/11(日) 01:23:10 ID:IvX.uGKQ0
>葡萄弾
ホーンブロワーやなんかでも出てくるアレですな。
有効射程がくそ短くなる代物ではありますが密集陣形とか横列陣に対しての効果はとんでもない物があったそうで。

37 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/11(日) 02:41:21 ID:Pusv3SwY0
散弾とはちょっと違いますが、帆船時代の砲撃法で「鎖を詰めて打つ」というのがあったそうです。
いわゆる散弾と違い、鎖がつながったまま広がるので帆に向けて打つと、
帆を大きく切り裂いたり、マストを傷つけたりして重宝したらしいです。
近距離しか飛ばないことを加味しても、敵の足を殺せるということで切り込み前によく使われたとか。

延焼を防ぐために海水を撒くことが多かった当時、火矢より確実に帆を破壊すると高評価でした。

38 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/11(日) 10:12:14 ID:U1uACm8A0
>>33
>別に専用のショットシェルを作るわけではなく、砲弾代わりに銃弾を多数装填するだけで出来るんですよ。
 あ、いえ……後で拾わなくちゃいけないので、それ(銃弾)。
 だから砲兵は嫌がって、わざわざ石とか数発分集めて用意してあるのですよ。
 石なら拾わなくて良いですから。

>>34
>当時の迫撃砲持ち込むだけで勝てそうな気が・・・
 鎌倉時代に突然火縄銃と集団戦術を持ち込んだ様なものですから。

>>35
>迫撃砲とか擲弾筒とかもう大好きでたまらない
 くろべえも好きですよ。
 そのうち二式迫撃砲を師団迫撃砲隊とかに装備したいなあ……

>>36〜37
 当時の海軍も大好きですよ。 ……それほど詳しくないですが。
 だから改訂版では、大幅に海軍の描写を増やしました。

39 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/11(日) 13:48:50 ID:IvX.uGKQ0
げふ。
そこまで貧乏くさいのかっ!<葡萄弾使用後の銃弾回収
つまり鎌倉時代に升じみた火縄銃を導入する代償にとてもお金が掛かってしまうという事ですか……。
石だとソフトスキン相手は変わらないけど、装甲、いや下手すると木造の壁相手でも貫通し損ねますし、なかなか辛いですなw

40 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/11(日) 15:49:20 ID:8RNT3GbA0
某漫画のおかげで葡萄弾は帽子で防げると錯覚してしまう

41 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/11(日) 22:38:33 ID:kPRnOX5o0
ちなみに火縄銃の弾丸は皿で防げるそうで・・・ヤクザの出入りとかで
火縄銃使われる事があったそうですが、その時は懐に平皿をいれたそうな。

42 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/12(月) 00:52:32 ID:6NQDzVG20
陶器は立派なセラミックだからな
火縄銃の時代にセラミック装甲とはなかなかやるな

43 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/12(月) 22:40:08 ID:TEbBKebA0
火縄銃の運動量って、拳銃と大差ないからなぁ。
その癖に口径でかいから、貫通力では劣るだろうし。

44 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/12(月) 22:41:12 ID:U1uACm8A0
>そこまで貧乏くさいのかっ!

 鉛だってタダじゃあありません。現在の感覚ではちょっとアレですが、生産能力自体がたかがしれてますから金属は貴重品なのですよ、はい。
(終戦直後の米軍の薬莢拾いよりも……)

 金属だけじゃあありません。全ての生産力が少ないため、布だってボロボロになって雑巾になるまで利用しまくる超リサイクル社会です。
 だから武器だって当然再利用です。矢は勿論、死体から武具を回収して補修・再利用します。
 ……そんな訳で、貴重な金属(弾丸は矢より回収率が低い)と再利用不能の火薬とを消費する『銃』は、フランケルの人間にとっては実に贅沢な兵器なのです。
(未だに弓矢が重んじられてるのは、こういった側面もあるのですよ)

45 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/12(月) 23:35:11 ID:5wz5FcBo0
あと日本の戦国時代の火縄銃とか一丁一丁別々の職工が作るので、
銃の口径にもバラつきが有り・・・ぶっちゃけ弾の大きさも銃によってマチマチ。
だから銃一丁一丁にその銃専用の弾型が付属。
手持ちの弾を使い切ったら、その銃の射手が鉛溶かして手作りで補給してたそう。

こういった専門技能や知識が射手には必要だから、最初火縄銃が戦さで使われ始めた時、
銃だけでなく、それが扱える人間そのものを大勢集めるのが難しかったそうな。

46 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 04:49:01 ID:csj9n5UE0
>>28さま
仲の良い陸海軍なんて帝國軍じゃないと思ってしまいます

くろべえどの

>金属は貴重品
列強とそれ以外でかなり差が出そうですね
>>29
ちなみに猫じゃらし世界の枢軸国は高価な青銅砲は諦めてます
>海軍と落差ありすぎ……(笑)
あー11月号だけで他の回には読者受けするような記事も書いてるはずです。
別に陸軍が嫌いとかじゃなく…海軍のほうが好きなだけです

>>30さま
>>31さま
>>32さま
ご教授多謝であります。
次からはもう少し見栄えの良いものを出せるはずです

47 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 04:52:08 ID:csj9n5UE0
では投下開始です…なんだか自分で書いておいて帝國が本物の莫迦に思えてきました

ユフ戦記 41  血染めの島 3


信濃級戦艦の続報!
一番艦信濃は8月に聯合艦隊に引き渡されて以来猛訓練に励んでいるがその詳細は軍機に包まれており、本土以外では帝國人に対してもその存在が知らされていない。
編集部としては読者諸兄のご要望にお応えするためかなり危険な橋を渡って取材を重ねてきたので、判明した範囲でご質問にお答えしよう。

まず11月号のおさらいであるが、写真を見れば判る様に主砲は3×3の9門であり大和級以来のスタイルを崩していない。高千穂級の四連装砲塔はやはり例外的なものだったようだ。
そして主機関であるが、高千穂級のようにガスタービン機関と重油専焼缶の二本煙突を設けるのではなく一本化されていることから恐らく重油専焼缶であろう。吾妻級重巡に搭載された艦本式をデチューンし、蒸気圧は45キロ、蒸気温は470度程度に抑えているものが搭載されているものと考えられる。ここまでは先月号で伝えたものであった。

48 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 04:52:43 ID:csj9n5UE0
本誌が空撮を行った結果両用砲は高千穂級と同じ七式65口径5インチの連装砲(C型)であることが判明している。
これの寸法はわかっているから信濃を真上から撮影した写真とあわせれば艦の大きさが判ると言うわけだ。
(なんと海軍は信濃と他の艦の対比を恐れて並べて停泊するようなことはしないのだ。ちなみに両用砲の砲煙は本誌取材班への警告射撃だ)
写真の結果、全長は290〜300メートル、全幅は42〜43メートルぐらいか?基準排水量は8万と推定する。
…おかしいな、議会には6万5千トンの戦艦ということで予算を請求していた筈なんだが?
それはさておき主砲の口径だが、8万トンで51サンチは些か厳しいだろうこれも空撮からの砲塔のサイズと照らして長砲身46サンチとみた。

ここで読者からのお便りを紹介しよう。長崎県在住の14歳の子供からだ。
『もし主砲が46サンチだとして主砲弾は大和級と同じものが使用されるのでしょうか』
これは非常に難しい質問だが誰もが気になるところだ。
この件を艦本に問い合わせた新人記者は1週間仄暗い海軍省の地下室にお世話になったこともあり、ここから先は本誌独自の取材結果だ。

49 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 04:53:34 ID:csj9n5UE0
帝國海軍はどうやら特定の距離ではなく全砲戦距離で満遍なく強さを発揮する砲を好むと言う性癖を持ち合わせているようで、ここから考えれば極端な軽量高初速、大重量低初速の砲はありえないだろう。
また大和級の主砲換装が検討されているという未確認情報もあり、これを砲弾補給の一本化のためと捉えれば現段階では大和級と信濃級の主砲弾は異なる可能性が高い。

次はこれも子供から、北海道在住の11歳、ペンネーム未来の砲術長からのお便りだ。
『僕は戦艦の砲術長になるため日夜勉学に励んで兵学校を目指しています。そこで気になるのですが装填装置は……



背後からの足音を拾い女は忌々しげに本を閉じる。
真偽はともかく本国には齎されることの無い新たな情報、それが帝國本土では簡単に手に入る。
それが持ち帰れない理由は、潜入した工作員の生還率が低いことが挙げられる。
はっきりいって、彼女のような皇国の工作員が帝國本土に潜入できた例はあっても五体満足で帰還した者は一人も居ない。

午後4時22分、予定時間を超過している。

50 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 04:54:15 ID:csj9n5UE0
「20分遅刻よ、サイン。
それなりに説得力のある言い訳を期待しているわ」

「申し訳ありませんメルズさま、ただ気になる情報があります」

大気振動を抑制する結界のなかサインとよばれた若い男が小声で応える。
傍目から見れば帝國見学に来た大陸の富豪夫妻とでも見えるのだろう、事実彼らは厳しい審査を潜り抜け帝國本土の土を踏むことを許された大陸貴族に成りすましている。

「どうした」

メルズとよばれた女が先を促す。
帝國人から見れば20代前半というところだが事実は全くの逆だ。
彼女の遠い青春時代、そのときに皇国貴族との間にもうけた双子の男児は既に彼女の手を離れている。
一人は魔力に乏しく人間並みの寿命しか持ち合わせなかったが子宝に恵まれ武卿の当主として天寿を全うし、彼の曾孫の一人は水軍大提督にまで登りつめている。
もう一人は彼女の魔術的才能を受け継いだのか、120年ほどかけて皇室魔導院の第4局副局長にまで登りつめている。
彼女自身はその後に迎えた四度の繁殖期を活用することなくひたすら職務に精を出している。
新たな子に魔力を分け与えるよりも自身が栄達するため、という見方が一般的だが二度と会うことの無い人間の貧乏貴族に操を立てている、と言う見方もあるが真相はわからない。

51 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 04:55:02 ID:csj9n5UE0
「一つ目、京都に潜伏していたオウスが消息を絶ちました」

オウスは(といっても上司である彼女にも真名はわからないのだが)帝國政府の不自然な金の使い方を調査していた若者だ。
それが神州島特別開発推進計画という謎の言葉を探っている最中姿を消したと言うのだ。

「いつだ?」

「一昨日の夜、薄汚れた長耳どもが河原町辺りを闊歩していた日のことです」

「二つ目は」

メルズの脳裡からはオウスに関わる事象が遠ざけられた。
彼女は神州島特別開発推進計画という物自体は重要度の高い計画ではなく、工作員を炙り出すために帝國とダークエルフが仕掛けた罠ではないか、そう考え始めている。

「二つ目は…機密度は高くありませんが帝國人以外にはあまり知られていない話です」

メルズは峰に火をつけて先を促す。
タバコ自体は嫌いではないが帝國製は好きになれない。
とはいえ帝國が輸入タバコに高額の関税をかけている以上帝國製を吸うしかない。工作資金も無駄にするわけには行かないのだ。

「帝國が我々から買い取っているサムイム州やフツクル王国の土には帝國の戦争遂行に不可欠な重灰銀や不錆銀が含まれているようです。(彼らはタングステンやクロムと呼んでいますが)
彼らは属領で採って精錬するよりも我々から買い取って精錬するほうが安上がりであると考えているようで」

「つまり我々は帝國のために貴重な戦争資源を提供していたというわけか」

それも気付かないうちに、我々もおめでたいことだ。

52 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 04:55:33 ID:csj9n5UE0
「まことに。同様の話がユウジルドでもありますが…ここから先の話は裏が取れていません。
どうやら帝國人はブーランジェ地方の黒い森に並々ならぬ関心を持っているようです。
なんでも今後石油に頼らない産業基盤が出来上がるとか。
これの裏取りも神州島特別開発推進計画という壁に阻まれています」

黒い森とは通称死の杜とも呼ばれ、魔物が棲んでいるわけではなく森の魔力も感じられないのに迷い込んだものを蝕むという奇怪な場所だ。
ともあれ神州島特別開発推進計画に関わる情報は欺瞞情報の可能性が高い、という判断基準を構築しつつある彼女にとってさして心動かされる話ではない。
上司のそのような心中を察してかサインは進言する。

「出すぎたことを言うようですがメルズ様は帝國の防諜体制を過大評価しているのではありませんか。
侮ることも重大な過ちに繋がりますが過大評価も同様です」

まだこの仕事について50年程度の若造の言葉を聞きメルズは苦笑しつつ問いを発する。

「サイン君、右手の物についてどれだけの知識を持ち合わせている?」

メルズは丘の下に見える建造物群を指す。

53 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 04:57:03 ID:csj9n5UE0
「帝國海軍大神工廠、転移前にD計画と共に約25億円、現在の貨幣価値にして100億円以上の巨費を投じて建設された九州最大の海軍工廠にして世界最大級の造艦施設でもあります。
転移の影響から建設は遅れましたが昭和22年から帝国全体の艦艇建造能力を押し上げるための六・十計画の一環として160億円余りを投じ12万トン級艦艇を建造可能な甲号船渠を三つ、5万トン級艦艇を建造可能な乙号船渠を二つ持つ工廠へと威容を一新しました」

サインは帝國で仕入れた情報を元に全く教科書どおりの答を返す。

「その通り、サイン君新時代の戦艦を建造可能ならしむために拡張したというのが帝國海軍の言い分だがそれを鵜呑みにするのか?
いいか、帝國海軍がそこまで巨費を投じた大神工廠で建造した戦艦は高千穂級の乗鞍と浅間級の白馬、この二隻だけだ。
それも両者とも二号船渠と四号船渠を使ってだ。
甲号船渠で建造された帝國海軍の艦艇は一隻も無い、民間向けの油槽船を何隻か建造した程度だ。
生産性の無い軍艦と言うものを建造するためにそれだけの金を投じるなどおかしいと思わないか?」

そういわれればサインも疑問に思わないでもない。
帝國のような巨大な国家であればそれなりにまともな振る舞いをする筈。
それが帝國内では使い勝手の悪い戦艦建造計画ばかりが報じられている。

54 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 04:58:51 ID:csj9n5UE0
「艦隊の建造計画そのものが欺瞞情報と解釈しているのですか」

「そこまでいうわけではないが、戦艦というものはその戦術的な価値以上に国家の能力を示すものであり戦争を抑止すると言う効果も持ち合わせている。
それなのに対外的に新造戦艦の存在を秘匿するというのはどうも合理的な理由を欠いている様に思える、帝國国内でこれだけ外部との情報格差が存在するのもおかしい。
この雑誌の写真を見てみろ」

そういってメイズが手渡したのは世界軍事の12月号だった。
その信濃(これほどの巨艦というわりに情報がこれまで漏れていないのも不思議だが)が写っている写真をみてサインが訝しがる。

「本来の姿からは些か変容して、少なくとも魔術的には存在しない筈の部分が写されています」

「私は既存の艦艇をコラージュしたものと疑っている、あるいは実在したとしてもそこまで巨大な艦ではないだろう、帝國なら官民一体の防諜活動くらい成し遂げても不思議ではない」

「なるほど、賢明な帝國人ならこんな艦を造るよりも空母を建造しそうなものです。
危うく私も欺瞞情報を鵜呑みにするところでした」

55 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 04:59:34 ID:csj9n5UE0
流石に帝國もそこまで軍備に金は使わないだろう、戦艦とは特殊な材料と高度な技術を要求される代物だ。
浅間、高千穂と八隻も戦艦を造っておきながらさらに巨大な信濃級、500号艦級、そして600号艦級を各四隻建造するという10・8・4計画など常軌を逸しているし、彼女達には全長380メートル、上部幅55メートル、深さ18メートルの巨大な三号船渠で建造できぬ戦艦など冗談としか思えない。
その大部分は存在しない計画であろう。

「ともかく、これ以上帝國にいても危険ばかりで得られるものはない。
最重要の情報は手に入れた、後は本国に知らせるだけだ」

「では?」

「そうだ本日1300第一航空艦隊が呉を後にした、一隻も欠けることなく。
フェンダートあたりを空襲されて慌てふためいたのだろうよ」

「あとは如何に大陸に抜けるかですね。
それも可及的速やかに、情報と女はとれたてが一番ですから」

魔道通信機の類は監視が厳しく帝國に持ち込めないが、口に出してからサインは失態に気付いた。
少なくとも齢百八十に達する吸血鬼の前で発してよい言葉ではないが、彼女は聞き流すことにする。
痛めつけるのは皇国に帰ってからでよい。

56 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 05:00:58 ID:csj9n5UE0
レムリアの旧王都付近に通信機を置いてある。
明朝1000の福岡発帝國航空レムリア行225便を手配してある、この男に成りすませ。
九州北部の有力者御曹司とその妻、新婚旅行はガルム大陸北東部2ヶ月の旅だそうだ」

筑豊の炭鉱王として名を馳せた麻生氏の一人だ、新婚旅行先で失踪とは使い古した悲劇だが他に方法は無い。
潜入した際に貴族を殺したことはそろそろ発覚したと考えたほうがよい。

「我々のほかは?」

「帝國本土で生き残ったのは私と君だけだ。
今夜半摩り替わる、血を提供していただいた後死体は処理しておけ」

彼女たちが帝國本土から生還した初めての吸血種であるが、帝國のダークエルフが情報戦において失態を演じるように皇国の吸血種も例外ではない。
情報は収集よりも選別が難儀あるという近代戦の原則に反しダークエルフも吸血種も人間と同様に見たいものだけを見る、という習性からは逃れられない。
メルズは後に小内海に姿を現した信濃級を見てこの日の事をたびたび後悔するのだが、それはもう少し先の事である。
とあれ彼女たちは一航艦の出撃日時を伝えると言う点に関しては完璧に任務を果たした、その点は評価されるべきだろう。

57 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/13(火) 05:04:44 ID:csj9n5UE0
投下終了です。

あと>>56の一番頭に「をつけて脳内変換してください。
>>26の山本長官も山口長官の間違いです。

>>26の岡軍令部長は海兵40期の岡です

58 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/13(火) 11:56:28 ID:wtaL0zvk0
猫じゃらし殿、投稿乙です。
いやー、激しい情報戦ですね。
帝國は軍事情報を秘匿しているので列強も必要以上に恐れて軍事力を増強し、
それに刺激されて帝國も・・・軍オタには天国&納税者には
地獄な世界(冷戦時の米ソレベルの軍事費)になりそうですな。
>牟田口陸相〜陸軍の未来は暗い、正面戦力拡張のためには輜重の規模を抑制すべき〜
見える、俺には見えるんだよう!栄光有る帝國陸軍の屍の山が。痩せ衰えた姿が。
>筑豊の炭鉱王として名を馳せた麻生氏の一人
この方はもしやローゼン太郎氏ですか?

59 名前:長崎県人:2007/03/14(水) 00:00:58 ID:2MxH4A12O
猫じゃらしさん投下乙


ただ、真名というフレーズだけみて、真名を当てちゃったら絶対服従でエロエローn(ry射殺されますた


しかし、信濃はじめ、しょぼい相手では勤まりませんな。なにが殴りあいのお相手を勤めるのか、今からwktkです。



チラシの裏
吸血鬼といえば、お嬢様にたどり着く前にメイド長にさっくりされたりしたあとなのでけっこうぬっ殺されるし、妹様もキツい・・・時計までしかいけない・・・ああ・・・弾幕萌え。せめてメイド隊だけでも帝國海軍の対空兵器にした(ry

60 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/14(水) 02:20:51 ID:HBboXetQ0
猫じゃらしさん投下乙です。

>両用砲の砲煙は本誌取材班への警告射撃
笑いましたw これは褒めるべきなんでしょうかね?

61 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/14(水) 09:05:59 ID:U1uACm8A0
 猫じゃらし様、投稿乙です。
 熾烈な諜報戦ですなあ。きっと帝國側も同様のことをやっているのでしょうね。
 入国手段が限られている帝國のほうが有利そうではありますが、その代わり資源運搬とかが大変だから痛し痒しだろうなあ……

62 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/14(水) 10:46:55 ID:vUoWGfao0
>>58
>この方はもしやローゼン太郎氏ですか?

おじいちゃま(吉田茂)が現役だから、お父上かと。
……はっ、それだと俺達の(゜凵K)が存在しなくなるジャマイカ

63 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/14(水) 11:57:30 ID:pXPMku7o0
の一人、ということだから親族かもしれない。

64 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/14(水) 20:37:17 ID:Gm004huE0
ローゼン太郎氏が生まれたのが昭和15年だから、たぶん違うと思いますが、親族に害が及ぶなんて
吉田「バカヤロー」茂も、かっこいいセリフの仇を変なところでとられていますね

65 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/14(水) 23:19:26 ID:W/xkMboY0
>>58さま ありがとうございます

>いやー、激しい情報戦ですね
吸血種達は完全に近い形で帝國の建艦計画をあてているのですが、あまりにもぶっ飛んだ内容なので欺瞞情報と捉えてしまっているのです

>軍オタには天国&納税者には地獄な世界
このままいけば転移後の経済成長を食いつぶしてしまいますので、それを止めるのが山本の狙いの一つでもあります

>見える、俺には見えるんだよう!栄光有る帝國陸軍の屍の山が。痩せ衰えた姿が。
…辻共々早く更迭したいなあ

>>59 長崎県人氏ありがとうございます

>しかし、信濃はじめ、しょぼい相手では勤まりませんな。なにが殴りあいのお相手を勤めるのか、今からwktkです。
戦艦対策はユウジルドのお仕事です


>>60さま ありがとうございます

>笑いましたw これは褒めるべきなんでしょうかね?
現実でもこれぐらいしてもらいたいものです、褒めてやってください

>>61 くろべえどのありがとうございます

>熾烈な諜報戦ですなあ
正面戦力で劣る以上情報戦で勝つしかありません。
無論帝國もやっているのですが情報の伝達と分析が苦手なようで

>>58
>>62
>>63
>>64さま

>ローゼン太郎氏
ええっと、麻生一族のうちの誰かで特定のモデルがいるわけではありません。
史実より麻生家の子供が多い可能性もありますし
ぶっちゃけ大神工廠の近く、吉田の縁戚、金持ちの三要件を満たしていれば誰でも良かったんです

66 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/14(水) 23:36:46 ID:W/xkMboY0
41話の補足

「なるほど、賢明な帝國人ならこんな艦を造るよりも空母を建造しそうなものです。
危うく私も欺瞞情報を鵜呑みにするところでした」
という台詞の後に
「新戦艦建造のために大神の三号船渠を拡大するなどという情報もあるがそれも眉唾ものだ、恐らく巨大油槽船のためだろうよ」

という台詞が入る予定だったのですが、飛ばしてしまいました。

あとメルズは疑っていますが神州島特別開発推進計画は実在します(19話にちょろっと出しています)

500号艦級は13話で出てきた戦艦のことです
1番艦が呉造船ドックで起工済み、2番艦も横須賀7号船渠(史実には無い新設船渠)で起工済み
3,4番艦は大神工廠の1,5番船渠で起工予定

600号艦級(未だ基本設計も未了)の一番艦は大神の3号船渠で起工予定です

67 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/14(水) 23:49:40 ID:0fc/yQpg0
吸血種達というか、F世界の常識では計り知れない規模の巨艦ですからねえ。
エジプトのピラミッドの威容を見たヘロドトスや現代人が、
「これは膨大な数の奴隷を使い潰して作ったに違いない」とか、
「これは宇宙人の技術で建造されたに違いない」なんて思うようなものでしょうね。

68 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/15(木) 07:14:27 ID:oVuuhHNoO
>>67
俺は宇宙人説を信じてる

69 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/15(木) 08:32:44 ID:njlPJyHw0
何万という宇宙人奴隷を使い潰したんだよね、古代エジプト人は

70 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/15(木) 08:34:52 ID:Elo1EHAs0
>>67
新説「F世界人が作った」

71 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/15(木) 13:39:24 ID:VzfmUw1w0
それだ!!

72 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/15(木) 21:40:39 ID:l9V4ccXk0
>>70
F世界人はネ申なのか!?

73 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 00:05:46 ID:XOJ4sZY60
いや地底人だね

74 名前:陸士長:2007/03/16(金) 00:48:12 ID:MUPKyT7k0
今、くろべえさん世界の日本での映画考えてるんですけど…。
ダークエルフ女優(精鋭)が生身のスタントで繰り広げるガンアクション活劇。
某大佐を川○探検隊風味の冒険隊が捜索するスペクタクル映画。
全長80mの月見海老が帝都上陸、帝都タワーを破壊!

…どれも香ばしいなぁ。

75 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 00:50:00 ID:/0GFVvK60
逆に考えるんだ。
ピラミッドは最初から各地にあり、エジプトのだけが現存していると考えるんだ。

76 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 02:26:08 ID:IvX.uGKQ0
「ピラミッド?ああ、アレね、いや普通持ってるっしょ?」
「まともな文明ならない方がおかしいですよ」
「エー?ピラミッドもないの?ピラミッド無しが許されるのは打製石器文明までだよねーキャハハハハハ!」
こういうことですか

77 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 07:41:32 ID:oVuuhHNoO
>>74
獣人戦隊シリーズとか出来そうですなw
ダークエルフ起用の映画は風潮からしてお色気は無しだろうし、
某大佐の方は撮影中に本物の怪物に遭遇する可能性が……

78 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 09:28:03 ID:oZkgakJE0
某黄門様漫遊記では、ダークエルフなオネェーサンがゲイシャガールになったり、
レオタードみたいな忍者服でアクションしたり、お風呂シーンを演じたりするのですな!。

79 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 15:37:06 ID:KCTjxJ8.0
うっかりするのは誰だ

80 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 18:15:17 ID:JmGOSfF20
それは獣人のポジション

81 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 19:26:02 ID:X9DoCVGA0
うっかりエルフも捨てがたい・・・。

82 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 21:19:15 ID:2ErGL2Os0
うっかりエルフに一票
マジメなイメージのエルフがドジやるってとこに萌え( *´д`)ハァーン

83 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 21:59:43 ID:.DSjMHyg0
うっかりは食いしん坊である必要もあるからなあ。
某男爵でどうだ。

84 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/16(金) 23:19:47 ID:njlPJyHw0
うっかりしすぎだろ>男爵
飛猿は獣人で

85 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/17(土) 02:09:05 ID:XOJ4sZY60
思ったんですけくろべえ氏の地球の赤道直径って何万kmになるんでつかね?
地図の見立てでが6万km以上はあるように見えるんですがどうなんでしょう
それによってはくだらない派生設定が出てきたりするんですがねwww

86 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/17(土) 02:24:31 ID:P9tD6QiI0
確か表面積が地球の約2倍(表面重力は約1G)なので、直径は約√2倍で18000km程度でしょう。

87 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/17(土) 03:24:38 ID:XOJ4sZY60
ということは赤道全周で5万6千km程になるって事か

88 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/17(土) 10:48:29 ID:KU8QS5YM0
それだけでかい惑星なら、鉱物資源や石油等も地球より多いかも。
そのかわり海上輸送は果てしなく遠くいが。

89 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/17(土) 13:14:13 ID:2z6On1pU0
赤道直径やらなんやらに関しては、既に語りつくされた感があるのだが・・・
地球より大きいのに、何故重力は一緒なのか?
水平線距離が長くなることによる海戦への影響は?
自転周期とそれに伴う諸々の影響(1日の時間や砲弾の弾道等)は?
海と陸地の関係(気象と気候等)は?
他にもいろいろね

90 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/17(土) 17:25:29 ID:MuBBChYA0
答え

ファンタジー世界だから


ま、そこを摺り合わせるのが醍醐味なんだろうけどねw

91 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/17(土) 19:12:19 ID:HL2DXr2U0
「皇軍(明治〜WW2の日本軍)がファンタジー世界に召喚されますた」
タイトル百回読み返せよ。

92 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/17(土) 19:29:55 ID:t/vT.Fro0
>>82-83
某セガ製RPGに
敵の襲撃で昏倒したにも関わらず
「いつの間にか寝ちゃったみたい」などと寝ぼけ
ブタ一頭をまるまる平らげるうっかり食いしん坊エルフがいるぞ
そして巨乳

93 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/17(土) 20:52:00 ID:P9tD6QiI0
自転周期は約24時間ということだったと思う。
第1宇宙速度、第2宇宙速度が地球より大きくなるという話もありました。

おおむね話は出尽くしたとは思うのだけど、
何か新しい話のネタがあれば面白いですね。

94 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/18(日) 02:17:03 ID:XOJ4sZY60
日付変更線の問題とか地図から見ると
日ノ本の国じゃなくなってるしwww
今思ったのだがこの感じで見ると今の日本列島って
南半球ですね四季無くなるかな?

それに深く考えると海流が考え辛いwww
そこでやっつけの海流地図をなる物を作ってみた
汚いのは仕方ないがw恐らくこんな感じになる?
日本近くを流れる強い海流が無いつーか大陸が無いから
改めて見ると親潮消滅と共に旬の魚は絶望的
清華王国辺りがえらく漁獲高だな
ttp://up2.viploader.net/pic/src/viploader437760.jpg

95 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/18(日) 03:07:30 ID:2hCm.9YM0
赤道近くならともかく、南半球に四季が無いってどーゆう理屈だ?

96 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/18(日) 03:13:01 ID:Rg95j0iI0
マナじゃ! マナの仕業じゃ!

97 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/18(日) 03:58:45 ID:XOJ4sZY60
失礼、雪が降らない→日本の由緒正しき四季が無くなるってこと

98 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/18(日) 04:29:19 ID:2hCm.9YM0
もしかしてオーストラリアとか南米には雪が降らないとか思ってないかい?

99 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/18(日) 09:57:49 ID:P9tD6QiI0
最初の設定だと、ちょうど神州大陸あたりを赤道が通ってたけど、マナの影響で転移前と気候が変わらないということだった。
今の地図のほうがまだ矛盾は少ない。
日本列島と神州大陸の部分は上下逆さまだと更に良かったんだけど。

>>94
大内海周囲の陸地分布を見るに、極地からの深層海流は無いかも。

100 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/18(日) 11:29:19 ID:U1uACm8A0
 どうも、お久し振りです。
 現在停滞していた二次の梃入れをしているため、続きはもう少し時間がかかりそうです。
 申し訳ない……と、ただ言うだけもアレですので、試作で良ければこれ読んで下さい

 ttp://www.geocities.jp/wrb429kmf065/ss.html

 上は改訂版帝國召喚のパイロット版の冒頭で、お世話になった方々へのお礼用として先行公開していたものです。


>地図
 世界地理に関しては、話の都合上からこうなりました。
 よって、科学的要素はほとんど……いや、まったくと言ってよいほど考慮されておりません。
 『もしかして戦艦の弾道データ取り直しか?』とも考えましたが、まあせっかくのファンタジー世界ですので趣味で作ったのですよ。
 ですから科学的な矛盾点には事欠かないでしょう(笑)
 ……なんとか屁理屈つけて辻褄合わせようとは考えているんですけどね。
 どうしても無理な問題に関しては『マナじゃ! マナの仕業じゃ! 』で誤魔化すつもりです。
 その場合、どうか『これだからファンタジーはっ!!』と騙されてやって下さい。

 あと改訂版では、地図は以下の様になります。
 ttp://www.geocities.jp/wrb429kmf065/itadakimono/18-gure/gure01.htm

 こうしないと大湊や札幌が呉みたいになっちゃうので……
 あと、何気にタブリンがホラズムの位置にあるのは、両者の話を合併させるためです。

101 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/18(日) 19:07:48 ID:ASp3xMXQ0
改訂版でもやっぱり南半球なんですね。
……いっそ改定にあわせて帝國の位置を北半球にしてしまえばとか考えるのですが。

102 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/18(日) 21:39:36 ID:P9tD6QiI0
公開乙です。
漁業紛争から戦争というのがリアルですね。

>もしかして戦艦の弾道データ取り直しか?
大砲の弾道データは取り直し、弾道表も作り直し、
機械式弾道計算機の具体的な構造は知らないけども、固定パラメータが変わると改修かな。
ただ、とりあえずは弾着修正でカバーできそうな気はします。欧米列強の海軍と戦うわけじゃないですから。

103 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/19(月) 12:25:44 ID:N2tdnuNg0
だから地図をひっくり返して南に赤道を持ってくればすむことじゃん。
そして神州大陸の東に日本を持ってくれば
ほぼ今と同じ気候が再現される。

104 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/20(火) 00:00:44 ID:l9V4ccXk0
は?

今の日本の気候を再現するのなら,アジア大陸(特にヒマラヤ山脈)が必要だぞ

105 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/20(火) 01:36:28 ID:qZ/SFoVk0
>>67さま
理解を示してくれるのはでかいことは良いことだ、を地で行く共産主義者ぐらいですかね。

それでは投下開始します

106 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/20(火) 01:36:58 ID:qZ/SFoVk0
ユフ戦記 42  血染めの島 4

帝國標準時12月8日(新皇暦訪雪月十一日)

寒風の中直上から陽光に照らされるセイロッシュの艦上では皇国の300年近い初等教育普及の、より正確に言うならば歴史教育の真価が発揮されようとしている。

「古の大皇国が滅び去った後、大地には幾多の国が入り乱れ争いを繰り広げ、地には魔獣が跋扈し空からは翼竜が襲い掛かり人の住む場は侵され続けた。
田畑は荒廃し川は血で染まり疫病は蔓延し我々の祖は衣食に事欠き当ても無く大地を彷徨い、それを省みぬ短慮な領主や宗教家たちが目先の利益にとらわれ戦を繰り返した挙句、蛮族の侵攻という民難を迎えた。
そのような窮状をみかねて五人の王が立ち上がり、魔導の力を従え吾等の祖を怪しげな神を唱える者、そして各地の有象無象の領主達を打ち倒したのは諸君も知るところだろう。

諸君、無数の領主を駆逐し日々の糧に事欠かぬようにして下さったのは誰ぞ。
諸君、寄進を募り邪な教えにより学問の道を衰退させた邪法の輩を放逐して下さったのは誰ぞ。
諸君、危難に際し魔導の力を賜りわれらに救いの手を差し伸べてくださったのは誰ぞ。
諸君、列強を圧倒する富力を大陸に齎し世界に燦然と輝く大国を現出たのは誰ぞ。

今諸君の力なくば皇国は八百万の神によって管掌されるであろう。
機械文明によって魔道の力は退廃するであろう。

五王の霊とその正当なる後継者に恩を返すときが来たのだ。

殺せ、狂信者どもを殺せ。
皇国が仰ぎ見るのは八百万の神ではなく皇主陛下に他ならないのだ」

107 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/20(火) 01:37:29 ID:qZ/SFoVk0
最先任下士官らしき中年の男が兵士たちを鼓舞し、その熱気は伝染病のように彼らに波及する。
熱病にうなされたような振る舞いを見せるも、彼の言っていることはそう的外れでもない。
中間共同体の打破による中央集権体制と皇国商人が世界各地から齎す富、そして魔導師の派遣や衣食の保障による民衆の支持。
これらが皇主の権力の源であり、その実態がどういったものであれ八百万の神に守護された帝國の侵攻は宗教組織による搾取という仄暗い過去を皇国人の脳裡に想起させるものなのだ。

セイロッシュだけではなく、上陸を間近に控えた船の上では同じような光景が繰り広げられている。
海上には無数の機動艇が群をなし浜辺に近づいてゆき、陸上では先遣隊が防御陣地を拵えている。
皇国地軍南遣団所属第九兵団長・サッカス提督は己の眼に映る光景に不満は無い。
少なくとも現時点では。

「兵らの気概に背くようで気が引けるが本格的な戦闘は明日以降になりそうだな。
ところで参謀長、この分では明朝上陸予定の部隊も今日に繰り上げれるのではないかね?」

「想定していたよりも順調ではありますが、全てと言うわけには行きません。
火力部隊を早めに上陸させ、攻勢に備えればいかがでしょうか。
現時点で兵を全て上陸させては補給が追いつきませんので」

108 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/20(火) 01:38:32 ID:qZ/SFoVk0
早朝のフェンダート上陸開始から四刻あまり、皇国地軍南遣団は甲海岸と乙海岸(帝國人のいうところの北浜と富浜)にそれぞれ一個師軍以上の兵力を貼り付けた。
近衛艦隊の空襲が堪えたのか空からの邪魔も無ければ帝國陸軍が打って出てくる様子も無い。
予想された嫌がらせが全くないため、順調と言って良い。

「奴さんたちが空軍力を喪失したと仮定してもなぜ陸兵は打って出てこないんだ?
強襲上陸中の陸兵と言うのは全く理想的な獲物に思えるのだが」

あまり大っぴらに出来ない方法で入手した資料を検討した結果、帝國陸軍は水際撃滅を主戦術にしている、そのように判断されていたのは事実だ。
だと言うのに陸地からは一発の弾丸も飛翔してくることはない。
納得のいかない不可思議さと帝國陸軍の持つ悪い意味での神秘性からサッカスからすれば物静かなフェンダート島が魔王の待ち構える島のように感じられる。
水軍の艦隊は砲の射程内に帝國兵が見当たらずに些か拍子抜けしているが。

「兵団長、何も気にすることはありません。
帝國軍は本土から二個師団以上の増援を送り出しています。
大抵の帝國人士官であれば帝國海軍の勝利と増援の到着を信じて長期持久を選択するでしょう、連中もそれ位の融通性を持ち合わせていても何ら不思議ではないはずです。
あの丘など如何にも帝國軍が待ち構えていそうではありませんか」

サッカスはしばし考える素振りを見せて口を開く。
「歩兵と工兵を優先させよう、急いで塹壕を拵えるように。
それから渓谷(帝國人の言う入らずの谷)あたりまで状況を探ってくれ、あまり魔導師を使わずに」

「威力偵察で?」

「魔導師無しで帝國人相手に威力偵察?まさか。
規模と人選は任せるよ」

サッカスに部下を自殺させる趣味はない。
参謀長がうなずくのを確認し南遣団長との打ち合わせに向かうが、彼の気持ちは慣れない艦上ではなく恋しい陸地へと向けられている。
例えそこが戦場であっても。

109 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/20(火) 01:39:22 ID:qZ/SFoVk0
同時刻・富浜より南方18キロ

「連中の手際の良さは予想以上です。
各種重火器と思しきものと魔獣などを多数伴ない、二個師団相当の兵力を2手に分けて海岸付近で穴掘りに勤しんでいるとのことです」

「参謀本部からの話では、蛮族どもに渡洋侵攻能力はないとのことだったんだが」

陸軍側の最上位指揮官である大村隆仁大佐の言葉に海軍側が反応する。

「私どもの軍令部からはフェンダートが空襲を受けることはない、と言われ続けましたが現状はあの通りです」

帝國海軍のフェンダート航空基地は連山55機、紫電改32機、彗星22機、その他11機を失い滑走路を含む基地施設は壊滅、その機能を喪失している。
陸軍側も建設中の滑走路に爆撃を受け現段階でこの島に利用可能な滑走路はない。

「まったく、航空支援も重砲もなしとは陸大で叩き込まれたものと些か異なるようですな。
われらに重砲がないのに海岸で塹壕を拵えるとは、フランシアーノ人も無駄骨ですな」

「大村大佐、もし宜しければ海軍の砲をお貸ししましょうか?」

海軍側の代表者は第十六方面艦隊司令官、階級は大将だ。
如何に陸海軍の指揮系統が別だとはいえ本来ならば大佐如きで対等な立場に立つことはないのだが、防衛戦となれば陸軍側が主導権を握らざるを得ない。

110 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/20(火) 01:39:54 ID:qZ/SFoVk0
「いえ、それには及びません。
身動きできない艦から砲を取り外して運搬すると言うのはかなりの手間でしょうし、それよりも一刻も早く防御陣地を拵えなければなりません」

「やはり持久戦ですか?」

「ええ、聯合艦隊が敵艦隊を蹴散らした後にフランシアーノ本土に向かう予定だった三個師団が救援に来るとのことです。
幸いフランシアーノは小内海における陸軍の派兵拠点として整備されていますから、弾薬と食糧には事欠きませんし。
それでは陸軍側の状況を報告させます」

大村に促され少佐の階級章をつけた男が周りを見渡し口を開く。

「陸軍の戦力は第62聯隊、多くの聯隊と異なり4個大体編成です。
それと試験配備されている戦車中隊が二つ。
現在極北山と欠山に一個大隊ずつを配し防御陣地を拵えさせており、この二つが連携し谷への侵入を阻止します。
野砲部隊は潮風連丘に集中配備し残りの戦力は潮風連丘と欠山の間に展開、防御陣地の構築が済めば極北山と欠山の部隊を収容する、とりあえずこのような形でいこうと考えております」

「大村大佐がそれでいいというのならばそれが最善の策なのでしょう、我々には陸戦のことは良く分からないもので。
とりあえず使えそうな人間を海軍から抽出します、なんとしても極北港を守り通していただきたい。
ここ以外にGFの拠点となりうる泊地は、南小内海に存在しないのですから」

「援軍が来るまでの2週間やそこらで敗退する陸軍ではありません、民間人の統制と戦勝祝賀会の準備はお任せしますよ」

誰もが二週間程度の持久には自信を持っておりGFの勝利を疑うものもいない。
この時点では。

111 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/20(火) 01:40:27 ID:qZ/SFoVk0
夕刻

フェンダートの北、極北山を抉ったような真円形の湾内に皇国地軍南遣団司令部をのせた船はある。
そのうちの一室に南遣団の首脳が顔をつき合わせて、真剣な面持ちで会議を進める。

「北浜には第六兵団の第62師軍の全部と第63師軍のうち二個旗軍、そして兵団重火力隊が展開済みです。
これに加えて第八独立戦竜旅軍の大半も」

大雑把に言えば、富浜と同様北浜にも一万強の戦闘兵員が到着した、ということになる。(無論、弾薬、補給物資は完全ではない)
この調子で行けば明日昼過ぎには北浜への兵力展開を終えることになる。

「帝國からの抵抗は?」

南遣団長の問いに第六兵団、第九兵団参謀の首は横に振られるばかり。

「山に篭られたら厄介だな。
近衛艦隊の予想会敵は来月頭、20日ほどしかない、それまでに翼竜を運用できるようにせねば」

南遣団は近衛艦隊の新竜より見劣りするとは言え自前の翼竜部隊を持っている。
ただ、予想されたようにフェンダート付近の暑さは酷く、蒸し風呂と化した輸送船内で二百騎以上の翼竜のうち大半が動ける有様ではない。(新竜ほどひ弱でないとはいえ一月に渡る船内での軟禁生活は堪えるものだ)
戦力として活用するには山肌を刳り貫いた涼しげな翼竜基地に入れてから7~10日は必要という報告が上がっている。
翼竜の回復に10日、最低限の穴を掘るのに5日とすれば5日以内に一つの山を奪取せねば近衛艦隊への支援が出来ぬことになる。

112 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/20(火) 01:40:58 ID:qZ/SFoVk0
「近衛艦隊の敗北は皇国の敗北ですから、とりあえず戦術目標甲(帝國人のいう極北山)がよさそうですな。
どういうわけか他の山と違い火山性ではなく山肌も掘りやすいようですから」

「極北山にも帝國兵が五百以上篭っているとの話です、うかつな手出しは出来ません」

「何を言うかと思えば、上陸して間もないうちなら帝國軍の陣地も未完、火力支援も薄いかもしれんが日が経つにつれ敵の防禦体制は整っていくわい」

「何のための魔道部隊だ、何のための魔獣部隊だ。
全軍揚陸して体制が整えば山の一つや二つ物の数ではないわ、カイアールの時とは違うのだ」

いい年をした中年、壮年の男たちが激論を繰り広げるなか南遣団長ムラーノ大提督が口を開く。

「魔獣部隊は奇襲に向かない、そうであったな」

「は、奇襲ならば魔導師の支援を受けた精鋭部隊が最適かと思われます」

サッカスの返答に満足げな表情を浮かべたムラーノの一言で軍議は決した。

「第六、第九各兵団から一個旅軍程度を抽出してもらおう。
南遣団からも虎の子の魔導師を派遣する、まだ準備の整っていない帝國陣地を奪取して来い。
卿らは帝國軍に夜襲をかけるのだ」

113 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/20(火) 01:45:00 ID:U1uACm8A0
 102様、有難うございます。

>帝國本土の位置
 やはり話の都合上こうなってしまいます。
 気候に関しては、とりあえず本土周辺は、転移の影響か何だかわかりませんが、転移前とほぼ同じ気候となっております。多分マナが膜を造っているせいでしょう。転移時の衝撃もこれでほぼ相殺しました。
 ……しかし、元の世界にはマナなんぞありません。今まで防波堤になっていた列島が消えたことにより、太平洋の荒波はストレートに大陸沿岸に押し寄せるでしょう。無論、台風も地震も、です。
 ま、領海も広がったし大洋への入り口も開いた訳ですから、文句も言えないでしょうが。

>漁業紛争から戦争というのがリアルですね。
 正規版ではもう少し政治的背景を掘り下げたい、と思います。
 イルドーレ王国が海洋交易の中継点だと、ロッシェルに狙われて薩摩藩と琉球のような関係になっちゃう可能性が高いですし、『辺鄙な田舎』としても良いかな〜と。
 あと帝國の租借法も、もう少しソフトに……
 いやなに、たくらみのあるヤツほど、そういうところには気を使うでしょうから。

114 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/20(火) 01:46:22 ID:qZ/SFoVk0
投下終了です。

フェンダートの地図をくろべえ氏のHPに掲載させていただきましたので、よろしければそちらも御覧になってください。

これもくろべえ氏のHPにのっていますが皇国地軍の階級と指揮する部隊は下のような感じです

提督    兵団(12000〜18000)
准提督   師軍(5000〜6000)
千竜長   旗軍(1800〜3000
百竜長   旅軍(600〜1000)
十竜長   
央騎竜士  大士隊 (約300) 
列騎竜士  中士隊(約100)
前衛竜士  
後衛竜士  小士隊(24)

115 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/20(火) 01:52:40 ID:U1uACm8A0
 猫じゃらし様、投稿乙です。
 割り込んでしまって申し訳ありませんでした。

 いよいよ陸戦ですね。日露戦争の立場を逆にした様な戦い、二〇三高地の再現なるか?

116 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/20(火) 01:57:55 ID:qZ/SFoVk0
くろべえどのありがとうございます

>日露戦争の立場を逆にした様な戦い、二〇三高地の再現なるか?
ステッセルより立場は悪いのですが…旅順の再来にしたくないなあ

117 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/20(火) 05:58:47 ID:U1uACm8A0
>ステッセルより立場は悪い
 そりゃそうか……永久陣地に篭ってる訳じゃあ無いですし、兵力も少ないからなあ……

 そういえば、皇国は二箇所に旅団級の兵を揚陸した訳ですよね?
 重装備も陸揚げした様だし、大規模な揚陸戦能力を持っているんだなあ……
 皇国の揚陸法とかはどうなってるんだろう? 第一次大戦レベル以前ならかなり時間喰いそうだけど。
 あと何気に機雷敷設とかも効果ありそうですね。高度な掃海能力があるとは思えないし。

118 名前:中将:2007/03/20(火) 22:53:47 ID:UKNJbdq.0
猫じゃらし様、投下乙です。
皇国側に乃木将軍みたいなタイプがいると大変なことになりますね。
次回の投下を心待ちにします。

119 名前:名無し三等兵@F世界:2007/03/21(水) 22:27:36 ID:4m2gyPIc0
>>118
それは皇国側にとって大変なことになりますよ(苦笑)。
乃木将軍だと突撃の連続ですから。
児玉大将のような存在の方が帝國にとっては恐ろしい事に。

120 名前:ヨークタウン ◆r2Exln9QPQ:2007/03/21(水) 22:34:32 ID:4CUjn9IY0
猫じゃらしさん投下お疲れ様です。
乃木将軍のようなタイプがいれば、帝國も闘いやすそうですが、児玉将軍のような
知性派がいれば・・・・・・

帝國側がどう出るかに期待ですね。

121 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/22(木) 04:29:35 ID:tc1rq5Jc0
>>117 くろべえどの

>皇国の揚陸法とかはどうなってるんだろう? 第一次大戦レベル以前ならかなり時間喰いそうだけど
皇国のは輸送船から短艇降ろして海岸まで、という感じを想定しています。
手漕ぎですから潮流に大きく左右されますが時間はかかるでしょうなあ。米軍は45分で一万人か…流石だ

>機雷敷設とかも効果ありそう
拠点防禦にはうってつけかも。港には敷設されててもおかしくないですね。
ただ機雷の存在を完全に失念しておりました。

>>118 中将殿 ありがとうございます

>皇国側に乃木将軍みたいなタイプがいると大変なことになりますね
皇国は南遣団の損耗率は6割見込んでいますので…まあ最初から血みどろ覚悟です、はい

>>119
>児玉大将
攻城兵器はしょぼいし28センチなんてないし時間は限られているし…
防御側の軍事水準が高ければ陣地はそう易々と奪取できないでしょうね

>>120 ヨークタウン氏ありがとうございます

まあ皇国も国家存亡がかかっているのであまり酷い人選はしていません。
(戦下手と同僚達から揶揄される人間を総司令官に任命するなんてありえません)

122 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/22(木) 04:30:38 ID:tc1rq5Jc0
投下開始 夜襲3部作になるかな?

ユフ戦記 43  血染めの島 5

陽が遥かな水平線の下に隠れ月は分厚い雲に遮られたいま、フェンダート独特の青紫と言うべきか赤紫と言うべきか物珍しい色彩を備えた木々は鬱蒼とした闇に溶け込んでいる。
その木々の間を縫うように濃紺色の服で揃えた男たちが歩んでゆく。
甲海岸を発っているはずの別働隊に呼応するように、乙海岸を発った皇国地軍第九兵団第91師軍第2旗軍に所属する第3旅軍だ。
長ったらしいため、彼らには帝國の歴史書から知識を得た南遣団上層部の誰かによって劉軌という符牒が当てられている。
偸盗のように闇の中を歩むのは彼らだけではない。
甲海岸からは二個旅軍が出立しており、それぞれ劉願、孫師と呼称されている。(三部隊いずれも間の『仁』という字を省いている)
目標の極北山は周留、その山中に確認された帝國軍部隊には豊璋という符牒が与えられた。
雪どころか花咲き乱れるフェンダートにあって作戦名は氷雪河作戦、氷雪は皇国語で白を現す慣用句であるから帝國流に言えば白江、あるいは白村江作戦となる。

123 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/22(木) 04:31:09 ID:tc1rq5Jc0
間も無く日付が変わろうという頃合い、第3旅軍を預かっているスルム百竜長は一旦部隊を止める。
彼とその部下たちは三刻半をかけて乙海岸二リーグ半(約8km)を踏破している。
夜間の、それも九百以上を有する部隊の行軍としては上出来だ。
予定では甲海岸から進発した部隊が陽動、兵力の吸引をなし、その間に手薄な陣地を別働隊が急襲するという筋書きだが果たして巧くいくかどうか。
(スルムの知るところではないが天智2年の東津江下流においても孫仁師、劉仁原の部隊と劉仁軌の水軍による挟撃が試みられた)
技術的な問題により上陸地点が二分され、極北山と欠山の間を通る線には帝國軍が警戒線を張っているために夜襲部隊の連携は困難を強いられている。
兵力移動の困難な山肌に貼り付けられた帝國軍がそう簡単に動く保障はないし、敵が兵力の不足を感ずるほどに味方が奮戦してくれるか甚だ心許ない。

兵に休息を取らせつつも、魔術師には帝國兵の存在を探ってもらう。
第3旅軍には25名の魔術師(うち2名は魔導師)が与えられているが、皇国全土に存在する魔術的才能を持ち合わせている者は五万足らず、皇主の私兵たる吸血種と研究に勤しむ者を除けば戦場に投入できるものは一万を割り込む。
この事実に照らし合わせれば第2旅軍が破格の支援を南遣団から受けていることが伺えよう。(近衛艦隊が八百人以上を確保しているのは例外中の例外)

124 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/22(木) 04:32:27 ID:tc1rq5Jc0
「北西5分の3リーグに生命反応、数は約40、南北に広がって布陣中」

魔術師からの報告は続く。

「さらに南50フィフィクにも布陣中」

報告に合わせて地図に帝國部隊を書き込んでいく。
なだらかな斜面を射界に捉えながら、10〜40人で一つの陣地を形成している。
山の北東にある尾根を中心におよそ150人前後が配されているが、北からの迂回は不可能、高さ200フィフィク以上の絶壁だから当然だ。
山の南斜面を登れば欠山あたりの帝國人が背後から射撃を加えてくるだろう。
正面から障害物を盾にしながら前進するしかなさそうだ。

攻撃開始まで一刻ほど待たせよう、そう考えていた矢先に甲高い音が響く。
兵の隠蔽がまずかったのか発見された一部の部隊に向け帝國兵が発砲したようだが距離は5分の3リーグ。
いかな帝國製小銃といえ効果を発揮できないが、帝國兵を叩き起こして戦闘体制をとらせるには充分な効果を発揮した。

「全員を伏せさせろ」

スルムの命令に従ってあるものは窪地に飛び込み、あるものは木陰に入り、あるものは岩陰に隠れる。
勾配がきつくなっている場で無論全員がそのような天国を見付けられた訳ではなく、草木の少ない斜面にしがみ付いている者もいる。
暫く待てども帝國兵からの射撃はなく肩透かしにも思われたが、当初の作戦通りに行かなくなったのは明らかだった。

「司令部に通信、『劉軌は豊璋と駆け落ちす』だ」

第3旅軍は陽動役に転身するはめになったが、ともかくも戦闘は開始された。

125 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/22(木) 04:33:13 ID:tc1rq5Jc0
莫迦野郎、誰だ撃ちやがったのは、起きろねぼすけ、といった声が飛びかよい帝國陸軍第62聯隊第3大隊第2中隊は夜戦へと駆り立てられた。
第二中隊は極北山東斜面を担当しその守備正面は2,200メートルに達するが、斜面に所々火点を設けてそれを塹壕で繋いでいるに過ぎない。(無論塹壕は未完成)

「先任、様子はどうだ?」

第二中隊指揮官、大須賀大尉は中隊最先任下士官の那賀に問うた。

「大尉殿、敵は大隊規模、歩兵主体で重火器は確認できません。
様子はまあ見ての通りです」

那賀の言葉を聞きながら大須賀は暗視装置付の双眼鏡を覗き込む。
尾根に隠れるように登ってきているため欠山へ砲撃を要請しても無駄、中隊の火器で対抗するしかない。
彼の中隊は昭和31年において至極ありふれた編制、すなわち中隊本部と42人からなる三個小隊に中隊火器分隊を加えた総勢168人の定数通り。
陣地は完璧には程遠い出来栄えだが弾薬は溜め込んでいる。
その完璧に程遠い陣地の一角、南側の第2小隊を標的に定めたらしく皇国兵は物陰に隠れながら南に向かう。
様子を見て取った大須賀は火器分隊を中央の第1小隊に差し向けた後に大隊本部に知らせる。
陽動の可能性を考慮し増援は要請しない。

126 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/22(木) 04:34:37 ID:tc1rq5Jc0
血戦の狼煙を上げたのは帝國側だった。
佐伯上等兵は第2小隊第3分隊の軽機関銃手だった。
第2小隊は陣地下斜面の樹木を刈り取っており、陣地前800メートルは何もない岩肌だらけの斜面が続く。
彼は煙草を銜えながら、そこに現れた皇国兵(シューエン列騎竜士率いる第2大士隊第1小士隊)が200メートルほど前進するのを待ち、まるでマッチで火を着けるかのような気軽さで八式軽機関銃の引き金を引いた。

八式はMG34の模倣とも言われているが、それは陸軍兵器局からすれば謂れのない侮辱とうつるであろう。
九九式よりも発射速度を向上させなお且つ命中精度は維持するという要求に応えた八式はMG34のようにジャミングを頻繁に起こすわけではない。

佐伯の構える八式の銃身から7.7ミリ弾が944m/secで飛び出してゆく。
小隊長の合図で他の2機と共に射撃を開始したが、向かってくる皇国兵の姿が見えるわけではなかった。
毎分1500発という発射レートを保ったまま暗闇に向け射撃を続けるが、発射レートが高すぎて人間の耳では正確な発射音が認識できない。
同僚がベルト状に束ねられた弾を補給する間にも、竪琴のような音が他の二機から聞こえてくる。
その間にも部隊長の無能さゆえか運の悪さゆえか、魔術士を伴わずに帝國軍の射撃を受ける羽目に陥ったシューエン小士隊のあげるうめき声が聞こえてくる。
軽機を射撃している自分の耳に入ってくるんだから相当でかい声で呻いているんだなあ、とぼんやり考えながら引き金を引き続ける。

暗視装置を覗き込んだ小隊長は成果に満足したらしく、射撃は終了した。
佐伯とその仲間は2本のベルトを消費したから、500発を皇国兵に向けて放ったことになる。
小隊合計で1500発、小隊長のような若手士官が持ち合わせている価値観に照らし合わせれば軽機の弾などタダみたいなものだし、佐伯も同感だ。
数瞬して雲間から姿を現したつ月が斜面を照らし、佐伯上等兵もまた成果に満足を覚えた。
斜面には7,80の遺体が残され10人あまりの皇国兵が引き上げて行く姿が目に入った。

カイアール紛争に引き続き魔術師の支援のない歩兵部隊の脆弱性が確認され、後に『牟田口の竪琴』と呼ばれ恐れられる八式軽機関銃が始めて実戦使用された瞬間だった。

投下終了

127 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/22(木) 10:08:03 ID:U1uACm8A0
 猫じゃらし様、投稿乙です。
 簡単に機銃弾1500発消費とは、帝國陸軍も金満になったものだなあ。
 帝國の国力の一端が伺えるエピソードですねえ。

>手漕ぎ
 うわ…… 今回みたいな不意討ちなら兎も角、帝國軍相手の敵前強襲上陸は自殺行為ですね……
 帝國軍の火力も飛躍的に向上しているみたいだし、タラワどころの騒ぎじゃあなくなる……

128 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/22(木) 20:31:47 ID:FtYA8OyE0
猫じゃらし氏、投下乙です。

照明弾は使わないんですね。

129 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/22(木) 21:49:25 ID:7ouY3DVE0
>>127 くろべえどのありがとうございます

>簡単に機銃弾1500発消費とは、帝國陸軍も金満になったものだなあ
先の大戦での弾薬消費量…考えたくないなあ
銃弾の生産体制が整っているから発射レートの高い機銃を配備できるようになったわけです

>>128さま ありがとうございます

>照明弾は使わないんですね。
帝國側は皇国が魔術で陣地の配置を掴んでいるとは考えていませんので、照明弾なしの機銃掃射となりました。
(機銃座以外は場所を掴まれたくなかったと言うわけです)
開けてる場所だからそこまで問題ないのですが、皇国側はなぜ暗闇で壊滅的打撃を受けたのか悩んでいます(皇国は帝國の暗視装置の存在を知りません)

130 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/22(木) 22:28:54 ID:X9DoCVGA0
1500発がタダ同然って靖国の英霊からバチ当たりますよ・・・。

陸軍があんなもん開発してると海軍もガトリング砲とか開発してる希ガス。
以下妄想です。

十六式二十五粍高角機銃
・25mm70口径6砲身
・2700発/分
・コンベア式給弾
・電気モーター駆動
・電探連動機能有り

131 名前:陸士長:2007/03/22(木) 23:24:51 ID:S26rtwLI0
始まりましたね〜。
歩兵に対しては本気で死神ですね重機関銃は。
こんな贅沢な弾の使い方するなんて日本軍じゃないやいと叫んでみます。
後は迫撃砲があれば結構粘れそうな。

132 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/23(金) 01:26:41 ID:P9tD6QiI0
投下乙です。
地雷は敷設する暇が無かったんでしょうか。残念。

133 名前:中将:2007/03/24(土) 00:11:38 ID:SgjYEJQg0
猫じゃらし様、投稿乙です。
やはり、歩兵に対しての機関銃の猛烈な火力は悪夢ですな。
自分としては、帝國の戦車が非常に気になります。
五式中戦車より強力な試作戦車が試験的に配備されているそうですね。装甲が厚いといいなぁ〜。
是非とも皇国軍を蹂躙する活躍を見せて欲しいです。
それでは、次の投下も期待しています。

134 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 05:51:32 ID:7ouY3DVE0
>>130さま ありがとうございます

>十六式二十五粍高角機銃
ああー、ごめんなさい。
猫じゃらし世界では20ミリと40ミリです、はい。
いずれバルカン砲みたいな物は開発されるかもしれませんが対艦魔法の槍や竜に本気で脅威を感じなければ難しいですね、猫じゃらし世界の海軍は無敵だとおもって油断しきってますから(苦笑)
ただ電探連動は結構難しそうだなあ

>>131 陸士長様ありがとうございます

>歩兵に対しては本気で死神ですね重機関銃は
ふふふ、皇国もこれまでに機関銃の情報を仕入れてきていますから対策は練ってきました。

>>132さま ありがとうございます

>地雷は敷設する暇が無かったんでしょうか
上陸前から陣地の構築に入ってますがなにぶん山の中ですので塹壕拵えて火点作って電話線引いてで手一杯、というかそれすら未了なので。
地雷も鉄条網もちょっと間に合いませんね

>>133 中将殿ありがとうございます

>五式中戦車より強力な試作戦車が試験的に配備されているそうですね。装甲が厚いといいなぁ〜
ここら辺くろべえどのの設定にないので独自なのですが、太平洋戦争も経験していないので五式といっても史実どおりのものではありません。
一式に毛が生えたようなものです

>それでは、次の投下も期待しています
今から書き始めますので昼ごろには…投下できるかな?

あと沈んできたのでageときますね

135 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:29:36 ID:7ouY3DVE0
投下開始です、ちょっと絞れ切れなかったので長くなってしまいました

ユフ戦記 44 血染めの島 6

「一個小士隊が壊滅…魔術師の支援無しとはいえ、わずか20寸の射撃でか?」(20寸とは40秒のこと。ちなみに1巻は100寸=200秒、1刻は36巻=2時間)

各隊の指揮官を集合させて打ち合わせるが、シューエンはこの場にいない。
あの若者は二度と会うことの適わない別の場所に旅立った。
スルムとて帝國軍の火力については一応の知識を仕入れてはいてが、いざ自分の部隊が体感する段になればなにか形容しがたい戦術的思考に囚われる。
それが上級司令部の求めるものと合致しないことがわかっていてもだ。
無論彼は職業軍人故の使命感をもちあわせているし、軍学校から今日まで食わせてもらった恩義を忘れていない。

「ともかくも攻勢に出なくてはならない。
我々の任務は陽動であり敵が増援を繰り出すまでは圧力をかける必要がある、それも敵が困り果てるくらいのものを」

増援が来るまでに全滅するのではないかとも思うが士気を下げるような言葉は胸の奥にしまっておく。

136 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:30:10 ID:7ouY3DVE0
「いかがなさいますか?
南の陣地は確かに向こうの山からの射撃を受ける恐れもなく、北の陣地からも射程外と思われますがいかんせん陣地の前が開けすぎています」

生きのいい若者らしい声はレイサム十竜長、スルムの副官を務める男だ。
とかく気の利く男であり事務能力も高いというまさに副官にうってつけの人材だが、本人に指揮官適性はなく軍もまた実地でそれを確かめようとはしていない。
スルムも軍上層部の考えを支持するがレイサムにはそれが不満らしい。

「中央は三陣地からの集中砲火が待っている、いかに林が深くても避けるべきだ。
北も崖が迫って隊を展開できないとくればやはり南の陣地にご挨拶に行くべきだ、一度顔を見せただけで別の場所に移ったとあれば皇国人が礼儀知らずだと思われかねんしある程度の広さがなければ我々の真価は発揮されない」

スルムが決定すればもはや反論は上がらない。

「幸い斜面の途中にも盾にできそうな岩がありますし、あの斜面までの林も深いものです。
物陰に伏せて敵の射撃を誘い、弾幕の薄くなったところを見計らって接近しましょう、あれだけの発射速度です弾切れか銃身加熱に悩まされる筈です」

指揮官の一人が具申したところ魔導師(魔術師の親玉とおもえばよい)が口を挟む。

「できれば少し間を置いていただきたい。
捜索魔術を使った連中は未だ魔力が充分に回復しているとは言えず、完全を期するなら一刻待っていただきたい。
それならば25人全員で隊を支援できますが現状では15人と言ったところです」

魅惑的な提案と言うべきだろう、死者を減らせる上に攻撃の成功率も上がるのだがスルムには一刻も早くこの山の予備兵力を吸引するという使命がある。

「それは出来ない相談です、魔導師どの。
戦場において完璧な状況が現れるまで待つことなど適わないものなのです。
さしあたっては我々の最善のためにご尽力いただきたい」

137 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:30:49 ID:7ouY3DVE0
雲間に隠れた月が戻ってきたらしく斜面が再び明るさを取り戻す。

「おやおや連中まだやる気らしい、世の中には望んで痛い目にあいたがる奴がいるんだな」

金森にいわれて斜面の向こうをみれば、樹陰に皇国兵が隠れながら近づいてくる様が見て取れる。

「帝都じゃあ金を払って鞭で撃って貰う店がある時代だ、別に不思議じゃないさ」

「ここも東京だぜ、忘れたか?」

失念していた、本土から万里を隔てた僻地とは言え行政区分上は東京なのだ。

「それより俺の分の飯はどうした、取りに行ってくれたんだろ」

分が悪いと感じ取った佐伯は金森から味噌を塗って炙った握り飯を奪い取って頬張る、旨し。
やや濃い目の味噌は帝都では敬遠されるかもしれないが、隊ではそのような不満は出ない。
なにしろ富山の味噌なのだ、それに冷凍とはいえ氷見の鰤の焼き物まで添えられている(元は善通寺だが現在の第62聯隊編成地は富山)、景気付けには充分だ。

「お、動き出すぞ。小銃の出番はないと思うが持ち場に戻れ」

「盆祭りの射的でも金が取られるのに生身の人間に軽機を撃ち放題とはいいご身分だ、射的高みの見物といかせてもらうよ」

皇国人に活発な動きが見られる、撤退か攻勢のどちらかだがまず後者だろう。
ほんとに物好きな奴らだ、と思いながら二人の仲間に声をかけながら軽機を準備する。
今度は明かりがある分先程より効果が期待できそうだ。

138 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:32:54 ID:7ouY3DVE0
再び死神の竪琴が不吉な音を奏でる。勿論三重奏だ。
兵が伏せている土や耕し樹に風穴を開け、岩を小石の山に変えようかという射撃だがキカンジュウの前に身を曝さず身を隠していればそこまでの脅威ではない。
スルムの第2旅軍は二個大士隊を攻撃用に前進させ、先ほど一個小士隊を失った第2大士隊を総予備にして機を窺う。
損害を出しつつも前進し件の斜面に接近する、ここまでの損害は50に届かないだろう。

「百竜長、そろそろ弾幕が薄くなってきてもよさそうですがね」

いった傍からレイサムの足元に弾が落ちてくる。
ここまで500フィフィクは離れている筈だが大した威力だ、レイサムは顔を蒼くして足元に地面を眺めている。
顔に出すようじゃやはり指揮官は務まらんなと考えていると不意に帝國軍の陣地の一角に明かりが点る。
その直後にキカンジュウのうちの一つが射撃を中止するとスルムは慌てて鷹目石を加工した魔術師謹製の遠眼鏡を取り出す。
帝國の陣地では数ある木箱のうち一つだけ大きさの異なる木箱をあけ油紙の包みを解いた鉄の棒を別の男に手渡す。
握り飯を銜えた男が布を手にキカンジュウの銃身を外し、鉄の棒と取り替える。
するとあの背後の箱にある油紙でくるまれた10本ほどの棒は全て予備の銃身で、あの獣車2台分の箱は全て銃弾なのか?
なるほど物を粗末にしてれば命を粗末にせずに済む、そういう考えなわけだ。
スルムはここに至って漸く帝國陸軍の真髄を理解した、少なくとも本人はそう考えた。

「駄目だ、連中途方もない贅沢してやがる。
ここにいても嬲られるだけだ、第1と第3に前進命令を伝えろ」

すぐさま攻撃命令が末端まで行き渡り、兵たちが活気付く。
如何に損害が少なくともやられっぱなしよりも敵に向かうほうが士気は高くなるというのは心理といってよい。

139 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:33:36 ID:7ouY3DVE0
「火よ、人の光となり糧となり人類の英知の現れなる火よ。
その猛々しさを想い起させる時が来た、いまエフリートの御名に恥じぬ汝の力を見せつけよ」

「その色を紅くせよ、その物を炭にせよ、破壊と再生の不死鳥よわが右腕として異端の輩に真の精霊と魔術の力を示せ」

茂みに身を隠した10人ほどの魔術師たちが様々な呪文を唱える、いや、呪文が性に合わないものは口を閉ざしたままのまま魔術を行使する。
何れも火焔系の攻撃呪文であるが、それしか使えないと言うわけではない。
ただ塹壕に篭った敵に対しては衝撃、爆風系よりも火焔の方が有効であり、初歩的ゆえに消費魔力が少ないからである。

火球を形成して陣地に激突するのがあれば魔力が陣地に達してから発火するものもある。
800メートル以上距離が離れており、威力も精度もかなり低下している筈だがやられっぱなしの立場は性に合わなかったと見え味方からは歓声が湧き上がる。
魔術に妨害され帝國軍からの射撃が手薄になるのを見計らい、皇国軍が動く。

「第1大士隊、銃掲げ」

一斉に銃を掲げる小気味のいい音に続き再び号令。

「総員着剣」「着剣よし」
「いくぞ野郎ども、帝國軍の皆様がお待ちかねだ。白兵戦の真髄を見せてやれ」

うなり声、怒号、そしてかけ声。
指揮官も咎めるような真似はしない。
月明かりで部隊の様子は掴まれているし、兵の恐怖が薄れるなら何のことはない。
左右の物陰から二個大士隊約600人の皇国兵が帝國軍一個小隊の待ち構える陣地に面した斜面に出て行く。
距離は約250フィフィク、800メートル。

140 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:34:22 ID:7ouY3DVE0
「3番壕は駄目だ、3人全員戦死」

「6番壕にも火がついた、総員水を被れ」

今のところ第2小隊の損害は酷いと言うわけではない。
戦死者が出るとは意外だったが、小隊長の指揮に不満はないし戦場だから文句は言わない。
ただ軽機の射撃が鈍ってどうにも困る、佐伯がそう考えていたとき第1小隊の方から発砲音が響く。援護射撃を要請したのだろう、妥当な判断と言うべきだ。
第1小隊の方にも火球が向けられ、射撃が楽になった瞬間皇国軍が斜面に躍り出てきた。
焼け付いて射撃精度が低下したのを感じ取り、この日三本目の銃身に変えて射撃を再開する。
その瞬間、彼は信じがたいものを目の当たりにする。
敵隊列の前方で機銃弾が勢いを失い、その後何かに弾かれる。
敵に損害がないわけではないが少なすぎる、二個小隊で射撃しても半分以上がここに辿り着くだろう。

「おい、ありゃあ何だ?」

戦死した給弾手に代わってその役についた金森は呑気な声で聞いてくる。

「お得意の魔法とかいう奴だろ、あんな使い方もあるんだな。
ここにつくまでに魔力が尽きると思うか?」

「尽きないほうに賭けてもいいぜ、交代要員を用意しているか魔力が豊富か知らんが成算無しで突撃するとは思えん。
貴様が怠けずに射撃してれば急速に消耗してくれるかもしれん、ほら第1分隊の軽機手は火達磨になってるんだ、真面目に頼むぜ」

「賭けはいいのか?」

「金より命だ、連中の顔を見てみろ。
復讐できるのが嬉しくて、踊り始めるのを必死で堪えてる様な顔だ」

距離は600ほど、佐伯の目では表情まで見えないがそういった空気だ。
陣地に乗り込まれればタダでは済まないだろう。

「そいつは同感だが早く次の弾持ってきてくれ。250発なんぞ10秒で射ち尽くすんだ、暇があればついでに鉄条網でも組んでくれないか」

無論そのような暇はない、急ごしらえの野戦陣地の防御施設は火力と塹壕、それだけだ。

141 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:35:36 ID:7ouY3DVE0
近代装備を持ち合わせない蛮族に南陣地が突破されようという状況の中で中隊本部は混乱の渦に巻き込まれている。
二個小隊の軽機を浴びせかけているが、第2小隊のうち1つが沈黙し第1小隊の射撃は1キロから1キロ半離れているため弾速が低下し、魔法防禦に弾かれているのか大した効果を挙げていない。
塹壕は繋がっていないため救援に向かうには山中を迂回しなければならず、そのような余裕を敵は与えてくれる雰囲気ではない。
早急に何らかの手を打たなければ厄介なことになるのは目に見えているが大須賀はのんびりと紙コップの珈琲を啜っている。
たまりかねて須賀が進言する。

「魔術師とはなかなか大したもんじゃないか須賀。
あんなに便利なんじゃあこの世界で科学が発展しなかったのも頷ける話じゃあないか」

「中隊長殿、のんびりしている場合じゃないですよ。
第2小隊に陣地を放棄させますか?」

「先任、どうしたらそんな発想が出て来るんだ?
電話機をよこせ」

黒岩に繋げ、と付け加える。

「中隊長殿、黒岩です」

中隊下記分隊を束ねる軍曹が電話に出る。

「黒岩、お休みのところ気が引けるが帝國軍に穀潰しを養う余裕はないらしい。
仕事の時間だ、貴様の所の三式を準備してくれ」

火器分隊はこのような攻撃を考慮して山中に引っ込めてあったが、出番が来たというわけだ。

142 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:36:11 ID:7ouY3DVE0
「生身の人間相手に対戦車狙撃銃ではなく三式ですか?」

黒岩は一瞬戸惑いつつ返答を返すが、早々と電話の向こうで指示を与えている。

「こういう趣向も嫌いじゃないだろ?
それとも目標が小さくて自信がないのか」

「発破をかけているつもりかしりませんが中隊長殿の脳が春の陽気に冒されるには早すぎやしませんか?
他の中隊ならいざ知らずうちの連中は転移前からの古参ぞろいですよ。
それで目標はどちらで?」

いまなお陣地に呪文をぶつけてくる魔術師か、それとも機銃弾を防いでいる魔術師かという趣旨だ。

「判らん、坂井の方からそろそろ要請がある筈だからそれまで待ってくれ」

なるほど、指示もないのに火力支援で危地を脱したとあれば小隊長の人望に関わるということか。
中隊長が電話を切ってしばしの後、第2小隊の坂井中尉から電話が飛び込んでくる。

「黒岩軍曹、魔術師を何とかしてくれないか。
このままでは持ち堪えられん」

「既に三式を準備させています。目標はどうしますか」

「盾で囲まれている結界を張ってそうな魔術師のほうだ、少し距離があるが頼む」

「諒解しました」

黒岩は電話を切り、第1中隊の最南端あたりに設けられた火力陣地に向かう。
既に2台のトラックと三式が到着して展開作業の真っ最中だった。

143 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:36:58 ID:7ouY3DVE0
カイレスキーは第1大士隊の一員として行軍しながら、言い様のない崇拝の念を感じていた。
皇主陛下に忠実な魔術師の偉大さについては散々教え込まれていたし、この国の支配体制を支えるものとしての重要性も知っている。
それでも魔術師の力を目の当たりすると、あらためてその力に畏敬の念を覚える。
がっちり兵士に囲まれた魔術師に歩調を合わせているために足取りは鈍いが、重いというわけではない。
既に二個大士隊は敵の陣地まで150フィフィク前後まで迫っているが、損害は2割に達していないのだ。
2割という数字は通常ならば全滅一歩手前の大損害だが、帝國の弾幕を前にしての前進ならば奇跡的な低さだ。
現に盾で囲まれた魔術師たちが詠唱を続け、隊列は崩れていない。
一人の魔導師が空間装甲、すなわち敵の弾丸に呪いのようなものをかけて本来よりも多くの空間を通ったと認識させる。
その結果、銃弾は全て500フィフィク(1500メートル前後)分の空気抵抗を余分に受けるという極めて高度な魔術だ。
その前方で五人の魔術師が一定の距離をとり、広範囲の結界を張る。
これは無条件で敵の弾を弾くというものではなく一定時間内に無効化できる運動エネルギーは定まっている。
効果が決まっている代わりに当初想定した時間内であれば効果は持続する。
このあたりにスルムが開けた斜面を進撃路に選んだ理由がある。
限られた結界の空間に出来るだけの兵士を詰め込むためだ。
まことに魔術師達は偉大だ、帝國の銃火の前に及び腰になっていた自分が恥ずかしい。

144 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:37:50 ID:7ouY3DVE0
後方からの魔術攻撃を受けつつも帝國人は射撃を続ける。
とはいえ、後方の魔術師も隊の後ろに着いてきているから精度、威力とも上がっているように見える。
目の前の隊で一人が頭を射ちぬかれ、二人が胴体に致命的な打撃を受ける。
空間装甲の影響を受けにくい上空から飛来した擲弾が魔術師の近くに落下しそうになるのを見て、ある兵士が擲弾を抱えてその身で爆圧を受け止める。
我が身を呈して魔術師を庇う事を誰も奇妙には思わない、シューエン隊の死に様に比べれば遥かに意義のある死だ。
あちこちでうめき声が聞こえ、カイレスキー自身も左肩に銃弾を受けたが歩みを止めるつもりはない。
じわじわと数を減らしつつ陣地から80フィフィク前後まで進んだところで右手に林が表れ、中央の帝國陣地からの死角に入ると魔導師が詠唱を中断する。
最後の一息のために魔力を補うべく、小物入れから魔力の詰まった魔石を取り出そうとすると一斉に護衛の兵士たちが盾を手に身を寄せて彼を守ろうとする。
短時間の機銃弾程度ならば持ち堪えられる、そう思って隊が停止したときだった。
帝國陣地にそれまでにない煌きがみえたのは。

そのときに至って漸く皇国兵は帝國陸軍というものを理解した、すなわち帝國においては陸軍の価値とは投射弾量と精度そして持続力によって評価されるということを、直感的に、だ。
帝國人は皇国からみれば確かに狂信者たちかもしれない、火力信仰という宗教のだ。
だがそれはこの異世界に適応するために止むを得ないことであり、そして将来満州の沃野で人員の目減りした兵力で共産主義者と殴り合う夢を捨てきられない彼らにとっては仕方のないことなのだ。

145 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:39:43 ID:7ouY3DVE0
三式-三式75ミリ速射砲-は帝國陸軍が手持ちの速射砲の性能に不満を抱き、転移前に入手した友邦独逸の7.5cm Pak 40を改良、量産したものだ。
ライセンス料?そんなものはいらないし、支払い先も判らない。
ともかく比較的安価な三式と、軽量化したとはいえ1300kgを超える重量級の速射砲を自由に機動させられるだけの帝國陸軍の機械化という後押しがあったからこそ歩兵部隊は大陸の奥深くに潜む魔物に対抗でき、そして上陸されたその日のうちこの山の中まで引っ張ってきているわけである。

皇国人の見せた芸術的な魔術に対する返礼として帝國人もまた魔法じみた技量を以って応えることにした。
中隊に二門用意された三式のうち片方が野砲を含めるならばこの道24年という熟練の2番砲手によって標準を合わされ、六式硬芯徹甲弾は2,246gの発射薬により初速1007m/secまで加速される。
4,360gの弾丸は866m離れた地点で皇国人の側面に展開された結界を無効化し、辺りの皇国兵を三人ほど道連れにする。

結界が無効化されたのは2秒にも満たない間だがそれで充分だった。
即座に片割れが射撃を行い、1,520m離れた魔導師とその護衛たちに六式硬芯徹甲弾を見舞う。
硬芯徹甲弾は砲弾自体の比重が小さいために遠距離になれば極端に残速の低下を招くという性質を持ち合わせている。
確かに六式硬芯徹甲弾は1,520m進む間に残速816 m/secまで低下していたが、それでも理論上90degで立てられた厚さ127mmの表面硬化装甲を貫く威力がある筈で、事実厚さ15oのミスリル銀製の326年式対魔力処理済防楯を貫くには過剰というべきだった。
軽金属製の外殻をミスリル銀に食い込ませながら、タングステンカーバイト製の弾芯はミスリル銀が異常を感知し浄化作用のある聖光を放つのを尻目に見つつ防楯を保持する兵士の胸を易々と突破した。

146 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:40:18 ID:7ouY3DVE0
無論それで終わりではない。
高温でスラッシュ化したミスリル銀を周りの兵士が浴びる中、弾芯は最後の運動エネルギーを振り絞り魔導師に到達しその右胸に浸透を始める。
肋骨をへし折りながら魔術漬けの生活のお陰で大して発達のしていない右胸の大胸筋を貫いて右肺を破壊して僧帽筋の付け根ごと肩甲骨を粉砕したあたりで飽きたらしく、漸く彼の体から去ってゆく。
肺胞に幾らか体に良くなさそうな重金属が混じったような気がするが、彼にはそれを気にするほどの余裕は失われていた。
胸に10センチを超える(背中には優に倍はありそうな穴が残されている)風穴を開けられて地に伏せた彼の周りには赤黒い血が染み出しており、瞬時に絶命したことは誰の目にも明らかだった。
速射砲による対人狙撃など滅多にお目にかかれるものではなく、ユフ戦争においては初めての事例であるが、魔導師(やられキャラだし面倒臭いから名前考えてませんでしたごめんなさい)は恥らうことも淋しがることもない。
速射砲による生身の魔術師狙撃というのは以後帝國陸軍の十八番になるのだから。

147 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:43:57 ID:7ouY3DVE0
ともかく、皇国兵の守護として一手に信頼を寄せられていた六人の常人離れした人間のうち一人、それも最も重要な一人が失われた。
帝國の陣地まで250メートルを切っているが少し歩けば右手の林が切れて側面から盛大な射撃を浴びることになる。
陣地に辿り着けるとしても、単純な結界だけでは当初の予定を遥かに超えた凄惨な損害を伴うものになるだろう。
撤退すれば隊列の変更中に帝國人が猛烈な射撃を展開してくれるだろうし魔術師達は魔力が切れ掛かっている。

正直戻るまでに全滅しないという保証はない。
遥か彼方で帝國兵が再び三式に弾丸を装填し、塹壕の兵たちは着剣して皇国兵を待ちわびている。
進むべきか退くべきか、それが問題だ。

ほら、言った通りだろ金森。
世の中には望んで痛い目にあいたがる奴がいるんだってな。
佐伯上等兵の薄ら笑いが小隊全体に伝播しかけていた。


投下終了

148 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/24(土) 10:59:50 ID:7ouY3DVE0
あ、付け加えると三式75ミリ速射砲も六式硬芯徹甲弾も実在しません(当然ですが)
スペックは7.5cm Pak 40を参考にいじったものです

149 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/24(土) 11:05:09 ID:X9DoCVGA0
(;゚д゚) ・・・
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル 
((((((((|||TДT)))))))ガクガクブルブルガタガタブルガタガクガクザクグフゲルググ

史上最狂の帝國陸軍、鬼や〜、羅刹や〜

150 名前:長崎県人:2007/03/24(土) 11:08:53 ID:2MxH4A12O
猫じゃらしさん投下乙〜

三式というから、防弾が日本機でも進んで用を為さずとなった三式弾でもぶっぱなすのか(多数の断片で防壁を飽和減衰させるのがいいんじゃね?)と思ってましたが、いい意味で裏切られましたw

あとなんか、亜欧州大◯記の人思いだしますた

151 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/24(土) 12:27:24 ID:Yhcr50Hw0
猫じゃらし氏乙〜

こっ、こんなのっ、僕らの帝国陸軍じゃないやい!

残弾を気にせず撃ちまくる軽機班とか、機械化された帝国陸軍なんてっw

152 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/24(土) 13:55:40 ID:xeYYcgrU0
>>151
違うよ!!戦後日本の軍国劣化バージョンなんだよ(ぇ

ともかく猫じゃらし氏乙です!
まあ人を野砲で撃ち抜くなんて非道で勿体無いことをする陸軍は
僕らの知る帝國陸軍じゃないですねw

153 名前:陸士長:2007/03/24(土) 21:17:27 ID:.7dW.cxo0
投下乙です。
速射砲で対人攻撃ですか。
ぢつは日本軍も米軍の37mmに結構ひどい目に遭わされてるですよ。
対戦車兵器としてはもはや時代遅れな37mmに榴弾込めてぶっ放した米軍も米軍ですが。
え、日本軍戦車相手なら37mmでも時代遅れじゃない?
……ええ、そっすね。

154 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/25(日) 00:43:03 ID:.aVtA7U60
いやいや、日本軍の戦車相手なら37mmでもオーバースペ(ry

あれ、目から汗が出るのはなぜだろう。

155 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/25(日) 03:45:57 ID:7ouY3DVE0
>>149さま 
>史上最狂
ええっと、即死だから人道的という言い訳は駄目ですか?

>>150長崎県人どの ありがとうございます

>亜欧州大◯記
ええっと、こんな非人道的な描写をする仮想戦記があるのですか?wktkしながら本屋に行って来ます。
御大、横山氏、霧島那智、志茂田、谷恒生くらいまでは読んだのですが今のところそれで手一杯です。(後ろ3人は仮想戦記の中で一番の売れっ子と聞いていたんですがどうもあわなかった。最初に読んだ平壌クーデター作戦が一番面白かったかな)

>>151さま ありがとうございます

>こっ、こんなのっ、僕らの帝国陸軍じゃないやい!
ええっと、高度成長を維持して昭和31年に突入しているので仕方がないというか何というか。

>残弾を気にせず撃ちまくる軽機班とか、機械化された帝国陸軍なんてっw
フィクションですから、ある程度夢見させてください。
母方の田舎が北陸でしてね…結構な数の親戚(曾祖父さんの世代ですが)が出征して帰ってきてないんですよ、第9師団で。
田舎の人たちロシア軍は全員機関銃を装備してたと思ってるらしいですね。
戦死した親戚の名前をもじった人を登場させていますが、彼には好きなだけ軽機を射ってもらってます。ご了承下さい。(第62聯隊と第9師団はそんなに酷い目にあわせる予定はありませんがその他は…)

156 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/25(日) 03:49:32 ID:7ouY3DVE0
>>152さま ありがとうございます

>違うよ!!戦後日本の軍国劣化バージョンなんだよ(ぇ
まさにそうです。
転移して十五年経った段階で、生産技術や物流とかいろいろ進歩していますが先端科学がかなり遅れてるでしょうし、外部からの刺激もないので今後もどんどん遅くなるかもしれません。

ですが軍国は良いとしても劣化バージョンでは困るわけで、産業基盤の整った頃に新たな風を吹き込むためにユフ戦記というわけです。
くろべえ氏の世界から逸脱していると思われるかもしれませんが、必要最小限に抑えようと試みているつもりです。
火葬戦記と言われようがプリントアウトされない限り燃やされるわけでもなし、末永くお付き合い願います。

>僕らの知る帝國陸軍じゃないですね
x=膨大な物資を必要とする機械化師団×牟田口陸相、という風には捉えられませんか?

>>153 陸士長殿ありがとうございます

え?日本軍戦車?太平洋戦線にですか?
装甲車が投入されて苦戦したらしいですけど戦車なんか投入されましたっけ?

>>154さま ありがとうございます

装甲車ですよ、37ミリじゃあ仕方ないですよ。







チラシの裏

『海皇記』『帆船‐その艤装と航海‐』を読みながらユウジルド海軍の艦隊運動をでっち上げたり、『戦争と資本主義』『日本戦争経済の崩壊』を捲りながら両陣営の資金調達に想いを巡らせたり、『イギリス資本主義発達史』を眺めながら皇国の経済状況を夢想したり、『三菱航空エンジン史』を枕代わりにして重爆のエンジンを妄想したり。
読みかけで本棚の肥やしになっている本を放置して新たな本を漁る、そんな土曜日でした。
海戦用の資料を探していたのに予定外の本を買ったお陰で『乾坤一擲、世界三大海軍激突〜フランシアーノ・ユウジルド連合か大日本帝國か〜』は無期延期と相成りました、悪しからず。
軍ヲタを始めてそろそろ一年、実に金の掛かる趣味です。

チラシの裏終了

157 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/25(日) 09:42:14 ID:U1uACm8A0
 猫じゃらし様、投稿乙です。

 帝國軍がドイツ軍の様な戦いぶりをしている!?
 畜生、なんて贅沢なんだ……羨まし過ぎますよ。

 自分もこういう戦争書きたいですね。どうも自分の作品は貧乏臭いんだよなあ。
 改訂版書いてても、書いててorz状態です。
 くろべえ世界昭和18年登場予定の一式中戦車改が、一式中戦車の機動力改善……というか重量過大で懸架装置が悲鳴上げてどうしようもない為に、前部装甲を25ミリにするなど思い切ったダイエットして登場、とかですからね……鬱だ。
 まんまチハですよ、これ。リベット止めから溶接になって車体強度が増しただけです。まあ装甲板をまともなヤツに差し替えた(F世界との交流その3参照)から、一応防御力そのものも改善していますが、余り意味無いです。九四式以外の37ミリにだって抜かれちゃいますから。機銃弾相手なら今のままでも十分ですからね……
 あ、機動力も15馬力/トンと九五式並に大幅↑か……もはや軽戦車だなあ。

158 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/25(日) 13:13:08 ID:0pA.by1A0
>くろべえ氏
いや、せめて30ミリに(汗)、溶接だと軽くできるしチハも当初は前面30ミリの予定だったと言いますし。

159 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/25(日) 13:55:44 ID:9jvkjHw60
>>26
かなりの遅レスだけど、メイリオだとちゃんと右が揃ってるお

160 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/25(日) 16:10:18 ID:KDnxdJYg0
猫じゃらし氏、乙です。
>速射砲による対人狙撃
ある意味日本的な名人芸かな。相手が人というよりある意味超人だから、こんなのもありですよね。

>仮想戦記
数が出るのは後ろ3人みたいな作品なんだそうです。
後ろ3人よりは、視界にある分だと谷甲州系3人(谷甲州、陰山琢磨、林譲二)あたりとか、
「ベルリン1945 ラスト・ブリッツ」、「旭日旗、征く!」とか良いかなあ。

>高度成長を維持して昭和31年に突入
空襲で焼けたとか、航空禁止令とか無いんですね。そういえば。
そろそろスーパーカブが出てるかも。

161 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/26(月) 02:52:03 ID:0hKdo7Ps0
>>くろべえ殿 ありがとうございます

…25ミリ、ですか…
昭和18年といえばX号中戦車がデビューしているのに、こんなのと比べたらもう…

>>159さま
メイリオということはビスタを使っている方は問題なく見れるわけですね。
ご報告感謝します

>>160さま ありがとうございます

>数が出るのは後ろ3人みたいな作品なんだそうです
なんてこった、前二人みたいなのが好きな私は異端児…
ともかく情報提供ありがたいです、これまた財布の回復状況と相談して本屋に行ってまいります

>スーパーカブ
高度成長における一つの象徴ですよね

162 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/26(月) 20:04:25 ID:kkCqJ72c0
>なんてこった、前二人みたいなのが好きな私は異端

いやその、軍板仮想戦記スレに行って頂ければ分かりますが後ろ三人はそれぞれ
「公魚」とか「まともじゃない方の谷先生」とか別称で呼(r
ぶっちゃけ、軍オタの評価が高い仮想戦記は売れな(r
あと榛名高雄と名村烈は霧島那智の変名とゆーか悪名立ちすぎたからPN変(r

前二人が気に入られたなら、吉田親司と桂令夫(入手困難)もオススメします

163 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/26(月) 21:06:41 ID:0hKdo7Ps0
>>162さま

おお、情報サンクスです
>ぶっちゃけ、軍オタの評価が高い仮想戦記は売れな(r
マジですか、orz
かくして軍ヲタは煉獄を歩(r

164 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/26(月) 23:24:50 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 外伝1「カナ姫様の細腕繁盛記」

「監視哨より伝令! 左陣の『間隙』に敵が現れました! 至急増援を、とのことです!」

 それは正に最悪の報告であった。

 僅か1台の『荷車』に数名の兵では、とてもあの『間隙』を守り切れない。至急援軍を送る必要がある。
 ……が、シュヴェリン軍には最早差し向けるべき戦力など存在しなかった。
 既に副官を始め本陣付の従兵や輸送隊の輜重兵まで抽出している。現在本陣にいるのは、軍司令官たる自分の他輜重兵1名に伝令兵2名のみ。後はカナ姫と御付の侍女達、文官たる書記官と財務官が合わせて10名いるに過ぎない。予備の武器だって払底している。

 ――だが、送らない訳にはいかない。

 ブッデンブルク将軍は素早く抽出できる戦力を計算する。

 カナ姫と御付の侍女達は問題外だし、全般の指揮をとる自分も無理だ。各防衛線との連絡を担う伝令兵、竜を御す輜重兵からもこれ以上抽出出来ない。
 ……ということは、書記と財務官を出すしかないだろう。が、文官である彼等に如何程の働きが期待できる? 武器も碌なものは残っていないし、第一指揮官が――

 そこまで考えた時、鬼気迫る表情の平野少尉がやって来た。

「俺が行く。奴等を俺に殺させてくれ」

 そのただらぬ様子に、ブッデンブルク将軍は危険な匂いを感じ取る。
 が、選択の余地は無い。そして何より、彼の手にある三八式歩兵銃は魅力的だった。

165 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/26(月) 23:25:22 ID:U1uACm8A0
「……いいだろう」

 ブッデンブルク将軍は頷くと書記官と財務官に武器を持たせ、平野少尉に貸し与えた。





――――左陣『間隙』。

 左陣の『間隙』を襲ったのは、メクレンブルク軍第八歩兵隊だった。

 メクレンブルク王は近衛隊を自分の護衛専用とする他、予備隊として2個歩兵隊(第一、第八)を手元に置いていた。
 要するに、今まで戦っていたのは第二〜第七の6個歩兵隊のみ、ということだ。尤も、彼等はそれぞれほぼ同数の同盟軍をその指揮下に置いており、各隊400〜500名――内戦闘員は250名前後――にまで膨れ上がっていたのではあるが。

 これがシュヴェリン軍の各隊(各44名、計5個)に一斉に襲いかかったのだから堪らない。僅かな砲兵や本部人員からの援軍では焼け石に水である。各隊は10倍近い敵軍の波状攻撃に晒され、たちまち疲弊していく。
 それを感じ取ったメクレンブルク王は遂に予備隊の投入を決意。第一、第八歩兵隊に前進を命じた。
 ただし、正面に投入するのではなく迂回攻撃。もはやシュヴェリンに兵が無いことを察してのことだった。

 こうして第一歩兵隊は右陣を、第八歩兵隊はやや遅れて左陣を迂回。『間隙』に出現した、という訳である。

166 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/26(月) 23:25:53 ID:U1uACm8A0
 第八歩兵隊は236名。彼等は防盾を押し出し前進する。
 この時、左陣『間隙』を守るは僅か1台の『荷車』に銃兵3、これに平野少尉以下11名の増援が加わった計14名。投射武器は三八式歩兵銃1、マスケット銃3、弩と短弓が10。
 ……考えるだけでも馬鹿らしい程の戦力差であった。

 唯一の頼みの綱は一挺の三八式歩兵銃だろう。三八式歩兵銃は、使いようによっては一挺で銃兵一分隊以上の働きをすることが出来る。
 平野少尉はただ『敵を撃て』とだけ部下に命じると、専ら銃兵……いや、狙撃兵として戦うことに専念する。

 タンッ!

 三八式歩兵銃を構え、引き金を引くと同時に馬上の騎士が一人、崩れ落ちた。

 タンッ! タンッ!

 平野少尉は次々と弾丸を消費し、装弾子を入れ替えていく。
 志村伍長は弾を出来るだけ節約するために、狙い易い敵から撃っていった。
 が、平野少尉が狙うは敵指揮官、つまり騎乗士だ。たとえ一発で仕留められなくても、同じ相手に二発三発と放つ。
 ……中隊長殿(有馬大尉)からは、『騎乗士や段列の軍夫を極力殺傷しないこと』との命令が隊の全将兵に伝えられていたが、何構いやしない。
 志村とてこうしていれば、もしかしたら死なないで済んだかもしれないのだから。





――――第八歩兵隊、本営。

「くそっ! 卑怯者め!」

167 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/26(月) 23:26:24 ID:U1uACm8A0
 第八歩兵隊隊将ガストン・フィリップは、そう吐き捨てた。

 敵の狙撃手は、卑怯にも馬上の士を集中的に狙ってくる。
 馬に乗ることを許された高貴な者を、まるで鳥獣の様に――それも狙って――撃ち殺すとは、なんたる無礼! なんたる侮辱!

「あれ程の業を持ちながら…… 下衆が! 手練れとはいえ所詮は銃手か!」

 敵の狙撃手は見える範囲の騎乗士を片付けると、今度は徒歩の中下級指揮官に目を付けた様だ。僅かでも指揮しようとした者を次々と狙い撃ちしていく。
 ガストンが無事なのは、距離が離れていることに加え、鉄板二枚重ねの特製重防盾に護られているからに過ぎない。

「幸い風が弱まりました。煙幕を展開し、煙に紛れて突入しますか?」

 ガストンの私臣である軍師が進言する。
 多少煙いかもしれないが狙撃されるよりはマシだろう。萎縮した指揮官達の士気が回復すれば、後は数で押し切れる。
 ……が、ガストンは頭を振った。

「誇り高きフィリップ家の当主が、そんな猟師風情の真似ができるか!」

「……しかし、槍分隊長は二人共やられました。このままでは兵の士気も指揮系統も持ちません」

「至急、本営より臨時指揮官を派遣して現状を回復させろ!」

「しかし、それでは同じことの――」

「騎士には騎士の戦い方があるのだ!」

168 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/26(月) 23:26:58 ID:U1uACm8A0
 騎士には何より守るべきものがある――そうガストンは主張して譲らなかった。





――――第八歩兵隊、弓分隊。

「畜生、奴等いい銃持ってるよなあ…… 一体何処で手に入れたんだ?」

 第八歩兵隊弓分隊長カミーユ・フィリップは、敵の銃(三八式歩兵銃)の性能に感心した様に呟いた。
 防盾すら貫通するその威力も勿論だが、何よりその射程と発射速度は脅威以外の何物でもない。無論、その命中精度もだ。

「あんな銃が沢山あれば、弓も槍も必要無いな? ドニ」

「銃は戦士の、男の武器ではありません。卑怯者の道具です」

 フィリップ家郎党のドニは、若旦那の言葉を真っ向から否定的する。

「……この戦力差で卑怯も糞もないと思うが」

 カミーユは苦笑した。
 あのちっぽけな『砦』に潜む十人やそこら相手に、1個歩兵隊をぶつけていることを考えれば、如何考えても卑怯者はこちらの方だろう。
 ……無論、謝罪も反省もする気は無かったが。

「しかし若旦那。将たる者が馬から降りて宜しいので? この様な振る舞いが大旦那様に知れたら……」

169 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/26(月) 23:27:34 ID:U1uACm8A0
「降りねば死ぬさ!」

 カミーユも騎乗士だが、狙撃は受けていない。危険を感じて馬から降りて身を隠しているからだ。
 が、こうもあっさり答えるあたり、やはりカミーユという若者は只の若旦那ではないだろう。どっち方向で『只者でない』かは判断に苦しむが……

「銃分隊長様が討ち死されました!」

 何処からか悲痛な声が響き渡る。

「……まったく! どいつもこいつも俺の忠告を無視しやがって!」

 カミーユは忌々しそうに吐き捨てる。

 忠告とは、『下馬して身を隠せ』とういうものだ。
 まあ、鼻で哂われて終わりだったが。

「やばいな…… 残った分隊長は俺だけか……」

「その様ですな」

「親父のことだ。俺に手本を見せろ、とか言って突撃命令を出しかねないぞ」

 死にたくないから一番敵から離れている弓兵になったのに、突撃なんて冗談じゃあない、とカミーユは頭を抱えた。

「……可能性はあります。十分に」

 親父、とは第八歩兵隊隊将ガストン・フィリップのことである。
 同じフィリップ姓からも判る様に、ガストンとカミーユは親子なのだ。

170 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/26(月) 23:28:13 ID:U1uACm8A0
「アレはまだ出来ないのか?」

 カミーユは祈る様に尋ねる。

「組み立ては終わりました。後は調整と試射で終わりです」

「試射はいい、調整が終わったら即使用する」

「ですが、試射は調整を行う上でも……」

「構わん」





――――『荷車』。

「はははっ! 蛮族が文明人に勝てるかよっ!」

 周囲を全く気にせずにそんな罵声を上げながら、平野少尉は射撃を続ける。
 始めは指揮官だけを狙っていたが段々と面倒になり、今では無差別に狙撃する様になっていた。
 ……いや、違う。
 面白い、と思える対象を狙っていたのだ。

 わざと一人の兵の太腿を撃ち抜き、動けなくする。
 それを助けようとした仲間を次々に狙撃していく。
 そして最後に、太腿を撃たれながらも必死に這って逃げようとする兵を仕留める。
 ――まさに鬼畜の所業である。
 が、平野少尉は笑いながらそれを実行した。彼は敵を……いや、この世界の人間を同じ人間と見做していなかったのだ。
 平野少尉にとり、最早この世界の人間は獣でしかない。
 復讐心と戦場の空気に蝕まれ、完全に正気を失っていたのである。

 ドンッ!

 ……その報いは、直ぐにやってきた。
 直径数cmもある丸太の様に巨大な矢が、平野少尉を串刺しにしたのだ。

171 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/26(月) 23:29:12 ID:U1uACm8A0
 投下終了です。
 ああ、さっさとこの低レベルな戦いを終わらせたい……

172 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 00:04:42 ID:X9DoCVGA0
(ノ∀`)アチャー。どーりで志村しか名が残らない訳だ。(マテ
終わりには九七式自動砲、八十九式戦車での狙撃おば。

・172はふぇんだーとのあんこくめんにおかされた

173 名前:名無し三等兵@F世界:2007/03/27(火) 00:08:21 ID:Ft8EYybM0
くろべえさん、投下乙です。

平野少尉、感覚が麻痺してきてますね。
帝國兵の評価が落ちないうちに有馬隊に登場して欲しいですね。
弾切れより心配です(笑)。

しかし、三八式歩兵銃が超兵器に見える戦場だなあ(事実そうなのだが)。
戦車が登場して、発砲したら大パニックだろうなあ。

174 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/27(火) 00:12:27 ID:0hKdo7Ps0
くろべえどの投下乙です

まさに鬼畜、まさに外道。
帝國人の風上にも置けませんな、きっと天罰ですよ

>・172はふぇんだーとのあんこくめんにおかされた
只今続きをかいてます
あと暫くしたら投下できる…と思う

175 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 00:18:03 ID:0fc/yQpg0
投下乙です。

平野少尉が血迷ったのも分かりますよ。
私も先日、Civ4で斥候に出した歩兵が蛮族の長弓兵と弓騎兵に殺られてしまったのが頭にきて、
ついカッとなってワールドビルダーでガンシップの大スタックを配置して虐殺かましましたよ・・・

176 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 00:36:52 ID:oOhpjWuU0
意図は兎も角、内容は一概に否定出来ないってのがまたアレだなぁ
指揮官狙いは狙撃の常套だし、殺さずに負傷させるのも救助させたり
餌にしたり出来る訳で、決して悪い事ばかりじゃない
とは言え、やり方とやった相手が悪すぎましたかね
卑怯を卑怯と言い捨てる時代に卑怯をやった者の末路って感じで

くろべえさん、投下お疲れ様です
毎回楽しみに待ってますのでご無理の無い程度に頑張って下さい

177 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 01:17:56 ID:Pusv3SwY0
全く問題ないように思えるのは俺だけか?

「友釣り」は戦場にある狙撃兵の活用法の一つだし、
狙撃地点を変えないで長く撃ちすぎってのは確かに問題だけど、
本職というわけではないんだから大目に見ようよ。

後はまぁしょうが無いんだけど一人で撃ってりゃ目立つわな。
もう何人か居れば脅威度が分散して、
さらに言えば戦果拡大して相手に後退をちらつかせることも出来たかもしれないのに。

178 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 02:01:52 ID:QF9ZmqI20
38式が超兵器に見える架空戦記なんて初めて見ました(゜ーÅ)
第二次大戦では完全に時代遅れな銃だったのに。

戦車や軽機への各国の反応も楽しみです!

179 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 02:13:04 ID:6lnMp4Bc0
>>177
フルメタルジャケットでやってたな

180 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 05:25:36 ID:eCGKAGGM0
投下乙です。
銃後のことを考えて指揮官ねらいを禁止したんでしょうが、
ま、こうなるとしょうがないんでしょうね。
本来なら爆撃でカタが付いて、闘う必要のない人だったんでしょうから。

しかし、誤爆した海軍はやはり責任問題になるんでしょうかね?

181 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 07:34:29 ID:6vDlZqZE0
弾70発で敵兵400〜500名は撃てません。
まず指揮官を殺して「突撃」命令の伝達を妨ぎ、
「友釣り」で戦意喪失と戦意の高い者(突撃を先導する者)を殺す。
1:10の戦力差で数に呑み込まれない為には他の手段は思い付きません。
シュヴェリン軍の危機を救う為大戦果と引換えに戦死した2名は、
今後帝國の外交に大いに寄与するでしょう。カナ姫も見ていました。

182 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 07:44:42 ID:ixzqgOBY0
>>178
時代遅れ・・・?

183 名前:中将:2007/03/27(火) 08:09:01 ID:8WmkHr.Q0
くろべえ様、投下乙です。
平野少尉が鬼畜になってますよ。
ま〜、次で戦車が戦場に乱入してきて撃ちまくりそうですね。
次回の投下を楽しみにしてます。

184 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 09:55:11 ID:oVuuhHNoO
投下乙です。

つか平野少尉も同じ結末かよ
なんというか自分達の持っている武器への過信というか
相手に対する侮りが帝國軍に蔓延してる気が……

185 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 10:16:42 ID:lJcNaVNM0
大丈夫。どこかと戦う場合必ず相手を侮るのが帝國クオリティー

186 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 11:12:20 ID:zgY5PHhw0
しかし死守せよと言われると最後まで戦うのも帝國クオリティー

187 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 14:30:30 ID:h1m5DB/E0
そして上級指揮官はスタコラサッサなのも帝國クオリティー

188 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 14:38:43 ID:9u5l/Ce.0
上に行けば行くほどアホになる軍隊。それが皇軍クオリチー

189 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 14:45:29 ID:bJFcWGuQ0
>>181
いや現代から見たら確かに評価されるんだが

この地方の感覚だとたとえ味方のシュヴェリンでも
正当に評価されないだろうなぁ

190 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/27(火) 14:55:14 ID:U1uACm8A0
>>172
 172様、有難うございます。

>(ノ∀`)アチャー。どーりで志村しか名が残らない訳だ。(マテ
 少し話を合わせて見ました(笑)
 あと、帝國人の蔑視も表現したかったので。

>終わりには九七式自動砲、八十九式戦車での狙撃おば。
 九七式自動砲はありませんが、九〇式57mm戦車砲でよければ。

>>173
 名無し三等兵様、有難うございます。

>帝國兵の評価
 やはり帝國人の差別心は避けて通れないと思うのですよ。シナや朝鮮よりも低く見てるだろうなあ〜
 ま、かなりフィルターをかけてソフト化する積りですが……

>三八式歩兵銃が超兵器
 考えてみれば、銃一つとっても凄い進化振りですよねえ。

>>174
 猫じゃらし様、有難うございます。

>まさに鬼畜、まさに外道
 怒りのあまり本音が増大した、という訳です。
 土人みたいに考えていましたから。

>>175
 175様、有難うございます。

>Civ4
 あれ面白そうですよね……
 そういえばSS書く様になってから、ゲームやらなくなったなあ。

191 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/27(火) 14:55:48 ID:U1uACm8A0
>>176
 176様、有難うございます。

>卑怯を卑怯と言い捨てる時代
 まあ『祖父王の登場により進歩した』と言っても所詮は鎌倉時代とか中世の感覚ですからねえ。
 次のSSで、この辺り少し補足してみました。

>毎回楽しみに待ってますのでご無理の無い程度に頑張って下さい
 有難うございます。二次の梃入れもとり合えず終わり、なんとか復帰できました。

>>177
>狙撃地点を変えないで長く撃ちすぎってのは確かに問題だけど、
 移動する暇も場所も無いので、とり合えず安全と思われる『荷車』内に立て篭もりましたが、頭に血が上っていたことと視界の関係から……
 しかし如何に超兵器持ってても、一人では何も出来ないですねえ……志村と二人で戦えば少しはマシだったかも。

>>178
>38式が超兵器に見える
 火縄と比べて発射速度は5倍、有効射程は10倍以上。威力も比べ物になりませんからねえ。立派な超兵器ですよ。

>>180
 180様、有難うございます。

>ま、こうなるとしょうがないんでしょうね。
 有馬大尉は頭を抱えて言い訳考える羽目になるでしょうねえ……

>しかし、誤爆した海軍はやはり責任問題になるんでしょうかね?
 世話になってる関係上、陸軍としては言い出しつらいでしょうね。
 地図の問題もあるし。

192 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/27(火) 14:56:59 ID:U1uACm8A0
>>181
>シュヴェリン軍の危機を救う為大戦果と引換えに戦死した2名は、今後帝國の外交に大いに寄与するでしょう。
 帝國銃兵の力を見せ付けたのは大きいです。南部戦線での戦果と合わせ、今後帝國の外交を有利に出来る(脅しの)材料となるでしょう。

>>183
 中将様、有難うございます。

>次で戦車が戦場に乱入してきて撃ちまくりそうですね。
 ごめんなさい。出せませんでした……orz

>>184
 184様、有難うございます。

>相手に対する侮り
 所詮土人、なんて考えてますから。気分は冒険ダン吉?

193 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/27(火) 14:57:50 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 外伝1「カナ姫様の細腕繁盛記」

 平野少尉を串刺しにした巨大な矢は、バリスタから撃ち出されたものだった。
 シュヴェリン軍が攻城戦用として大砲を導入していたのと同様、メクレンブルク軍も攻城戦用にバリスタを導入していたのである。
 ……尤も、『王国が導入した』という訳ではなく、あくまでカミーユの個人的な買い物ではあったが。


 バリスタとは据え置き式の巨大な弩のことであり、弩砲ともいう。
 槍、或いはそれ以上に巨大な矢を高速で撃ち出すことが出来、その大破壊力でもって敵陣の構造物を破壊する攻城用兵器である。
 が、今までフランケルでは殆ど使われることがなかった。

 何故か?
 理由は幾つも挙げることが出来るだろう。

 先ず真っ先に挙げられるのは『技術力の不足』。銃や砲と同様、フランケルの技術力ではバリスタを造り出すことが出来なかったのだ。
 設計知識――特に梃子や各部のすり合わせに関する――も、熟練した工人も、何もかもが不足していた。何より、消耗品である『城壁や城門の貫通が可能な超硬度の鏃』や『巨大な大張力弦』を造り出すことが出来ないのは致命的だった。
 ……つまり、バリスタを入手するには他文明圏から輸入するしか無い訳だが、シュヴェリンの先王登場以前は他文明圏との交流が乏しく、とてもこの様な大兵器を輸入出来る様な状況では無かった。
(信頼関係も無い様な国に、バリスタの様な攻城兵器を売ってくれる筈も無いし、当時は輸送手段を探し出すだけでも一苦労する様な状況だった)

 二つ目は『移動の困難さ』。大重量兵器であるバリスタは、一頭の馬で牽引するには余りに重すぎた。
 フランケルには竜が生息しないため、非力な馬――力は帝國馬の半分以下――で運搬するしかなかったが、駄載どころか牽引すら不可能だった。それでも多数の馬を連結すれば可能だったかもしれないが、馬を連結する知識も乏しかったのだ。

194 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/27(火) 14:58:27 ID:U1uACm8A0
 道路状態の悪さもこれに拍車をかける。先王登場以前のフランケルの道路状況は非常に劣悪であり、仮に複数頭立てでバリスタを牽引出来たとしても、とても通れる様な状態では無かった。この道路状況の悪さは国防上からも当然とされ、特に国境周辺の状況は酷いものだった。

 三つ目は『必要性の乏しさ』。
 小勢力の乱立するフランケルでは城も貧弱であり、また築城技術も低かったため、この様な大威力兵器は『牛刀』とされていた。
(小勢力故に高価かつ大重量のバリスタ運用が困難だったことも否定出来ない)

 ――まあ、この様に様々な高いハードルが存在していたのだ。
 が、シュヴェリンの先王が登場して以降、この前提が幾つも崩れてきた。

 他文明圏との交流が活発化し、バリスタの様な大兵器の輸入も不可能ではなくなった。
 道路整備が行われ、フランケル中の国々が統一された規格の道路で連結された。
 上記の改革により各国の経済規模が拡大した。
 戦術思想も高度化し、戦争も従来の様に単純な『正面からの殴り合い』ではなくなった。
 ……つまり、バリスタを受け入れる下地が出来たのだ。あとはきっかけだけだった。

 とはいえ、やはりシュヴェリンの先王の影響からか、フランケルの国々は野戦偏重の意識が強く、今一つバリスタの導入意欲が低かった。
 まあそりゃあ『あれば良いな』位は思っていただろうが、常備軍や鉄砲の整備に比べれば遙かに優先順位が低かったのである。
 如何に『経済規模が拡大』したとはいえ限度があるし、未だに多くの国々はシュヴェリンへの賠償金の後遺症を引き摺っている。とても全てを手に入れることは出来なかったのだ。

195 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/27(火) 14:59:03 ID:U1uACm8A0

「初弾命中!」

「次弾装填、急げ!」

 第八歩兵隊弓分隊では、湧き上がる声援を尻目にカミーユの郎党達――王国軍人ではない私兵――が忙しく動き回っていた。
 彼等は数人で梃子を巻き上げて弦を引き絞り、丸太の様な矢を装填する。

「次弾装填完了!」

「撃て!」

 ドンッ!

 巨大な音と共にバリスタから矢が撃ち出される。
 矢は吸い込まれる様に『荷車』に命中し、貼り付けられた鉄板もものとせず側面を貫通する。
 再び歓声が湧き上がる。

「銃声が弱まりましたな」

 何より、あの独特の音を発する銃の狙撃が無くなった。

「やった……か?」

「おそらく。 ……しかし、凄まじい兵器ですなあ」

「だろう! これはいいものだぞ! 掘り出し物だっ!!」

 ドニの感嘆に、カミーユは子供がとっておきの玩具を自慢するかの表情で笑う。

196 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/27(火) 15:00:01 ID:U1uACm8A0
 冒頭でも言った様に、このバリスタは官品ではない。カミーユの私品である。
 他文明圏へ旅行――これは冒険と同義語だ――の際にある老発明家から買い取った物だ。
 ……無論、本来なら彼個人で買い取れる様なシロモノでは無いのだが、そこはそれ、足元を見て激安で買い取ったのだ。
(まあそれでもバカ高で、御蔭で金を使い果たし、冒険は数日で終了する羽目になったのだが)

 このバリスタは只のバリスタではない。他のバリスタと違い、分解して運搬することを前提に造られている。
 この為はめ込み式に造られており、分解結合に工具も釘もネジもいらないという優れモノだ。各部の重量も最大でも2と1/2プード(約41s)と、非力なこの世界の馬(駄載重量2〜2と3/4プード)でも駄載できる様に設計されている。
(ちなみに帝國馬の駄載重量は6〜8と3/4プード)
 
 が、この利点は欠点の裏返しでもある。
 先ず各部の最大重量を低く抑えているため、どうしても小型になってしまうのだ。加えて設計の制約上、同重量の牽引式と比べて低威力だ。これでは低レベルの防御施設しか破壊できない。これは攻城兵器としては致命的だろう。また、『分解結合が容易』ということは必然的に構造が弱いということであり、連続射撃が困難である上、数回射撃すると再調整が必要となる。これでは野戦にも使えない。
 ……こうまでして『馬への駄載』に拘る必要性を、多くの文明圏は持ち合わせていなかった。竜ならこの程度のバリスタ、分解せずとも駄載出来るのだから。
 当然、このバリスタは何処からも相手にされなかった。かくしてこの発明で財産を使い果たした老発明家は、寿命よりもやや早く棺桶に片足を突っ込みかけ、そこをカミーユに救われた……という訳だ。

 カミーユは迷わず財布の底を叩き、このバリスタを買い上げた。
 フランケルの築城技術ではこの程度の威力でも十分な効果が期待出来るし、何よりその機動性の高さは魅力的だったからだ。何より、面白そうな玩具だった。
 ……まあ、単に老人が気の毒だったから、という理由も否定出来なかったが。

197 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/27(火) 15:00:41 ID:U1uACm8A0

 兎に角、バリスタは期待通りの働きを示した。銃弾をも跳ね返す『荷車』の装甲を貫き、見事『魔弾の射手』を倒したのだ。
 平野少尉は用心して荷車に立て篭って狙撃していたのだが、やはり同様に矢で射殺されたのである。
 油断していたこともあるが、視界の狭い『荷車』内からは、隠蔽されたバリスタを発見できなかったのだ。

「しかし、初弾で仕留められたのは僥倖だったな!」

 カミーユは冷や汗をかきながら呟いた。

 この反撃には慎重の上にも慎重を期している。入念に擬装――この考え自体がフランケルでは異端だ――し、更には陽動作戦で敵の注意もひき付けた。が、もし初弾を外していたら、そうでなくてもあの銃を沈黙させられなかったら、間違いなく不味いことになっていただろう。バリスタには鉄製の防盾が付いているが、とてもあの銃の弾を防げるとは思えなかった。 ……つまり、次弾を装填するまでの数分間、あの銃の洗礼を受けることになるのだ。それは考えるだに素晴しい想像だった。

「あの射手はやり過ぎました。だから天に見放されたのですよ」

 カミーユの言葉に、ドニは吐き捨てる様に答えた。
 ……そこには、志村伍長に対して持った様な敬意は全く含まれていなかった。
(志村伍長が射殺された時、ドニは神の名を呟き悼んだ。それは敵とはいえ、卑しい銃手とはいえ、堂々と身を晒して誇り高く戦った者への当然の敬意だった)


 その時、隊本営から伝令の騎馬が駆けて来た。

「伝令! 『只今の弓術、見事なり! 弓分隊長は第二槍分隊も指揮下に入れ、あの荷車を攻略せよ!』」

198 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/27(火) 15:01:12 ID:U1uACm8A0
 そして、お父上は大層お喜びでしたよ、と付け加えて駆け戻る。
 ……どうやら、親父殿は下馬やバリスタの擬装に関しては知らないらしい。そうでなければこんなベタ褒めしてくれる筈も無い。

「やりましたな! 大旦那様は若に『手柄を立てろ』と仰っているのですよ!」

 何時の間にか、第八歩兵隊の進撃は停止している。指揮官の再配属による再編、ということもあるだろうが、カミーユに譲ったのだろう。

「……なんかこそばゆいな」

 カミーユは照れ臭そうに鼻を掻く。 ……が、悪くなかった。
 気付くと、先程まで下馬した自分を呆れた様に見ていた兵共が、自分を尊敬の眼差しで眺めている

「次弾発射用意! 槍兵は突撃準備に入れ! 弓兵は支援射撃準備!」

 照れ臭さを隠すため、カミーユは大声を張り上げた。
 士気と統制を取り戻した兵が、その言葉で一斉に整列する。

「一部構造が緩んできました! 再調整が必要です!」

「……二発で緩んだか。ま、仕方が無いな。再調整を急げ!」

 カミーユは苦笑しつつ頭の中で素早く計算し、結論を出した。

 年には念を入れ、もう一発撃とう。突撃はその後だ。これで損害は極限まで減らすことが出来るだろう。
 ……ああ、あの銃は是非手に入れたいな。どんな銃か見てみたいし、あれを献上すれば点数稼ぎにもなるだろう。壊れていなければ良いが。
 あの『荷車』を突破すれば敵本陣だ。

 ――この戦い一番手柄か……悪くないな。

 何もかもが上手くいっている。カミーユはそう信じて疑わなかった。

199 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/27(火) 15:01:50 ID:U1uACm8A0
 投稿終了です。
 アレ? 戦車ハ?

200 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 15:32:40 ID:h1m5DB/E0
くろべえ氏乙ー


      ☆ チン     マチクタビレタ〜
                        マチクタビレタ〜
       ☆ チン  〃 ∧_∧   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
        ヽ ___\(\・∀・) < 有馬大尉の部隊到着マダー?
            \_/⊂ ⊂_ )  \___________
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /|
       | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|  |
       |  愛媛みかん  |/

201 名前:中将:2007/03/27(火) 15:34:41 ID:Z7ScOJ960
くろべえ様、投稿乙です。
大変だ!シュベリン軍がやられそうになってる。
そこに戦車が現れ、主砲を撃ちまくり、敵を撃破する!
次回の投稿をとても楽しみにしています。

202 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 16:32:44 ID:8RNT3GbA0
投下乙です。 志村と平野の差がすごい…

ところでバリスタってのはアーバレストとは別物なんですか?

203 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 16:54:14 ID:V/FCcmwoO
有馬大尉は同朋が二人殺されたのを知ったらブチ切れるのかな?

「有馬大尉の逆襲」はどれくらいのものになるのかな?

204 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 17:11:56 ID:CYN8RaNM0
>>202
wikiが正しいかどうか知らんが。

ttp://ja.wikipedia.org/wiki/バリスタ_(兵器)

205 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 17:15:30 ID:pYNyLz2.0
アーバレストとバリスタは同じもんじゃないか?
たぶん国の違いとかで読み方がちょっと違った結果とかそんなんだとおもう。

206 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/27(火) 23:30:18 ID:5wHaWlEk0
新紀元社のTruth in Fantasy「武器事典」(市川 定春著)によれば、
Arbalestは、よく十字軍とかで使ってる先っちょに足ひっかける金具がついたクロスボウ。
バリスタは、元々(大型の)弩砲などの投射兵器全般を指したのではなかったかと。
(投石器はオナゲルだっけ?)

この見解だと、違う代物だな。

207 名前:名無し三等兵@F世界:2007/03/28(水) 00:07:54 ID:Ft8EYybM0
くろべえさん、投下乙です。

最後の一行から、次こそ戦車が到着すると信じて良いですよね!

ただ、不安になったのは、八九式中戦車の装甲がバリスタにやられないか、ということです(苦笑)。
正面なら大丈夫でしょうが、側面や背後から撃たれたら・・・
・・・、弾き返せますよね?

208 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/28(水) 00:11:32 ID:PrNDtOqYO
スルメとアタリメくらいの違い

209 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/28(水) 00:35:04 ID:Pusv3SwY0
弓のでかくなったような形式のカタパルトがバリスタで太矢や石弾を撃つ。
弓がでかくなったものがアーバレストで鏃の付いた矢を放つ。

バリスタ≧アーバレストだが大差ないな。
対帝国戦車ならばよほどの近距離じゃないと横よりも上から、重量を生かしてくるので貫通されそうだが。
もし貫通しなくてもHESHみたいに内部剥離で乗員殺傷は確実かな。

210 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/28(水) 01:12:04 ID:VkvziuuA0
初めてココに来ましたがついつい一気に読んでしまいました。
作者さんがたに感謝!

>160に加えて 内田祐樹 中岡潤一郎も悪くないかと
新刊は作者さんの為に新品で買わないといけないけど
発売後数年たったものは新古書店で探せば
それなりに安く買えるので一つの手かと
亜欧州とかはよく見かけます。

211 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/28(水) 09:08:47 ID:U1uACm8A0
>>200
 200様、有難うございます。

>有馬大尉の部隊到着マダー?
 多分、きっと、次には……

>>201
 中将様、有難うございます。

>大変だ!シュベリン軍がやられそうになってる。
 シュベリン軍の戦術は堅実ではありましたが、やはり堅実であるが故に最終的には数の差に押し切られてしまいました。

>>202、204〜206、208〜209
 202様、有難うございます。

>ところでバリスタってのはアーバレストとは別物なんですか?
 どうでしょうね? 基本的には同じものだと思っていましたが。
 ……ただ、バリスタの方がなんとなくイメージ的には大きそう。

 今回出てきたバリスタは、山岳戦用の軽量かつ高機動な弩砲です。イメージ的には帝國軍の大隊砲かな? 車輪や防盾も付いてますし。
 『軽量』とはいえ、それはあくまで『攻城用としては』の話で、弦は数人がかりで巻き上げる本格的なものです。

>>203
>有馬大尉は同朋が二人殺されたのを知ったらブチ切れるのかな?
 現在、八九式のあまりのボロさにブチ切れております。

212 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/28(水) 09:09:18 ID:U1uACm8A0
>>207
 名無し三等兵様、有難うございます。

>八九式中戦車の装甲がバリスタにやられないか
 このバリスタ、攻城用としては比較的非力な部類ですから、多分……きっと……

 ぶっちゃけ、鏃の硬度が足りないから無理です。
 けど、列強が保有している様な強力なヤツ(対戦竜用)だと九五式以下は確実に抜かれます。少なくとも側面は。

 そういえば、八九式の前面装甲が『中国兵の7.7o破甲弾で抜かれた』なんてよく聞きますが、幾らなんでも17oの鋼板が抜かれるなんて有り得ないと思います。幾ら鋼板に問題があったとしても。
 多分、視察孔を覆う部分(装甲薄い?)を狙われたのではないかなあ……

>>210
 210様、有難うございます。

>ついつい一気に読んでしまいました。
 ここ程戦記SSが豊富な所は少ないですからねえ。しかも皆様知識が凄いから、自分もいい勉強になりますよ。

213 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:30:12 ID:GVRAqYS60
>>210さま 多謝であります

くろべえどの投下乙です

>九五式以下は確実に抜かれます
なんてこったい…しかし今回は大丈夫ですよね?

さーて投下開始します

214 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:30:53 ID:GVRAqYS60
ユフ戦記 45 血染めの島 7


混乱で騒ぎ出すわけではなく、うろたえて我先にと退散するわけでもない。
何が起こったのかわからない、誰もがその現実を認識するのを拒んでいた。
が、魔導師は斃れた。それは歴然たる事実。
現実を認識した皇国兵たちは体中に張り巡らされた血管が凍りついたような思いにとらわれ、解凍した彼らの胸に去来するのは蓋然性が飛躍的に高まった自らの死という事象ではなく魔導師への哀悼の意であった。
数瞬の間歩みを止めていた彼らに合わせるように帝國軍もまた射撃を中止している。
第2中隊長の大須賀が動いたのはそのときだ。

「電話」

上官の声に素早く反応して那賀が電話を差し出す。
中隊の電話線は敵の攻撃呪文にあってもなお機能し続けている。

「坂井中尉、無駄だと思うが一応勧告してみろ。
後退する様なら射つな」

帝國側とて決して無傷ではない、素直に引いてくるのなら第2小隊を立て直したほうがよさそうだ。
第2小隊が白い布を皇国兵に向かって投げ出す中、万が一に備え北側の第3小隊から兵力を抽出する。
敵が再度突撃するにしろ、この勧告の間は貴重な時間が稼げる。

215 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:31:44 ID:GVRAqYS60
/

「なんなのだあれは?」

「一体なんだというのだ、あの魔術は?」

相方を失った魔導師、サムダクールの震える声が第2旅軍の幕僚たちの鼓膜を弱弱しく振るわせる。

「魔術ではありません、帝國の火砲です。
畜生、こういう事態を予測して対人狙撃用の物を開発して修練を積ませていたに違いない、そうでなければあの鮮やかな手並みをどう説明したら良いというのだ?
帝國人はそこまで手間をかけて戦争をしたいのか、始末に終えないくそったれどもだ」

百竜長という地位を考えるとあまり好ましくない物言いをするが、この場の誰もが同感だった。

「第1第3大士隊共に停止して指示を求めています。
帝國軍が最上級指揮官に白い布を渡して欲しいと寄越したようです」

帝國の慣習では白旗を掲げれば降伏の合図となる、それくらいスルムとて知っている。

216 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:32:41 ID:GVRAqYS60
「降伏か死か、というわけだ」

「どうしますか、魔術師たちにも支援させますがこれまでの様には行きません。
正直なところ、酷いことになりますよ」

口でははっきり言わなくともサムダクールの目は撤退を期待しているようだ。少なくともスルムはそう捉えている。

「魔導師殿、われら歩兵というものはですね貴方のように特別な才で皇手陛下に恩義を返すことが出来なければ、大商人のように財を以って貢献することも出来ない。
官僚となって陛下の手足になることも出来ずさりとて田畑を耕すのは性に合わぬ。
だからわれら歩兵は剣となり先祖代々受けてきた恩を陛下にお返しするのです」

スルムは周りを見渡す。
どの男たちも満足げな表情をうかべ首を縦に振る。

「百竜長、わたしゃ辺境の生まれでね。
皇国でもない小さな王国での水呑み百姓暮らしが嫌になって皇国軍に志願したんだ。
運良く入隊できた上に一兵卒から士官にまであげて貰った、先祖伝来の土地は取り戻せたし3人の娘を無事嫁がせました。
やり残したことは何もありませんよ」

217 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:34:08 ID:GVRAqYS60
「酷い男だ、嫁を忘れてやがる」

「軍に入った時から嫁不幸は決まっていた未来ですよ」

軽い笑いが湧き上がり段取りを決めようというとき、胴長人の声が耳朶に入る。

『明けても暮れても 牢屋は暗い  
よるひる牢番    えい、やれ!』

「帝國人の歌か?」

スルムが遠眼鏡を覗き込むと、中央の陣地で指揮官らしき男が歌いだしている。
何事かをあきれた表情を浮かべる傍の部下に命じると、歌は周りの帝國人たちに広がり合唱となる。

『わが窓みはる 見張ろとままよ  
 おいらは逃げぬ。  逃げはしたいが、
えい、やれ!  鎖が切れぬ』

「何ですかあれは」

「魔導師殿は魔術にかまかけてあまり帝國を研究していないようですな。
帝國文学の中に出てくる歌ですよ、たしかゴーリキーの『どん底』という話です」

218 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:36:19 ID:GVRAqYS60
「われらに山を降りてどん底にかえれというわけですかな、帝國人にも諧謔というものが備わっているようですな。
ところでどのようなお話で?」

「社会の最底辺に住まう欲深い男はなんの救いもなく死んでいく、しかし欲のない若い恋人たちはどん底から抜け出す。そういう話です。
それにしても反帝國的な歌を堂々と歌えるとは、帝國という国は実に興味深い」

帝國軍一個中隊の合唱は纏まった振動となり、山肌に跳ね返って増幅される。

『ああこのくさり わがくさり    
てめえは  鉄の牢番よ』

一生かかってもどん底から帝國陣地のある高みには上れない、欲を捨てて降伏するならば生かしておく、しかし戦果を挙げようとする欲を出せば惨めな死が待っている。
そういいたいのだろう。
諧謔でもなんでもない、奴らは本気で我々の突撃を阻止して全滅させる自信があるのだ。


「魔導師どの、われらの足に魔術をかけられますか?
帝國人のいうペルセウスのサンダルの如くとはいわんが装備の重さを感じられないくらいに、人生の最後にそれ位の贅沢は許されてしかるべき、そうは思いませんか」

サムダクールは侮蔑と敬意の入り混じった顔を複雑な表情筋によって実現させる。
己に理解できぬ人を見たとき、大抵の人間の人間の見せる態度は蔑視か尊敬かに限られるのだが、二つ同時というのは珍しい。

219 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:37:16 ID:GVRAqYS60
「足を速くしたとしても向かう先は死ですよ、それも確実な」

「構わない、いま我々が任務を果たすためにはこの身を陛下と国に捧げなくてはならない。
現実がそうであるならば、ただ惨めで無意味な死を選ぶか、それとも民から栄光を称えられる英雄としての死かを選ばなくてはならない。
私は無論後者を選ぶがね、コスティリョフの様にどん底で殴られて死ぬなんて耐えられないんだ」

『おれにゃ切れぬ てめえは切れぬ』

帝國人の歌が最高潮に向かう中でレイサムが鋭剣の帯を締めなおしたのを見てスルムはとがめる。

「貴官は負傷者と魔術師達をつれて兵団まで戻れ」

「そんな、私もお供いたします。
指揮官だけいい格好をして部下がさらし者なんて嫌ですよ」

「黙れ、貴様は足手纏いだ。
いいか、俺は嫁と子供に毎食卵と豚肉か鶏肉を食わせられるだけを仕送りしている、ここで戦死すればおそらく彼女たちは一生牛肉に困らないだろう。
だが貴様が第2旅軍を英雄に仕立てれば肉に変えて新鮮な魚介類に早変わりだ。
いけ、お前は生き残って軍参謀部で栄達するべき男だナターシャとペーペルのように、こんな准提督昇進前で予備役に編入されるような男に付き合う必要はない。
それもまた戦争の一つの形であり私が与える最後の命令だ」

220 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:40:32 ID:GVRAqYS60
涙ながらにシューエン隊や牽制射撃で負傷した者たちを集め、第2大士隊の新婚の若者を集めた護衛隊を組むレイサムにスルムは一言言い添える。

「皇都の南通、サンテック商館の近くに私の家族がいる、子供たちに私の最後を語ってくれないか。
それから妹がいる、二人の子を生んで先方の家を飛び出してきたが君よりも年下だ。
器量も悪くないし良かったら貰ってやってくれないか。
戦争が終わったら紹介しようと思っていたんだがどうも難しそうなんでな」

レイサムは答えない。
黙々と作業をしながら残存部隊の準備を眺めている。
木々の間から月の光が零れ落ち脂ぎった男達の顔を怪しく照らし出す。
彼らの顔には悲壮さを感じさせるものなど何一つなく、レイサムたちに言伝を頼むものもいない。
最後の魔道支援の段取りが決まり、兵たちの準備は整った。
帝國人が定めた降伏期限を前にレイサムは一言だけ上官に別れの言葉をぶつける。

「お世話になりました百竜長どの。
いや、義兄さん、あなたとその部下たちの忠誠は必ず天聴にまで達することでしょう」

「頼んだぞ。
お前たちの晴れ姿が見られないのが心残りだが」

221 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:43:13 ID:GVRAqYS60
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帝國人の歌も終わり山間には再び静寂が戻る。
お陰で帝國陣地近くの兵たちにもスルムの声は達するだろう。

「第2旅軍総員聞け、われらの旅路は帝都ではなくこの孤島で終着を迎えることになったがなんら恥じることはない。
総員皇宮に向けて銃掲げ、われらが栄光ある幕引きと奉仕の機会に恵まれたことを天に謝しつつ皇主陛下に歓呼三声」

『ラー、ラー、ラー』

斜面の中腹から、そしてスルムの周りから声が上がる。
これから死が渦巻く空間に赴くとは思えない、凛冽たる若々しい声。
俺はこんな若者たちを家族や恋人から永遠に引き離すのだ、その死を無駄なものにするわけにはいかない。

「帝國人に歌の返礼をしつつ逝くぞ(誤字にあらず)諸君、第2旅軍第6突撃軍歌斉唱!」


去り行く魔術師の最後の攻撃魔術が頭上を飛び越え、帝國軍が射撃を再開する中彼らは再び歩み始める。

『かくして巨人がわれらの前を塞ごうとも
われら遍歴の騎士はなべての悪を滅ぼさんと世界に飛び出そう
いざ駆けよロシナンテに跨って
ドルシネーアよ、我に力を与え給え、オーレッ!!!』

222 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:43:44 ID:GVRAqYS60
ポウモック一等兵は26歳の誕生日をこの山で迎え、そして誰から祝われるよりも早く軽機の銃弾を8発浴びた。
生物学的な死を迎えた後にも彼は3歩前進した。

サイクンはスルムの命に強硬に反対し第2旅軍に付き従い続けた5人の結界魔術士のうちの1人であった。
第1大士隊の右側を担当していた彼は、あの恐るべき対人狙撃砲の威力を味わうことになった。
煌きから一呼吸後に自らの結界に膨大な負荷をかけられ、結界は霧散する。
その直後に彼の前を掠めた砲弾は4人の護衛を葬っただけだったが、それで充分だった。
彼と帝國軍の機銃座の間には結界も盾もなくなったのだから。


『槍は折れその身は宙を舞う
《だんな、あんたがやっていることは負け戦だよ》
出過ぎるなサンチョ、勝ち負けは問題ではござらん
この世にいくばくかの優雅さを付け加えたいと存じまして
騎士は駆けるのでございます』

223 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:44:28 ID:GVRAqYS60
帝國陣地まで60フィフィク程度まで隊列が迫ったころ、スルムの予備兵力が追いつく。
護衛をする魔術師たちがおらず、足に魔術をかけられているために身軽になっているためだ。
即座に帝國軍の射撃で穴の開いた隊列を埋めるべく行動するが、無論その間にも帝國軍の射撃は続く。
隊列を埋めた頃には魔術師は2人になっており、もはや結界で防護されている場を探すほうが難しい。
各所で機銃弾に打ち砕かれる皇国人が続出し、その上に右手の杜が途切れたため中央陣地からの援護射撃が加わり、右翼の兵力は突撃時の二個中士隊から一個小士隊にまで減じているがそれでも彼らは歌いながら前進する。


『フレストンに惑わされるな、あれは風車にあらず
いざ駆けよ、たとい槍はなくとも オーレッ!!!』

224 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:45:05 ID:GVRAqYS60
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魔術支援は以前の活気を失っているというのに皇国人は絶望的な前進を続けている。

「狂っている、やつら頭の螺子が緩んでいるに違いありません」

那賀の戸惑うような声が耳朶を震わせるが大須賀は中隊先任下士官とは異なった心情を抱いている。

「命ぜられるままに前進、隊列が乱れることもなく。
ただ祖国の勝利と栄光を信じて、自らの犠牲が無駄にならないと信じて。
先任、あれこそ歩兵だよ」

『愛馬ロシナンテは失われその身は徒歩となる
いざ駆けよたとえドルシネーア姫の加護を失おうとも』

帝國人の誰もが知る物語を軍歌に仕立てて進む彼らに対して大須賀だけでなく中隊の少なからぬ人間が共感を抱いている。
なんてことだ、俺はあいつらが羨ましいのだ。
まことに軍人らしからぬ心情だが軍人でないものには判るまい、これだけの近代兵器を与えられても軍人は戦場に武士道や騎士道が排除されずに残っている、そう信じたがっているのだ。

全く以って救い難い莫迦どもだ、俺もあいつらも。

「あれこそ歩兵なのだ、大日本帝國陸軍の栄光の日々を体現するかのような歩兵なのだ。
我々がどこかに置いて来たものを皇国人は持ち合わせている、それがいいこととは思えないが」

225 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:51:03 ID:GVRAqYS60
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機関銃に擲弾と小銃までが加わり、スルムの本部小士隊もまた壊滅的な打撃を受けながら前進している。
いかなる射撃を受けようが、歌を止めるつもりはない。
第2旅軍の花道を飾ると言うだけではなく、第2旅軍が帝國人に攻勢をかけているという事実をこの山の帝國将兵全てに教え込むためだ。
ゆえに彼らは、胸に穴が開き血を吐こうとも、両足が砕かれ地に伏せようとも唄い続ける。
ついに突撃隊に付き従っていた魔導師が消え去り、スルム達に射撃が加えられようというときに機銃座の一つが燃え上がる。
後ろからの魔術支援、まだ撤退していなかった魔術師がいるのだろう。

「まったく、まだあんなところをうろちょろしていたのか。
莫迦ばかりだ、俺たちも人のことを言えんが」

魔導師は失われたがその代償として行軍速度は上がる。
第2旅軍の隊列はもはや穴だらけ、それが帝國軍の射撃効率を低下させているとあって、残り40フィフィクを幾らかの兵が駆け抜けられそうだ。

『われらは正義の騎士 もはやただのアロンソ・キハーナにあらず
われらは栄光の戦士 もはやただの騎士にあらず』

226 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 17:51:35 ID:GVRAqYS60
そのとき、スルムは戦場とは思えない光景を眼にした。(耳にしたと言うべきか)
合唱隊の頭数が酷く少なくなった皇国兵のために帝國人が問いかけの部分を歌ってくれたのだ。
彼らと立場は酷く異なるが、帝國人も皇国人もその根っこの部分は同じなのかもしれない。
そうでなければこの奇跡は説明できるものではない。

《ならば問おう、汝の名はなんぞや
ならば問おう、誇り高き御身の名はなんぞや》

この距離に至って漸く皇国人の小銃が効果を発揮し出す。
幾人かの帝國兵が射撃を受けて陣地から転げ落ちるが、その数は期待したほどではない。

全く、そんなに先読みのしやすい軍歌だったかな?
とあれこいつは楽しくなってきやがったぞ。
スルムは士官にのみ許された特権、鋭剣を鞘から抜き放ち刀身を煌かせる。

『わが名はドン・キホーテ・デ・ラマンチャ
オーレッ!!!
人呼んで、ラ・マンチャのドン・キホーテ!
オーレッ!!!
いざ駆けよ遍歴の騎士、いまこそ悪を滅ぼさん
オーレッ!!! 』

第2旅軍総員917、そのうち兵団本部に引き返したものは38人。
帝國陣地に達したものはスルム百竜長以下27人、これを成功と見るか失敗と見るかは評価の分かれるところだ。

227 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/28(水) 18:03:12 ID:GVRAqYS60
投下終了、セルバンテスの頃に闘牛はあったんですかね?
オーレッ!!! とか入れてしまいましたが。

ところで本編の方も落ち着いてきたしそろそろ外伝を書こうかなと思案しております。

A案『中島飛行機の役員である主人公は、ある日安保理に呼び出されて奇妙な依頼を受けるのだが…』
B案『暴虐な帝國の支援を受けたカイアール王国の王子たちは王権を覆そうと内乱を引き起こす。内乱の中兄とはぐれたレイは皇国の女性士官に拾われるのだが…』
C案『悪辣な皇国の支援を受けた現王の失政を正すべく王子たちは改革に乗り出すのだが、内乱の中で妹とはぐれたロイ少年は1人の帝國人に拾われ、養子となる』
D案『軍令部第三部に勤める主人公は奇妙な命令を受ける。辺境で墜落した旅客機の調査なのだがどうにも裏がありそうで…』
E案 ネタを募集中

いまのところはこんな感じですかね、もし読みたい話があれば仰ってください。

228 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/28(水) 18:37:04 ID:kalJMk460
猫じゃらし殿投下乙です。
帝國人のはずがいつの間にかスルム百竜長ら第2旅軍を応援していました。
「軍人の義務、戦士の誇り、歩兵の役目、漢の見栄が混じり合い彼らは騎士となった」と美談好きの帝国軍人が
彼らの最後を後世に伝えてほしいですね。
外伝はB案を希望します。レイ嬢の物語とカイアール内乱を読みたいです。

229 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/28(水) 19:09:54 ID:HoPQ0Qjg0
E案 『ネタを募集中』というネタで1つ・・・

230 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/28(水) 20:54:15 ID:AO3zVpxc0
猫じゃらし氏、投下乙です

もう、ただ!ただスゴイと!

231 名前:中将:2007/03/28(水) 20:57:03 ID:4.2DaeIw0
猫じゃらし様投下乙です。
外伝はD案がいいです。自分は陰謀とかが大好きです。
次回も楽しみにしております。

232 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/28(水) 23:10:23 ID:e.IKv5Ck0
自分はB案希望

女性士官とやらに期待v

233 名前:ヨークタウン ◆r2Exln9QPQ:2007/03/28(水) 23:34:25 ID:4CUjn9IY0
くろべえ氏投下お疲れ様です。

ああ、平野少尉が!
2名のみとは言え、これは痛いですな。思わず、「有馬隊!有馬隊はどこだ!?」と思って
しまいました。シュヴェリン軍危うしですね。

猫じゃらし氏投下お疲れ様です。

まさに血染めですな。思わず、皇国軍に同情しましたつД`)

234 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/29(木) 00:33:02 ID:LMnSe4IQ0
  _   ∩
( ゚∀゚)彡 B案!B案!
 ⊂彡

235 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/29(木) 20:48:25 ID:GVRAqYS60
>>228さま ありがとうございます

>「軍人の義務、戦士の誇り、歩兵の役目、漢の見栄が混じり合い彼らは騎士となった」と美談好きの帝国軍人が
>彼らの最後を後世に伝えてほしいですね。
なんだか吉田外相が聞いたら鼻で笑いそうな話ですが皇国は中世的な国家とは一風異なる、ということを書きたかったわけです。

>>229さま

>E案 『ネタを募集中』というネタで1つ・・・
ええっと、E案というのは皆様に提供していただいたネタを元に猫じゃらしが文章化する、というものですので…

>>230さま ありがとうございます

このエピソードは省こうかなとも思っていたのですが、海戦用の資料を手に入れ損ねたために挿入することに決めました。
ただもう少し歌詞を練りたかった…

>>231 中将殿ありがとうございます

>D案
陰謀といえば漏れなく長耳の連絡武官がついてきます。(脇役ですが)

>>232さま
期待しているところ申し訳ないのですが、女性士官とはカリュン嬢のことです

>>233 ヨークタウン氏 ありがとうございます
>まさに血染めですな
まだ血が足りないと元関東軍参謀が申しております

>>234 さま 投票ありがとうございます

236 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/29(木) 23:22:43 ID:.aVtA7U60
E案でナニワの商人が売りもん片手に世界中売り込みまわるとか

237 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/29(木) 23:26:33 ID:xsS49mlo0
A案で飛行機飛行機したい
めっちゃ個人的でスマソ

238 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/30(金) 01:19:54 ID:KDnxdJYg0
1、D案。陰謀か?未知の脅威か?
2、A案。怪しげな航空機、かなあ
この世界、まだヘリコプターは無いですよね。オートジャイロはともかく。

239 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/30(金) 08:33:38 ID:BSbuSQCQ0
「メクレンブルク兵を名乗るみなさん。お願いがあります。死んでいただけないでしょうか?」

「えーっと、自殺して欲しかったんですけど、ダメですか?
 じゃあ帝国兵のみなさん、皆殺しにしてください。虐殺です!」

240 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/30(金) 09:19:48 ID:NRL2y95E0
>E案というのは皆様に提供していただいたネタを元に猫じゃらしが文章化する

ネタを募集中というネタを提供したつもりだったのですが、わかりにくかったかな?

241 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/30(金) 10:08:30 ID:LMnSe4IQ0
>>239
血染めのカナwwww

242 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/30(金) 13:56:42 ID:TuZY8Xxw0
>>227
E案。
ユフ戦記の帝國がF世界に召喚された直後の話。
はやい話が二次創作からの脱却、一次創作への進化。

KURO氏の本作とのズレは広がってきてますしね。

正直な話、猫じゃらし氏、あなたの能力ならユフ戦記の一次創作化は出来ると思います。

243 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/30(金) 14:03:46 ID:U1uACm8A0
 猫じゃらし様、投稿乙です。

 機関銃陣地に、砲の支援も無く突撃とは地獄ですね。しかも皇国には機関銃無いみたいだし。
 そういえば、皇国は結構近代的だけど、突撃は第一次大戦初頭の様な横隊突撃でしょうか? だとしたら本当に二〇三高地……


>E案 ネタを募集中
 帝國と皇国は戦闘状態に突入。相互の交易活動は途絶えた。
 が、それはあくまで『直接交易は』の話であり、第三国を通じて未だ両国の交易は続いていた。
(なぜなら、両国共に必要とする物資を相手側が生産・産出していたからだ。
 無論、『その方が儲かるから』という或る意味素敵な理論を両国共に持ち合わせていたことも否定出来ない)

 ……が、この方式には大きな欠点があった。
 この方式では今までより時間がかかるため、『新鮮な食材を輸入出来ない』という欠点があったのだ。
 特に第三国から皇国への輸入に帝國船(保冷船)を使えないのは痛かった。和食は鮮度が命なのだから。
 かくして和食をこよなく愛する皇国の食道楽某氏は、新鮮な食材を輸入すべく魔道式保冷船の建造に乗り出した。
 が、魔法関連物資は国の統制化、魔法関係者も召集されてそれどころではない。それでも諦めきれない某氏は――

 すみません、なんか下らない話を妄想してしまいました。

>>233
 ヨークタウン様、有難うございます。

>2名のみとは言え、これは痛いですな。
 後で有馬大尉は始末書かも……

244 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/30(金) 14:05:06 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 外伝1「カナ姫様の細腕繁盛記」

 時折、かすかに人馬の喊声や悲鳴といった“戦場音楽”が聞こえてくる。
 もう戦場は目前なのだろう。

「ククク……」

 有馬大尉は笑っていた。
 ……別に愉快だった訳では無い。俗に言う“自棄笑い”というヤツである。

「ククク…… 到着するまでにエンコ四回か…… このボロ戦車共がっ!!」

 そう叫ぶと、有馬大尉は手にしていたスコップを尾部のソリに放り込む。
 ……どうやら、あれから更にもう一回立ち往生したらしい。
 多分、動くまでエンジンを殴りつけだろう。そのスコップは大きく変形している。ある意味究極の修理法だった。

 が、それにしても、如何に回り道をしたとはいえ直線で30km足らずの距離を、しかも曲がりなりにも路上を走っているというのに、こうも簡単に故障するとはとんでもない話である。信頼性云々以前の問題であり、これではとても実戦で使い物にならない。
 この事実は、各師団に新設されつつある師団戦車隊に対する深刻な疑問を投げかけており、本来ならとても笑って済む様な話ではないのだ。
 ……まあ、下っ端には関係の無い話ではあったが。


「そんな馬鹿なそんな馬鹿な……」

 戦車内では、車長である少尉の呟きが乗員全員に伝染している。
 ……無理もない。彼等はここ二時間程で、常識を覆される様な経験を連続して得ているのだから。跨上している歩兵達もどこか疲れた様な顔振りだ。
 その元凶たる人物は、砲塔の天辺で双眼鏡を構えながら胡坐をかいて――落ちないように砲に片手を掛けながら――座っている。

245 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/30(金) 14:05:43 ID:U1uACm8A0
「! 総員戦闘準備!」

 双眼鏡で戦場を確認すると、有馬大尉は肩に下げていた一〇〇式機関短銃を手にする。
 部下達もそれに続く。先程の影は微塵も感じ取ることは出来ない。
(何年も大陸の戦場で鍛えられてきた彼等は、気持ちを切り替える術を十分心得ているのだ)

 戦場は最早肉眼でも確認できるほど近づいていた。

 有馬大尉は大きく息を吸い込む。
 彼が良く知る戦場ほどではないが、血と硝煙の匂いが鼻腔を擽る。
 ……ああ、忘れかけていた戦場の匂いだ。
 そして、耳には人馬の喊声や悲鳴といった“戦場音楽”。
 何もかもが懐かしい。

 有馬大尉の顔に獰猛な笑顔が宿った。

「軽機班下車! 戦車は速度を歩兵に合わせろ!」

 有馬大尉の命令により、戦車は路上速度を20q/hから5q/h以下に落とす。
 戦車の速度が落ちると4名の歩兵は下車し、戦車を盾に前進する。

 こうして準備を整えた“騎兵隊”は戦場に突入した。
 その戦力は、有馬大尉以下歩兵5名に八九式中戦車1両。当初の1/3の戦力であった。

246 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/30(金) 14:06:19 ID:U1uACm8A0
――――第八歩兵隊、弓分隊。

 それはまさに、三度目の射撃命令を出そうとしたその時だった。
 ……あの、動く巨大な岩の様なものは何だ? 竜か?

 それは、シュヴェリン側から真っ直ぐこちらに向かって来る。
 ゆっくりと、だが確実にやって来る。
 たった“1頭”とはいえ、その圧迫感は騎馬のそれではない。

 カミーユは何か不吉なものを感じ取り、即座に目標を変更することを決意した。

「目標変更! 側面の敵を狙え!」

 その命令により、バリスタは急遽方向転換し、側面先頭に押し出される。
 カミーユは既にアレを敵と断定しており、その正体についても凡その見当をつけていた。

 ――アレは、もしや噂に聞く“戦竜”ではないだろうか?

 “戦竜”。戦闘に特化された竜。最も非力な種ですら『1騎で騎馬100騎に匹敵する』と評される“陸戦の王者”。
 その突撃は、銃や弓では阻止できない――

 ――御丁寧に鎧まで付けてやがる……

 カミーユは思わず舌打ちする。
 アレに突撃されたら厄介なことになる。簡単には倒せないだろうが、早急に討ち取らなければいけない――そう判断し、素早く迎撃の態勢を整えていく。

 彼の判断は非常に正しく、そして間違っていた。

247 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/30(金) 14:07:00 ID:U1uACm8A0
「撃て!」

 距離50サージェン(約106m)で、カミーユは射撃命令を出した。

 バリスタから撃ち出される巨矢は、50サージェン(約106m)以上の距離から“荷車”の装甲を貫通する程の威力を持っている。
 フランケルで使用される標準的な火縄銃――50mで3oの鉄板を撃ち抜く――にも十分耐えられる様、約6o厚の鉄板が貼り付けられているにも関わらず、だ。
 高張力の弦から生み出される巨大な運動エネルギーと、炭素鋼製の巨大な鏃がそれを可能にしていた。
 何より、熱処理で硬化された炭素鋼製の巨大な鏃は、柔らかい鉛弾とは異なり“荷車”の装甲(鉄板)の硬度を大きく上回っていたのだ。

 ……が、それは帝國が、帝國の製鉄技術が800年も昔に通り過ぎた水準に過ぎなかった。鎌倉時代における平均的な玉鋼にすら及ばなかったのだ。
 対する八九式中戦車の前面装甲厚は17o、それも駆逐艦用鋼板に更に焼入れ処理を行った超高硬度の炭素鋼である。その硬度は比べ物にならない。

 グシャッ!

 忽ち鏃は砕け散った。
 ……後には、僅かな引っ掻き傷が残っただけである。
 運動エネルギーも、それを活かす鏃の硬度も、何もかもが圧倒的に不足していたのだ。

 ――馬鹿な!?

 目の前の現実に、カミーユは危うくそう叫びそうになった。

248 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/30(金) 14:07:30 ID:U1uACm8A0
 アレは、あの竜は、一体どれだけの厚さの鎧を身にまとっているのだ!?
 もしや、噂に聞く防御結界か? ……いや、矢は確かにあの竜に届いた。防御結界なら途中で止められる筈だ。
 第一、只でさえ手に入れることの難しい戦竜だ。ましてや防御結界を持つ戦竜など――

 そこまで考え、カミーユは頭を振る。

 そんなことは如何でもいい。今はあの竜を倒す事を第一に考えねば。
 ……それには出来るだけ近づき、鎧の繋ぎ目を狙撃する必要がある。
 如何な竜であろうが、この距離からバリスタの射撃を受ければ、倒せないまでも少なからぬダメージを与えられる筈だから。

 そう判断すると、カミーユはバリスタの再装填を命ずると共に、牽制射撃を行うべく号令をかけた。

「総員射撃準備!」








 投下終了。短い。

249 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/30(金) 14:30:09 ID:VzfmUw1w0
投下乙です!
砲撃を!砲撃を!

250 名前:中将:2007/03/30(金) 14:37:55 ID:IIVCkGpI0
くろべえ様投下乙です。
万歳!戦車万歳!
次回は、主砲による砲撃と有馬大尉率いる軽機班が撃ちだす銃弾の嵐が憎き敵をギタギタにするのですな。
次の投下が待ち遠しくて仕方ないです。

251 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/30(金) 16:03:07 ID:pYNyLz2.0
故障しすぎで笑いたくなるのもわかるな

252 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/30(金) 16:44:30 ID:GVRAqYS60
くろべえ殿投下乙です
はじめて遭遇する戦竜が帝國製の鉄竜とは、ご愁傷様です
その時点での八九式がぽんこつならフェンダート時点での一式は…

>>236 さま 
おお、ナニワのおっちゃんの姿が眼に浮かびます

>>237さま
つまり同志237は中島試製(略)をみたいというのですな?
この場合技術畑の話になりますがよろしいですかな?
帝國の航空技術を強引に進歩させるエピソードです

>>238さま
D案は陰謀です、未知の脅威にあらず
>ヘリコプター
大戦前にFw61がデビューしてるのであるといえばあります。ただ技術レベルは…

>>240さま
ごめんなさい、判りにくかったです。
ただ猫じゃらしの筆力で出来るかといえばちょいと難しいです、はい。

>>242さま
>一次創作化
ユフ戦記はくろべえ氏の話に着想を得て、執筆開始段階で公開されていた設定を元にありえるかもしれない一つの未来として書いているのでどこまで行っても二次創作の域を出ません。
…一から世界設定をするというのは途轍もなく手間暇かかるものですし、それでくろべえ氏のような綿密で面白い世界設定が作れるかといえば甚だ疑問です。
改めてくろべえ氏に敬意と感謝を

>>243 くろべえ殿ありがとうございます

>そういえば、皇国は結構近代的だけど、突撃は第一次大戦初頭の様な横隊突撃でしょうか? 
>だとしたら本当に二〇三高地……
皇国は酷く古い部分と近代的な部分を併せ持っています、本来散兵戦術がドクトリンなのですがそれだと結界のカバーが出来ないので縦隊を並べて突撃です

>皇国の食道楽某氏
そこまで…しそうだなあ、否定できないあたりがつらい

253 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/30(金) 16:46:21 ID:GVRAqYS60
登場済みの人物まとめ(*は帝國側の架空人物、今後出番のなさそうなものは省いた)

帝國陣営
政府
嶋田繁太郎  内閣総理大臣・大陸間相互安全保障機構議長・海軍大将(海兵32期・海大13期)元帥間近?
吉田茂    外務大臣・狸
山本五十六  海軍大将・海軍大臣(海兵32期・海大14期)軍政家・政権転覆を企む
牟田口廉也  陸軍大臣(陸士22期・陸大29期)後にやらかす
辻政信    大陸間相互安全保障機構作戦部員 (陸士36期・陸大43期恩賜)後に(ry

海軍
山口多聞   海軍大将・聯合艦隊司令長官(海兵40期次席・海大22期優等)実権を安保に握られている
岡 新    海軍大将・軍令部総長(海兵40期首席・海大22期優等)首相と海相の板ばさみに苦しむ
西田正雄   海軍中将・第2艦隊司令官(海兵44期・海大26期優等)史実では比叡沈没により予備役編入
井上三郎   海軍少将・第1戦隊司令官(海兵55期・海大38期)
吉良     海軍大将・特務砲術科総監兼特別陸戦隊次席司令長官(海兵?期くろべえ氏の設定から)

254 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/30(金) 16:47:34 ID:GVRAqYS60
陸軍
*大沢一二三 陸軍中将・第9師団長(陸士36期)吉良と仲が良いらしい・部下に寛容
*新堂政文  陸軍中佐・第9野戦重砲聯隊長(陸士48期)カレー大好き
*大村武治  陸軍大佐・第62聯隊長(陸士45期)フェンダートにおける陸軍代表
*大須賀   陸軍大尉・第62聯隊第3大隊第2中隊指揮官

山本一派(海大研究班)嶋田政権にとってよからぬ事を企む面々
*緒方グレイス 海軍中佐・スコットランド王国連絡武官・サンディーノ帝國伯爵家後嗣・お金大好き
黒島亀人    予備役海軍中将(海兵44期・海大26期)変人参謀・山本のリタイアと共に予備役編入
西竹一     予備役陸軍中将(陸士36期)
*緒方誠人   海軍一等兵曹(緒方グレイスの夫)妻に振り回される苦労人・実家は小作農家
*上村司    海軍少佐・GF附(海兵62期)
*大隈浩二   海軍大尉(元神戸大学経済学部助教授)
赤松 要    海軍大佐(元一橋大学教授)

フランシアーノ皇国

カリュン・フェースト・ロイ・フランシアーノ 皇主・性格は苛烈。和食大好き
レイ・ジグリード・ロイ 水軍十竜長・ロイ王家養預子・竜巣母艦シンロード飛翔隊長
オーメ・シグレイ・ユイツェン・ロイ 水軍准提督・特命大使・ロイ王家当主(カリュンの父)皇主に疎んじられている

アテゴラス 宰相
アウステル 元帥・皇国水軍参謀本部長
ユーリッヒ・オプト・クロイツェン 大提督・皇国準男爵・功二級・近衛艦隊司令官
レビンスキー提督・第4艦隊司令官 傍若無人、気分屋。艦隊運動には定評あり
ムラーノ  地軍大提督・南遣団長
サッカス  地軍提督・第九兵団長
スルム   地軍百竜長・第9兵団第91師軍第2旗軍第2旅軍指揮官(一部第3旅軍としている記述は誤り)
シグリド  准提督・水軍諜報部部長

メルズ   皇室調査局諜報員(吸血種・クロイツェン大提督の曾祖母)

ユウジルド王国(…面倒臭いから略)

255 名前:名無し三等兵@F世界:2007/03/30(金) 18:27:17 ID:Ft8EYybM0
くろべえさん、投下乙です。
有馬さんは戦場に向かうまでに一つ伝説を作ったわけですね(笑)。
これからもう一つ伝説が生まれそうですが。

カナ姫の再登場も待ってます!

256 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/30(金) 23:03:22 ID:vWseaLLM0
 投下乙です。どうにかこうにか間に合いましたな。
細かいことですが気になったのは、
>鎌倉時代における平均的な玉鋼
 鎌倉時代に玉鋼はありません。あれはタタラ製鉄ができてからのものです。
ちなみに鎌倉時代の製鉄法は謎に包まれておりどうやって刃物用の鋼を得ていたのかも分かっておりません。
 さらにいえばこの謎の鋼で作られた刀のほうが後年の刀よりよく切れたりします
(ついでに奈良時代に法隆寺建築に使われた釘はいまだに強度を保持しているのに、
江戸時代に修理に使われた釘は錆びてだめになってたとか)
 まあちょっとしたところに世界の謎は転がっているってことで。

257 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/30(金) 23:09:19 ID:g5WOwJfs0
>くろべえ氏乙ー

三八式小銃で驚くようなやつらの軽機を見たときが早く観たいw

258 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/31(土) 11:10:56 ID:U1uACm8A0
>砲撃を!砲撃を!
 ようやく八九式が到着しました。次回はポンコツ八九式の活躍です。

>>250
 中将様、有難うございます。

>主砲による砲撃と有馬大尉率いる軽機班が撃ちだす銃弾の嵐
 やっと近代兵器が出せますよ。正直、三八式じゃあショボくて……

>>251
 まあ、倉庫で埃被ってた使い古しの八九式ですからねえ。
 せめてエンジンだけでも換装できれば大分違ったろうに。

>>252
 猫じゃらし様、有難うございます。

>その時点での八九式がぽんこつならフェンダート時点での一式は…
 う〜ん、制式化から15年以上……八九式より酷いですね。
 当時の機動兵器は現在と違いかなり寿命が短かかったみたいですから、多分一部が保管として残存かいいとこ教育用ではないでしょうか?
 それに猫じゃらし様世界ではかなり技術力と生産力が進んでいるみたいだし、全部スクラップになっててもおかしくないですね。

>>255
 名無し三等兵様、有難うございます。

>伝説
 ――これが後に、『精密機械は殴れば直る』という意識を帝國庶民に植え付けることになった逸話である。(民明書房刊『帝國都市伝説選』より)

>カナ姫の再登場も待ってます!
 何故彼女が一向に登場しないのかといえば(謎)

>>256
 256様、有難うございます。

>鎌倉時代に玉鋼はありません。
 ありゃ、申し訳ない。またやってしまった……
 御指摘、有難うございました。

>>257
 257様、有難うございます。

>三八式小銃で驚くようなやつら
 火縄銃とは比べ物になりませんからね。
 軽機なんか理解不能かも。

259 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/03/31(土) 11:12:18 ID:U1uACm8A0
>>249
 249様、有難うございます。

コピペ時に上が抜けてました。申し訳ない。

260 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/03/31(土) 20:26:40 ID:GVRAqYS60
貴重なご意見ありがとうございました。
A案2票、B案3票、C案0票、D案2票、E案4票
E案が最多ですが、すべてばらけたネタですので他の話に混ぜられるならやってみます。
独立したエピソードを4つ書くというのは厳しいのであしからず。
ということでB案でいこうとおもいます。

本編と並行して外伝を書いていこうと思います、今後ともユフ戦記をよろしくお願いしますm(_ _)m

261 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/03/31(土) 22:56:42 ID:lw1uOumE0
チハたんばんじゃーい

262 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/01(日) 11:21:11 ID:CNraRg7U0
>多分、動くまでエンジンを殴りつけだろう。そのスコップは大きく変形している。ある意味究極の修理法だった。

機械が電子化される以前の、伝統的な修理法ですね。w
電子化以前という表現に反するけど、30年程前のテレビを叩いて直すのを、思い出してしまいました。

まじめな話、なんで九五式軽戦車持ってこなかったんでしょう?
火力は八九式に劣るかもしれないけど、対歩兵戦闘ならこっちの方が使い勝手良いでしょうに。

263 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/01(日) 18:46:50 ID:H39ZQcMYo
そりゃ使える装備は国内に優先的に回されたんでしょうな。

264 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/01(日) 19:12:26 ID:Ft8EYybM0
九五式はバレンバン油田の方にまわされているんじゃないかな?
又は、輸送船から降ろすのにも石油を喰うから降ろしてないだけだったりして。

265 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/01(日) 21:37:08 ID:i6rABYdI0
有馬隊の当初の目的はシュヴェリン城の武力制圧。
攻城戦では機動力より火力が重要です。
野戦は想定外では。

266 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/01(日) 23:09:07 ID:e6vwVxaM0
当時の日本国内にも騒乱の火種は存在した訳だし、
転移による混乱に生じて・・・・みたいな動きもあったと思う。

外の事より内・・・特に玉体の保護を第一。

267 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/02(月) 02:28:58 ID:7wxqQ1co0
故障さえしなけりゃ、この地方じゃ充分オーバースペックだしなー

268 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/02(月) 07:59:44 ID:U1uACm8A0
>>九五式軽戦車
 派遣軍には九五式軽戦車38両を保有する独立戦車第四聯隊が配属されております。
 が、まあ有馬隊は徒歩歩兵ですので、師団戦車隊の八九式が回されました。
 むしろ歩兵直協ならば、火力も装甲も上の八九式の方適任と判断されたのでしょう。

269 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/02(月) 23:27:55 ID:Ft8EYybM0
>>268
で、上層部の判断により現場に皺寄せが来ると(苦笑)。
チハ寄越せ〜!と言いたくなりますが、貧乏だから・・・。

270 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/03(火) 01:20:05 ID:IvX.uGKQ0
>>269
そうだそうだ!
帝國の誇る最強陸戦兵器チハをよこ――あれ?俺なんで目から水が?

271 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/03(火) 08:36:10 ID:U1uACm8A0
 帝國召喚 外伝1「カナ姫様の細腕繁盛記」

「……不味いな」

 八九式中戦車の砲塔の影で、有馬大尉は忌々しげに溜息を吐いた。
 現在、彼我の距離は100mと少し。これ以上進むと鉛球と矢の盛大な“おもてなし”を受ける羽目になってしまう。
 ……てっきり、戦車に恐れをなして逃げ散るものと思っていたのだが。

「流石は常備軍と誉めるべきか? ……いや、所詮この距離では脅しにならない、ということか」

 敵を甘く見過ぎたかな、と有馬大尉は苦笑する。

 が、何時までものんびりと思索に耽っている余裕など無い。既に連中の攻撃圏内――最大交戦距離150m程度――に入っているのだから。
 連中が撃ってこないのは、単に矢弾と気力体力の消耗を抑えるため、命中率が大幅に向上する100m以下での射撃を基本としているからに過ぎない。必要とあれば今直ぐにでも雨霰の様に矢弾が降り注ぐ筈だ。
 そして、彼等の持つ武器は決して玩具ではないし、皇軍将兵も超人ではなくただの人間である。努々それを忘れてはならない。

 有馬大尉は決断を迫られていた。

『――――!』

 と、敵陣から何か号令の様な叫び声が聞こえた。
 その内容は聞き取れなかったが、それと同時に敵兵が整然と動き出したことから一目瞭然である。
 一斉射撃だ!――そう判断した次の瞬間、有馬大尉は無意識の内に叫んだ。

272 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/03(火) 08:36:40 ID:U1uACm8A0
「戦車! 敵横隊、撃てっ!」

 ドンッ!

 八九式中戦車から撃ち出された九〇式五十七粍榴弾は、初速380m/sの速さで敵の隊列、その手前に着弾した。
 僅かゼロコンマ数秒で着弾。それと同時に信管が作動し、内蔵する250gの炸薬を炸裂させる。その衝撃で弾体は数十の大破片と無数の小破片に分裂し、爆風に乗って周囲に飛散する。
 ……それは、密集した横隊に対して凶悪なまでの効果を発揮した。

 九〇式五十七粍榴弾の威力半径は16mにも及ぶ。
 高々20名の一列横隊など、すっぽりとその範囲内に収めていたのだ。





 それは弓兵が整列を終え、正に射撃態勢に入ろうしたその時だった。
 “戦竜”に据え付けられていた大鉄砲が火を噴いたかと思うと、次の瞬間には大爆発と共に弓兵達が吹き飛ばされる。

「なっ!?」

 カミーユは我が目を疑った。
 ただ一撃、ただの一撃で第八歩兵隊弓分隊が全滅したことが信じられなかったのだ。

 ――アレは、大鉄砲ではなかったのか!?

 が、大鉄砲は精々片手で転がせられる程度の鉛球を撃ち出す武器でしかなく、この様な現象は起こりえない。考えられるとすれば通常の大弾丸の代わりに多数の小弾丸を装填して発射した場合だが、アレはその効果を期待するには小さ過ぎる。とてもこの様な威力を発揮出来るとは思えなかった。
 ……もしや、アレが噂に聞く戦竜のブレス攻撃なのだろうか?
 が、カミーユにそれ以上考える間は与えられなかった。

273 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/03(火) 08:37:14 ID:U1uACm8A0
  ドンッ!

 “戦竜”は右翼に展開する弓分隊を全滅させた後、一呼吸置いて今度は左翼に展開する槍分隊目掛けてブレスを放った。呆然と立ち尽くしていた槍分隊は爆発をまともに受け、たちまち弓分隊と同様の運命を辿る。 ……たった二撃でカミーユの指揮する全兵力、第八歩兵隊戦力の半数が全滅したのだ。最早残っているのはカミーユの従僕――郎党と自領内から徴用した下人――だけであった。


「畜生!」

 カミーユはバリスタに飛びつき、前進する“戦竜”に向けた。
 それを見たドニが慌てて止める。

「若旦那! もう駄目です、ここは――」

「やかましい! どの面下げて帰れるというのだ!?」

 王から貸し与えられた兵も、臨時に配属された兵も、全て失った。せめてあの“戦竜”を倒さねば、とてもではないが面目が立たない、と吐き捨てる。
 ……が、それは言い訳に過ぎなかった。自分の部下を、自分を評価し始めていた者達を殺され、カミーユは怒り狂っていたのである。

「……承知しました」

 ドニは重く、溜息を吐くかのように頷いた。
 カミーユの真の目的を理解してはいたが、“面目”という建前を出されてはそれ以上は何も言えなかったからだ。

 と、まるで自分達の意図を察したかの様に“戦竜”が前進を再開する。
 ……これで我に返った下人共は忽ち逃げ散っていく。立てる者は走って、腰が抜けて立てない者は這う様にして。
 が、郎党達は逃げない。フィリップ家重代の臣である彼等が逃げる訳にはいかない。例え自分達のその後の運命が判っていたとしても、だ。
 カミーユと数人の郎党達はバリスタを操り、“戦竜”に立ち向かう。

274 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/03(火) 08:37:45 ID:U1uACm8A0
 ドンッ!

 距離20サージェン(約42m)で再びバリスタから大矢が撃ち出される。
 先程の半分以下の距離からの射撃だ、空気抵抗による運動エネルギーの減衰は殆どなくなり、その威力は倍近い。
 如何な“戦竜”とはいえ、この距離なら――誰もがそう確信した。

 グシャッ!

 ……が、結果は先程と同様だった。巨大な運動エネルギーで超高硬度炭素鋼に叩き付けられた鏃は忽ち砕け散る。

 もし……もし鏃の硬度がもっと高ければ、或いは八九式中戦車の装甲を貫通出来たかもしれない。その運動エネルギーは“最強の小銃弾”モーゼルGew98小銃の7.92mm×57弾にも匹敵したのだから、ましてや薄いと思われる視察孔を覆う装甲板を狙撃したのだから。
 が、その運動エネルギーを伝える鏃の硬度が圧倒的に足りなかった。石に叩き付けられた卵の様に容易に粉砕され、逆に巨大な運動エネルギーを大きく減殺してしまう。
 かくして彼等の決死の行動は徒労に終わった。

 再び射撃を行うチャンスは訪れなかった。八九式中戦車が反撃を始めたからである。





 ――今のはちとヤバかったかな?

 有馬大尉は内心冷や汗をかいた。

275 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/03(火) 08:39:20 ID:U1uACm8A0
 八九式中戦車の前面装甲は、当たり所が悪ければ大口径小銃の硬芯弾にすら貫通――勿論相当な至近距離での話だ――されてしまうのだ。あのバリスタだってここまで近づけばその程度の威力はあるだろう。少し遊び過ぎた、反省ものである。

 まあ本当に遊んでいた訳ではない。が、余裕を持ち過ぎていたのは事実であろう。
 バリスタの左右に展開していた小隊規模の歩兵を吹き飛ばした後、有馬大尉は敵の指揮官が逃げだすのを待っていたのだ。
 何せあれだけの規模の指揮官である、それなり以上の階級の騎士だろう。見逃すに越したことはない――そう判断したのだ。
 敵を舐めきった、余裕のあるからこそ出来た行動だが、この一撃が有馬大尉の目を醒めさせた。

「俺も相当な大馬鹿野郎だな…… 力を見せずに敵が逃げる――ましてや降伏する筈も無かろうに」

 連中は戦争を、生きるか死ぬかの戦いをやっているのだ。そんな簡単にこちらの思い通りになる筈がない。
 軍司令官閣下だって仰っていたではないか。“殲滅”は駄目だ、と。あくまで“殲滅”――が禁止されているのであり、通常の戦闘は認められているのだ。
 無論、この言葉の意味は十分理解していた。が、敵を甘く見、威嚇だけで降伏に追い込もうとしてしまっていた。
 何たる増長、何たる不覚。

 ――遊びは終わりだ!

 腹を決めた有馬大尉は素早く結論を下す。

276 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/03(火) 08:39:50 ID:U1uACm8A0
「戦車、機銃撃て!」

 タタタッ!

 車体前部に据え付けられている九一式車載機関銃が軽快な音を立てる。
 重機ではなく十一年式軽機関銃を車載用に改良した軽機――しかも6.5o弾――だが、放たれた6.5o弾はバリスタの防盾を簡単に貫通して敵を薙ぎ倒し、バリスタはたちまち沈黙した。

「踏み越えろ!」

 メキメキッ! バキッ!

 有馬大尉の命令に従い、八九式中戦車はわざわざバリスタを踏み潰し前進する。13トン近い重量に押しつぶされ、バリスタは見るも無残に潰されてしまう。
 ……それと共に、人を押し潰す嫌な感触。忘れようとて忘れられるものではない。これが初陣の戦車兵達はさぞかし顔を蒼ざめていることだろう。
 が、敢えて有馬大尉はそれを命じた。
 残る半数の敵に見せ付ける為に。





 SS投下終了。
 脳内妄想を上手く書き取れない……
 あ゛あ゛文才が欲しい……

277 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/03(火) 08:53:34 ID:Ft8EYybM0
くろべえさん、投下乙です。
ようやく、ようやく八九式中戦車に晴れ舞台が!
血の雨降る舞台なのは仕方ありませんが。

散々暴れ回った後にもう1台、2台と来たら戦意喪失してくれるに違いない。

278 名前:長崎県人:2007/04/03(火) 10:16:32 ID:2MxH4A12O
くろべえさん投下乙です
キャタピラで踏むのは後の掃除がイヤな感じに・・・チハでも鉄条網や針金で云々らしいので・・・あれ?目から汗が・・・


しかし九五式軽戦車が、タラワでシャーマンを三両で戦って一両食ってます・・・バリスタももしかしたら・・・と、内心私も冷汗ものですたw

279 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/03(火) 13:31:25 ID:3r.sDsZY0
ちょっと質問
>超高硬度炭素鋼に叩き付けられ
戦車の装甲って超硬なのか、割れたりしないの?
粘り強さとかは?

280 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/03(火) 15:16:35 ID:KeeBr/.Q0
帝國陸軍は装甲に関して、間違った認識をしていた。と聞いたことがあります。

281 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/03(火) 18:01:46 ID:/rhVacO20
>>279
まあ、流石に弓矢に負けたらお前らはイタリアンかと突っ込みが来るさw

282 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/04(水) 00:18:06 ID:KU8QS5YM0
仮にも戦車の装甲が矢なんぞに負けたら
さすがに問題になって少しはマトモな戦車の開発をしようとするかもしれない。

ただし「しようとする」だけ。
現実には技術上の問題と予算上の問題が障害となって
結局は史実とあまり変わらない気がするな。

283 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/04(水) 01:05:43 ID:CNAjLRsI0
攻城用の大型バリスタで打たれたら鏃は砕けるだろうけど、リベットが飛ぶかもしれんね。
浸炭処理した装甲表面は亀裂が入るかな。

戦車といえば、九八式系列の軽戦車はどうなったのだろう。

284 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/04(水) 02:10:08 ID:Pusv3SwY0
>>279
戦車の初期は「装甲は堅いのが良い」といわれて表面硬化したものが多く使われた。
中まで硬化してないのでそれなりに粘りがあり、強靱。 要は焼き入れだ
実際に機銃弾などの場合には表面だけではじくので装甲は痛みにくい。
反面、衝撃力がある程度を越えると割れやすくなり、十分な防御効果が得られない
と言うことで中戦車以上(対戦車戦闘を行う様なモノ)には硬化処理はしなくなった。

代わって用いられるようになったのが、いわゆる均一圧延装甲で、弾力があり、
衝撃をたわんで逃がすことが出来るようになったためWW2の戦車はたいていコレ。

HEATに弱いのでシェルツェン付けたり、リアクティブアーマー付けたりなんだりしたが最終的に廃れて、
いまのハイブリッド(ラミネート)装甲になった。
要するにセラミックやらなんやら挟んで弱点をなくしたもの。
装甲版コンバインドアームズってなワケだ。

285 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/04(水) 07:09:50 ID:CNraRg7U0
>>281
まあ、流石に弓矢に負けたらお前らはイタリアンかと突っ込みが来るさw

「カーロアルマートか?」「あれは俺の知る限り最低の戦車だ。ヨーロッパ最弱、いや世界最弱かも知れん」
うろ覚えだが、某小説の登場人物の発言。元ネタわかる人いるかなあ。
281の発言みて思い出してしまいました。w
ネタ元が、小説だけというのもアレなので、検索もしてみました。

日本では通称「カーロアルマート」とか「カルロアルマート}なんて呼ばれているようだが
これはイタリア語で言うところの中戦車という意味らしい(発音はよく知らん)

M13/40中戦車で主砲は47ミリ、初速は630m/sで射程600mから43mm
の装甲を貫徹できる。(初期のアフリカ戦線では結構恐れられた存在だったらしい)
が、最大装甲厚は30ミリでなんと左側のハッチ部は8ミリしかなくてここを撃たれたらイチコロ
だったそうだ。さらに発動機はディーゼルエンジンで、非力でよく故障したらしい。
装甲が薄いので砲塔と前面装甲には予備履帯を巻きつけて追加装甲の替わりにするというよう
な涙ぐましい努力をしている。

ううむ、チハたんとどっちがつおいのだろうか?

286 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/04(水) 08:12:16 ID:IvX.uGKQ0
>>285
うは、こんな萌えたんくがまだ居たのか……歴史って言うのは懐深いですなあw

287 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/04(水) 09:56:23 ID:8RNT3GbA0
萌えたんくを知れば知るほどエイブラハムや90式が房仕様のチート戦車に思えて困る

288 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/04(水) 11:21:36 ID:KU8QS5YM0
>>287
「ぼくのかんがえたさいきょうのせんしゃ」というわけかw

289 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/04(水) 11:34:49 ID:zh0LI88.0
軽装甲機動車 & M2のほうがマシかもしれんな。

290 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/04(水) 11:45:24 ID:U1uACm8A0
>>217
 名無し三等兵様、有難うございます。

>ようやく、ようやく八九式中戦車に晴れ舞台が!
 いままで散々でしたが、やっと出番です。お待たせしました。
 でも八九式中戦車、最初の国産戦車だけあって色々問題があったみたいですね。特に甲型は。
(初期の戦車なんて何処も似た様なものかも?}

 SS中の八九式は老朽品なので特に酷いです。
 状態の良い車両は、一に戦車聯隊用、二に教育用&予備車両として保管――として押さえられていますから。
 でもって戦車兵と整備兵も即席教育の新米ですからねえ……

>>218
 長崎県人様、有難うございます。

>チハでも鉄条網や針金で云々
 障害物構築が意外と効果的かもしれませんね。あ、でも強靭な針金とか作れるかな? 出来なければ丸太か……

291 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/04(水) 11:45:56 ID:U1uACm8A0
 少し補足します。
 改訂版では無印帝國召喚と戦車の開発・生産が少し異なります。まあ大体同じではありますが。
 現在の構想では――

@転移〜昭和18年後半
 三種の戦車・豆戦車(九七式軽装甲車/九五式軽戦車/九七式中戦車)が、転移前の一割程度のペースで生産されました。
 無印では『年間50〜60両』としていますが、改訂版では100両以上です。
 生産された車両は、未だ戦車聯隊に居座っている八九式中戦車の更新用、或いは損耗車両の補充や定数充足に回されています。
(ちなみに残った九割の生産力は、重機やトラックの生産に当てられています。
 あんまり作り過ぎた――あくまで『以前と比較して』の話――ため、『動かす中の人がいない』『整備する人がいない』という洒落にならない事態も……)

 なお、昭和17年末から九七式中戦車用の47o長砲身砲搭載砲塔の生産が開始され、既存の九七式中戦車に搭載(砲塔換装)され始めます。
(これは一式中戦車の制式化が延期されたことによる暫定的措置です)


A昭和18年後半〜
 上記三種の生産が終了、次期戦車として二式軽戦車/一式中戦車改/二式重戦車の生産が始まります。
 なお、豆戦車の生産は完全に打ち切られました。これは『生産の集中』という意味もありますが、何より『トラクター等の生産が優先された』ことが大きいです。
 二式軽戦車と一式中戦車改の配備により、九五式軽戦車は軽装甲車の後継として捜索聯隊に、九七式中戦車は師団戦車隊に配属予定。
 また、かなりの数の九七式中戦車を自走砲や砲戦車に改造する計画ですが、これは一式中戦車改の生産状況――つまり予算――によるでしょう。

292 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/04(水) 11:46:27 ID:U1uACm8A0
<二式軽戦車>
 史実の二式軽戦車。
(九八式軽戦車の生産は転移の影響により見送られたため、九五式軽戦車の後継)

<一式中戦車改>
 一式中戦車からの改良点は以下の二点。

@『装甲材を表面硬化鋼から圧延均質鋼に変更』
 陸海軍合同の二式重戦車開発過程において、従来の戦車開発における様々な誤りが明らかとなった。
 その代表的な誤りが『装甲材材質の選択』である。
 これは、従来の装甲材が『耐弾性に著しい問題アリ』と海軍技術者側より指摘されたことにより発覚した。
(まあ、これを認めるまでにかなりの紆余曲折があったが)

A『装甲圧を前部50o→25o、側面25o→20〜25o、上面16o→10oと九七式並に削減』
 一式中戦車は九七式中戦車の足回りを踏襲しているため、大幅な重量増加による故障が頻発していた。
 特に前部装甲を大幅に増やしたことによるバランス変化と重量超過による負担は相当なもので、前部サスペンションの破損は“日常茶飯事”と言っても過言ではなかった。
 このため、思い切って装甲厚を『九七式と同等』とし、全備重量を17.2トンから16トンに削減。ようやく足回りの問題は解決した。

 一般に一式中戦車改は『九七式中戦車と似た様なもの』と思われているが、様々な点で大幅に強化されている。
 ・車体の全面溶接により車体構造が大幅に強化されており、至近距離の大口径榴弾にも耐えられる様になった。
 ・同一厚ではあるが、装甲材の見直しにより装甲も実質的には強化されている。
 ・特に機動力は大幅に向上し、軽戦車並の出力/重量比を達成した。
(一式中戦車改が『真のチハ』とも呼ばれるのは、この様な理由からである。
 まあ所詮は『三式中戦車制式化までの繋ぎ』に過ぎないが……)

293 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/04(水) 11:47:18 ID:U1uACm8A0
<二式重戦車>
 転移による『技術情報の封鎖』と『戦車生産の停滞』に危機感を抱いた軍が総力を挙げて開発した重戦車である。
 このため、制式化こそされたものの技術開発に主眼が置かれており、量産性は殆ど考慮されていない。
 特に注目すべきことは陸海軍が共同で開発したことであろう。これは当時の軍の危機感が如何に大きかったかが判るエピソードでもある。
(当時は海軍も大型艦建艦がストップしており、『技術者が比較的ヒマだった』ということもあるが……)

 この開発過程で、陸軍戦車開発技術の様々な問題点が明らかになった。その主な点は『装甲材の欠陥』『徹甲弾の欠陥』の二つである。
 海軍からの技術提供を受け、これ等の欠点は様々な葛藤の上、直ちに是正されることとなった。
(が、装甲材に関しては一式中戦車の装甲材を変更するのがやっとであり、それ以前の戦車については手付かずのまま放置されたし、弾丸に関しても新たに開発するまでは従来のものを生産することとなった。大量の備蓄分を考えれば、完全に更新されるのは数年どころの話ではないだろう。つまり、欠陥が判ったとはいえ『今日明日に如何なる』という様な問題では無いのだ)
 また海軍側から提案され、T34級の大規模な傾斜装甲が初めて取り入れられた。

 二式重戦車要目
 全備重量:35トン
 機関:川崎航空機製BMW型水冷X型12気筒3760ccエンジン(550馬力)
 装甲:圧延均質鋼を全面溶接した。
    砲塔前面100o/側面75・35o/後面35o
    車体前面75o/側面50・35o/後面35o
    上面20o/底面16mm
 主砲:二式八糎戦車砲(九八式八センチ高角砲を改造した60口径76.2o砲)×1
 機銃:九七式車載機関銃×2

 二式重戦車の開発過程で得られた技術は後の戦車開発にフィードバックされることになるが、現状では一式にその一部を盛り込むのが精一杯(一式改)であった。
 本格的に教訓を盛り込んだ戦車は、次の三式中戦車の登場まで待たなければならなかった。

294 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/04(水) 11:48:01 ID:U1uACm8A0
 三式中戦車要目(現在開発中。昭和20年制式化予定)
 全備重量:最大20トン
 機関:統制型一〇〇式ディーゼルエンジン(240馬力)
 装甲:圧延均質鋼を全面溶接した。
    砲塔前面50o/側面30o/後面20o
    車体前面50o/側面30o/後面20o
    上面16o/底面12mm
 主砲:三式六糎戦車砲(試製機動砲を改造した56口径57o砲)×1
 機銃:九七式車載機関銃×3(車体前部・砲塔主砲同軸・車長ハッチ傍)

 一式の拡大・改良版。二式重戦車で得られた技術を全面的に取り入れた初の戦車。
 中戦車として初めて同軸機銃を採用したことでも有名。
(傾斜装甲に関しては、量産するには設備(大型の装甲板を切断する機械等)が不足していたため見送られた)





 二式重戦車は35トンで足りるかな……
 史実の四式べースに見当付けたのだけれど。

295 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/04(水) 13:06:02 ID:oVuuhHNoO
くろべえさん投稿乙です

に、二式重戦車なんか帝國陸軍の戦車じゃないやい!!
と、言いながら萌え苦しみましたw
そういえばこんな化け物戦車造ってましたね
確か真の目的は大陸奥地に潜んでいるかもしれない
怪物対策なんでしたっけ?
配備先がレムリアで……
でも輸送はどうするんだ?
専用の戦車揚陸艦でもつくるんだろうか……
まぁ海を無事に越えればレムリア鉄道は広軌だから問題は無くなるが

296 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/04(水) 21:58:59 ID:Ft8EYybM0
くろべえさん、乙です。

おおっ、立派に(?)戦車開発をしてる。
この調子なら問題は無いはず。
・・・ドイツやアメリカ等、元の世界を気にしなければだけど。

二式重戦車の輸送は・・・ばらしてからもう1回組み立てましょうか(苦笑)。

三式中戦車、昭和20年に制式化されたら五式になるのではないでしょうか?

297 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/04(水) 22:05:15 ID:njlPJyHw0
>二式重戦車の輸送は・・・ばらしてからもう1回組み立てましょうか(苦笑)

最初からそれを想定して作るって事? ブロック工法みたいな

298 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/04(水) 22:53:23 ID:U1uACm8A0
>二式重戦車
 年産12両の月刊戦車です。戦車兵ですら滅多にお目にかかれない珍品ですね。
 お披露目すれば人だかりが山の如しでしょう。
 ちなみにお値段は一式中戦車改の5倍以上……

>二式重戦車の輸送
 史実の二等輸送艦を若干大きくした輸送艦(基準1200トン超か?)で運びます。
 大きくした訳は現在開発中の三式中戦車に合わせたためです。
 この輸送艦は三式中戦車を最大で10両(1個中隊)搭載できます。
 ……二等輸送艦同様、艦首が保護されてないから波に弱いですけどね。

 で、陸に乗り上げて直接揚陸します。
 二式重戦車は3〜4両(1個小隊)しか載せられませんが、まあ月産1両ですから問題ないでしょう。

(ちなみに帝國召喚世界では、旧式駆逐艦の改装による哨戒艇が多数存在する為、史実の一等輸送艦は今のところ開発されていません)

299 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/05(木) 10:37:15 ID:Ft8EYybM0
>>297
いや、部品レベルまで分解して輸送を(笑)。
即応は中戦車がしてくれるでしょうし。

>>298
>基準1200トンの輸送艦
二等輸送艦が九五式軽戦車14両輸送可能ですから、基準1200トンもあれば中戦車10両は容易ですね。
ただ、日本〜ハワイにも匹敵する距離を安全に輸送出来るかなあ?少し不安です。

300 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/07(土) 02:12:53 ID:bKNYdHdI0
投下開始

ユフ戦記 46 血染めの島 8


皇都に訪れた短い夏のある日、20日ばかり軍務を休んだスルムは彼のかけがえのない宝と共に家を後にしていた。
家の居心地が悪いわけではない。
高級住宅街とはいかぬが、物静かな皇都の南通りに面する集合住宅は幼い子を抱えるスルム一家にとって繰り言を誘うような要素はない。
採光がよく広々した間取りは己の実入りからすれば過分ともいえるねぐらだ。
まだ彼と妻の相貌に皺が刻まれていなかった頃、寡婦の家主との間に紡がれた一つの美談が彼とその家族をそこに住まわせる原動力となった。

砕氷をみたい、と言い出したのは彼の3つの宝のうちの1つ、真ん中の娘だった。
皇国に伝わる幾つか伝わる物語のうちの一つ、氷の国での王女と貧乏猟師の悲恋譚を語り聞かされた娘はその舞台を訪れたいと夫婦に告げたのが始まりだった。
3人の子に同質量の宝玉よりも高い価値を見出していたスルムは大いに悩んだ。
軍は皇都で帝國人がしでかした火遊びの後始末に追われており、近衛の一員たるスルムもその例外ではない。その筈だった。

301 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/07(土) 02:13:36 ID:bKNYdHdI0
事態が変転したのは娘と交わした会話を銀髪の翼竜士官に洩らしたことに起因する。
彼女はスルムが叛乱の際に皇国軍人に相応しい行動をとったこと、そして彼の娘の希望を即位間もない皇主陛下に耳打ちしたらしい。直接見たわけではない。
どうも彼女に甘いところのある皇主陛下の計らいによりスルムは休暇と旅行先までの船、そして滞在先を確保した。
ロイ王家専用船での船旅、滞在先の離宮、そして景色。
そのすべてが満足のいくものだった。
離宮はかつて実在した悲恋譚の主人公たる王女が寝起きしていた場であったし、露台から望む観穹湖と背後に控える白剣山は反抗期を迎えた息子を黙らせるに充分であった。

白剣山を滑り観穹湖に至る無数の河、その氷が湖に落ちる瞬間を皇国では砕氷と言い表す。
分厚い鹿革の手袋の上から息を吹きかける娘に可笑しみと言い表しようのない愛おしさを感じていると娘の叱責が飛んでくる。

お父様、さっきの砕氷見逃したでしょう?折角来たんだから私より河を見なくちゃ。
私の顔なんかいつでもみられるけど砕氷は夏しかみられないんだから。

紅みがさした頬を膨らませた顔で上目遣いにスルムをみつめ、人差し指を突き出して説教をする娘の姿がまたスルムの頬を緩める。
表情の変化を見て取った娘は両手を腰に当ていかにも怒ってます、といった態度をとる。
まあまあ、二人とも止しなさいと言う妻の表情から憂いの色が見て取れるのはスルムの気の回しすぎだろうか?
彼女はスルムが今回の休暇を軍参謀部歩兵兵略論究課への配属と引き換えに手にしたことを知っている。
父さんはレイサに甘いんだから、とぶつぶつ零す長男の顔も楽しそうだ。
末のサイカは小さな体躯から一杯の元気を発散させて雪に覆われた湖畔を走り回る。

陽光を浴びて山に張り付く氷河は青玉と翡翠を溶かして混ぜたような輝きを放ち、周りの白い雪との対比が際立つ。
宝石みたいなのに、あれが水になっちゃうなんてなんだかもったいなね。
そう娘が零した刹那、一つの河が崩れ落ちる。
巨大な氷が破片になりながら湖面を波立て、辺りには陽光をうけた氷霧が舞い上がり万華鏡のような輝きを見せる。
あの位置だと音が達するまで五寸程かな。
地鳴りのような音に備え身構えるスルムに訪れたのは体を突き上げる衝撃と硝煙の香り、そして地鳴りとは異なる轟音。

302 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/07(土) 02:14:08 ID:bKNYdHdI0
陽の代わりに月が照らす塹壕を見渡せばそこに家族の姿はなく、黒い軍装を濡らして横たわる皇国兵たちと少数の帝國兵。
耳朶を振るわせるのは砕氷の音ではなく帝國軍のものと思しき砲火、先程まで耳にすることの無かったものだった。

「どの位気を失っていた?」

「2巻(7分弱)ほどですね」

応えるのは第2旅軍の通信士官たるナダルだ。
他にこの塹壕で生きているのはダカユース二等兵のみ、とはいえ第2旅軍の生き残りがこの3人だけというわけではない。
15巻ほど前に帝國軍陣地の一角に乗り込んだのは2,30人、帝國人は塹壕での白兵戦を早々に切り上げて山の奥に消えていったから損害は酷くはない。
その後帝國人から浴びせられた嫌がらせのような砲撃を加味しても15人は生き残っている筈。すべては帝國人の残した塹壕のお陰というわけだ。

「いい気付だ、帝國人は夢を見ることも許してくれないらしい」

音のするほう‐山の奥を見やりながら息を吐く。
胴長人は元気一杯だ。最後まで付き合えなかったのは心残りではある。

「夢を?
どのようなものでしょう、差し支えなければご教授いただけないでしょうか」

「夢、そう夢だよ。
私の人生で最も輝いていたとき、そして最早この手に掴むことの許されない夢だ。
ところでダカユース君、此度の射撃はこれまでのものと趣を異にする様だが君の意見はどうかね?」

303 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/07(土) 02:14:47 ID:bKNYdHdI0
口にしている最中に気恥ずかしくなってきたのか、あるいは軍人の本分に戻ろうとしたのかスルムは話題をかえる。
ダカユースに問いかけたのはナダルが兵団本部に報告を送っており、話相手にはできないためだ。
皇国語は52の文字を組み合わせるが、安定して(そして普及可能な価格の)一定の振幅数を発揮する魔石は18種類しかない。
そのため魔道通信は、マナの振幅数が異なる魔石を18種類、これらに魔力入りの道具で刺激を与えて18個の記号からなる文章を送信する。
これはかなりの難事だ。
魔術師なら兎も角、ナダルの様な魔術的才能を持ち合わせていないものが魔道通信を行うというのはそれなりの苦労を伴うのだ。

「ええ、百竜長殿。
この何処と無く間の抜けた発射音は帝國人の云う重迫撃砲とやらに違いありません。
今まで撃ってこなかったのに気でも変わったんでしょうか?」

スルムは形容しがたい笑みを浮かべてダカユースに向き直る。
左足が千切れている所為か酷く身に堪える作業だ。

「思いあたることがあるのだよ、ダカユース君。
帝國人は三個の歩兵中隊と一個の重火器中隊で大隊を形成する。
そして重迫を持っているのは重火器中隊だけなのだ、私の云っている意味がわかるか?」

「この山を守る帝國軍がその兵力の一部をこちらに差し向けた、そういうことですね」

「そう、この造りの良い帝國陣地に篭って抵抗する我々に手を焼いたのだ。
そして第2旅軍の任務は陽動であり兵力の吸引であった」

「なんとも喜ばしい、閣下は任務を完遂されたのです」

「我々、だ。我々は任務を完遂したのだ。若人たちの死は決して無駄ではなかった」

304 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/07(土) 02:15:24 ID:bKNYdHdI0
スルムは塹壕から身を乗り出し、斜面を見つめる。
幾百もの部下たちの屍骸が折り重なってそこにあるが、決して苦味のある感情が胸に去来することはない。
はしゃぎまわるわけでもないが。
周囲の塹壕にも部下が篭っている筈だが、連絡を取るのは至難の業だ。
塹壕同士は繋がっていない上、連絡路は帝國人の去って行った山の奥にあるためだ。
振動と轟音と共に帝國人に小銃弾を浴びせていた塹壕が一つ沈黙する。
そろそろこの壕も攻撃対象になりそうだ。

「どうやら旅の最後を共にするのはこの三人のようだ」

「兵団本部に送る便りはありますか?必要な通信は完了しました」

ナダルが痩せこけた頬を緩ませて問いかける。
まったく、たかが30前の若造に気を使わせるとは情けない。
ナダルの好意を退けつつ、ダカユースに外してあった背嚢を取るよう指示する。
まだぬくもりの残った皇国兵の骸を掻き分け暗褐色に染められた背嚢をスルムに差し出すと、スルムは中から布に包まれた筒らしきものと真鍮杯を取り出す。

「割れているかと心配していたが、どうやら我々は幸運に恵まれているらしい」

スルムが取り出したのは撫肩のすらりとした壜、その中には琥珀色の液体が詰まっている。

305 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/07(土) 02:16:02 ID:bKNYdHdI0
「サレック王国の麦芽蒸留酒、ジーム醸造所の60年ものだ。呑んだことは?」

2人とも首を横に振る。
無理もない、サレック王国は知らなくともジーム醸造所は知っているという皇国人は多い。つまりそれほどの酒なのだ。
子気味の良い音と共に柔らかい香りが辺りに立ち込める。
なるほど、結婚式の晩に妻と共に口にした時はわからなかったがこれはいい酒だ。

「貴様らにはまだ早いだろうが仕方ない、丁度杯も3つあることだしな」

もし陣地の奪取が成ったら、帝國軍指揮官と自分でこの壜を開けるつもりだった。
彼とて大勢の皇国人に違わずそれなりの見栄というものを持ち合わせているから、上物の酒で帝國人の度肝を抜いてやるつもりだったのだ。
残る一杯は、無論皇主陛下に捧げるつもりであったのだが、もはやその必要はなくなった。

「今呑まなければいつ呑めるというのです?」

再び衝撃、そして土がスルムたちに降りかかる。相当近い。
友軍で抵抗している者はもはやいない。
彼らには帝國軍を拘置すべく、生きている限り抵抗するよう命じているからその意味するところは明らかだ。

306 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/07(土) 02:16:41 ID:bKNYdHdI0
「ふむ、今宵は望月でしたか。
作戦行動上の情報としては頭にはいっていましたがそれ以上のものとして捉えられませんでした」

帝国軍陣地のうちやや張り出したスルムたちの壕からは乙海岸と清水の断崖が一望できる。
ほぼ直角といってよい断崖の高さは200フィフィク(約600メートル)、その向こうに南遣団の船が見える。
月光を受けた漣が煌めき、眼前に広がる星の海はこの手に掴めそうなほどだ。

「どうだ、あの月さえこの手に掴めそうじゃないか。帝國人はこんな景色を見ていたんだな」

「掌月台、その位の名前をつけてもいいでしょう。
戦術目標甲・東斜面が死に場所の名前たあ少し味気ない」

特に異を唱えず3つの杯を満たすとスルムは再び斜面に眼をやる。

「嗚呼、玉杯に花受けて、か。
全く、こんな高みから俺たちを見下ろして好き放題撃っていたわけだ」

スルムがエリート意識の固まりとも取れる帝國歌の歌いだしをつぶやくとダカユースが応じる。

「花とは行きませんがね、月を杯に受けるくらいは出来そうです。
酒の表面に月を映して呑むと魔よけの効果があるとか」

「聞かないまじないだな、君の故郷での話か?」

胡乱げな顔付きを浮かべてスルムが問い返すのをみてダカユースは慌てて否定する。
何より宗教じみた行為は大抵の皇国人にとって忌避すべき対象なのだ。

「違います。帝國の元あった世界には森と湖に囲まれた美しい国があったそうで、そこの言い伝えですよ。
なにより蒸し風呂から出た金髪碧眼の美女たちが裸で湖に飛び込むというのが夏の風物詩だそうで」

「裸の美女がついているなら効果覿面に違いない」

今なお続く帝國軍の砲火を掻き消すような笑いがあがり、各々杯に口をつける。
直後に振動と熱風が三人に襲いかかる。
口に入った土を吐き出し、唇についたぬるりとした感触を消し去る。袖にはべっとりと紅いものが残される。

307 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/07(土) 02:18:33 ID:bKNYdHdI0
「レイサは嘘つきだな、そんな風に育てた覚えはないのだが」

いつでも顔を見れるといったのは誰だ、酒面に映るのは血と土の付着した薄汚い顔じゃないか。
壕の縁にもたれ掛かり、顔を上げる。

「百竜長、何か仰いましたか?」

ダカユースではない。
彼は壕に飛び込んだ重迫の破片を浴び、白い液体を頭部から垂れ流しているが、二人とも気にかけない。
270年のジームが口腔を満たすとやや甘く、芳醇な香りが鼻先まで突き抜ける。
その後にコクがありながら滑らかな味わいが味蕾を刺激する筈なのだがスルムの脳が認識するのは違和感の強い苦味だった。
酒の味がわかる程度には歳を重ねた、任務も果たしつつある。ならば勝利の美酒となるのではないのか?
にも拘らず、えづくほどではないが胸を刺激するようなこの苦味は何なのか。
スルムはその答を朧げに感じ取った。

投下終了

308 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/07(土) 04:50:21 ID:lUmeIgxc0
投下乙
嗚呼、また一人格好良い親父が逝った
格好良い親父は世界の宝だよチクショウ(;ω;)

309 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/07(土) 10:40:28 ID:HDlIoC8M0
投下乙です

310 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:51:59 ID:U1uACm8A0
 投稿乙です。
 敵の戦力を吸引、ということは主攻は別ですか。地獄の始まりですね。
 ……どっちの、かは判りませんが。

311 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:52:55 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 外伝1「カナ姫様の細腕繁盛記」

 腹を括れば話は簡単だった。

 先ず、尚も抵抗の気配を見せる第八歩兵隊の本営を砲撃し無力化する。
 次いでシュヴェリン軍が布陣している丘を横断、右翼の第一歩兵隊を壊走させる。
 そして第一歩兵隊の道程を逆走、クレンブルク軍正面に躍り出た。
 ……その後の有馬隊、その八面六臂の活躍ぶりについては多くを語る必要も無いだろう。

 彼等の武器では八九式中戦車の装甲を撃ち破ることは出来ない。
 彼等の防具では八九式中戦車の攻撃を防ぐことは出来ない。

 これ程楽な戦はなかった。八九式中戦車はメクレンブルク軍を思う存分に蹂躙する。
 止めに途中脱落した八九式中戦車の1両が跨上歩兵と共に到着。左右から挟撃される形となったメクレンブルク軍は恐慌状態に陥いり、逃げ惑い味方に踏み潰されて圧死する者が続出した。
 ……この頃になるとメクレンブルク軍の統制は完全に失われており、これがかえって戦いの終結を長引かせ、徒に死傷者を増やしていくという悪循環に陥っていたのだ。

 結局、それから間も無くしてメクレンブルク軍は降伏することになるのだが、この混乱時に数百の兵が死傷――しかもその大半は踏み潰されたことによる死傷――したと伝えられている。
 メクレンブルク軍にとっては悲劇としか言い様が無い戦であった。

312 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:53:44 ID:U1uACm8A0


――――夕刻、シュヴェリン軍本陣。

 暑い……重い……息苦しい……

 暑い……重い……息苦しい……

 暑い……重い……息苦し…………くない?


「あっ、お目覚めになられましたか?」

「???」

 目を開けると見知った女官、ヘラの顔が映る。
 状況判断に悩み首を傾げていると、彼女は助け舟を出してくれた。

「姫様は今まで意識を失ってらしたのですよ」

 そんなに苦しいのでしたら仰って下さい、と苦笑するヘラ。
 それを聞き、また頭が働き出したこともあって、ようやくカナは現状を把握することが出来た。

「そうか、私……」

 途中で気絶しちゃったんだ。

 どの位の間かは判らないが、意識を失っていたらしい。
 ……そこまで考えて、大事なことに気付いた。

313 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:54:18 ID:U1uACm8A0
「! そうだ! 戦いはどうなったのっ!?」

 気付けば、あれ程騒がしかった外が何時の間にか静まり返っている。もしかして……負けたの?

「……お味方の大勝利です」

「え、勝ったの?」

 それも大勝利?

 思いがけない言葉を聞き、思わずカナは恐ろしく不謹慎な台詞を吐いてしまう。
 が、この様な反応を示すのも無理は無いだろう。
 意識を失う直前の戦況は“ジリ貧”状態だった筈だ。勝てたというだけでも半信半疑なのに、“大勝利”なんて正直眉唾ものだった。
 ……それにヘラの口篭った様な物言いが気にかかる。勝ったのなら何故素直に喜ばないのだろう? 外が静かなのもおかしい。

「……本当なの?」

「はい…… 苦戦しましたが、アリマ様が手勢を率いて駆けつけて下さったので……」

「アリマ卿が? でもアリマ卿は南方で――」

 シュトレリッツとシュワルツブルクの両国と戦っている筈、と言いかけて気付いた。
 かつて、彼等が二千の叛乱軍を簡単に滅ぼしたことを。
 ……ああ、そういえばヘラの反応もあの時と似ている。あの時は助かったというのに誰もが呆然としていたっけ。

314 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:54:53 ID:U1uACm8A0
「結局、また助けられた、という訳ね……」

 嘆息する。

 結局、シュヴェリン独力では何一つとして解決出来なかった。叛乱軍の鎮圧も、反シュヴェリン諸国との戦争も何一つ。
 が、他国が伊達や酔狂で、ましてやタダで助けてくれる筈もない。一応“ギブアンドテイク”の形にはなっているが、どう考えてもシュヴェリンの方が分が悪かった。今後シュヴェリンは帝國に対して頭が上がらなくなるだろう。
 ――そう考えると、とても手放しで喜ぶことは出来なかった。

 或いはそれが狙いだろうか、とも考えたがそれだけとは思えない。どうも有馬大尉の……いや帝國の行動は回りくどくて読み難いのだ。
 ……いい加減、その真意をはっきりさせるべきだろう。

「アリマ卿は?」

「! いけませんっ!」

 簡易寝台から降り、外に出ようとするカナをヘラは慌てて止める。
 体で出口を塞いでいることから察して、余程行かせたくないのだろう。
 ……そんなヘラをカナは訝しむ。

「? どうしたの?」

「あ…… も、申し訳ありません。ですが、外にはお出にならない方が宜しいかと……」

「??? ……ま、いいわ。私はアリマ卿に用があります、下がりなさい」

「ですが――」

315 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:55:24 ID:U1uACm8A0
「下がりなさい」

「……はい」

 カナの強い口調に、ヘラは渋々ながらも道をあけた。





「う゛……」

 一歩外に出てカナは顔を顰めた。
 天幕一枚でこうも違うのか、と思うほど嫌な臭いが嗅覚を刺激する。
 ……が、ある程度鼻が慣れたのか我慢できない程では無い。カナは口と鼻元を布で押さえながらも有馬大尉を探す。
 幸い、有馬大尉は直ぐに見つかった。


 有馬大尉は見張り台の上で胡坐をかいていた。
 そして、寿屋のポケットウイスキーをラッパ飲みしながら夕日を眺めている。
 ……何故か、落ち込んでいる様にも見えた。

「な……何を……して……いるの……ですか?」

「……少し酔おうとしまして、ね」

 ゼーハーと息を継ぎながら質問するカナに、有馬大尉は怪訝そうな表情で振り向いた。

 カナは肩で荒い息をしてへたりこんでいた。
 ……どうやら、ここまで来るのに力を使い果たしたらしい。腕も小刻みに痙攣している。
(台に梯子は無く、多数の結び目を付けたロープで上り下りしなければならないのだ)

316 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:55:56 ID:U1uACm8A0
「……何もそこまでして登ってこなくても」

 流石に有馬大尉も呆れた様な口調だ。

「祝い酒、ですか?」

 数分後、カナはなんとか復活――相変わらず腕は小刻みに震えているが――し、有馬大尉との会話を試みた。彼には聞きたいことが山とあるのだ。
 先ずは探りを入れるため、心にも無いことを聞く。

「……ああ、そうか、そうとも言えるかも知れませんな」

 勝利の後飲む酒だからそうなるかな、と今初めて気付いたかの様に有馬大尉は苦笑した。
 そして苦笑した後、ぽつりと呟いた。

「戦に酔えませんでしたからね。代わりに酒で酔うのですよ」

「?」

 カナは意味が判らず首を傾げた。
 が、有馬大尉はそれ以上説明はせず、黙ってウイスキーを呷る。

 “戦場音楽”と“戦場の匂い”は有馬大尉に久し振りの“酔い”をもたらした。
 が、それは一瞬のことに過ぎなかった。全く反撃手段を持たない敵との戦いは直ぐに彼を酔いから醒まし、かえってまるで安物の合成酒を飲んだ後の様な堪らない不快感すらもたらしたのだ。
 それを誤魔化す為に酒を飲んでいた。が、酔えない。

 戦争とは、武器と武器を持った男達の命を賭けた戦いである、と有馬大尉は考えていた。
 無論、それが幻想であること位は理解している。が、戦うためにはその幻想を、免罪符を信じる必要があった。騙されえる必要があったのだ。
 ……が、今回の戦いはその幻想すら許されなかった。これでは酔える筈も無いだろう。要するに、自己嫌悪に陥っていたのである。

317 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:56:27 ID:U1uACm8A0
「……もしかして、死んだ人達を慰める為に飲んでいらっしゃるのですか?」

「は?」

 唐突に思いがけない言葉を聞き、思わず有馬大尉は振り返った、
 ……どうやらカナは、ずっと先程の言葉の意味を考えていたらしい。

「違うのですか? 勝ったのに、手柄を立てたのに沈んでらっしゃるのは、死んだ人達のことを考えてらしたからではないのですか?」

「…………」

 しばらくじっとカナを見ていた有馬大尉は、やがてクククと笑いながら残っていたウイスキーを地面に注ぐ。無くなるとポケットから新たな小瓶を取り出し、再び地面に注ぐ。そして半分ほど注ぐと残りをカナに手渡した。

「?」

「姫様もお飲み下さい。半分はこの戦いで死んでいった全ての者達に、残り半分は我々に」

「……えっと、お弔いに参加するのは全くやぶさかではないのですが、なんかコレまだ半分近く残っているのですけど……」

 負担割合に問題がある様な気が、とカナはちょっぴり涙ぐんでいる。
 が、有馬大尉は澄ました物だ。

「自分は先程飲みましたから」

「私、お酒飲めないのですが」

「帝國の代表者として自分が、シュヴェリンの代表者として姫様が飲むべき、と愚考しますが?」

318 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:56:58 ID:U1uACm8A0
「う゛……」

 そう言われるとカナは弱い。なんとなく騙されている様な気がしないでもないが、根が素直な彼女にはそれ以上何も言えなくなる。やがて諦めたのか、蓋を杯にしてちびちびと舐める様にウイスキーを飲み始めた。 ……このペースでは、飲み干すまでにかなりの時間を必要とするだろう。

 そんなカナを眺めながら、有馬大尉は独り言の様な口調で呟いた。

「我々は“ある物”を手に入れる為にフランケルにやって来ました」

「バレンバンに湧く“黒い水”のことでしょう?」

 私知ってますよ、と合いの手を入れるカナ。
 が、それには答えず尚も有馬大尉は独白を続ける。

「それは我々にとって絶対に必要なもので、困ったことに幾らあっても足りない位大量に必要としています。
 ……そう、湖一つ飲み干しても尚必要とするくらいに、ね」

「え? ……それって、『バレンバンだけじゃあ足りない』ってことですか?」

「それはフランケル全土……いえ、フランケルを含む更に広い地域の地下に眠っています。
 我々はその全てが欲しい。それも誰にも邪魔されず安全確実に」

「…………」

 有馬大尉の独白をカナは呆然と聞いていた。
 彼は間接的にではあるが自分の知りたいことを話してくれていた。酔った上での独白、という形で。 ……が、その内容はとんでもない物だった。
 帝國はフランケルとその周辺地域全てを自分のものにしようと考えている――そう告白していたのだ。
 そして、彼の告白はそれだけに止まらなかった。

319 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:57:30 ID:U1uACm8A0
「帝國はそれを確実に手に入れる為に3万の兵を派遣しました」

「さ、さんまんっ!?」

 カナは目を丸くする。
 3万といえばフランケル第二の人口を誇るシュヴェリンと同じ数である。まるで民族大移動ではないか。
 冗談の様な数を聞き、カナは思わず笑い飛ばしたくなった。
 が、有馬大尉の表情が、それが真実であるということを雄弁に物語っていた。

「それが“帝國の意思”です」

 つまり、生半可な覚悟ではない、ということだ。
 “黒い水”を手に入れるならどんなに強引な手段だって採るだろう。彼等にはそれを実行するだけの力も覚悟もあるのだから。

「幸い、派遣された軍の司令官閣下は温厚な方です。恐らく“本国の意思に反しない範囲内での紳士的な解決”を目指されるでしょう。
 が、それには周辺諸国の協力が不可欠でしょうね。 ……ああ、どうやら酔いが回ってきた様だ。自分が何を言っているのかも判らん」

 有馬大尉は自嘲気味にそう呟くと立ち上がり、しっかりした足取りでロープへと向かう。
 暫く黙ってそれを眺めていたカナだったが、やがてハッとした様に慌てて有馬大尉を呼び止めた。

「! ま、待って下さいっ!!」

「もう独り言は終わりですが?」

320 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/07(土) 13:58:09 ID:U1uACm8A0
「……違います。私も下ろして下さい」

「は?」

「……一人じゃあ下りられません」

 俯きながらカナは小さな声で呟いた。恥ずかしいのか顔が真っ赤だ。

「……貴方は猫ですか」

「高い所が怖いのは人としての本能です。恥ずかしいことではありません」

 誰もそんなことを聞いてはいなかった。

「なら登るなよ……」

 この後先考えない向こう見ずな少女をどうしようか、と有馬大尉は腕を組んで考える。
 正直な話、置いていく、という選択肢も本気でアリな様にも思えた。 ……或いはスパルタで無理矢理下ろす、という手も。

 とはいえ、流石に以前中山に対して行った様な荒っぽい手段を採る訳にもいかなかった。結局、ブツクサ文句を言いながらも有馬大尉はカナを連れて台を下りる。
 カナはしっかりと目を瞑り、下りる間一度も下を見ようとはしなかった。無論、登る時も台の上でも、だ。
 ……まあ多分それで正解だっただろう。高い所からは戦いの後の凄惨な光景が尚も残っていたのだから。




 SS投下終了。

321 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/07(土) 14:31:20 ID:Ft8EYybM0
くろべえさん、投下乙です。

戦車が来たら呆気ない物ですよね。
シュヴェリン軍の反応も気になりますが。

カナ姫、ずっと瞼を閉じてていたんですか(笑)。
好奇心よりも恐怖が勝ったんですね。
しかし、有馬大尉も気付くでしょうに、カナ姫が瞼を閉じていたなら。

322 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/07(土) 15:45:43 ID:eZEQeX8U0
投下乙です。

なんていうか、直接描写せずに事後報告みたいになってるのが、却って戦闘の生々しさを感じさせますね。
メクレンブルグ側の混乱がどれだけのものになってるのか、次が楽しみです。

323 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/07(土) 17:39:33 ID:83/wJNuE0
投下乙です
ううむ…メクレンブルグ(´・ω・`)カワイソス
本来ならば勝てた戦なだけに、哀れさがより一層引き立つ結果に…

しかしこれでシュヴェリン・メクレンブルグ及び汎フランケル連合王国成立のフラグが立ったわけですが。

324 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/07(土) 18:02:19 ID:mSiubQ.I0
うむ、乙
でもまだ血がたらない
もっと血と硝煙を(バキュウ)

325 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/07(土) 19:47:14 ID:lJcNaVNM0
投下乙です
しかし、こんな戦ばかりだったら、牟田口みたいのが量産されそうだなあ……。

326 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/08(日) 05:30:58 ID:idZjOHjk0
連合王国成立まで、これからあまり戦闘もなくいくのでしょうか?
虐殺して欲しい訳ではないですが、もっと帝國の力を見せ付け(PAM

327 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/08(日) 08:45:31 ID:U1uACm8A0
>>321
 名無し三等兵様、有難うございます。

>戦車が来たら呆気ない物ですよね。
>シュヴェリン軍の反応も気になりますが。
 これで諸国に帝國の力を見せつけることができました。圧倒的な大軍と合わせ、大分やり易くなったでしょうね。

>カナ姫、ずっと瞼を閉じてていたんですか(笑)。
 あ、これは下りる時の話です。台の上ではなるべく下を見ないようにしていました。

>>322
 322様、有難うございます。

>なんていうか、直接描写せずに事後報告みたいになってるのが、却って戦闘の生々しさを感じさせますね。
 この辺は蛇足と考え、思い切って省略してみました。

>メクレンブルグ側の混乱がどれだけのものになってるのか
 常備軍壊滅ですからねえ。何時の間にか立場が真逆に……

>>323
 323様、有難うございます。

>本来ならば勝てた戦
 かませ犬として最適だったのが運の尽きでしたね。

>しかしこれでシュヴェリン・メクレンブルグ及び汎フランケル連合王国成立のフラグが立ったわけですが。
 今回は新たな統治形態を模索するためのテストケースです。
 成功、効果大と判定すれば今までの大陸制圧法を大きく変えることになるでしょう。直接統治から間接統治へと。

328 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/08(日) 08:46:03 ID:U1uACm8A0
>>324
 324様、有難うございます。

>まだ血がたらない
 三ヶ国連合は各々二割を超える死傷者を出し、戦闘能力(特に士気)を喪失しました。
 これ以上やるといらぬ恨みを買いますからね。

>>325
 325様、有難うございます。

>しかし、こんな戦ばかりだったら、牟田口みたいのが量産されそうだなあ……。
 ですね。こういう戦ばかりを経験し、改訂版本編へと進むことになる訳です。

>>326
 326様、有難うございます。

>連合王国成立まで、これからあまり戦闘もなくいくのでしょうか?
 転移初期はそれこそ戦闘の連続でした。
 イメージ的には暗黒大陸に進出する欧州列強ですね。切羽詰って余裕がない分、更にアレかもしれませんが……

>もっと帝國の力を見せ付け
 その役どころは改訂版本編にご期待下さい。
 装備を一新(例:九七式戦→一式戦)した帝國軍がこの世界の強国相手と真正面から殴り合います。

329 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/08(日) 08:48:25 ID:U1uACm8A0
 さて、ようやく一連の戦闘が終わりました。長かった……
 ……しかしファンタジー要素、全く無いですね。魔道士も竜も出てきませんし。あ、竜はヘたれ竜が出てきたか。
 ちなみに竜が出てこないのは銃を登場させるためです。火縄銃じゃあ低レベルの戦竜だって阻止するのは“非常に困難”ですから。
 あと、魔道士が出てこないのは『組織戦では人間レベルの個人技など役に立たないから』です。
 中小文明圏における魔道士の役割は、陰陽師とか修験者、密教僧みたいな感じかな? 或いは学を活かした政治顧問とか。文明度が低い地域だとシャーマン代わりだろうなあ。

330 名前:月影:2007/04/08(日) 16:38:28 ID:bNPw0gBE0

猫じゃらし様

投下乙です、そしてお久しぶりです。
ああ、貴方の様に一人の兵士や隊長格の死に様や戦闘シーンを書けれたら…

なんだか、人が死を直前とすると心中穏やかになるのかな〜とか考えさせられましたね。


くろべえ様
投下乙です、お久しぶりで御座います。

3万人の兵力… 約1個師団ですな。
しかも、第二の人口を誇るシュヴェリンと同数らしいですから、このフランケル全土の人口数十人に一人の割合の兵士を派遣か〜

あ、そういえば日本の戦車隊といえば… マレー戦で活躍した島田戦車隊の活躍なんてあるんでしょうか!?
いや、ていうか日本戦車数十両単位での戦闘を何時か見てみたい(ああ、この世界なら…でも、夢だろうな〜)

331 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/08(日) 18:21:35 ID:Ft8EYybM0
>>330
確か島田戦車隊は、グラナダ戦役の夜戦部分で登場していたと思います。
くろべえさんのHPに行けばすぐに読めますよ。

332 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:29:04 ID:bKNYdHdI0
>>308さま ありがとうございます
冥福を祈ってやってください

>>309さま ありがとうございます

くろべえ殿投下乙&ありがとうございます

なんだかんだいって有馬大尉甘いなあ…

月影殿お久しぶりです&ありがとうございます

たまには個人にスポットあててみましたがこれすると話が全く進まないんです…
そのわりに効果低いし…

ところでみなさまにお答えいただいた外伝ですが、>>260から変更します。
A案を本編に盛り込めないのでA、B案双方書くことにしました。
ということでA案(飛行機)からです

333 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:29:39 ID:bKNYdHdI0
ユフ戦記外伝・奇跡の翼 序

『復讐の女神ネメシス、その名を冠した世界で最も美しい翼。
中島飛行機と帝國、否人類が持てる科学と技術を惜しみなく投入して具現化され、蒼穹を駆ける女神の美しさはアフロデティの貌を蒼く染めるに充分である。
私は未だに信じられない。
帝國が当時投入しえた技術であれほどの機体が出来上がったとは。
兵術上の有効性を疑う者は少なくないが、ネメシスが公表されたときの各国の反応を忘れているのではないか?今後如何なる性能を持つ機体が出来上がってもネメシス程の衝撃を与えることはない、それだけは確かだ』
スコットランド王国海軍卿 緒方グレイスの回想録より


じっとりと重い空気が佐竹の体に纏わりつく。
からりとした紗那基地から戻った彼に、除湿機の故障した部屋で味わう六月の関東地方は少々堪える。
が、彼には梅雨時の煩わしさに思いを巡らせる贅沢は許されない。
他でもない、安保理への返答時期が迫っているためであり、武蔵野を預かる佐竹はこの件について社内責任者という地位を押し付けられている。
見通しの茫洋たるを想起し、卓上の紙巻に手を伸ばす。中島知久平が煙草を嗜まなかったとはいえ、中島社内での喫煙率が低いということはない。

さあて、どうしたものかな。
肺まで紫煙を取り込んだ佐竹は一枚の紙に眼を落とす。
ちい、煙まで湿気ていやがる。

334 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:30:26 ID:bKNYdHdI0
『昭和二五年三月十一日 大陸間安全保障機構第113号理事会決議事項・同研究要望書

大陸間安全保障機構は中島飛行機に以下の事項を要求する。

一、 高速機の概念研究
二、 高速機開発に当たっての課題抽出および実現可能性
三、 高速機開発の予定表作成
四、 本年六月二十九日までに回答すること
                   大陸間安全保障機構議長 嶋田繁太郎』

まことに素気無いものだし、書かれていることも別段奇異ではない。
中島を指定してはいるが探らせたところ三菱と川西にも同様の打診が来ているようだ。
研究なら軍にやらせる場合は多々あるが、軍が電子機器を山ほど積んだ大型機にかかりっきりであることを考えれば民間企業にお鉢が回ってきても可笑しくはない。
ここまでは問題ない。

335 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:31:04 ID:bKNYdHdI0
が、ここからなのだ。
軍ではなく実働部隊を持たない安保理からの要請、そして試作とも実用とも明記せず具体的な性能要求は一切なし。
極めつけは軍機級の防諜体制。まともじゃないことだけは確か。
どのような報告を求めているのか掴みようがないが、とりあえず社内の研究班が出した結論をそのまま書こう。

ふむ、試作機レベルならばロケット、実用機ならジェットというところ。
機体構造に充分な研究開発予算が与えられるならば3年で有人試作機の超音速飛行は可能、その場合は海軍が研究しているロケットエンジンを使用する。
そこで遷音速のデータを収集、ジェットによる有人超音速飛行はその2年後。
課題はエンジンの耐熱性と音の壁付近での機体強度、と。
はは、新型艦戦が700キロを越えるか超えないかというご時世に超音速?中島は気が触れたといわれるかな?
まあ烈風42型の発動機は三菱製だし格闘戦志向は三菱の宿痾のようなものだから我々に鈍足の責任はない。
川西もジェットを研究していることだし、とりあえず研究中の旅客機用ジェットの資料を添付しておこう。
まあ我々のジェット開発は大型民間機用、すなわち三菱が大陸航路に投入したDS−3に巻き返しを図るためのものであり川西と違って高速を狙うものではない。
ターボプロップを目指しているとはいえ抱える問題は似たようなものだから参考にはなるだろう。

336 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:31:36 ID:bKNYdHdI0
そこまで考えたところで佐竹は立ち上がる。
午後2時、なんとも怪しげな安保からの要望よりも優先すべき事項があるからだ。
すべての中島社員にとっての悲願、六発の巨人機。
その化け物のような発動機の試験に付き合う時間だ。空冷星型複列36気筒エンジン、極めて構造が複雑なうえ冷却ファンの効果がいまいち上がらない代物。
今回は思い切って設計を変更し、クランク軸に対し螺旋状にシリンダーを配し導風板を置くことで冷却効果を狙っている。
排気タービンも問題はない、冷却さえクリアできればZ機は現実味を帯びてくる。
ま、夢のようであまり実用的でない高速機のことは忘れよう。
もはや佐竹の頭はD−NBH−3の試験運転で満たされており、三菱の四発機を蹴落として空を舞うZ機の姿に魅入っていた。

それは中島の首脳陣と技術者たちが首相官邸に招かれる3週間前のことであった。

337 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:32:13 ID:bKNYdHdI0
ユフ戦記外伝・奇跡の翼 1


こんな場所があったんだ、戦艦の徹甲弾ぐらいじゃあビクともしないんだろうな。
佐竹が最初に洩らした感想はそれだった。
首相官邸の奥、分厚い金属の扉をくぐると地下へ続く階段が現れる。佐竹の現在地はその先だ。
べトンで固められた無機質な部屋にいるのは佐竹だけではない。
中島首脳陣と技術者が長椅子に腰掛け、向かいには臣民によって選ばれし行政の長。
幾人かは石になっているが相手が相手だ、仕方ない。
中島側の探るような気配を気にも掛けず首相が口を開く。

「中島からの報告書は見せていただいた。陸海軍と安保理からの意見と合わせてこうして足を運んでいただいたわけだ」

慌てた様子で佐野―中島の大型機部門の責任者―が口を開く。

「海軍の次期陸攻ではないのですか?」

身を乗り出す佐野を冷めた眼で見つめる。気持ちはわからんでもないが、幾ら首相が海軍出身とは言えわざわざ陸攻の選定に口出しはしないだろう。
彼は安保から依頼が来たことも知らないから無理はないが、佐竹はこの件とZ機とは全く別の話だと覚悟していたから落胆するわけではない。

338 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:32:44 ID:bKNYdHdI0
「二五試は三菱に内定している。
お宅の六発機は確かに性能的には魅力だが、旅客機との部品共用がなくて高価な上に雷撃もできない。
選定から漏れたのはそういう理由らしい、後日正式に海軍から連絡があるだろう」

佐野も小山も面白くなさそうな顔をしているが嶋田は意に介さず続ける。

「種子島あたりの専門家に言わせれば、高速機の開発に関して言えばお宅が最も有望なんだそうだが、私の話を聞く前であれば辞退しても構わん」

お互いに顔を見合わせる。海軍出身者が飛行機会社にこんなこと言うなんぞよっぽどだ。
知久平さんがいれば(社長職でなかろうと)一人で決めるのだろうが、創業者亡き後の中島では合議制となっている。
いくらかの間を置いて佐竹は口を開く。

「幾つか質問させていただいた後でなければ返答しようがありません」

「構わんよ。で、なにから聞くのかね?」

源太郎が真っ先に口火を切る。

「経営に携わる者としては技術的なことよりも資金繰りに」嶋田が紙巻を挟んだ右手を振る。

339 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:33:25 ID:bKNYdHdI0
「そのことなら何も云うな、赤字は絶対に出ないようにする。他には?」

佐竹はどこからそのような資金を出すのですか、と口に出しかけて慌てて飲み込む。
踏み込んではいけない領域のような気がしたのだ。

「我々が選ばれた理由をお尋ねしてもよろしいでしょうか」

今度は小山の探るような声色。中島の戦闘機開発に長年携わってきたが、それだけが能というわけではない。
三菱と川西にも話を振っておきながら中島が選ばれた理由を聞くことができれば、お上の想定している航空機の性能がつかめるからだ。
中島と川西は共にジェットの研究をしているがその方向性は異なる。
中島は三菱に奪われた長距離旅客機市場を奪還すべく、成層圏高速飛行によって燃費を稼ごうとしている。
その際にジェット内蔵のプロペラか、ファンをつけて噴出速度と飛行速度を近づけたジェットで低燃費と高速飛行を実現しようというのだ。
足高速過ぎる上に足が短い戦闘機の実用性が薄いと判断した中島に対して(帝國軍戦闘機の主武装は機銃だからだ)、川西は耐久性を無視した高推力エンジンを戦闘機に積もうとしている。両者のアプローチの違いを大雑把に云うとそういうことになる。
中島が推力580キロの発動機の60時間連続運転に成功していることと、川西が940キロの発動機を10時間持たせられないことの差異はその辺に起因している。
三菱はレシプロ一本やりだが、何といっても財閥ゆえに様々な技術を持った会社とつながりがある。

340 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:34:05 ID:bKNYdHdI0
「君らの期待には添えないが、現時点でお宅と川西との間にそこまでの差はない。
ただ、中島の提出した合金の性能が最も可能性があること、川西にもはやこの計画をするだけの体力が残されていないこと、そして機体設計能力など諸般の事情を総合的に勘案した末の結論だ」

体力がない、か。
確かに川西財閥は往年の勢いを失っているが新型機の開発ができないほどではないし、そのような状況なら中島は工場を閉めて総出で大宴会をしている。
遷音速なら中島、超音速なら川西と踏んでいたがこれでは何も判らない。
大体『現時点』と来た、こいつは実用機じゃなくて長期的な研究依頼かな?

「怪しげな話と思うかもしれないが、航空技術者としてのやりがいは保障する」
と嶋田が付け加えると技術陣と経営陣の間に温度差が生まれる。

さらに幾つかのやり取りを加えた末、中島側が話を受けると伝えるのと前後して新たな飲み物が運ばれてくる。
従卒が地下室を出て行くのと入れ違いに制服組が入り、再び部屋が賑やかになる。

341 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:34:37 ID:bKNYdHdI0
/

実を言うとね、海軍も陸軍も必要性を認識していたんだ。そこでわが国の伝統に従うなら別々に開発、そうなるのが自然だろ?
そう嶋田が切り出すと佐竹は胸のつっかえが取れたような気がした。
なるほど、値段が高くつきそうな上所轄が決まらないんで安保理と首相にまわした、そういうことだな。
外の陽気のように心が晴れやかになった佐竹は勢い込んで尋ねる。

「で、どういった機体を開発すればいいのです?受注すると決めたからには教えてもらえますよね」

「勿論だ、たった今から帝国政府と中島は一蓮托生なのだから」

嶋田は真剣な面持ちで続ける。

「ダークエルフとの共同研究によれば帝國が転移する20年ほど前から各地で魔術的な変動が観測されたらしい。
現在大規模な魔術的兆候はなりを潜めているから、我々が再転位するにしろ米国が転移してくるにしろ20年は猶予が与えられるとのことだ」

「恥ずかしながら魔術に関しては浅学の身でありますが、可能性で言えば数多ある地球の国の中から米国が転移して来るのはほぼ絶無なのでは?」

342 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:35:17 ID:bKNYdHdI0
源太郎の口から出でた声帯の振動を伴った呼気に猜疑の色が多分に含まれているのも当然といえよう。
再転移や地球の国家がこの世界に転移するというのは確たる裏づけはなく、週刊誌レベルの域を出ないというのが一般的な見解だったからだ。
源太郎の問いに嶋田は鷹揚に答える。

「転移にまつわる事象が確率論的に決定されるというのは全くの誤解だ。
我々の経験した転移に関しても、帝國の総体としての意思が何らかの影響を及ぼしているとの結論が出ている。当分表に出ることはないだろうがね」

確かに、天皇の意思とは別に影響力を持った国家総体としての意思が存在するなどおおっぴらに吹聴できるものではないし、国民の脳裡に米国の記憶が残っているうちは安心できない。

「さて、再び高度な科学技術を持った国家と接する可能性があるとなると何らかの準備を整えておく必要がある。無論軍備も含めてだが」

米国が転移してくれば帝國の抑えている市場や無尽蔵の資源地帯に口出しすることは充分考えられるし、帝國が最転移すれば転移前の課題が積まれているわけだ。
備えをしておくに越したことはない。
そのための手段だが、と云った後に嶋田が制服組に目配せをすると海軍の制服を着た男が立ち上がる。

343 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:35:49 ID:bKNYdHdI0
「昭和19年ごろから多大な資金を投じて海軍は衛星軌道上に人工物を投入する研究を続けてきました。
ロケット技術の有用な活用方法が見出されたので陸軍の協力を得て研究は加速していき、現在の帝國ロケット研究に至るわけです。
この有用な方法というのが偵察や通信ですが、さらに重要なものがあります」

ちょっとよろしいですか、と小山が話の腰を折る。

「偵察や通信が宇宙研究の主眼だったのではないのですか?なぜ海軍が独自に研究を開始したので?」

笑いながら答えたのは嶋田だった。

「君達は軍人の頭が固いだとか硬直的とか言うがね、君、小山君も相当のもんだよ。
衛星の最も有意義な使用方法なんて軍人であればすぐ考え付くがね。よろしい、海軍大将にして内閣総理大臣嶋田繁太郎が物理の基礎を教授しよう」

嶋田は部屋を見渡して紅茶をぐびりと飲み干してから講義を開始する。

「地球も、我々が現在いる世界も丸いことはわかっている。
しかし光は直進する(厳密に言えば違うんだが)、そうすると我々は水平線の向こうをみれない。
電波はまた別問題だが探知距離はそう変わらない。そうすると遠くを見るには高いところに登らなければならない、或いは飛行機でもよい。
ところがいざ戦争となると前者は技術的な問題、後者は戦術的な問題から実効性の確保が難しくなってく」「ちょっと待ってください、まさか」

344 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:37:41 ID:bKNYdHdI0
佐竹は思わず叫び出す。

「まさか衛星軌道上から水上砲戦の弾着観測をするつもりだったのですか?」

「今もそのつもりだが?首相の話すらまともに聞けないとは最近の若い者はどうなっているのかね」

「失礼しました、あまりにも莫、いや雄大な構想であられるので興奮してしまいまして」

「そうだろう、私も計画推進に一役買ったんだよ。
低軌道に300個ほど投入すれば全世界をカバーできるし(将来的には80個まで絞れるらしいね)、衛星は再転移しても帝國に付随して転移するのがわかっている。私が生きているうちに見ることは適わないだろうが、必ず後世の帝國人に感謝されるだろうよ」

機嫌を良くした嶋田の顔を見るにつれ心中に重い澱のようなものが溜まっていくのが感じられる。畜生、航空主兵者が必死なのも分かるぞ。

「それは置いておくとして、ロケット技術の有用な活用方法とは地球の裏側に直接爆弾を送り込むことでした。
これに陸軍も飛びつき、共同で研究しようという流れになったわけです」

先ほどの男、荒木が話を元に戻すが、これまた妙な話だ。
莫迦高いロケットに爆弾を積んでも効果は高が知れている筈だが?

345 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:38:12 ID:bKNYdHdI0
「弾頭は些か特殊なものを想定しておりまして、費用対効果に見合うと思われていました。が、致命的な欠陥が露呈します。
転移が再び起こるかどうかは判らない、米国がこっちに転移するような場合は良いとしても我々が元の世界に戻った場合が問題になったのです」

一旦言葉を切って続ける。彼にとっては衝撃的な事柄だったに違いない。

「この世界で収集したデータを元に作ったロケットが、元の世界でまともに飛行するかがわからないのです。なにせ別の惑星ですので。
そこで我々はロケットではなく別の手段を用意する必要に迫られたわけです、それが今回の高速機というわけです」

荒木はグラフのついた書類を引っ張り出して机に並べる。

「これは欧米諸国の軍事・科学技術がどのような具合に進展しているかを予測したものです。
いずれも推測の域を出ない上に年度が後になるほど不確実性が増大していきますので大雑把に考えていただければよいのですが、航空技術は大戦の影響もありますので我々の先を歩んでいるでしょう。
昭和24年にはジェット戦闘機が実用化され遅くとも昭和28年には有人超音速を達成しているでしょう。しかし戦闘機の高速化は一時的な現象に過ぎないものと考えています。
研究開発費の増加と大戦終結により万能機志向が促進され、燃費が悪いうえに他の行動の採りにくい超音速戦闘機よりも常時遷音速で飛行しここぞ、という時だけに超音速を発揮するような機体が配備されるでしょう。
そこに我々の付け入る隙があるわけです」

346 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:38:53 ID:bKNYdHdI0
「なるほど、話は読めてきました。
それで我々は研究をするのですか?それとも実用機の開発を?」
源太郎に荒木がゆっくりと答える。

「両方です。
ロケットによる超音速域のデータ収集とそれのフィードバックを経て機体を設計、それと平行しての発動機開発。
昭和45年を目処に実戦配備、というわけです」

源太郎のような技術畑でないものは安堵しているが、技術陣は顔を蒼くしている。俺も恐らく滑稽な顔付をしているのだろう。
なにせここまでの話から推測するに、米国本土を直接叩ける超音速爆撃機ということなのだから15年で初飛行、20年で実戦配備できるかどうか。
巡航M0.8位でM1.3位のダッシュ能力を持たせるとすればどれくらいの大きさになるだろう?15年とは厳しいが何とかなるだろうか。

「超音速の前に遷音速域のデータ収集を行う必要があります。
銃弾に代表されるように超音速域のふるまいというのはおぼろげながら研究されてきましたが遷音速域は皆無です。
それに加えて大規模な、できれば超音速風洞を建設する必要があります」

347 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:39:48 ID:bKNYdHdI0
「予算は認められる。
送風機ではなく高圧穴あき式を用いた風洞は中島の考案だったろう?」

嶋田が事も無げに言ってのけるので源太郎が焦りだす。

「総理、現在の技術で超音速風洞の建設に幾らかかるかご存知ですか?
重巡が建造できる金額まで膨れ上がっても私は驚きませんよ」

「高速戦艦一隻分の予算は確保している、無論風洞だけでだ。
現在作りうる最高の物を作ったらどうだ?
それより荒木君、中島の耐熱合金に関心があるのではなかったかな?」

小山がすかさず口を挟む。よくぞ聞いてくれましたといわんばかりだ。

「中島では子会社を設立して排気タービン用の耐熱合金を開発してきましたが、今回のステンレスはかなりのものです。
オーステナイト系ステンレスの18Cr,12Ni,2.5Moから発展させたものでクリープ強さを向上させるためにMoを6%まで増やしました。従来はこれによる脆弱性に悩まされましたがNiを25%に増やし、Nを増やすことによってオーステナイトを安定さ」「違う、ジェットエンジン用の耐熱合金だ」

荒木が小山を遮るがどういうことだ?

348 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:41:07 ID:bKNYdHdI0
レシプロエンジンの燃焼はシリンダ内で間欠的に行われるだけで、シリンダ・ヘッドで精々300度ということろだがジェットが連続燃焼といえどもそこまで温度は上がらない。
超音速だから短時間アフターバーナーを使用するだろうが、中島16‐25‐6でも充分エンジン本体での使用に耐えるはずだが。
案の定小山は面白くなさそうな顔をしている。助け舟を出してやるか。

「中将閣下は、ひょっとして京都帝大と共同開発したコバルト系合金のことを仰っているのですか?」

確かにコバルトとクロム、ニッケル合金にタングステン、モリデブン、タンタル、ニオブを加えた耐熱合金を開発したのは事実だ。炭素との析出によって強度を確保するのに苦労したがコスト面をクリアすればいずれ実用化できるかもしれない、というところまでこぎつけている。
850度までは高温強度は良好、1000度まで耐食性が良いという優れものだ。
が、そのような超高温耐熱合金に何の用なのだろうか?中島16‐25‐6は鍛造が基本とは言え中島Vi31よりは低廉なのだが、荒木は怪訝そうな表情を浮かべている。

「勿論、そちらのほうだよ。
本体はそれでいいとしてアフターバーナーはまた別に合金の開発をする必要があるかもしれないが。
ところで機体の方の耐熱合金だが、やはり溶接がネックになってくるね。
この件に関しては帝國が総力を挙げて支援するから人材でも設備でも多少異常の我侭が許される、そうでしたね、首相?」

349 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:44:07 ID:bKNYdHdI0
混乱してきた。低温の成層圏を飛行するなら機体に耐熱合金など必要はない。
小山が紅茶を飲みながら気を落ち着けているのを横目に佐竹は問いかける。

「総理、具体的な性能要求はどうなっているのですか?
どうにも話が噛み合わないものですので、我々に教えていただいてもよろしい段階であるならば教えていただきたいのですが」

嶋田と荒木が顔を見合わせる。
先に佐竹達に振り向いたのは荒木だった。

「いやあすっかり忘れていたよ、もう伝えているものだとばかり。
5トンの爆弾を抱えて戦闘行動半径は6500海里以上。
高度2万5千をM2.5以上で巡航、1500海里をM3.3以上でダッシュするというのが大まかなところだ」

可笑しいな、荒木の声が遠のいていくぞ?
左の佐野の足元からカップの割れたような音。右からは霧吹きのような音が聞こえる。
見れば小山は口腔から紅茶を追い出した代わりに首相閣下は顔を胸に赤い液体を浴びている。

昭和25年7月。
川崎は陸軍から発注のあった局地重戦に倒立16気筒の液冷エンジンを積み、高度8000で765キロの水平飛行に成功してはしゃいでいた頃。
三菱の烈風は防弾装備と格闘戦能力を重視したお陰で700キロが精一杯だった頃。
そんな夏のある日、熱気と蝉の合唱で空気が満たされた帝都の地下では浮世離れした計画が語られていたことは長い間公にされることはなかった。
後に帝國で個人総合電子演算機が通信網で繋がれる時代、匿名掲示板において突拍子もない話や笑い話を見かければ『紅茶吹いたww』と記述されるようになる。
そのモデルが小山であるという風説が根強いが、真偽の程は定かでない。

350 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 06:45:00 ID:bKNYdHdI0
投下終了

351 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/10(火) 07:40:13 ID:xsS49mlo0
投下乙wwwwwww
エスプrsッソ吹いたwwwwwww

352 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/10(火) 07:42:55 ID:HDlIoC8M0
投下乙です

353 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 13:39:16 ID:bKNYdHdI0
>>351さま、>>352さま ありがとうございます。

ということでA案はレシプロ全盛期にM3オーバー超音速機を開発するという苦難のストーリーです。
何話位になるのかは不透明です。

以下外伝奇跡の翼序、一話の訂正及び補足

>>333 ネメシスは陸海軍の命名規則から外れていますが、これはどちらの所属でもないからです。
後に航空軍が設立されてそこの機体になり、そのときの新たな命名規則に従うという設定です。

>>335 DS−3は連山(史実と違い三菱製)の原型となる大陸航路用旅客機です

>>336 D−NBH−3発動機は中島「ハ54」D-NBHの三番目の設計、ということです

>>348 中島16‐25‐6は鉄基耐熱合金の化学成分を示しています。
中島Vi31はコバルトにC 0.5 Mn<1 Si<1 Cr25.5 Ni10.5 W7.5 Fe<2(それぞれパーセント)を加えたものを想定しています

あと>>348 多少異常→多少以上
>>349顔を胸に赤い液体を浴びている→顔や胸に赤い液体を浴びている
に脳内変換してください

投下後の仮眠のつもりが起きたらこんな時間…

354 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/10(火) 15:03:31 ID:Ru5JFTTE0
くろべさん こんにちは。
帝國は、メクレンブルグを「滅ぼしました」ね。
王や皇太子が無事でも、貴族や平民が付いてこなくなるでしょう。
そして、それを行った帝國兵の人数とシュヴェリンの背後に存在する
三万の帝國軍の存在を流布し、先代国王が帝國将校だったという事実を
公表したうえで、シュヴェリンは降った貴族の所領安堵を行うであろうと
いう噂を流したら・・・・
殲滅戦を行うよりも楽で良いかも。

355 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/10(火) 18:28:48 ID:PKccS5720
猫じゃらし氏、投下乙
これは何とも見事な与太話ですねw

356 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/10(火) 20:59:22 ID:sPM2N3Io0
和製ヴァルキリーキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!

wktkしながら待ってますw

357 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/10(火) 22:09:51 ID:ZebtL9ik0
奇跡とは大げさな
大パワーのエンジンを作ってたくさん乗っければいいだけじゃないか?

358 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/10(火) 22:32:34 ID:HDlIoC8M0
>>357
超音速は一般の航空力学とはかなり違いますからそれを手探りでやらなければいけないのは大変だと思います

359 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/10(火) 22:52:38 ID:lJcNaVNM0
>>357
燃費も機体強度も無視かよう。米国製戦乙女がどれだけ金を食い尽くしたか……
まあでも、それだけ無茶苦茶言ってくれないと帝国軍ではないかもしれないな。だが何ぼなんでも高速戦艦程度の予算で足りるはずねえ

360 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/10(火) 23:23:01 ID:bKNYdHdI0
>>355さま ありがとうございます

>>356さま
ヴァルキリーとコンセプトは同じですが実機は異なるものになります

>>357さま

いや、このレベルの科学技術で20年で配備って言うのは結構大変どころか…
成功すれば奇跡と言うに値します

>>359さま

>だが何ぼなんでも高速戦艦程度の予算で足りるはずねえ
風洞の建設費が高千穂クラスの金額、と言うことですので計画全体では幾らになることやら…
大和で培った予算流用技術がバンバン使われます。

ところで風洞建設ってどの位金掛かるのでしょう?

361 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/10(火) 23:31:48 ID:Pusv3SwY0
ヴァルキリーというよりも用途のせいか「SLAM」の方を思い出した。
今のstand−offじゃない方の。

362 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/10(火) 23:45:20 ID:.sNtw7xY0
猫じゃらし氏、投下乙です。
XB-70はB-52の後継機種で開発スタートは昭和30年頃というのと比較すると、帝國も頑張りますねえ。

>>357
エンジンパワーより機体の耐熱性が問題かと。

363 名前:月影:2007/04/11(水) 05:53:05 ID:bNPw0gBE0
猫じゃらし様 投下乙です。

ははは、なんて壮大な戦略計画を(平時の時は軍人の頭って柔らかいんかな〜?)

>ところで風洞建設ってどの位金掛かるのでしょう?

お、これをみて何か風洞実験場のことが書いている本(ドイツの傑作兵器・駄作平気)に記載されていたので書きますです。

ヘルマン・ゲーリング航空研究所 (総面積四平方キロ)

研究棟は松林の下に隠匿された(史実では戦争終了まで、連合軍にもスパイにも発見されず)
70以上の研究棟が存在し、そのうち約40が兵器関連。

亜音速風洞(直径2,5m)、低速航空機用風洞(8m)、高速(亜音速)航空機用風洞(2,8m)、マッハ1,8が出せる小型亜音速風洞(弾道弾用)、さらに小型のマッハ4が出せる音速風洞(航空用)の風洞が主に存在。

で、当時400万マルクが投入(1マルク、今なら1400円かな?=56億円?!)
あと、オーストリアに直径8mの巨大風洞(完成せず)山上湖から引いた水力タービン・パワーによる音速風洞(斬新なアイデアらしいです)


331様
ああ、そういえば… 読んだことあるのに忘れていますた(情報ありがとうございます

364 名前:357:2007/04/12(木) 12:41:45 ID:ZebtL9ik0
そうかいろいろ難しいんだな
簡単にいってすまんかった

365 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/12(木) 13:19:56 ID:X9DoCVGA0
これ貼りたくなった。
ttp://dokoaa.com/buu.html

366 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:25:44 ID:U1uACm8A0
えっと、これから出かけなければなりませんのでレス返し等は後日改めて……

367 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:26:15 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 外伝1「カナ姫様の細腕繁盛記」

――――フランケル派遣艦隊旗艦“扶桑”、司令長官公室。

 カナ姫との会見後、今村均陸軍中将は小沢治三郎海軍中将に面会を要請した。約束通り、“事の次第”を説明する為だ。
 が、両者はこの方面における陸海軍のトップである。軽々しく会う(会わせる)訳にはいかない――少なくとも艦隊司令部の参謀達はそう考えた。無論これには『何度も通信を無視された意趣返し』という意味合いも多分に含まれている。
 故に、もったいぶった様な遣り取りが水面下で長々と行われ、両者の会談が実現したのはなんと三ヶ国連合とシュヴェリンが戦端を開いた頃だった。
 ……転移後は今までと一転して上手くいっている様にも見える陸海軍であったが、その実態は一皮剥けば“こんなもの”だったのだ。
(これを知った小沢が激怒したことは言うまでも無いだろう)

 とはいえ、トップ二人には陸軍だの海軍だのという偏狭的な自己主張は無縁――そりゃあ言うべきことは言うが――である。
 両者は余人交えず膝を突き合わせ、忌憚のない意見を交換していた。

「――成る程、そういう事でしたか……」

 今村が語る事実に驚きを禁じえず、流石の小沢も絶句する。
 そして暫し目を瞑ると哀れな同胞の最期を悼んだ。

「しかし、彼の犠牲は決して無駄ではありませんでした。これがその証です」

 今村は語句を強め、件の“報告書”を小沢に見せた。
 小沢は“報告書”を手に取り、軽く目を走らせる。

「確かに。彼はその最期まで帝國軍人であり続た様ですね。 ……陸軍さんは良い士官をお持ちだ。我々(海軍)も見習いたいものです」

 小沢は全面的に同意した。
 それと共に『この哀れな同胞に対する“心遣い”をすべき』とも指摘する。

368 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:26:45 ID:U1uACm8A0
「ええ、自分としましても出来る限りの配慮を中央に具申する積りです」

 故人に対しては昇進と勲章を、未だ健在であろう本土の遺族には恩給の増額が得られる様に今村は働きかける積りだった。官僚軍人だって浪速節に弱い者は少なくない。この働きかけはまず間違いなく成功するだろう。
 無論、カナ姫とシュヴェリン王国に対しても“それなりの配慮”がなされる筈だ。 ……尤も、彼等がそれで納得できるかどうかはまた別の話だったが。
 が、それ以上は彼に如何こう出来る話ではない。精々彼等が“賢明な判断”を下す様、祈ってやる――場合によっては“現実”を教えてやる――位だ。
 如何な“仁将”とはいえ彼は帝國の将なのだから。

 更に二、三の会話を交した後、小沢は居住いを但して一礼した。

「計画を延期したことに関してはこれで納得出来ました。海軍としても陸軍さんの判断に異論を挟む積りはありません」

 つまり『この話はこれでお仕舞い』であり、『以後海軍から問題にすることはない』ということだ。
 今村も居住いを但して一礼する。

「有難うございます。海軍の御配慮に対して感謝で一杯であります」

「ではこの話はこれで。で、これからの話なのですが、陸軍さんは計画を再開されるのですね?」

 それは単なる確認に過ぎなかった。
 が、今村は首を振った。

「いえ、陸軍としましては計画を一部見直す予定です」

「“一部見直し”?」

369 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:27:27 ID:U1uACm8A0
 今村の意図が読めず、小沢は軽く眉を顰める。

「制圧後の統治については現地の旧支配勢力に委ねる積りです」

 それは歴史に残る発言だった。





「……では閣下は、この地を統治されるお積りはない、と?」

 小沢は驚きの目で今村を見た。

 この地方、即ちフランケル文明圏は大油田地帯であることが既に確認されている。である以上、この地を支配しないなどという選択肢は帝國にとってあり得ない。
 ……が、この将軍は『しない』と宣言したのである。小沢がその真意を訝ったのも無理は無いだろう。

「……どうも言葉が悪かった様ですね。申し訳ない。
 無論、統治はします。ですが『直接にはしない』と申し上げたのです」

 今村均陸軍中将は頭を掻き、先ほどの言葉を補足した。

「と、言いますと?」

「現地住民の統治は旧支配勢力に任せます。我々の介入はその後ろ盾になる程度に止めたいのですよ。最初のうちだけでなく、恒久的に」

 正直、そうでもなければ幾ら兵がいても足りませんからね、と今村は溜息を吐いた。

370 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:27:57 ID:U1uACm8A0
「? 閣下の兵力なら十分可能では?」

 今村の言葉に小沢は首を捻る。

 フランケルに派遣された――或いはこれから派遣されるであろう――地上兵力は航空集団をも含む一個軍である。碌な抵抗手段を持たない、高々100万にも満たぬ現地人を支配するには十分すぎる戦力である。 ……それでも『足りない』のと言うのか?

「ええ、小沢閣下が仰る通り可能でしょう。『現在の戦力なら』ば。
 ……失礼ですが、小沢閣下はフランケルに駐留する戦力を『現在の水準を維持できる』と御思いで?」

「無理でしょうね」

 小沢はあっさりと頷いた。

 現在の戦力はあくまで一時的なものに過ぎない。任務を終えれば海軍艦艇の大半は本土に帰還するか他の方面に転用され、この地には大きめの根拠地隊を一つ置く程度――それだって破格の措置だ――のものだ。陸軍とて話は同じだろう。
 ……が、大体において統治は侵略よりも遙かに困難なのだ。

「最終的にフランケルに置かれる陸軍部隊は、地上戦力が旅団規模の独立守備隊1個、航空戦力が小規模の飛行団1個……後は若干の直属部隊程度ですね。まあ、確かにこれだけでも十分直接統治できます。 ……ですが他の地方は如何でしょう? 果たしてこれだけの戦力を揃えられるでしょうか?
 現在の手法では早晩限界が訪れます。ことは“フランケルが如何こう”という問題では無いのです」

「それは――」

371 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:28:28 ID:U1uACm8A0
 全くの同意見だった。

 帝國が展開すべき地域は恐ろしい勢いで広がりつつある。それこそ予想を上回る勢いで、だ。これでは幾ら兵がいても足りないだろう。
 が、それでも尚『現在の手法でも十分対処できる』などと豪語する者が少なからず存在する。実に嘆かわしいことだった。
(これが陸海軍省や参謀本部、軍令部の幹部連なのだから余計始末におえない)

 確かに現在の手法でも統治できないことは無いだろう。が、それには多くの戦力を投入する必要がある。その分国内の労働力が減るし兵站にだって負担がかかる。如何考えても割に合わなかった。 ……いや、“割に合わない”どころか現状では“自殺行為”とすら言える危険な考えだ。現地住民の協力が得られなければ、ましてや暴動が多発すれば、肝心の資源開発や資源輸送に少なからぬ影響が出ることだろう。それがどういう意味を持つか、帝國にどの様な影響を与えるか、連中には判らないのだろうか?

「我々の最大の敵は“距離”と“時間”です。であるならば、暢気に直接統治などやっている余裕が無いことは明らかでしょう」

 今村中将は帝國の抱えている問題を端的に言い表した。

 “距離”とは帝國と大陸を隔てる数千海里もの距離のことだ。その間は広大な未知の海洋と大地に阻まれており、港や道路の整備、航路設定といった輸送網の整備から始めなければならない為、実際の距離以上に遠い道程だった。肝心の建設機械や資材、船舶だって圧倒的に不足している。
 “時間”とは帝國が備蓄資源を食い潰すまでの時間のことで、それまでに少なくとも主要資源の輸送体制だけでも整えておかねばならない。
 ……つまり、帝國に現地住民と“遊んでいる”余裕など存在しないのだ。

「旧支配勢力に統治を任せれば人員も時間も大幅に削減できます。我々も資源開発と輸送網整備に全力を傾注できるでしょう」

372 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:28:58 ID:U1uACm8A0
「確かにそれはそうでしょう。 ……ですが色々な問題がありますよ。
 まずそれでは資源地帯の領有権が帝國のものになりません。これは後々問題になるでしょうし、本国も納得出来ないでしょう。
 ポストの問題もあります。その手法ではポストが大幅に減りますが、大陸帰りの官僚や半ば強引に除隊させられた陸軍さん達は如何されるのですか?
 第一、肝心の現地勢力を手懐けられますかねえ?」

 小沢の危惧は尤もだった。
 資源地帯の領有は帝國の悲願であるし、莫大な開発投資をすることも考えれば下手な妥協は出来ない。
 ポストの問題だって同じ位重要だ。生臭い話だが、名誉と収入を約束したからこそ陸軍は大幅な削減に応じたのだ。それを反故にすれば如何なるかは火を見るより明らかだ。子供にだって理解できるだろう。
 ……そして、現地勢力とてむざむざ帝國に屈するとも思えない。仮に屈しても面従腹背は十分考えられた。

「形の上では“属国”“属領”とし、帝國の統治機関も置きます。が、自治権に関しては大幅に認める積りです。
 ……これならば領有権も主張できますし、ポストも確保出来ます。現地勢力とて力を見せれば妥協するでしょう。
 無論、バレンバンの様に重要な資源地帯や要地に関しては直轄としますが」

「ですが…… やはり難しい話ですなあ」

 今村の意見は一見容易にも聞こえるが、『それができれば苦労はしない』といった類の話だ。
 そもそも如何言い繕っても『他所の国を侵略し、資源と労働力を奪う』行為である。これで反感を買わない訳が無い。
 大体において、『必要だからその地を寄越せ』と要求されて『はいわかりました』などと言う連中がいる筈も無いのだ。ましてやそれが傲慢な態度なら尚更だろう。『喧嘩を売っている』ととられても仕方が無い。

373 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:29:30 ID:U1uACm8A0
 傲慢な一方的な割譲要求は怒りを買って拒否され、力尽くで奪うことになる。
 が、相手の怒りと恨みは益々強まり、戦いによってそれは末端の民衆にまで伝播する。
 かくして抵抗は続き、怒りと恨みは流れる血に比例して増していくという悪循環。
 土地を奪われ、多くの仲間を殺された彼等の恨みは深い。
 未開の部族の気性の激しさと団結力を、帝國兵達は身に染みて実感していた。

 交渉にかける時間すら惜しみ、即片が付く“力押し”も『止むを得ない』としていた帝國が、大陸進出から僅か一ヶ月でこの考えが揺らぎはじめていたのだ。如何程の抵抗を受けていたかが判るだろう。

 ……が、下手に出たとて如何なるものでもない。
 かつて白人が一握りのガラス玉で広大な土地を土人から買い取った様に、帝國も現地人から土地を買い取ろうとしたが足元を見られて失敗している。
 土人如きに足元を見透かされた外交官の無能振りにも涙が出るが、それ以上に軍の沸点の低さ――交渉の過程でキレた――も問題だった。もっと洗練された手法が必要とされていたのだ。

 だから、今回は慎重を期した。
 最も重要な資源である石油を産出するフランケルは、是非とも安定していて欲しかったからだ。

 標的はシュヴェリン。
 先ず、フランケル最大の国家でありシュヴェリンの敵対国であるメクレンブルクを操り、シュヴェリン国内に叛乱を起こす。この叛乱鎮定に力を貸し、恩を売って資源地帯を平和的・合法的に割譲させる。これが第一段階。
 次いで、メクレンブルクをけしかけてシュヴェリンに侵攻させる。その際シュヴェリンは徹底的に孤立させ、追い詰める。そして支援を口実に本格介入し、用済みのメクレンブルクを叩き潰す。これが第二段階。
 シュヴェリンに大恩を売ると共にフランケル全土に帝國の力を見せ付けた後、メクレンブルクを足場にフランケル全土の制圧を開始する。この際、シュヴェリンを前面に押し出すのが望ましい。これが第三段階。
 最終的には全ての国々から統治権を剥奪し、帝國の直轄領とする。丁度かつての李氏朝鮮の様に。

374 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:30:02 ID:U1uACm8A0
 マッチポンプではあるが、今までとは比較にならぬ程周到な計画である。当然成功する確率は極めて高いだろう――そう帝國は考えていた。
 ……まあ、その実態は穏健派と強硬派のせめぎ合いによる玉虫色の計画となっていたが。

 が、同時に帝國は計画が失敗に終わった時の腹も決めていた。
 もし、もし今までの様な混乱状態になったら……

 『鏖殺する』、と。

 これは彼等二人にしか知らされていない秘密である。
 全く反吐が出る様な話ではあるが、それ程まで帝國はこの地を欲していたのだ。

「しかし、失敗すれば腹を切るだけでは済みませんよ?」

 上のことを念頭に、小沢はやんわりと諭す。

「それも覚悟の上です。小沢閣下には、海軍さんには御迷惑はおかけしません。 ……ですから、どうか騙されてやって貰えないでしょうか?
 このままでは帝國は直ににっちもさっちも行かなくなってしまうでしょう。万が一如何にかなっても、後世に重い罪を背負わせてしまいます」

 そう言うと今村は深々と頭を下げた。

 ――成る程、そういうことか。

 小沢はやっと今村を突き動かしているものの正体を悟った。
 今村は、帝國の殺戮行動を止めようとしていたのだ。

375 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:30:33 ID:U1uACm8A0
 転移から二ヶ月、実際に行動を開始してからなら僅か一月足らずの間に帝國が滅ぼした地域は両の手では数え切れない。
 ……これは紛れも無く“虐殺”だった。ましてや一つの部族を丸々“消し去る”など、帝國史の上でも特筆すべき悪行である。
 『何れも“文明圏”と呼ぶのもおこがましい様な未開の小規模部族群である』ことや『欧米列強よりはマシ』『今は非常時』といった言い訳も存在するが、何れにせよ不名誉であることには変わりない。しかも現在進行形であり、更にエスカレートする可能性が高いのならば尚更だった。

「……判りました。私は何も見なかった聞かなかったことにしましょう」

「ありがとうございます」

 無論、小沢は今村一人に罪を被せるつもりは毛頭なかった。
 何より、彼とて現在の状況を苦々しく思っていたのだから。





「後、気になることが一つあります」

 会見時間も終わりに近づいた頃、今村は最後に一つ、と“報告書”のあるページを開き、それを小沢に見せた。
 小沢は暫く黙って読んでいたが、やがてその表情は驚きに変わっていく。
 そして、思わず呟いた。

「これは!」

 ――それはダークエルフについて書かれた箇所であり、客観的な記述の多い中で珍しく、自身の経験が語られていた。

376 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:31:03 ID:U1uACm8A0
 今から四十年以上前、未だ“彼”が王ではなく只の一代官だった頃 ある事件が起こった。
 ダークエルフの隠れ里が見つかったのだ。
 この知らせにフランケル中が大騒ぎになり、急遽有志連合による討伐軍が編成された。身分の上下関係なく集まった討伐軍は一万を呼号し、隠れ里を包囲しつつ進撃する。この時ばかりは全ての国々が一致団結して――少なくとも表向きは――協力したのだ。
 が、“彼”は変装したダークエルフの領内通過に目を瞑り、そればかりか内々に女子供を匿った。露見すれば死罪は免れなかっただろうに、だ。
 この騒動で数十人のダークエルフが惨殺された。
(その大半が老人だったと伝えられている)
 ……この時、討伐軍の中心になったのはメクレンブルク軍である。当時のメクレンブルク王は大変なダークエルフ嫌いであり、“彼”の言葉を借りれば『犬畜生にも劣る所業』を行ったらしい。

 さて、上の話は“彼”にとってはこれで“終わった話”であったが、どうやらダークエルフにとってはそうでは無かったらしい。
 ほとぼりが冷め、誰もがダークエルフの隠れ里のことを忘れつつあった頃、ダークエルフが当時王になったばかりの“彼”の前に現れた。
 ダークエルフは『報恩のため』と様々な協力をしてくれた。各国の動向を探ってくれたのも有り難かったが、何よりも有り難かったのは他文明圏との交易の橋渡しをしてくた上、銃や竜の入手に尽力を尽くしてくれたことである。『自分ではどうにもならなかったことだから』――そう“彼”は率直に記している。
 ……フランケル内の外交で落第点を帝國に付けられた“彼”が、他文明圏との外交では好評価を得られた訳は、どうやら彼等ダークエルフの後押しがあってのことらしかった。
(また“彼”は、忌み嫌われている筈のダークエルフが裏では有力な王侯貴族や富豪と強く結びついているらしいことを知り、『この世界は複雑怪奇なり』と驚いて記している)

「もしこれが事実ならば、帝國は彼等に『踊らされている』という可能性もあります」

377 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:31:35 ID:U1uACm8A0
 今村は声を潜めた。

 “報恩”があるならば“復讐”もあるだろう。ダークエルフのこの地方への、ましてやメクレンブルクへの恨みは相当なものの筈だ。
 ……そして、今回の計画に彼等は密接に関わっている。

「『ダークエルフへの迫害はあらゆる場所に存在する。これもその一つに過ぎない』――そう言われたらそれまでですが、考えられますね。
 ……ですが、今回の計画はあくまで大本営が作成したものです。何も言えませんよ」

 小沢が嘆息する。軍の、官僚の無責任体質に改めて失望したのだ。

「……ええ、仰る通りです。仮に問題提起しても、責任問題を恐れて握り潰されるのが落ちでしょう。“あそこ”はそういう所です」

「それどころか、『だからどうした?』でしょうね。作戦自体に問題が無ければ、私怨の一つや二つは問題視しないでしょう。
 本当に問題視すべきは、作戦云々の次元ではないのに、です」

 そう、本当の問題は――

『帝國がダークエルフに操られたかもしれないこと』
『ダークエルフ問題に帝國が巻き込まれたかもしれないこと』

 何れにせよ、情報を彼等に独占されていることによる重大な弊害だ。

「一刻も早く自前の情報網を整備しなければなりませんな。少なくとも資源地帯の制圧が一息吐いたら直ちに」

 とりあえずは軍と外務省で、と今村は語気を強める。

378 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:32:06 ID:U1uACm8A0
 が、小沢は首を振った。

「……外務省は駄目です。彼等に取り込まれつつあります」

「『取り込まれる?』」

「連中、ダークエルフから個人的に得た情報を自分の手柄として報告してるのですよ。
 ……まあ彼等自身は『飼ってる』つもりでしょうが、ね?」

 苦笑しつつ小沢は教えた。
 情報と女で篭絡され、すっかり親ダークエルフとなった高級外務官僚の話を海軍省の同期から何人も聞いているのだ。

「なんたること! 官たる者が外人に取り込まれるなど!」

 今村は信じられない、といった表情だ。

「……彼等に言わせれば、『殿下との御成婚が決まった以上、ダークエルフは同胞』だそうですよ?
 ま、その豹変具合の裏に何があったのか些か興味を惹かれますが」

「……『敵は内にあり』ですか」

「まさしくその通りです。ダークエルフ達は賢明で、決して独断専行はしません。
 彼等が動く裏には、必ずや中央の“お墨付き”があります」

 その“賢明さ”が、尚更の警戒を呼び寄せる。
 何れにせよ、これはダークエルフに対する懸念が陸海軍の高位者同士で共有された最初の出来ことであった。

379 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/12(木) 14:32:38 ID:U1uACm8A0
SS投下終了。

380 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/12(木) 18:42:22 ID:dvwOuKpY0
なんとゆう害無能省の官僚たち/(^o^)\
今の日本と全然変わらない

381 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/12(木) 18:43:27 ID:ASp3xMXQ0
うんうん、ダークエルフの台頭に危機感を持つ連中が帝國に少しでも存在するのはいいことです。

382 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/12(木) 19:07:44 ID:83/wJNuE0
投下乙です
ま…まあ、外務省が無能なのは昔からだし、仕方が無いか。
いや、やっぱまずいか…

383 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/12(木) 19:23:01 ID:06AlI5rQ0
官僚全員貞操帯着用義務付けですな。(お
ダークエルフが2ヶ月程度でここまで打ち解けてるのも下地があったからか。
まあ迫害無くなるだけでなく国も持てる という法外な報酬をもらった以上
ダークエルフが必死になるのはわかるんですけどねー・・・。

384 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/12(木) 19:47:19 ID:gwwIETWo0
投下乙です!
いやー読みごたえあった。

外務省、もともと優秀な人間の集まりのはずなのに、権力がありすぎるのか
現場を見ていないのか、狭い世界の中で自己の利益の追求に汲々としている
様に見える。

歴史の中で、あるいは他の国で、多くの高級官僚達が、私心無く、公のために
仕事に邁進していた、という時はあったのでしょうか?

385 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/12(木) 20:04:14 ID:lw1uOumE0
私心がなく公のための心がある頭のいい奴は士官学校に入る。
私心があり公のための心がある頭のいい奴は外交官になる。

私心があり公のための心がある頭のいい奴は他の役人に潰される。

QED

386 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/12(木) 21:05:15 ID:2gRh./LI0
見方にもよる気がしますがね。
日本の基本的な外交政策は、より多くの国と仲良くなわけで。
悪く言えば八方美人の弱腰ですし。
SSとは関係ないか。失礼しました。

くろべえさん乙です。
ところでHPの頂き物の頁、御好意ではなく御厚意が普通な気がします。
どっちでも間違ってないとは思いますが。

387 名前:ヨークタウン ◆r2Exln9QPQ:2007/04/12(木) 23:10:48 ID:4CUjn9IY0
くろべえ氏投下お疲れ様です。

味方と思っていたダークエルフ、しかし、蓋を開けてみればそれはとんでもないもの。
小沢、今村両人にとっては、ダークエルフの台頭はまさに、今そこにある危機なのでしょう。

388 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/13(金) 01:12:19 ID:FBozg71Y0
外務省は陸海軍省や内務省とは違って戦後組織にメスが入らなかったからなあ。

389 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/13(金) 08:43:40 ID:MsAR/znU0
そりゃあ中途半端に有能な割には肝心要でへぼをする外交担当なんて
相手にしてみれば非常に良い担当者だからな

アメからみれば変える必要がなかったろ

390 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/13(金) 10:51:57 ID:U1uACm8A0
 猫じゃらし様、投稿乙です。

 この時代にバルキリー級の超音速核爆撃機開発とは核開発並の壮大な計画ですね。
 バルキリーはICBMとSAMの発達に負けて不採用になったけど、「ICBMが使えないかもしれない」なら採用される可能性大かな?
 ……ICBMに対する不信を考えれば、ICBMやSLBMを脇に押しやって巡航ミサイルと共に帝國の核投射戦力の主役になれるかも。

>>354
>帝國は、メクレンブルグを「滅ぼしました」ね。
 その地域一番の軍事強国ですから、かませ犬として帝國の役に立ってもらいました。
(シュヴェリンもかませ犬候補ではあったのですが……)

 何れにせよ、いよいよ帝國軍は行動を開始します。

>>380
>なんとゆう害無能省の官僚たち
 転移してから碌に仕事もありませんから、外務省の中の人達も焦っているのですよ。
 最重要ポストの大使職も失いましたし正に踏んだり蹴ったりです。
 ……ま、そこを突かれた訳ですが。

>>381
>うんうん、ダークエルフの台頭に危機感を持つ連中が帝國に少しでも存在するのはいいことです。
 危機感、といいますか嫌悪感を持ってる連中なら沢山います。
 表立った批判はできませんし、彼等の重要性も理解しているから余計歯痒いのですが。
 ダークエルフは自分達の立場を理解していますから、少なくとも表向きはでしゃばった真似をしません。
 が、裏では着々と地歩を固めています。旧版でダークエルフの進路が理工系、というのもその為です。彼等は先を見据えているのです。

 ちなみに『転移男』世界では、優秀な彼等(そもそも人間種よりも知能が高い)は帝國の最先端科学を引っ張る存在に……

391 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/13(金) 10:52:32 ID:U1uACm8A0
>>382
 382様、有難うございます。

>ま…まあ、外務省が無能なのは昔からだし、仕方が無いか。
 軍は転移前の経験から外務省を信用していません。お互い様ですが。
 で、対米宣戦布告を出さなかったことまで判明したものですから……

>>383
>官僚全員貞操帯着用義務付け
 上でも書きましたが、落ち目で焦ってる時に情報を握らせられたらイチコロでしょうね。
 特に大使様です、と威張ってた連中には。

>>384
 384様、有難うございます。

>現場を見ていない
 全てはこれに尽きるかと。今でもそうらしいですけど、戦前の外交官は威張って碌に本来の仕事(邦人保護や支援)やらなかったらしいですからねえ。

>>385
>士官学校
 軍人って名誉はあるけど給料安いですからねえ。

>>386
 386様、有難うございます。

>ところでHPの頂き物の頁、御好意ではなく御厚意が普通な気がします。
 あ、そうですね。お知らせ有難うございました。

>>387
 ヨークタウン様、有難うございます。

>味方と思っていたダークエルフ、しかし、蓋を開けてみればそれはとんでもないもの。
 まあ同盟なんてそんなもの、要は『使いよう』でしょうね。
 今回の行動も『騙された』とまでは言いませんが、『おやっ!?』と注意すべきものでが、帝國人の反応は今ひとつ鈍く……

392 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/13(金) 11:54:20 ID:5ab5eemo0
くろべえさん投下乙です。

今まで登場してきたダークエルフの内心の述懐を見てると、
帝國を利用してやろうというよりも、帝國を自分たちDE無しではやっていけないようにしようとしてる感じですかね。
現時点の彼らに悪意は無いんでしょうが、この先、帝國人が舵取り誤ったら、
百年後には帝國の支配者層がすっかりDEに取って代わられてるかもしれませんねぇ。

393 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/13(金) 13:09:02 ID:lw1uOumE0
語弊があるけどいい寄生虫なんじゃないかにゃ。きちんと宿主とギブ&テイクしてるという意味で。
少なくとも帝国がなければまた迫害の時代へ逆戻りだし、無くなって困るのはDEも一緒でしょうしな。

少なくとも現状〜転移男時代までは。

394 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/13(金) 13:42:12 ID:8RNT3GbA0
藤原氏みたいに私腹を肥やす描写がないからそう見えるのかも。

実際全てのDFが帝國に忠誠を誓って身を捧げてるんじゃないんだろな

395 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/13(金) 15:43:40 ID:mSiubQ.I0
1世代=苦労人&生存のため忠誠
2世代=現状確保のため忠誠&一体化のため官僚化
3世代=帝國内の権力集団の一部&利益誘導団体
4世代?

ってな感じかな?

396 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/13(金) 18:56:43 ID:g2N9DrHQ0
本編か外伝か、それとも頂き物か忘れたけど、放浪時代を知らない2世・3世のダークエルフが、反帝國活動をした云々の描写がどっかにあった気がする

397 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/13(金) 19:03:12 ID:5ab5eemo0
その短編で反乱活動してたのはエルフっしょ。
ダークエルフは帝國人に次ぐ特権階級だった希ガス。

398 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/13(金) 21:45:11 ID:3rKgvSu.0
>>397
いや、確かにどこかにあったよ。
甘ったれた2世・3世が迫害されないことを当然と思い込んで反帝國活動に
手を染めるので、長老たちがそいつらを反DE感情の多い地域に住まわせて
『帝國あってのDE』であることを思い知らせるみたいな流れだと思った。

399 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/13(金) 23:09:16 ID:20l7n1AQ0
>>398
所員F(仮)氏の作品群にあったな

400 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/14(土) 01:38:22 ID:X9DoCVGA0
>>399
ttp://powlow.breeze.jp/SS2/12/1.txt ですね。

401 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/14(土) 07:05:02 ID:lUmeIgxc0
バルキリーと聞いて可変式宇宙戦艦搭載可変式トムキャットもどきを想像した俺が通りますよ

402 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/14(土) 13:20:54 ID:V7aKVd5M0
もしかしてDEがしょっぱなから帝国に近づいたのはこれがきっかけ?
前にじいさんに接触してお人よしで妙に甘いくせに軍事や技術力がある。
そして、その過程で異世界にある帝国の軍事力や文明を最初から知っていた。
だからこそこの世界に帝国の存在を確認した直後にその存在にかけたのでは?

403 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/14(土) 23:39:40 ID:LSE5a4MQ0
まさか、帝國の存在を祖父王で知って召喚したのがDEだったりして。
祖父王様は、帝國とは別件。事故とか偶然とかでやってきたことになりそうだが。
来るのがわかってりゃ、接触も手際よく行くだろうな。

404 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/15(日) 05:59:35 ID:pnlFRcn20
そういや、まだ祖父王の経歴は明示されてないんだよね。
とりあえず陸軍士官だと司令官が言明してる以上、
日記には自分が何者か書いてたんだろうな。

405 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/15(日) 13:02:56 ID:oVuuhHNoO
ちょっとまて、祖父王は帝國の平行世界の人間かもしれないぞ?

敗戦へと続く正史帝國
転移した帝國
祖父王とされる帝國軍人一人が転移され、敗戦した帝國

つまり祖父王の身元を調べるうちに、実は祖父王と同一人物は生きてるか、
帝國本土で天寿を全うしているかもしれん

406 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/15(日) 15:42:38 ID:g2N9DrHQ0
転移男こと稲葉昌由の例があるから、平行世界から来たというのもありえるな

407 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/15(日) 17:05:36 ID:Eq/Qc3Fc0
くろべえさん、ある程度落ち着いたらでもいいので、出来ればいつか
ダークエルフのスコットランドという国作りの過程を描いた外伝とか読ませて欲しいです。
年表にある、差別されていた隠れ里にいるダークエルフを保護してスコットランドまで送り届ける部分とかも
是非文章で読んでみたいですなぁ。

408 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/15(日) 18:38:45 ID:CQ3KIkms0
平行世界うんぬん以前に祖父王の本名は何なんでしょうか?


もしかしてまだ決めてない?

409 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/15(日) 20:27:27 ID:xi0f0heM0
祖父王の正体は山本帯刀だったらおもしろい
まだ、祖父王に関する情報が殆ど無かった頃、そう考えていた事もありました。

410 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/15(日) 20:28:30 ID:xi0f0heM0
下げ忘れた

411 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/15(日) 22:16:54 ID:PKccS5720
別に祖父王が誰かとかは謎のままでいいだろ

412 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/15(日) 22:22:44 ID:mSiubQ.I0
あまり細かい設定を言っても困るでしょう
適当に脳内保管しておこうよw

413 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:24:00 ID:U1uACm8A0
>>392
 392様、有難うございます。

>百年後には帝國の支配者層がすっかりDEに取って代わられてるかもしれませんねぇ。
 人口比こそ圧倒的ですが、このままいけば『無視できぬ存在』となるでしょうね。
 彼等が混血による同化に拘らなければ冗談抜きで『支配者層の大半がダ―クエルフの血を引く』なんてことにも……

>>393
>ギブ&テイク
 帝國がこの世界で確固たる地歩を気付けば、情報提供者としてのダ―クエルフの地位は大きく低下します。
 だから彼等は『その後』を見据えてそれに供えています。

>>394
>実際全てのDFが帝國に忠誠を誓って身を捧げてるんじゃないんだろな
 帝國人にも色々な人がいますからねえ。各々色々な思惑があるでしょう。

>>395
 そんな感じですか。
 で、三〜四世代以降になると各分野の最先端で強い影響力を……

>>402
>もしかしてDEがしょっぱなから帝国に近づいたのはこれがきっかけ?
 そういう訳ではありませんが、少なくとも若干の前知識は持ち合わせていたでしょう。

>>403
 流石にそれ程の大魔力は……

414 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:24:32 ID:U1uACm8A0
>>404〜412
>祖父王
 最初は歴史上の人物にしようかとも考えましたが、結局は架空の人物としました。
 畝傍の乗り組員とか土方歳三とか考えたんですけどね……

>くろべえさん、ある程度落ち着いたらでもいいので、出来ればいつかダークエルフのスコットランドという国作りの過程を描いた外伝とか読ませて欲しいです。
 その内書くかも……

 (豆知識)
 基本的にスコットランドは人口が少なく人手不足ですので、機械化が進んでいます。
 軍の兵器も零戦三二型とか海中五型とか九八式軽戦車とか新鋭兵器ばかりです。
 ……ま、くろべえ世界では零戦三二型も九八式軽戦車も極々少数生産で打ち切られた訳なのですが(笑)


 さてSS投下します。
 前後編の短編ですが、『カナ姫〜』の挿入話的なお話です。

415 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:25:20 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 短編「天国に一番近い島」前編

 昭和一六年一二月八日
 内地―外地間の連絡及び交通が全面途絶。前後して外地派遣の将兵や海外在留の邦人、海外資産等が本土各地で発見される。原因は不明。
 対英米戦開始の為待機していた閣僚は急遽早朝より閣僚会議を開き、臣民の動揺を抑えるために以下の対策を講じることを決定。
  一、現状の把握及び原因の究明、事態解決に総力を挙げる。
  二、外地への渡航及び通信を全面禁止。
  三、外地より帰還した邦人の身元確認及び隔離
  四、出現した海外資産の接収。
 政府、『外地との連絡、交通の途絶は軍の作戦行動によるもの。詳細は国家機密』と発表。臣民に平静を呼びかける。

 昭和一六年一二月二〇日
 帝國、ダークエルフと政府レベルで初の接触、交渉開始。これ以降、ようやく状況を把握し始める。
 この間にも臣民の不安感は増大、幾つもの噂が流れる。特に有力なものが『ソ連が満州に侵攻して釜山まで占領された。台湾や南洋も英米軍に占領された』というもの。

 昭和一六年一二月二四日
 帝國、“神州島”(当時は神州大陸)に進出開始。大兵力の投入により短期間で沿岸部を制圧、“害獣”は奥地へ逃走。翌年一月より旧海外邦人の入植開始。

 昭和一六年一二月三〇日
 帝國、ダークエルフと暫定合意に達する。交渉本格化。

 昭和一七年一月三日
 政府、臣民の士気向上のため東京湾で大観艦式を行う(“大和”公開)。合わせて大規模な軍の動員解除――100万人以上の成年男子を職場に復帰させる――を発表。
 これ等一連の措置は、『軍の健在振りを臣民に見せる』『英米ソとの戦争は無いという証拠を臣民に見せる』『人手不足の深刻化』等の理由による。

416 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:26:04 ID:U1uACm8A0
 昭和一七年一月七日
 帝國・ダークエルフトップ会談。『御聖断』下る。ダークエルフ、帝國に臣従。

 昭和一七年一月八日以降
 帝國、ダークエルフに領土下賜。スコットランド王国建国。ダークエルフへの武器供与開始。
 連合艦隊にダークエルフの輸送命令――『いかなる犠牲を払っても彼等の安全確保に努めよ』――が下る。
 ダークエルフからの薦めに従い、獣人独立派勢力と接触。交渉開始。
 今後の帝國の指針となる“決号”計画の策定。今回は骨組みとなる基本方針のみ。
 資源情報が集まり始める。帝國の資源地帯獲得作戦、“決一号”計画発動。


 帝國がこの世界――アルフェイム――で本格的な活動を始めたのは“決一号”計画発動後、即ち昭和一七年一月中旬以降のこと、と一般には言われている。(しかもこれは船団が本土を出航した時期の話であり、実際に大陸に到着したのは一月も下旬に入ってからのことだ)
 が、実際には探査等の目的で昭和一六年中に大陸を訪れていたし、早くも昭和一七年元旦には大陸進出時の拠点造りのため大内海の島々へ進出を開始していた。
 そして何より、上の年表にもある様に“決一号”計画発動……いや、“決号”計画の策定以前にも大規模な計画を帝國は策定・発動していた。

 “神武”計画、即ち“神州島”進出計画である。




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417 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:26:42 ID:U1uACm8A0
――――昭和一六年一二月二三日未明、???

 あたり一面は炎に包まれていた。
 突如として村のあちこちで火の手が上がり、驚いて飛び出した村人達は次々と“何か”を受けて倒れていく。
 が、今まで暢気に暮らしていた村人達は何をしたら良いかも判らず、ただ逃げ惑うばかりだった。
 ……そんな中、一人の少女が走っていた。

 少女には何が起こったか判らなかった。
 何故自分達がこんな目に遭うのか、
 一体誰がこんなことをしているのか、
 そして自分達は如何したら良いのか、全く判らない。
 彼女に出来ることは皆と同じ様に、ただただ逃げ惑うことだけでしかなかったのだ。

 ――そうだっ! ナパさん!
 
 少女は先日漂流してきたばかりの老人のことを思い出した。
 彼は足を怪我している。独りでは逃げられない!
 少女は走る方向を変え、ナパがいるであろう小屋に向かった。

「ナパさんっ! 大丈夫ですか!」

「ああ、嬢ちゃんかい…… 一体何が起こったかいのう?」

「何を暢気なことを! 早く逃げないと殺されてしまいますよ!?」

「猛獣かいのう?」

「この辺りに凶暴な獣なんていません」

418 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:27:20 ID:U1uACm8A0
「じゃあ戦争かいのう?」

「“ここ”には私達以外の人間なんていませんよ…… 私達が初めて会った“外の人”がナパさんなんですから……」

 私も何が起こったのか判りません、と少女は悲しげに首を振る。
 そして何とか老人を背負おうと奮闘する。

「わしゃあもう年だからのう…… 無理せず嬢ちゃんだけでも逃げいや……」

「そんなの駄目ですよ!?」

 少女は強引に老人を背負い、よろける様に歩き出す。

「とにかく逃げないと……」

 そうは言ったものの、少女にも逃げ切る自信はなかった。 ……何処かに隠れた方が良いだろうか?
 
 ――そうだ! “森の人”達の所なら!

 少女は希望を見つけ、目を輝かせた。
 慈悲深い“森の人”達ならば、きっと自分達を匿ってくれるだろう。
 かつて、漂流してこの地にやってきた自分達の先祖を助けてくれた時の様に。

「“森の人”達を頼りましょう! そこなら――」
 
 が、少女は最後まで言葉を発することは出来なかった。
 一瞬の内に首を刎ねられたのだ。 ……恐らく、何も感じずに死んでいったに違いなかった。

419 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:28:08 ID:U1uACm8A0
「……困りますよ、そんな真似をされては」

 “老人”は首だけになった少女を両手で持ち上げ、穏やかな口調で諭した。
 その声は、先ほどまでとは異なり、若々しい声だ。

「貴方方人間は“ここ”にいる筈が無い、だから『居てはいけない』のですよ。ましてや『奴等に助けられた人間の村』など、あってはならぬのです。
 ……そうでなければ、我々の“雇い主”のシナリオが大きく狂ってしまうのですから」

 無論、少女の首は黙して何も語らないし、何の反応も示さない。
 が、“老人”は尚も話しかける。

「私がダークエルフに生まれてきたことが運命なら、貴方がこの村に生まれてきたのも、ここで殺されたのも運命です。お互い諦めましょう。 ……せめてもの情けと今までのお礼に、楽に殺してあげましたから」

 『痛くなかったでしょう?』とその老人――ダークエルフは、優しく少女の頭を撫でてやる。
 と、その時、一人のダ―クエルフが駆け込んできた。

「エドリック様! ここにおられましたか!」

 どうやら老人に化けていたダークエルフ――エドリック――の部下らしい。

「ああ、御苦労様です。お仕事はもう終わりましたか?」

「はい。まあ百人そこそこの小さな村ですからね、楽なものです。
 ……おまけにこいつら、碌に警戒心もありゃあしませんでしたし」

420 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:28:38 ID:U1uACm8A0
 呆れた様に話す部下。彼には抵抗すら試みようとしないのが不思議でしょうがないらしい。
 ……そしてそれ以上に呆れたのは、こんな簡単な任務にこれ程の数のダークエルフを投入したことだ。
 見知らぬ地での何の前準備も前知識も無い“ぶっつけ本番の大作戦”で緊張していた自分が恥ずかしい。

「それは仕方が無いでしょう。生まれた時から飢えも戦争も知らなければ、誰だって自然とそうなりますよ」

「『それは羨ましい』と言うべきか、『だからこうなった』と言うべきか、判断に苦しみますな」

 エドリックの言葉に部下は微妙な表情で首を振った。

「それは我々凡人には一生かかっても出せない答えですよ」

「なかなか哲学的ですな…… ま、我々は金さえ貰えれば文句ありませんが」

 こんな楽な仕事で大金が手に入るのだから、笑いが止まらない。

「……いえ、『お金は』頂いていませんよ?」

「そんな馬鹿な!?」

 部下は悲鳴染みた声を上げた。

 任務内容は兎も角、これ程の数のダークエルフを投入して“無料”なんて有り得ない……いや、それ以前に『ダークエルフがタダ働きをする』ということ事態が信じられなかった。何せ自分達は“闇の世界”の住人であり、“闇の仕事”で喰っているのだから。

421 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:29:35 ID:U1uACm8A0
「仕方が無いでしょう? “依頼人の方々”はそれなりの権力をお持ちですが、別にお金持ちという訳じゃあ無いのですから」

 それに急のことですしね、と肩をすくめる。
 が、急であればある程依頼料が高くなるのは当たり前のことで、何の説得力も無い。

「『それでも依頼を受ける』という選択が信じられませんが」

「……ま、何も報酬は金銭とは限らない、ということですよ。先行投資の意味合いもありますがね?」

 意味有り気な上司の言葉に、部下のダ―クエルフは『そんなものですか』と頷いて退いた。
 ここから先は自分が踏み込んで良い領域では無かったからだ。世の中美味い話ばかりではない、と言うことだろう。 ……無論、誰にとっても、だ。

「さて、無駄話はこれ位にしましょう。まだお仕事が残っています。 ……『全てをなかったことにする』という一番大事なお仕事が」

 ……どうやら彼等の“雇い主”は、この村の存在を、そしてこの村に対して行ったことを、“上”にも“下”にも知られたくないらしかった。

「さあ最後の一仕事です。頑張りましょう」

「ハッ!」

 ダ―クエルフ達は全ての死体を運び出すと魔法で周囲に巨大な“結界”を張り、燃盛る村を後にした。
 数日後、完全に廃墟となった村跡に今度は人間の一団が現れた。
 彼等は様々な“からくり竜”を用い、僅か一日で村跡を地中に埋めてしまった。
 その上には大量のセメントが流しこまれ、一月足らずの間に巨大な“広場”に生まれ変わったという。

422 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:30:11 ID:U1uACm8A0
 彼等はここで起きた惨劇に全く気付かなかった。
 ……何故ならダ―クエルフの大規模幻術により、彼等の目には『何十年も昔に廃墟となった村の跡』の様に見えたからだ。
 だから、何時の間にか供えられていた花にも当然気が付かなかった。





――――昭和一六年一二月二四日未明、貨客船“めきしこ丸”。

「皆様も御承知の通り、八日未明に未知の大陸が発見されました。場所は占守島北東部海域です。 ……その代わり、カムチャッカ半島が――いえ、『世界そのもの』が消えていましたが」

 成る程物は言い様だ、と第一五歩兵団長の石山少将は感心した。
 客観的に見れば『帝國が世界から消えた』と言うのが正しく、『消えたのは帝國ではなく世界』などとは天動説ばりの強弁であろう。
 が、それを堂々と言い切れる心臓が羨ましい。半分でも良いから分けてもらいたかった。
 ……そんな石山少将の、どう評すれば良いのか苦しむ様な感想とは関係なく、尚も説明は続く。

「連日の航空偵察の結果、“神州大陸”は1500〜2000q四方の巨大な“島”であることが判明しました。その面積はおよそ120万Ku、満州国に匹敵するものと思われます。
 帝國はこの島と周辺の諸島群を編入、殖民することを決定しました。数百万にも上る旧海外在留邦人に生活の糧を与える為、そして何より食料問題を解決する為、早急にこの地を確保せねばなりません ――それが今回の作戦です。ここまでで何か御質問は」

423 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:30:58 ID:U1uACm8A0
 政府から派遣された官僚――軍司令部経由のため名目的には『軍司令部から派遣された』ことになっている――はそこで一端説明を中断し、集まった第一五歩兵団の幹部連に尋ねた。
 その言葉が終わった途端、何人かの将校が挙手して説明を求めた。

「地図をまだ見ていないのですが?」

「そんなもの、ありません。 ……と、言いますか、有る訳無いでしょう。以前お見せした航空写真が全てです」

「「「………………」」」

 重苦しい沈黙が起こった。
 無論、『未知の世界に地図なんかあるか!』と言う彼の言い分は判る。それは全くもって正しい、正しいのだが……『地図の無い軍』など彼等にとって悪い冗談でしか無い。今後の苦労が手に取る様だった。

 この空気を変えるため、一人の将校が慌てて次の質問する。

「『確保』と仰いましたが、敵対勢力が存在するのですか?」

「無人です。が、危険な魔獣“オ―ク”が多数生息していますのでこれを駆除せねばなりません。 ……それが貴方方の役目です」

 その言葉に、幹部連は思わずお互いの顔を見合わせた。
 ……おいおい、これだけの戦力集めて“害獣駆除”だあ? 一体相手はどんな化け物なんだよ。
 彼等の思いは尤もだった。帝國はこの島を確保する為だけに、以下の戦力を投入――或いは投入を予定――していたのだから。

424 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:31:30 ID:U1uACm8A0

“神州大陸”派遣軍序列
 派遣軍司令部
 第一三師団歩兵第一〇三旅団(歩兵第六五聯隊、歩兵第一〇四聯隊)
 第一三師団歩兵第二六旅団 (歩兵第五八聯隊、歩兵第一一六聯隊)
 第一五師団第一五歩兵団  (歩兵第五一聯隊、歩兵第六〇聯隊)*歩兵第六七聯隊欠
 第一七師団第一七歩兵団  (歩兵第五三聯隊、歩兵第五四聯隊)*歩兵第八一聯隊欠
 第一八師団歩兵第二三旅団 (歩兵第五五聯隊、歩兵第五六聯隊)
 第一八師団歩兵第三五旅団 (歩兵第一一四聯隊、歩兵第一二四聯隊)
 歩兵第六七聯隊 *第一五歩兵団より抽出
 歩兵第八一聯隊 *第一七歩兵団より抽出
 独立工兵第八連隊
 軍通信部隊
 軍兵站部隊
 軍兵器勤務部隊


 総計14個歩兵聯隊を主力とする大兵力だ。加えて各旅団や歩兵団は所属している師団より輜重、衛生、通信部隊を派遣され、独立戦闘が可能となっている。(またこの他にも第三艦隊水上部隊が支援――主に船団護衛と航空偵察――していた)

 この軍の特徴は、『極限まで軽量化された軍である』ということだろう。
 何せ、歩兵聯隊隷下の聯隊砲/速射砲中隊や歩兵大隊隷下の歩兵砲小隊といった歩兵が装備する軽砲しか無い上、工兵は独立聯隊1個、航空部隊に至っては皆無――まあ運用しようにも飛行場そのものが存在しなかったが――という有様だ。これでは近代戦は遂行出来ない。
 が、別にそれで構わなかった。帝國が彼等に望んだのは近代戦ではなかったのだから。

425 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:32:03 ID:U1uACm8A0
「奴等を甘く見ない方が良いでしょう。連中は凶暴かつ強力な野獣です。後続の開拓団のためにも一匹残らず始末して頂きたい」

 そして、思い出した様に付け加えた。

「ああ、殺す時は出来る限り原型を止めて頂きたい。『砲の直撃でバラバラ』『重機の連射で挽肉』なんてもっての他です」

「……まるで『注文の多い料理店』だね。我々に猟師の真似事でもさせる積りかい?」

「まさしく。死体は食肉等、有効利用しなければなりませんからね」

 ……そう。これは“あくまで“狩り”なのだ。だから砲兵などという重いものはいらないし、大袈裟な支援部隊もいらない。歩兵の進撃を維持する最小限度の支援部隊があればそれで良い。
 ならばそれ以上の部隊派遣は、船舶と重油の無駄、というものだろう。

 石山少将の皮肉に気付かなかったのか、はたまた気付かない振りをしたのか、我が意を得たり、と官僚は頷く。
 が、彼等は今しがた配られた資料を凝視し、己の目と耳を疑った。

「待って頂きたい! 今頂いた資料では、『オ―クは直立二足歩行』とありますが!?」

「それが何か?」

「何か、ではありません! 貴方は我々に虐殺を指示した挙句、臣民にまで人喰いをさせるお積りか!!」

 一人の幹部の激昂に、次々と同意の声が沸きあがった。

426 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:32:36 ID:U1uACm8A0
 彼等に渡された資料に描かれた魔獣オ―クは“猪頭の人間”として描かれていた。
 ……“人肉食”という禁忌を想像せずにはいられない程に。

「……どうやら貴方方は大きな勘違いをしていらっしゃる様だ」

 大袈裟に首を振り、官僚は軍人達の“誤解”を正してやる。

 この世界には、人間、エルフ、ダ―クエルフ、ドワ―フ、獣人等々といった多種多様の“人類”が存在する。これ等の種族は全て人間と同等かそれ以上、或いは準ずる知的生物だ。故に、この世界の圧倒的多数派である人間も彼等を“亜人”と呼んで人間扱いしていた。(まあ種族間で様々な差別――時には排斥すら起こる――が存在するものの、一応建前的には皆“人”として認められていたのだ)
 が、オ―クは“人類”と見做されていない。同様に獣頭である獣人が、或いはその存在すら許されず見つけ次第抹殺される“忌まわしい”ダ―クエルフですら“人”として認められているのにも関わらず、だ。 ……これには幾つかの理由が存在していた。

 まず第一に『言葉が通じないこと』が挙げられるだろう。
 この世界では、全ての“人類”はそれこそ種族や地方の差も関係なくお互いの話している内容が理解できる。大気に満ちた魔力の素“マナ”の作用によるもの、とも言われているが、兎に角会話で不自由することが無いのだ。
 が、オ―クはこの法則の輪から外れており、如何なる“人類”とも会話が不能――異世界からやってきた帝國人ですらこの法則が適用され会話が可能だというのに――だった。
 ……これだけでもこの世界では“獣”と見做されて仕方がないというのに、オ―クは更に『凶暴』『知能が極度に低い』『悪食』『醜い』といった負の要素にこと欠かなかった。(少なくともこれがこの世界の“常識”だ)
 それ故『“人”の姿を真似た“卑しい獣”』とされ、蛇蝎の如く嫌われていたのである。

427 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/17(火) 09:33:08 ID:U1uACm8A0
「――この様にオ―クは“人”ではありません。故に、“人”を喰らうのはこの世界でも最大級の禁忌ですが、オ―クを喰らうのは禁忌でも何でもありません。 ……まあ流石に自慢できる話ではありませんがね。
 ……ああ、無論“虐殺”でも無いですよ? “駆除”ですね」

 だから何も躊躇う必要はない、と諭す。

 オークそのものを食料とすること自体は、まあそれ程異常という訳では無い。事実、辺境辺りでは貴重な蛋白質として珍重されている地域も未だ存在する。
 が、有る程度の文明圏となると流石に拒否感が出てくるのだろう、オークを食料とするなどという話はまず聞かない。ましてや帝國の様に国レベルで組織的に、という話は非常に珍しい。同様の事例を探すにはそれこそ相当歴史を遡らなければならないだろう。 ……その“国”とて人口数千数万程度の小国であり、とても帝國の様な大国の例は無かったが。(まあ現在では組織的に食料と出来るほど数がいない――少なくとも文明圏周辺では――のではあるが)
 ……が、帝國は本気でオークを“食料”と見做し、敢えてそれを実行する積りだった。

「さて、この世界の“いろは”を講義しはこれで終わりです。最後に貴方方の気持ちを楽にする“魔法の言葉”を教えてあげましょう」

 官僚はニヤリと笑い、言った。

「これは『命令』であり『御国の為』です」

 確かにそれは、彼等にとって最高の免罪符だった。




SS投下終了。

428 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/17(火) 10:19:21 ID:Ft8EYybM0
くろべえさん、投下乙です。

少女の「森の人」発言で、「エルフが居るのか?!」と思いましたが、オークの事なんですね。
確かに帝國にとっては都合が悪いですね。

429 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/17(火) 12:36:40 ID:83/wJNuE0
投下乙です…ううむ、何か黒い話になりそうです。
オークは帝国の黒歴史になるやも知れませんね…

430 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/17(火) 13:39:53 ID:xsS49mlo0
投下乙です。
帝國マジ容赦ないですわ…
DEの汚れ役振りにも悲哀というか一歩間違えれば自分自身というか。

431 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/17(火) 21:10:25 ID:RsBpl1.M0
投下乙です。
なんか、ウルトラセブンのノンマルトを思い出しました。

432 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/17(火) 22:55:04 ID:oVuuhHNoO
投下乙です

正直、DEが嫌いになった……
森の人ってエルフなんだろうな
つか可哀想だよ女の子

433 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/17(火) 23:11:32 ID:v0QsSQtM0
くろべえ殿、投下乙です。
これぞ弱肉強食。
ビバ、帝国主義。
   ,,、,、、,,,';i;'i,}、,、
       ヾ、'i,';||i !} 'i, ゙〃
        ゙、';|i,!  'i i"i,       、__人_从_人__/し、_人_入
         `、||i |i i l|,      、_)
          ',||i }i | ;,〃,,     _) 汚物(弱者)は消毒だ〜っ!!
          .}.|||| | ! l-'~、ミ    `)
         ,<.}||| il/,‐'liヾ;;ミ   '´⌒V^'^Y⌒V^V⌒W^Y⌒
        .{/゙'、}|||//  .i| };;;ミ
        Y,;-   ー、  .i|,];;彡
        iil|||||liill||||||||li!=H;;;ミミ
        {  く;ァソ  '';;,;'' ゙};;彡ミ
         ゙i [`'''~ヾ. ''~ ||^!,彡ミ   _,,__
          ゙i }~~ } ';;:;li, ゙iミミミ=三=-;;;;;;;;;''
,,,,-‐‐''''''} ̄~フハ,“二゙´ ,;/;;'_,;,7''~~,-''::;;;;;;;;;;;;;'',,=''
 ;;;;;;;;''''/_  / | | `ー-‐'´_,,,-',,r'~`ヽ';;:;;;;;;;, '';;;-'''
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434 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 00:18:20 ID:mSiubQ.I0
帝國万歳!
と、しておこう。。。
合掌

435 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 01:09:46 ID:TVdaJA0A0
投下乙です。
短編だかで、オークは後の研究でそれなりの文化と知性を持っていたと書かれてましたが、これはやりきれませんね。
しかし、彼ら人間の集落はオークに保護されてたみたいですが、いったいどういう理由からでしょうか。
善意で保護してたのなら良いんですが、もしかして非常食用に飼われてたりしてw
まぁ、少女が「先祖を助けてくれた」って言ってたからには、まず前者でしょうけれどもね。

しかしエドリックさんは怖いなぁ。

436 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 01:30:51 ID:V7aKVd5M0
>>435
実際北米のインディアンや南アフリカのコイ・サン族、アステカなんかも
みんな親切だったよ・・・(一部かも知れないけど)
後に親切を逆に返されて奴隷や虐殺されたけど(TT)

437 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 08:01:43 ID:83/wJNuE0
確かに酷い話ではあるけれども、逆に言えばここまでしなければどうにもならないくらい、この時期の帝国は追い詰められているのですよね…。

438 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 10:33:02 ID:wPJHJ99Q0
たしかにカワイソウだがもし代わりに死ねるか?と聞かれたら死ねないんだよなあ・・・
知らない他人が100人死ぬより家族が1人死ぬほうがつらいもんな・・・
これが人間なんだなあ

439 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/18(水) 11:45:45 ID:U1uACm8A0
 どうも、神州大陸の位置が正式決定しました。
 ttp://www.geocities.jp/wrb429kmf065/itadakimono/18-gure/gure01.htm
 の通りです。


>>428
 名無し三等兵様、有難うございます。

>確かに帝國にとっては都合が悪いですね。
 今回の襲撃を命じたのは神武計画の計画担当者達です。
 村の存在は計画の根底――『オ―クは醜悪な獣である』という前提――を覆しかねません。下手に『神武帝の東征』の故事を計画名に入れたから尚更です。
 無論、現在の状況を考えれば実行せざるを得ないでしょうが、遅延や批判は避けられないでしょう。 ……それを恐れたのですよ。彼等もある意味“愛国者”だったのです。保身も否定し切れませんがね。
 が、結果的により一層『神武帝の東征』の名を汚し、それをダ―クエルフに握られた意味合いは決して小さくありません。
 ダ―クエルフはそれを盾に脅す様な稚拙な真似はしないでしょうが、何も言わなくとも計画担当者達――軍や政府でそれなりの地位に就いている――はこれから彼等に気を使うことになるでしょう。
 ま、外務省だけの話じゃあない、ということです。

>>429
 429様、有難うございます。

>黒歴史
 数十年後、工事中に『村跡』が発掘されてえらい騒ぎに……なんてこともあるかもしれません。

>>430
 430様、有難うございます。

>帝國マジ容赦ないですわ…
 ……この話は黒いです。やめようかな、と考えた程ですから。

440 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/18(水) 11:46:18 ID:U1uACm8A0
>>431
 431様、有難うございます。

>ノンマルト
 確かに似てますね。けどオ―クは逃げ場が無い分更に……

>>432
 432様、有難うございます。

>正直、DEが嫌いになった……
 彼等は被害者と加害者の両面を持ち合わせていますからねえ。

>>433
 433様、有難うございます。

>帝国主義
 その際たるものですね。転移初期、帝國はこの様な蛮行を各地で繰り返したのです。

>>434
>合掌
 彼等は誰に知られることもなく生き、滅び去ったのですよ。

>>435
 435様、有難うございます。

>しかし、彼ら人間の集落はオークに保護されてたみたいですが、いったいどういう理由からでしょうか。
 彼等は元々は流民……といいますか、滅ぼされた国から逃げ出した人たちの生き残り、その子孫達です。
 大半が新天地を求めて航海中に死にましたが、一握りの人々は幸運にも神州島にたどり着いたのですよ。

>>437〜438
 当時の状況は後編で明らかになりますが、当時の帝國は確かに切羽詰っておりました。

441 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 15:19:51 ID:ggRsyEMI0
くろべえさん、質問したいのですが…
>>439の地図はやはり上側が北ということなのでしょうか?
そうだとすると、今までとは日本の東西が反対になるのでは?
つまり、西から昇ったお日様が(中略)あ、たい○〜ん(ry
となって帝國中が大騒ぎになるかと。

それはともかく、作中のオーク達と流民達に合掌。
しかし、ここまでやったら“広場”で祟りか何かおきそうな気もするのですが。

442 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 17:09:22 ID:CQ3KIkms0
>>439
タブリンの位置、ガルムからロディニアに変わりましたか。
黒部男爵の話と資料目録の修正がんばってください。


あとローレシアと猫じゃらし氏とこの皇国の位置、重なってますね。

443 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 17:33:29 ID:aZU9vGDM0
いいんじゃないの?
くろべえさんのが本編なんだし。
猫じゃらし氏が変えれば済む話でしょ。

444 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 18:40:54 ID:oVuuhHNoO
猫じゃらし氏はあくまで二次創作だから
くろべえさんが世界観の変更をするのは自由だし、
猫じゃらし氏は旧帝國世界に準じた話として進めれば良いんでは?

445 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 19:17:08 ID:/5wgFUqI0
>>441
 実は自転の向きが違うとか

446 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 19:40:35 ID:pRAfGTHA0
ありえない話ではないな
金星は逆向きに回ってるしね
もう少し太陽から遠ければ、生物が生まれていたとも言われてるし

447 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 20:07:29 ID:j1j5pb2s0
>>祟り

そういや、この世界って、アンデッドは存在するんだろうか。
吸血種とかならいそうだけど。

448 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 21:05:33 ID:OWFoEK4U0
今じゃ、3000近く戦死者が出て大騒ぎになっているあのアメリカが、
一航空団が50000近くの死傷者を出して大統領が再選されるような
実にあの狂った時代の匂いが充満していますねー

どうしてだ、最近の国際論評みると、そこはかとなく……

449 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/18(水) 22:23:16 ID:KgAaKHtM0
毎回、楽しみにしております
地図の件なのですが、bmpファイルで容量4MBオーバーはかなりきついと思います。
gif、jpeg、png等の圧縮系の画像に変更した方がいいと思います。

450 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/18(水) 22:56:08 ID:pWXiDBTQ0
自転が逆回転だと、弾道計算も変わるのかな?
大型艦建造中止の理由の一部なのかも?

451 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/19(木) 00:37:59 ID:Pusv3SwY0
>>450
単純に考えてコリオリ力が逆向きになる。
つまり、地球の自転による見かけ上の力の働き方が逆になるね。
だから射撃パラメーターを補正を考えて入力する必要がある。

実際には大きな影響はないだろうし、
自転が逆になれば磁場も変わってSN逆になるから惑星上から見たら変わらないかも。

452 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/19(木) 02:29:45 ID:OO6loM3w0
>>451
地磁気と自転の方向は関係無いよ、つーか地球上でもSN極は何回も逆転してる。

ttp://www.magnet.okayama-u.ac.jp/magword/geomag/index.html
>2:地磁気の反転

>先程地磁気永年変化について述べたが、 それ以上にスケールの大きな信じられないような変化が存在する。
>それは地磁気の反転である。 地磁気の反転とは磁石である地球のN極とS極とが入れ替わることである。
>なぜこのことが分かったのかというと、岩石の自然残留磁気の測定によってである。 ある噴火によってマグマが
>吹き出したとすると、 マグマは流体中にはその場所における地球磁場の方向に帯磁することが知られている。
>その後マグマが冷えると、 固まって岩石となり地磁気に沿った方向に帯磁したままになっている。 この後に外部
>から磁化をかけてももはや変化しないので、 その岩石が移動されない限り、その岩石の持つ自然残留磁気は、
>噴火当時の地磁気の方向を示すことになる。 つまり、岩石の年代及び自然残留磁化の測定によって過去の
>地磁気が分かるのである。 この方法によって過去7600万年の間に171回の方向反転があり、 最も新しい反転は
>約70万年であったと推測されている。 では「なぜこのような反転が起こるのか?」という問いに対しては、 明確な
回答はまだ無いというのが現状である。

453 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/19(木) 03:01:21 ID:1QrDQP5I0
>>449
私も賛成です。試しに今回の地図を PNG にしたら、39KB になりました。

454 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/19(木) 03:06:35 ID:Ms1qJQwc0
この場合、「地図の上が北である」という前提で日の出の方角についての議論が進んでるので、地磁気の逆転については考慮の範疇外なの
では何故既に北を指定してるのか?
それはこの議論は>>441さんの問題提起が基だから
既に北が決まってる状態で話を進めているいじょう、西から太陽が昇るか、自転が逆か、それとも世界は平面で神様が太陽を馬車に乗せて東の空を駆け上がるか、もしくは私の考え付かないようなぶっとんだ結果しかない
そして議論の中心が>>411さんの「上側が北」「日の出はどうなる?」から来ているため、実際にくろべえ氏の設定がどうなってるかは既に別問題

455 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/19(木) 07:17:20 ID:aFpMFOBc0
要するに、、下側が北なんじゃねってことだよな

456 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/19(木) 07:56:18 ID:U1uACm8A0
>>441
>くろべえさん、質問したいのですが…
>439の地図はやはり上側が北ということなのでしょうか?

 そうなりますね。北海道が南海道になってしまいました。

>そうだとすると、今までとは日本の東西が反対になるのでは?
>つまり、西から昇ったお日様が(中略)あ、たい○〜ん(ry
>となって帝國中が大騒ぎになるかと。

 太陽は西から昇ります。 ……嘘です。東から昇って西に沈みます。
 ですから逆ですね。まあ磁石でも確認できるでしょうが。
 そんなわけで、改訂版では旧版よりも遙かに早く転移したことを発表します。
 この世界のことをある程度把握し、生きていく算段がついた頃、恐れ多くも玉音放送で発表されるのですよ。
 これが昭和期(無論それ以前も)における最初で最後の公式な玉音放送となる訳です。

>>442
>タブリンの位置、ガルムからロディニアに変わりましたか。
 タブリンとホラズムのエピソードを統合させました。

>黒部男爵の話と資料目録の修正がんばってください。
 有難うございます。

>あとローレシアと猫じゃらし氏とこの皇国の位置、重なってますね。
 ええっと、本編では出てきませんがローレシアの位置は旧版と同一です。
 以前に出したの思いますが、『地球でいえばウラル以西のロシアあたり』ですね。

457 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/19(木) 07:57:12 ID:U1uACm8A0
>>447
>アンデット
 費用対効果は別として、死体を遠隔操作する位は出来るかも……

>>449
>毎回、楽しみにしております
 有難うございます。

>地図の件なのですが、bmpファイルで容量4MBオーバーはかなりきついと思います。
>gif、jpeg、png等の圧縮系の画像に変更した方がいいと思います。
 あ〜、そういえば容量全然気にしてなかった……
 でも変え方知らないのですよ。

>>450
>自転が逆回転だと、弾道計算も変わるのかな?
>大型艦建造中止の理由の一部なのかも?

 海軍なんか弾道デ―タの取り直しで忙しいでしょうね。



 改訂版では――
・今までの知識不足から来るミスの訂正
 例:独客船“シャルンホルスト”改装の“神鷹”を抹消、代わりに浅間丸型3隻を空母に。

・設定の簡易・明瞭化
 例:度重なる海軍建艦計画の改定を一度にする。

・物語の統廃合
 例:タブリンとホラズムのエピソードを統合。

・物語中で低すぎた戦闘の比重を上げるため、F世界側のパラメ―タ―を一部改定。

・その他設定等の一部修正。
・帝國の黒さ……というか行き当たりばったり振りをもっと詳細に(笑)

 ――といった感じで進めております。
 いや……今でもアレですが、連載当初のあの知識でよくSSなんて書いたものですね。反省ものです。

458 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/19(木) 08:16:00 ID:oVuuhHNoO
いやいや、くろべえさんの世界観は自分の今まで見たSSの中で
一番緻密に練られた世界だと思いますよ?
これからの改訂作業頑張ってください

459 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/19(木) 09:17:18 ID:XVfo17XQ0
>>457
>でも変え方知らないのですよ。
Win付属のペイントで開いて、名前を付けて保存を選択し、開いた画面の一番下に保存種別がありますの
プルダウンメニュー開いてその中から選択、保存

まあ、そこらのフリーの画像変換ソフト使ってもいいのでは?

460 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/19(木) 11:49:03 ID:83/wJNuE0
>フリーの画像変換ソフト

とりあえず、ググったら出て来たのを張っておきますね。
その名も《BMPをJPEGに変換するやつ》
ttp://www.vector.co.jp/soft/winnt/art/se279296.html

461 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/19(木) 13:15:45 ID:FoFdNyMM0
>でも変え方知らないのですよ。
Windows系OSですよね使ってるの?
ペイントで変換したいBMPファイルを一度開いてから 名前をつけて保存 を選択
ファイルの種類 の部分で JPEG を選択して 保存 でOKですよ。
高画質でとか画質は選べませんがとりあえずは問題ないと思います。

462 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/19(木) 20:44:30 ID:s.vvqzi20
>>461
PNGのほうがサイズの割には画像の荒れが少なくていいですよ。
最高画質(PNG-24)にしてもサイズは45.1 KBでした。
使用ソフトはAdobe Photoshop Elements 2.0です。
元の画像と見た目がほとんど変わりません。
JPEGで同等のサイズに圧縮すると荒れがひどくて文字が潰れてしまいます。

463 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/20(金) 00:10:27 ID:83/wJNuE0
しかし、フォトショップもペイントショップも買わなければいけませんしね。
私は持っていますが、わざわざこの為に買うのはちょっとどうかな…と。

464 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/20(金) 00:28:37 ID:xsS49mlo0
なんかめんどうざいんで外部板に変換した画像上げておきますね
めっちゃ軽量になったんで適当にしてください
ttp://up2.viploader.net/upphp/src/vlphp046182.png
問題あるようなら消しますから

465 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/20(金) 00:50:06 ID:s.vvqzi20
>>463
ペイントの"名前をつけて保存"の"ファイルの種類"でPNGが選択可能です。
ただし、Photoshop Elements 2.0と比べて少しサイズが大きくなります。
PNGは24ビットカラーで保存されるようです。
私のPCのOSはWindows XP Professional SP2なので、
2000やMe等のペイントでも選択可能かは知りませんが。
Photoshop Elements 2.0はWACOM Intuos3 PTZ-430/G0の付属品です。
3.0もありますが、CPU:Pentium D 820 2.80GHzとメモリ:DDR2-533 1GBでは
動作が重いので使いません。

466 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/20(金) 12:05:43 ID:U1uACm8A0
>>458
 有難うございます。これからも頑張りますのでどうか宜しくお願いします。

 多分次が短編の後編で、その次がカナ姫の第一部ラストスパ―トになると思います。
 で、それでいよいよ改訂版かな? その前に「転移男」を数話入れるかも……

>>459〜465
 皆様、色々有難うございます。
 >>464様から頂いたものを流用させて頂きました。
 後、これからはペイントで変換してみますね。
 ……そういえばこのHP、50MBの容量だったっけ。
 4MBって一割近いじゃないか……

467 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/20(金) 23:31:59 ID:pWXiDBTQ0
>>くろべえさん
>独客船“シャルンホルスト”改装の“神鷹”を抹消、代わりに浅間丸型3隻を空母に。
浅間丸型は史実の“鷹”空母より足が遅い(20ノット)のですよ。
まあ、風の魔石と九六式艦戦を使えば何とかなりますよね。

ちなみに、これらは徴用ですか?買収ですか?

468 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 01:23:37 ID:FBozg71Y0
>457
>>独客船“シャルンホルスト”改装の〜
空母改装船についてはこのページを参考にすると良いと思いますよ。

ttp://members.at.infoseek.co.jp/GONTA24/index.html

このページによると浅間丸型三隻の他に金剛丸を始めとした鉄道連絡船も改装を検討されていたようです。
現存している氷川丸なんかもイギリスのオーダシティ級のような飛行甲板のみの格納庫無し空母として検討されていたようで。
つーかイタリア商船ってコンテ・ディ・カヴールじゃなくてコンテ・ヴェルデだったんだなあ。
かなり昔だが間違って書き込んでしまった。

>>467
速力低下に関しては缶を駆逐艦用のもの(艦本式)に換装すればよいだけなのでは?
史実でもあるぜんちな丸から海鷹に改装するときやっていますし。
というかカタパルトや風の魔石無しの場合、最低21ノット無いと航空機運用出来ませんしね。

469 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:02:29 ID:U1uACm8A0
>>467
>まあ、風の魔石と九六式艦戦を使えば何とかなりますよね。
 風の魔石を使えば+5ノットですからねえ。
 零戦も雷装の九七艦攻だって運用できる……という設定です。
 あっ、ちなみに搭載予定は常用21(零戦9、九七艦攻12)、補用5(零戦2、九七艦攻3)の26機です。大鷹型も同様です。
 ……ま、艦攻はともかく艦戦は暫く旧式の九六艦戦でしょうが。

>ちなみに、これらは徴用ですか?買収ですか?
 買収です。

>>468
>空母改装船についてはこのページを参考にすると良いと思いますよ。
 資料の提供、有難うございます。

>速力低下に関しては缶を駆逐艦用のもの(艦本式)に換装すればよいだけなのでは?
>史実でもあるぜんちな丸から海鷹に改装するときやっていますし

 あるぜんちな丸が21.4ノット→23ノットだから、20.7ノットの浅間丸は22ノット位かな?

470 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:03:41 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 短編「天国に一番近い島」後編

 ――オーク。

 恐るべき生命力と臂力を誇る猪頭人身の“魔獣”、
 本能だけで生きる無知性の“野獣”、
 他に類を見ない程の貪欲さと残虐さを持つ“呪われし獣”、
 神々に背き、見放された“罪深き獣”……

 かつてオークは世界中で繁栄し、『人間と覇権を争った』とさえ伝えられている。
 それは長く激しい戦いだったが最終的には人間が勝利した。

 “愚鈍”なオークは“賢明”な人間に敗れ去ったのだ。
 “神々に見放された”オークは“神々に祝福された”人間に敗れ去ったのだ。

 かくしてオークは人間との覇権争いに敗れ、その後没落していく。
 まともな文明圏からは掃討され、存在したとしても文明圏最外部で細々と生きている程度に過ぎない。
 後は人間の手の及ばない大陸奥地か、辺境の小文明圏あたりで息を潜めて生息している位であろう。
 オークは人間の前から姿を消し、闇に帰されたのだ。

 ……多くの伝承ではその様に伝えられている。


 が、しかし――

 一箇所だけ、一箇所だけ彼等の楽園が存在したのだ。
 その地はオークで満ち、彼等は繁栄を謳歌していた。
 ……人間に見つかるまでは。

471 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:04:20 ID:U1uACm8A0
 その人間達は、その地を“神州島”と呼んでいた。





――――昭和一六年一二月二四日、“神州島”北西部北東海岸。

 最初に“神州島”の地を踏んだのは第一五歩兵団の将兵だった。
 第一五歩兵団は第一五師団から分派された旅団規模の軽歩兵部隊で、その編成は以下の通りである。

 第一五歩兵団
  歩兵団司令部
  歩兵第五一聯隊
  歩兵第六〇聯隊
  輜重兵第一五連隊分遣隊
  師団衛生隊分遣隊
  師団通信隊分遣隊
  他

 帝國の“神州島”進出計画は先ず孤立した北西部の制圧、その後徐々に南下して支配地域を広げていく算段だ。
 “北西部制圧”は計画第一段階であり、軍主力は北西部西海岸に、別働隊として第一五歩兵団が同北東海岸、第一七歩兵団が同南東海岸にそれぞれ上陸を予定している。
 軍主力は西海岸上陸後、東進しつつ『北西部のオ―ク掃討』。
 別働隊は北西部と他地域を繋ぐ回廊に南北から上陸し北西部を孤立化、回廊を封鎖し『北西部のオ―クを逃がさない様にする』。
 ……帝國は北西部のオ―クを一匹たりとも逃がさぬつもりだったのだ。
 これは『他地域のオ―クが食糧難に陥るのを防ぐ』こと、そして『早期に大量のオ―クを確保する』ためであった。

472 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:04:53 ID:U1uACm8A0
 5000総トン級の輸送船6隻に分乗した彼等は、護衛の旧式駆逐艦2隻(“松風”“旗風”)の支援を受けて上陸を開始した。
 が、“敵前上陸”だというのに将兵達は実にのんびりしたものだ。
 ……まあ無理も無いだろう。彼等はただの“獣狩り”としか聞かされていなかったのだから。

「……しかし“異世界”ねえ。実感湧かねえな?」

「だからお前は馬鹿なんだ。お前も船の上から見てただろ? 今まで海面に流氷が浮かんでる様な気候だったのが、突然台湾か南洋みたいになったんだぞ?
 おまけに海の色まで線引きされた様に変わりやがる…… 気味が悪いったらありゃあしない」

「俺なんか、太陽がいきなり西から昇った時にゃあ心臓が止まるかと思ったな。
 で、念のため磁石で調べてみたら何時の間にか東西南北が逆になってるんだ……
 けど、下手に騒いで目え付けられたら敵わんからなあ〜 黙ってるのに苦労したぜ」

 第一五歩兵団の中でも真っ先に上陸した歩兵第五一聯隊第一中隊の兵士達は、そんな会話を暢気に交していた。
 船内にぎゅうぎゅう詰めで押し込まれていたのをやっと開放されたこともあり、口も軽い。彼等は口々に“異様な体験”を語りだす。

 『ある所で海の色が線引きされた様に違っており、そこを越えた途端気温が一気に20度以上上昇する』
 『太陽が西(と思っている方角)から昇る』
 『東西南北が入れ替わる』……

 『ここは異世界』などと教えられたものの些か眉唾ものに考えていた将兵達も、流石にそんな体験をさせられれば信じざるを得ないだろう。
 未だ半信半疑ながらも、彼等は現実を受け入れつつあったのだ。

473 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:05:25 ID:U1uACm8A0
「馬鹿もん! お前等何を無駄口叩いておるかっ!? もたもたしてたら日が暮れるぞ!!」

 が、たちまち分隊長の叱責が飛び、彼等は慌てて上陸作業を再開……いや、作業のスピ―ドを上げる。

「……ん?」

 作業中、一人の兵士がふと顔を上げた。何やら視線を感じたからだ。

 見ると海岸先の森林、その中から自分達を覗く者がいる。
 目を凝らすと、何かのお面を付けたの小さな“子供”だ。
 ……自分が見られていることに気付き、“子供”は軽く首を傾げる。

 ――なんだありゃあ? 何故子供がこんな所に……

「お前、何さぼっとるかっ!?」

 が、直ぐに分隊長に見つかり怒鳴りつけられた。

「も、申し訳ありません! 分隊長殿! しかし子供が――」

「言い訳をするな! 大隊、何を訳の判らんこと言っとるか!?」

「は! 子供が自分らを見ておりましたので、つい……」

「子供? ここは無人島だぞ?」

「本当です! あそこに……」

474 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:05:58 ID:U1uACm8A0
 部下が指し示す先を目を凝らしてみると、やはり子供らしき影が見える。
 が、ここは無人島だ。不審に思い双眼鏡で覗いて見る。
 ……と、そこには猪頭人身の“化け物”がいた。

「あれだ!」

「分隊長殿、何をっ!?」

「あれが害獣だ!」

 部下が“お面”と思ったそれは、双眼鏡では“本物”とはっきり判る。
 分隊長は興奮して叫ぶと三八式歩兵銃を掴み、影に向かって銃弾を撃ち込んだ。

 一発、二発……三発目で『ぷぎ―』という甲高い悲鳴が聞こえた。

「命中だ! 小隊長殿にお知らせしろ! 『我が小隊が最初に害獣を仕留めました』とな!!」

 そして他の部下に『あの害獣を連れて来い』と意気揚々と命じた。

 …………
 …………
 …………

「ぷ……ぷぎい……」

 森林から引き摺り出された“害獣”は、身長3尺強の子供だった。
 その長い体毛で覆われた体からは大量の血を、目からは涙を流している。
 ……その場にいた誰もが、皆バツが悪そうな表情でそれを見る。

475 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:06:31 ID:U1uACm8A0
「……楽にしてやれ」

 視察に訪れた小隊長はそう言うと、まるで逃げるかの様にその場から立ち去った。
 残された者達は、誰が止めを刺すかで互いを見渡す。
 と、分隊長が無言で進み出た。
 ……それが彼なりの“けじめ”だったのだ。

「……悪く思うなよ」

 分隊長は“害獣”の額に銃口を当て、引き金を引いた。

 タ――ン!

 銃声が辺りに響き渡る。
 ……それが“始まり”の号砲だった。





――――同日、オ―ク集落近郊。

「畜生! “ただの獣”じゃあなかったのかよ!?」

「“魔獣”だ! 妖怪みたいなもんなんだろ!? ……第一、猿だって投石位するぞ!」

「これ、“投石”ってもんじゃね―ぞ!?」

 バキッ!

476 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:07:01 ID:U1uACm8A0
 そう口々に叫ぶ兵士の頭上を、砲丸の様な石が音を立てて次々と飛んで行く。
 石は『背後の木――細いとはいえ直径数pの――を数本へし折ってようやく止まる』という威力だ。当たったら只では済まないだろう。

 タ――ン、タ――ン!

 こちらも反撃するものの木々が邪魔になって中々当たらない。
 が、相手を怯ませる効果はある様で、投石が若干の間止む。

 投石が復活。
 また発砲。
 投石が一時中断。
 またまた投石が復活……これではこちらは伏せるだけでやっとだった。


 『オ―クの幼生体――そう表現・記述することで心理的抵抗を無くさせた――を発見した』との報告を受けた第一五歩兵団司令部は『近くにオ―クの集落が存在する』と判断。その時点で唯一上陸の完結していた歩兵第五一聯隊第一中隊を急遽先行させる決定を下した。
 目的は『情報収集』……そして『襲撃』。今回の作戦行動は今後作戦を立てる上で貴重なテストケ―スと位置付けられていた。

 命令を受けた第一中隊は即時進軍を開始。巨大な獣道を前進する。
 途中“幼生体”に数度遭遇したがこれを“無力化”し、更に前進する。
 が、森を抜け草原に出た所で奇襲攻撃を受けた。
 突然前方の森林より大規模な投石攻撃を受け、斥候任務で中隊より先行していた分隊は忽ち拘束されてしまったのだ。

「分隊長殿! ここは一時、後方の森林まで後退しましょう! 小隊の到着を待って擲弾筒分隊の支援を受ければ――」

477 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:07:34 ID:U1uACm8A0
 向こうは森林に身を隠し、木々を盾に投石。こちらは遮蔽物の無い開けた地で伏せつつ射撃。
 ……如何考えても分が悪い。どんな戦法を採ろうが、たかが分隊程度では“それなり以上の出血”を覚悟しなければここを突破出来ないだろう。
 が、小隊規模なら擲弾筒分隊の支援射撃を受けつつ、各小銃分隊が交互躍進で前進できる。
 ――そう分隊長の伍長に補佐格の古参上等兵が進言するも、その進言を退けられてしまう。

「馬鹿もん! 団長閣下が直々に我が中隊に御同行されているのだぞ!? 獣如き相手にそんなへっぴり腰で如何する!!」

 実は『今後の為に是非見たい』と、第一五歩兵団長が僅かな供回りのみ連れて中隊本部に同行しているのだ。
 その事実を考えれば、そんな『敢闘精神に欠ける』真似は出来ない、断じて。

「各自、現在装弾している弾を撃ち尽くして新しい装弾子に代えろ! その後突撃する!」

 ……どうやら分隊長は『相互躍進による前進』では無く『突撃による前進』を選択した様だ。
 恐らく時間をかけることによって出血が続くことを恐れたのだろう。
 『長時間の出血』よりも『短時間の大出血』の方が『結果的に被害が少ない』と判断し、一気に勝負を賭ける積りだ。

 タ――ン、タ――ン!

 分隊長の号令で50発以上の弾丸が短時間で発射される。
 その大部分は木々に遮られるが、それでも数発は命中したのだろう。悲鳴らしき声が聞こえてくる。

478 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:08:08 ID:U1uACm8A0
「突撃!」

 分隊長の号令一下、分隊は喚声を上げて突撃を開始する。
 喚声と突撃に驚いたのか投石が目に見えて減り、御蔭で途中1人が脱落したものの、分隊12名の内11名が森林内に飛び込むことに成功した。

「……でけえ」

 彼等が森の中で見たものは、身長2mを軽く越える程大きなオ―クだった。体重も100kgや200kgなんてものじゃあないだろう。
 その数4頭。ブヒブヒ喚きながら腕を滅茶苦茶に振り回して立ち向かってくる。
 その腕は細い木の幹など容易に叩き折る程の威力を秘めていた。

 タ――ン、タ――ン!

 兵達は三八式歩兵銃を腰だめで乱射する。
 彼我の距離は10mもなく外し様が無い。
 ……が、命中してもオ―クは一向に倒れない。命中時に悲鳴をあげ、命中部からも少なからぬ出血があることから、利いていない筈は無いのだが倒れないのだ。
 かえって益々暴れる始末である。

「くっ! 化け物め!」

 分隊長は歯軋りした。

 よく『三八式歩兵銃は威力不足』と言われているが、長銃身から発射されるその6.5mm三八式銃実包は高初速かつ低伸弾道であり、騎兵を乗せた大型軍馬の骨を破砕するのに十分な威力を持っている。決して非力ではないのだ。ましてやこの距離ならば、大人3人を貫通するだけの威力を持つ。
 にも関わらず――

479 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:08:43 ID:U1uACm8A0
「分隊長殿!」

 タタタッ!

 分隊長を襲おうとするオ―クに、背後から機銃手が三点射を二度叩き込む。
 これにはさしものオークも堪らなかったのか、悲鳴を上げて倒れた。

「背後に集中射撃しろ! 1頭ずつ狙え!」

 その命令でオ―ク1頭につき10発近い弾丸が背後や側面かに叩き込まれ、次々に倒されていく。
 オ―ク共が逃げ腰だったこともあり、その後数分でオ―クは全員倒された。

「損害は?」

 分隊長は疲れた様な声で聞いた。

「笹山がやられました。こいつの腕で吹き飛ばされて……即死です」

 兵の一人が忌々しそうに倒れているオ―クの内の1頭を蹴飛ばした。
 ……と、そのオ―クは微かに呻き声を上げた。

「! まだ生きているのか!」

 分隊の誰もが戦慄した。
 調べてみると、他のオ―クも同様で全頭まだ生きている。
 これだけの銃弾を至近距離から浴びて尚生きているとは、何という生命力だろうか!
 その後、耳孔や眼孔に銃弾を撃ち込みようやく止めを刺したが、この一連の戦闘で初期の楽観論は木っ端微塵に吹き飛んでしまっていた。

480 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:09:15 ID:U1uACm8A0
 ――これはただの“狩り”じゃあない。命がけだ。

 誰もがそう感じ、今後を思いやった。





――――オ―ク集落。

 分隊からの報告を受け、中隊は全力でオ―ク集落を攻撃する。
 まず中隊が保有する全て――9筒――の擲弾筒が射撃を開始、数十発の擲弾を撃ち込む。
 オ―ク共はその音と威力に驚き、忽ち混乱状態に陥った。
 ……が。

「プギー!」

 一際巨大なオークが一声上げた。
 恐らく長なのだろう。その声を聞くとオーク共は何とか立ち直り、負傷した仲間を背負い逃げ出し始める。
 が、“長”を始めとする一際屈強な10頭のオークは踏み止まり、中隊の進撃を阻もうと突進してくる。

 タタタッ!

 中隊は1個小隊に逃げるオークを追撃させ、残りの2個小隊でオークを迎え撃った。
 オーク達は問答無用の集中射撃を受け次々に倒れていく。
 が、突進を止めない。武器すら持たず、腕を振り回しながら突進する。
 仲間の屍を越え、突進する。

481 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:10:06 ID:U1uACm8A0
 ドンッ!

 擲弾の直撃――擲弾筒の水平射撃――を受け、やっと最後の1頭が仕留められた。
 ……消費した弾薬量を考えれば、頭が痛くなる様な収支だ。

「……やはり九九式が是非とも必要ですね」

 中隊長が呻く。

 『三八式小銃ではオーク相手に威力不足』ということが、この戦闘ではっきりした。
 ……三八式ではオークと戦えない。

 が、石山少将は別の感慨を抱いていた。

「まるで“虐殺”だな」

 彼にはどうしてもオークが“獣”とは思えなかったのだ。百歩譲っても――
 ……そこまで考えた時、彼の耳に無神経な口調の言葉が飛び込んできた。

「ああ、死体は持ってきた大八車に載せて運んで下さい。海岸で解体しますから」

 “生体視察”という名目で強引に付いて来た官僚、飯田が連れてきた軍属にあれこれ指示を飛ばしているのだ。
 流石の石山少将も、これには苦言を呈した。

「……君はこの光景を見ても何も感じないのかね?」

 冥福の一つも祈ってやれ、と石山少将。
 が、飯田は『何を馬鹿な』という表情で答える。

482 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:10:36 ID:U1uACm8A0
「……そりゃあ可哀想だとは思いますよ? 屠殺場に送られる牛や豚位には」

「貴様!」

 思わず飯田の胸倉を掴む。

「何度も言うようですがこいつ等は獣です。この世界の誰もがそう考えています。
 ……努々お間違えの無きよう」

 飯田はその手を払い、噛んで含めるように諭した。





 その後の調査は驚くべき結果をもたらした。

 オークの集落は『横穴式住居――所謂“洞窟”――に女子供を住まわせ、他は周囲に野宿する』という獣とさして変わらない暮らしをしていた。
 が、決して獣では無かった。
 周囲には焚き火の跡や石器の様なものが多数散らばっている。
 洞窟内の壁には様々な絵が描かれている。
 ……そして何より決定的だったのは、少し離れた場所に“墓地”が存在したことだ。
 そこでは幾つもの土饅頭が規則正しく並び、その上には石と花が置かれていた。
 
「何が“獣”だ! 何が“知性が無い”だ。我々を騙したな!
 お前のせいで皇軍の名に泥が付いたぞ! どうしてくれる!?」

 石山少将は怒り心頭で詰め寄った。

483 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:11:08 ID:U1uACm8A0
「……確かに壁画と墓の存在は不味いですね。破壊を要請します」

 バキッ!

 石山少将は飯田を殴りつけた。
 そして吐き捨てる。

「この狂人が!」

「……そうですね。僕は狂っているかもしれません。けど冷静ですよ。ただ感情的に喚くだけの閣下よりは、ね?」

 その言葉に周囲の将校達が激昂し、軍刀に手をかける。
 が、飯田はそれに怯まず、逆に穏やかな口調で語りだした。
 
「……転移前、帝國は食料供給のおよそ二割を外地からの輸入に頼っていました。内地の人口は7400万人ですから、『1500万人分の食料を輸入していた』ということになります」

「お前、急に何を言って……」
 
「更に転移後、本土外に在留していた数百万の邦人まで加わりました。現状のままでは一人当たりの食料供給は転移前の3/4にまで低下するでしょう。
 ……この意味がお判りですか? 転移前ですら誰もが腹一杯食べていた訳では無いのですよ?」

「…………」

484 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:11:57 ID:U1uACm8A0
 ……実際、これはとんでもない話だった。

 転移直前(昭和一六年)の臣民に対する食糧供給は熱量べ―スで一人当たり平均約2100Cal/日――単純に考えてこの“3/4”なら約1600Cal/日だ。
 1600Cal/日……日支事変が始まる前の豊かな時代には2400〜2500Cal/日もの熱量を消費し、政府発表の栄養要求量標準でも『一人当たり2,000Cal/日(標準的な労働者なら2,400Cal/日)』としていることを考えれば、これがどれ程恐ろしい数字であるかが判るだろう。

「このままでは如何遣り繰りしても1000万人の餓死者が出ます。それを防ぐ為なら僕は何だって実行しますよ?
 海の魚も山の獣も獲り尽くして見せましょう。この豊かな森林を全て焼き払い、田畑にだってして見せましょう。
 ――たとえ死後地獄に落ちようとも、です」

 ……その言葉を聞き、将校達は黙りこんでしまった。
 “兵站”という観点からなまじの知識人よりもその数字の重みを理解している彼等には、官僚の言葉の意味を十分過ぎる程理解出来たからだ。
 それは、先程の怒りを醒まさせるには十分過ぎる程の冷水だった。

 ――我ながら役者だな。

 軍人達の反応を見て、飯田は内心苦笑した。
 無論、彼の言葉に“嘘”は無い。このままでは大量の餓死者が出るのは事実だし、それを防ぐ為には自分はどんな手だって用いる積りだ。

 が、『だからオ―クを食料にする』という論理はペテンに過ぎなかった。

485 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:12:54 ID:U1uACm8A0
 冷静に考えてみれば判ることだ。
 この島に一体何頭のオ―クがいるだろう? 連中は縄文時代の様な生活を送っている。如何な自然豊かなこの地とはいえ、1000万、2000万などという数字はまずあり得ない。1頭/1kuと仮定しても120万頭がいい所だろう。100万切っていたって不思議では無い。
 ……さて、この120万頭から一体どの程度の肉が得られるだろう?

 一頭から30sとして36000t、50sとしても60000t。一見大量にも思えるが、これは帝國人一人当たりにしたら僅か1sにも満たない量である。途中過程での様々なロスも考えれば500gに届くかどうか怪しいものだ。もし1sもあれば御の字だろう。
 帝國人一人が必要とする蛋白質は平均70g/日、年換算なら25〜26sという事実を考えれば、この数字では『“足し”にはなるがそれ以上のものではない』ということが判るだろう。効率だって悪い。
 事実、帝國は蛋白質確保手段としては海洋資源に着目しており、既に相当数の漁船の徴用解除と大量の重油を割り当てを決定している。あくまで海産物が蛋白質の主体なのだ。

 ……ならば何故、ここまでしてオ―クを狩ろうとするのだろう?
 それは『オ―クの肉』を手に入れる為ではない。『オ―クの土地』と『オ―クの食料源』を手に入れる為だ。『オ―クの肉』などあくまで副次的なものでしかなかったのだ。

 帝國人が植民し開拓すればオークとぶつかることは明白であり、また120万頭ものオ―クを養っている島の食料も魅力的だった。
 無論、オ―クの肉とて決して無用ではない。未だ満足に漁を行えない様な現状では、当座の蛋白源としては非常に有用だ。食糧確保に不安な時期でもある、保険の意味合いもあっただろう。が、それ以上でもそれ以下でもない。

 要するに、この島のオークは何れにせよ皆殺しにする必要があったのだ。
 ならば、毒を喰らわば皿まで――

486 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:13:29 ID:U1uACm8A0
「僕の言葉を理解し、納得して頂けたのなら協力をお願いします。 ……墓と洞窟を爆破して下さい」

 彼の要請は受け入れられ、墓も洞窟も爆破された。
 オークの死体は荷車に載せられ、海岸まで運ばれると解体・塩蔵されていく。
 臣民から『ボロ雑巾のような』と酷評されることになるオークの塩蔵肉ではあるが、未だ遠洋漁業や海竜狩が行われていないこの時期においては貴重な蛋白源だった。
 これより僅か数年の間に100万頭以上のオークが狩られ、50000トンの食肉が帝國の食卓に上ることになる。
 肉だけではない。その毛皮は防寒具やブラシ等に、骨は肥料に……と余すことなく利用され、正にオークはその骨の髄までしゃぶり尽くされることになるのだ。
 オークから奪った土地には開拓民が進出し、開拓していく。並行して、手っ取り早く食料を確保する為に大規模な焼畑も行われた。
 ……この様に、オークは何もかも奪われたのだった。

 初期の神州島に赴いた将兵は、陰鬱な気持ちになりながらも『御国のため』と信じ、それを実行した。
 が、彼等の扱いは決して恵まれたものでは無かった。 ……彼等は『知り過ぎた』のだ。

 “神州島”攻略に参加した将兵はその全員が軍に留まり、後の大軍縮でも除隊されることは無かった。
 上級部隊こと解体されたものの、各大隊は独立歩兵大隊と名称を変えて大陸各地に派遣されることとなり、その後長い間本国への帰還を許されることが無かったという。

487 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:15:12 ID:U1uACm8A0
 ……この第一五歩兵団も同様だ。
 団司令部は一部の部隊と共にタブリン地区に派遣され、他の部隊もそれぞれの地区に派遣された。
 石山少将はタブリン総督庁初代長官となり、昭和17年――これより僅か半年後――拳銃自決。
 飯田も本国で事故に遭い、昭和19年死亡した。
 特に飯田に関しては死の前日、狂乱状態だったという。『よくも騙したな!』と何度も叫んでいたそうだ。

 ――オークは人ではありません、獣です。獣を殺して何が悪いのですか? 獣を喰って何が悪いのですか?

 それが飯田の口癖だった。
 が、それは何処か弁明染みた口調でもあった、と彼を知る者は言う。
 恐らく、彼はそう思い込むことで精神の平衡状態を保っていたのだろう、と。
 いや、彼だけではない。当時は多くの者達が同様に『御国のため』『同胞のため』とこの行為に手を染めていたのだ。

 ……ここに彼が、彼等が知らぬ筈のある事実が存在する。

 実は食料は『あった』。
 満州で、朝鮮で、台湾で……そして支那の占領地で接収された大量の食料が、転移時に一緒に付いてきたのだ。
 この事実が判明したのは、実に転移後数十年たってからの話である。

 その量は諸説あるが莫大なことだけは確かであり、転移後の彼の地が心配される程だった、とされる。
 恐らく昭和一七年は余裕で、節約すれば昭和一八年一杯までは何とかなったことは間違いないだろう。
 ……が、転移直後に政府上層部に上げられた報告書にはこの事実は記載されていなかった。
 その代わりに記載されていたのは『1000万人の餓死者』という幻の数字だ。

488 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:15:43 ID:U1uACm8A0
 誰がこの細工をしたのかは不明である。
 が、その者が恐ろしく知恵が回ったことは確かだろう。

 『1000万人の餓死者』と聞き、政府上層部は真っ青になって“行動”を許可した。
 『1000万人の餓死者』と聞き、準備する者も実行する者も、誰もが全面的に協力した。
 『1000万人の餓死者』と聞き、反対派も沈黙した。

 『1000万人の餓死者』とは、正しく“錦の御旗”だったのだ。





 神州島は澄んだ空と澄んだ海に囲まれた美しい島である。
 島内も温暖な気候と豊かな自然に恵まれ、後に“世界で最も美しく豊かな島”と帝國人を始めとする世界中の人々から讃えられることになる程だ。
 “先住者”達を始末した後、帝國の植民者達はその“世界で最も美しく豊かな島”を独占し、満喫した。
 そして、『不毛の満州朝鮮とは比べ物にならぬ』と我が世の春を謳歌したのだ。
 ……が、その“天国に一番近い島”に先住者がいたことも、その悲劇も一切記録に残されていない。

 ただ神州島に関する記録は高らかに謳うのみだ。
 『天国に一番近い島』、と。

489 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/21(土) 14:16:56 ID:U1uACm8A0
 投稿終了です。
 ちと走りすぎたかな?

490 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 14:32:50 ID:isaODbCo0
投下乙ですー。
うわー、黒い。黒すぎるw

死者を悼むほどの情緒を持った高等知性体を殺して食うってのは、まともな人間には耐えられないでしょうな。
黒部男爵の短編で前任司令官が自殺したって記述が気になってたんですが、これが原因でしたか。
上の命令で汚れ仕事をやらされた挙げ句に口封じを兼ねて辺境に隔離されたら、そりゃどうにかなってしまいますよね。
しかし、裏で細工した人も、虐殺するのはともかく、食料の目処がついてたのなら食肉にするのは止めた方が良かったんじゃないかな。
多少の食肉の増加よりも、後世に残る後味の悪さを考えたらちょっとねぇ……。

491 名前:ヨークタウン ◆r2Exln9QPQ:2007/04/21(土) 14:34:41 ID:4CUjn9IY0
くろべえ氏投下お疲れ様です。

石田少将は拳銃自殺。冷酷な飯田も、実際は騙された被害者の一人。
情報の如何によって、帝國はとてつもないことをしてまいましたね。
帝國もオークも哀れです。

492 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 15:07:31 ID:IvX.uGKQ0
このやり口は、何というかいまいち日本人の色が見えない。
どこかしら甘っちょろい日本人は、都合が悪く排除しなくてはならないからついでに食肉にも役立てよう、と言う考えは一寸出てこないような。
無論とことん追いつめられているから……ではあるんだけど、その追いつめられてるって言うのは幻影だったりするわけで。

転移したときにあったはずの食料の山、隠したのだあれ?
隠してごまかしきれるのだあれ?
日本人っぽくない計画立てられるのだあれ?

黒いのはやはり黒いと言うことなのだろうか

493 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 15:07:44 ID:83/wJNuE0
投下乙です
うむ、やはりこれは黒歴史だ…
帝國臣民は永久に知らなくても良いし、知りたくもない歴史の一幕。
グロ表現こそ無いものの、逆にそれが後味の悪さと気味悪さを際立たせていますね。

集団で戦っている事からも薄らと予想はしていましたが、旧石器時代の人類並みの文明を持った種族だったとは…
この件があるせいで帝國政府はオークが人類に匹敵し得る高度な知性を持つ知的生命体である事を認める事は絶対に出来ませんし、それを公表しようとする者はありとあらゆる手段を用いてでも排除しなくてはいけなくなったと。
たぶん、オークの生態研究を行っていた学者が幾人も行方不明になっているのだろうなぁ…

494 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 16:19:25 ID:.sNtw7xY0
投下乙です。
墓まで作っているというのは、下手するとネアンデルタール人並みの知的レベルですね。
かなり広い範囲に存在してるようだから、オークの生態についてはいずれ広く知られそうです。
この世界の文献資料も大量にあるだろうし。

しかし、猪頭って、まともな進化じゃできないですよね。どうなってるんだろう。
やはり人為的に作り出されたものでしょうかね。

495 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 17:31:27 ID:mSiubQ.I0
国は、たてまえや綺麗ごとでは運営できないからねぇ。
戦前の日本だって裏方として特高、憲兵、工作機関、特務機関など裏の面で
帝國を支えたんだからこのことも仕方ないですまさなくてはいけないのかな。

496 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 17:41:01 ID:83/wJNuE0
>しかし、猪頭って、まともな進化じゃできないですよね。どうなってるんだろう。

さあ一緒にどうぞ。
「これだからファンタジーは嫌なんだーッ!」

497 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 18:02:55 ID:CNraRg7U0
>「これだからファンタジーは嫌なんだーッ!」

74式戦車に乗った、エルフ狩りのエキスパートたちが、現れそうな気がしてきたw

498 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 18:23:45 ID:V/E9M.BI0
純銀の戦車砲弾まで搭載してる猫戦車かw

499 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 18:27:16 ID:tIl0t7H6O
猫耳が居るのならどんなファンタジーにも喜んで。

乙です。
真っ黒だね〜帝国。ここまで黒くしたのは誰だろうな?

500 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 18:30:30 ID:V/E9M.BI0
純銀の戦車砲弾まで搭載してる猫戦車かw

501 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 18:48:34 ID:zQTyC6vk0
あれよく最終回まで弾がもったよな
さんざん撃ちまくってた気がするんだけど

502 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 19:45:36 ID:isaODbCo0
ミケが乗り移ってからは燃料無しで動いてたし、
砲弾も無制限補充できてたんじゃないかな。

なんたってF世界ですからw

503 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 20:10:41 ID:lJcNaVNM0
この台詞を思い出した

閣下、我々の想定が正しければ、日本は今頃勝っていたはずなのです

504 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/21(土) 20:46:20 ID:pWXiDBTQ0
くろべえさん、投下乙です。
旧版のプロトタイプの話も混ぜてありますね。
黒い話ですが、善い事しかしていない国家などあるわけはありませんし、作用があれば反作用もありますし。
まあ、転移当初の帝國のやり方が分かる話ですね。

505 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 20:54:44 ID:FBozg71Y0
正しく『カルタゴの平和』ですね、神州島は。
悲しいけど後々の遺恨を絶つためにも植民地の原住民は民族浄化してしまった方が後腐れないんですよね。
EU2なんかやってると本当に実感できますが、原住民を残しても同化による人口増加ぐらいしかメリット無いですし。
ジェノサイドしてしまえば植民者との摩擦も起きないし後々ナショナリズムによる独立運動も起きませんしね。
多分シュベリンでの出来事が起こる前に併合した国々では(オークよりはマシとはいえ)似たり寄ったりな事やったんだろうなあ。

506 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 21:16:18 ID:e6pF9aVw0
>くろべえ氏
乙〜

今までの作品と作風が違いますね・・・・・
読んでて胃が・・・

で、やっぱり気になりますね
誰が食料を隠し、誰が報告書を編集したのか

507 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 21:30:31 ID:eTykZigo0
そういえば、帝国はオークに保護された村人達の事を知っていたのだろうか?

508 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 21:37:10 ID:fNHLUSxY0
投下乙です!

黒幕はダークエルフなのか?しかし生命を賭して他国の機密情報を持ち出そう
としたり、惚れた軍人さんに、好かれようと努力しているダークエルフ達とか
なりの隔たりを感じる

攻撃魔法とかは出てきたけれど、強力な催眠術のような魔法はあるのだろうか?
長老エドリックの名の下に命じる、オークを全て抹殺せよ!とか

509 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 21:42:22 ID:7FqL.Nek0
このジョークを思い出した。

>戦後まもなく、日本政府は食糧難によって
>数百万人の餓死者が出るという統計を元に
>アメリカに莫大な食糧援助を求めたが、
>その何分の一かの輸入で別段死人も出なかった。

>そのことをマッカーサーが詰問した。

>マッカーサー「でたらめな数字を出すな!」

>吉田茂「うちの統計がそんなに立派なら、戦争には負けてませんよ。」

510 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 22:18:51 ID:YpZRw2zs0
>>508
でもそのダークエルフ達は悪く言えば下っ端だからなぁ
上の連中はかなり悪辣かもしれんよ?
そうでもないと、この世界で生き残れないと思うし

511 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 22:30:45 ID:lKa/s3jg0
上に気に入られようとして下っ端が暴走するのは
中世でも戦国時代でも三国志の時代でも
はたまたヤクザの世界でもよくある話らすぃ・・・

512 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 23:03:59 ID:CQ3KIkms0
膨大な食料を即効で隠し
膨大な資料の中からそれ関する記述を探り当て改ざんする(しかも日本語、おまけにタイプ打ちや印刷物もある)

この時期接触して十数日もみたいないんですよね、旧日本とダークエルフ。


ダークエルフやエルフでもないもっと強大な別の者の仕業だと思います。
旧日本をF世界に召喚したぐらいの強大な力の持ち主とか。何のために召喚したかは知りませんけど。

513 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/21(土) 23:48:09 ID:KU8QS5YM0
転移時に日本全土のあちこちに出現した海外資産、
それらを全部把握するにはえらい時間が必要な気がする。

末端から上がってきた報告書をまとめあげて
それを最終的な書類上の数字にするだけでも何ヶ月もかかりそうだし。

それに、仮に転移前の海外資産が統計上の数字では把握できていたとしても、
それらが全部一緒に転移してきたかどうかもまだ不明だろうから、
そのような不確かなものは「無いもの」として扱ったのかも。





あるいは、もしかすると「国内備蓄の量を速やかに算出しろ」と命じられた関係省庁が、
ただ単に従来の数字、つまり転移前の国内備蓄量の統計をそのまま提出した可能性もあるかも。

つまり、一緒に転移してきて国内のあちこちに出現した物資を勘定に入れるかどうかの判断を
もちろん「前例が無い」から数に入れなかったというお役所的対応を行ったという可能性が……。

514 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 00:00:17 ID:yRugYah20
>>513
そのあたりが真相かも…>お役所的対応

帝國の食糧事情を安定させるために海外進出は必然的とはいえ
余裕があるとわかっていればここまでにはならんかったろうに。

515 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 00:49:44 ID:X9DoCVGA0
神州島は辛醜島だったのか。原住民とオークたちに黙祷・・・。

黒幕としては満州国の関係者、関東軍と思われ。中国人に悩まされてた彼らにとっては
神州島の原住民はどういうモノであろうと邪魔者としか写らなかったのでは。
それに関東軍なら満州、朝鮮の物資と共に移ったわけだから隠蔽も容易。
暗殺もお手の物。

516 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 01:38:03 ID:isaODbCo0
帝國の弱みを握るために意図的にダークエルフが誘導したのかもしれないけど、
確か作中描写で、「ダークエルフは独断専行はしない」って言われてるしね。
ばれたら一発で自分たちへの悪感情が噴出しそうな小細工をするだろうか。

517 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 07:53:07 ID:83/wJNuE0
いずればれるし、ばれたらとんでもない事になるような事はしないでしょうね。
ダークエルフは。

でも帝國にはそうしなければならない理由がある。
台湾や朝鮮にいた人々をどこかに住まわせて職を与えてやらねばならないのに、住まわせる場所も職も無いから。
幾人かの高級官僚が組んで、故意に情報を操作したのでしょうね。
「御国の為、帝國臣民の為」と言いながら。

518 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 08:22:34 ID:IvX.uGKQ0
操作した人間達も私利私欲でやったんではないのは確実っぽいですなあ。
私利私欲でここまで恐ろしいこと出来るようなのはさすがにいないと信じたいし。
それに後世の結果的には、確かに帝國には益が大きかった選択でもあるし。
少なくともこういう手を打たずにオークを抱え込んでたらえらいことになってたかも。

519 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 08:41:51 ID:SdZPUvvA0
まあ餓えていては理想は口に出来ないからネエ・・・
善や正義なんて社会ルールの有り難味が理解出来ない人用の方便だから
人々が効率よく繁栄する手段としての善や正義の効用を理解している人なら
是を無視するのも有りでしょう。

520 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 09:33:15 ID:i6rABYdI0
陸軍を抑え込む為に官僚達が連携したのでは。首相も現役陸軍軍人ですし。
国民の1/8が餓死すると脅さない限り、陸軍は50%削減に応じなかった思います。

521 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:33:22 ID:U1uACm8A0
 どうも、くろべえです。
 ちと暗いのでネタ投下。
 >>489様の『猫耳が居るのならどんなファンタジーにも喜んで』からヒントを得た即興SSです。
 レスのお返しは次回になります、申し訳ない。

522 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:33:54 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 ジャンク編1「転移男」小ネタ『ネコミミ行進曲』
 稲葉はぼんやりとTVを眺め、シャオは何やら少女雑誌を熱心に読んでいる
 ――そんな、居間でまったりと過ごしていた時のことだった。

「……俺はとんでもない考え違いをしていた――」

「一体どうしたんですか、稲葉さん?」

 突然、某MMRのキバヤシばりに深刻そうな表情をして呻く稲葉に、シャオは『ああ、また“発作”が始まったんだろうなあ〜』と思いつつも尋ねてみる。
 ……これが彼女の優しさであり、また欠点でもあった。(放っておけばいいんです)

「……俺が“ここ”に来て早一月以上……」

「? ああ、確かにうちに来てそれ位経ちますね、早いものです」

 稲葉は『この世界に来てから』という意味で言ったのだが、当然シャオに通じる筈も無い。
 彼女は素直に『“まんぷく”に来てから』ととった。

「色々な“獣っ娘”を見た…… なのに何故……何故“ネコミミ少女”がいないんだあっ!?」

「……はあ?」

 血涙を流して叫ぶ稲葉に、シャオは思わず聞き返した。
 ……この男、“まんぷく”の住み込み店員から下宿人にランクアップ(?)したものの、行動自体は全くレベルアップしないから困りものだ。
(職場の方々もさぞ苦労していることだろう)

523 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:34:46 ID:U1uACm8A0
「……ごめんなさい。私、稲葉さんが何を言っているのか全く判らないです」

 判らない方が幸せだというのに、シャオはすまなそうに謝る。

「ううう…… シャオちゃんは本当にええ娘やな〜〜」

 稲葉は涙ながらにシャオに訴えた。

 “ここ”に来て様々な人達(獣っ娘)に出会った。
 様々な“ミミ”に出会った。
 ……なのに、何故か“ネコミミ”には出会っていない、と言うのだ。

「……ええっと、良く判った様な判らない様な……」

 シャオは苦笑した。つーか笑うしかなかった。
 稲葉が何故そこまで耳の形に拘るのか、彼女には理解出来ない。
 何せこの世界ではケモノミミがリアルで存在するため、“そーいった趣味”が存在しない――少なくとも表面化しない――のだ。
 ……まあ稲葉当たりに言わせれば、『豚に真珠』『人生の半分を損している』らしかったが。

 こういった理由から、シャオがまず疑ったのは『自分の読解力不足から来る誤解』だった。『幾らなんでも猫耳はないだろう、猫耳は』ということだ。
 次に疑ったのが『自分は頭が悪いから稲葉の考えを理解できない』である。『大学出のインテリの考えることは、おバカな自分には理解不能』と考えたのだ。
 ……まあ何れにせよ、かなり自虐的な考えだろう。
 多くの獣人が帝國人に対して少なからぬコンプレックスを持っているが、どうやら彼女もまた、多分にそれを持ち合わせている様だった。

「うん、だからネコミミだよネコミミ。シャオちゃんの知り合いにネコミミの娘、いる?」

524 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:35:16 ID:U1uACm8A0
「え〜と、“ネコミミ”って、にゃあと鳴く“猫”に“耳”と書いて“猫耳”ですか?」

 シャオは自分の耳を指し示して確認した。

「そう、そのネコミミ!」

「はあ、残念ながらいません。 ……と言いますか、獣人に猫はいませんよ?」

「な……なんだって――っ!?」

 シャオの爆弾発言に稲葉は驚愕した。
 思わず両肩を掴み、詰問する。

「そ……そんな筈は無い! この世界の神は同好の士、よもやそんな片手落ち――」

 ……勝手に同好の士扱いされるとは、この世界の中の人もいい迷惑だろう。
 ついでに、いきなり神様を持ち出されたシャオもびっくりだ。

「何もそこまで話を大きくしなくても……」

「本当にそう思うかっ!? 良く考えるんだっ! 大本の情報が間違っていたとしたら……!!」

「いませんよ」

「くっ…… 絶望した! この世界に絶望したっ!!」

「……そこまで言いますか?」

 病んでるなあ、と流石にシャオも呆れ気味だ。

525 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:36:06 ID:U1uACm8A0
 ――『天才となんとかは紙一重』って言うけど、本当なんだ……

 ……稲葉は帝國政府に感謝すべきだろう。
 『情報工学の若き天才』なんて扱ってくれていなければ、とっくに“可哀想な人”認定されている筈だ。

「イヌミミは数あれどネコミミは影も形も……はっ! も、もしや……この世界の神はイヌミミ至上主義者!?
 だからネコミミを――ぐはっ!?」

 頭をぺちっ!と叩かれ、稲葉は情けない悲鳴を上げる。

「……正気に戻りましたか?」

「は!? お、俺は一体何を!?」

「稲葉さんっ!」

 シャオはずいっと稲葉の前に進み出た。
 その勢いに押され、稲葉は思わず後ずさる

「は、はい!」

「……獣人には犬もいません。だから当然“犬耳”も存在しません」

「え? そうなの?」

 なんてこった……獣っ娘の双璧であるイヌミミ少女とネコミミ少女が存在しないとは!
 責任者出て来いっ!!

526 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:36:46 ID:U1uACm8A0
「あと何度も言うようですが私は誇り高き“狼”です、断じて犬じゃあありません。
 だからコレも犬耳ではありません。 ……よろしいですか?」

 ――“誇り高き狼”、ねえ?

 稲葉はこの一ヶ月のシャオの行動を思い出し、内心首を捻る。
 ごはんと散歩をこよなく愛するシャオ、
 力一杯尻尾を振って喜ぶシャオ、
 仰向けでゴロゴロするシャオ、
 近所の飼い犬と会話(?)するシャオ……
 ……犬そのものだ。が、狼とて飼いならされれば犬になる。ならば彼女が狼でもおかしくないだろう、多分。

「……はい」

「判ってくれればいいのです」

 そう言うとシャオは薄い胸を張った。
 ……と、その時、TVの声が一際大きくなった。

『凄いですねえ!』

『はい、本品はマケドニア王国の秘宝の一つで――』

 ふと目をやると、TVでは今度開催される“マケドニア王国秘宝展”の紹介が行われていた。
 ……稲葉は思わず目を奪われ、凝視する。
 レポーターのお姉さん――獣人――が何やら興奮気味に見ているのは……『首輪』、どっから見ても『首輪』。
 宝石とか散りばめて立派で高そうな『首輪』だった。

527 名前:F世界逝き:F世界逝き
F世界逝き

528 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:39:12 ID:U1uACm8A0
『これは妃殿下がお付けになる――』

「マジでっ!?」

 稲葉は思わず叫び声を上げた。
 おいおい……これ、もはやチョーカーってレベルじゃねーぞ!?
 ……が、『もしや』と恐る恐るシャオを見ると、彼女はうっとり気味に『首輪』を眺めているではないか!?

「シ……シャオちゃん……?」

「素敵ですねえ、あれ」

「やっぱり――――!?」

 ……後で聞いた話だが、アレは獣人女性限定で流行っている“首飾り”らしい。いや、マジで。
 何でも獣人に元からある風習からヒントを得たもので、主に婚約者、或いは夫がいる場合に身につけるものだったが、最近では愛し合った相手がいる場合にも身につけるそうだ。

「お給料の三ヶ月分が相場なんですよ――っ」

「さ、さいですか……」

 稲葉はそう答えることしか出来なかった。
 ……イイのか、アレ? 公序良俗に反しないのか?


 ――――閑話休題。

529 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:41:10 ID:U1uACm8A0
「で、ネコミミなんですが」

「……まだ言いますか?」

 しょうもないことを未練たらしく聞く稲葉に、シャオも呆れ気味だ。

「いえ、この際妥協します」

「妥協?」

「ネコっぽいミミでイイです。 ……心当たりありませんかね?」

 稲葉は姿勢を正し、頭を下げる。
 ……そこまでして見たいんかい、ネコミミ少女。

「ちょっ! 止めて下さいよ、稲葉さん! 判りました、判りましたからっ!」

 プライドも何も無い稲葉のアレな行動に、昔気質――“こっちの世界”では“今気質”でもあるが――なシャオは慌てて頷いた。
 と、途端に稲葉は喜色満面でシャオの両手を握り締め、何度も振る。

「ありがとうっ! きっとシャオちゃんなら協力してくれると思っていたよ!」

「え〜と…… もしかして私、騙されてます?」

「ないない」

 即答されたものの、余りの変わり身の早さにシャオは思わずそう考えてしまう。
 ……が、約束してしまったものは仕方が無い。シャオは軽く溜息を吐くと先程読んでいた本を稲葉に渡した。

530 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:41:41 ID:U1uACm8A0
「『少女之友 獣人版』?」

「その中表紙を見て下さい」

「? おお! 凄い美女!」

 そこには怖い位の美女が写っていた。長身でスタイルも抜群だ。
 ……オマケにネコミミ金髪。

「なんだいるじゃあないか、ネコ」

「その人、虎人ですよ?」

「……はい?」

「だから虎ですって、虎」

 ガオーッとシャオが身振り手振りで説明する。

 虎人は獣人の中でも少数派だが、熊人のパワーと人狼のスピードを持つ獣人最強の一族だ。
 加えて虎のクセに集団志向が強く、軍務をこよなく愛する一族でもある。このため“陸軍御用達”とすら言われる程だった。

「おまけに虎人の人は皆背も高いしスタイルも抜群、美男美女揃いなんですよ?」

「確かに皆、怖いくらい美人だよなあ……」

 氷みたいでちょっと近寄りがたい雰囲気だ。写真ですらこれなのだから……って女性で身長180超!?
 ……子供の虎人も大人びてるし、どうも“ネコミミ少女”って感じじゃないよな〜〜 やっぱりロリでなくちゃ。

531 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:42:15 ID:U1uACm8A0
 『俺の嗜好にストライクする娘はいないのか?』と稲葉はペラペラと本を捲っていく。
 そして巻頭特集を見て、思わず叫んだ。

「キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!!」

「ど、どうしたんですかっ!?」

 ……そこには理想のケモノッ娘が写っていた。

 大きく垂れたミミ、
 フサフサの尻尾、
 セミロングの美しい金髪……そして何より、小柄で愛くるしいそのお顔。
 このぽけぽけとした表情がまた何とも言えませんな!

「……ああ、マケドニアのお姫様ですね」

「お姫様!」

 正にパーフェクトッ!!
 これだ! これこそ俺の求めていたケモノッ娘だよっ!!

「あとでこの雑誌買って切り抜きにして保管しよ〜♪」

「……あんまり変な事考えると不敬ですよ?
 第一、ネコミミじゃあ無いじゃないですか」

 はしゃぐ稲葉を見て、シャオは面白く無さそうに言った。

「このイヌミミ……じゃなくてオオカミミミも萌えなんだよ」

532 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:43:19 ID:U1uACm8A0
「“もえ”? あ、でもその方は"狼”じゃあないですよ?」

「へ? じゃあ何?」

「“熊”ですね。正確には“黄金熊”ですが」

「へ……熊?」

「はい」

「熊……」

 ……世の中、実に上手くいかないものであった。

「だがそれ(熊っ娘)もまた良しっ!!」

 あー、そうかい。





SS投下終了。>>527は投下に失敗したものです。

533 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/22(日) 12:48:06 ID:U1uACm8A0
あ、あとこれネタなんで1話登場のネコミミお姉さまは無視して下さい。
稲葉も忘れてますし、彼女黒豹ですし。

534 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 14:20:58 ID:Olpl3YCY0
投下乙です。
いやなんだ・・
稲葉君 走 り ま く っ て
ますなw

535 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 14:24:57 ID:o.IrM9Js0
稲葉「ネコミミモード、ネコミミモード、ネコミミモード、ネコミミモードでーす」
シャオ「うにゃ〜?うにゃにゃ?」

ロン「ふるふるふるむ〜ん」

こうですか?わかりません!

536 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 14:27:05 ID:xsS49mlo0
投下乙です。
何をやっている稲葉ー!
犬じゃないんですー(ヲ

537 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 15:20:53 ID:LQMEt4tY0
投下乙です
まるっきり犬なオオカミ娘……GS美神のシロ思い出したw
しかし何故に猫耳娘が居ないのか……コレは是非ともこの世界の神を問い詰めねばなりませんねw

538 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 15:21:42 ID:guP7mFP20
投下乙です。

なんとなく稲葉君も安定した生活を営めてそうで良かったです。
そこに至るまでの過程も楽しみにしてますので、執筆頑張ってください。

539 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 16:50:01 ID:.aVtA7U60
ネコ耳、犬耳なんて邪道です、世界は狐耳を求めています!!(帰れ

540 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 17:19:30 ID:lSHKTxs60
>くろべえ氏
乙ー

>『情報工学の若き天才』なんて扱ってくれていなければ
公文書偽造犯からえらい出世でつな

541 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 17:39:33 ID:oYH7.wCQ0
くろべえ氏
投下乙です。

ネコ耳とイヌ耳がいないのは、ネコとイヌが人為的に作られた家畜っていう
のがあるのかな?

って事は、野生のヤマネコ耳はいるはz

542 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 17:42:45 ID:V31jykOQ0
>『情報工学の若き天才』なんて扱ってくれていなければ
佐官担当軍属としての地位をもっていたりして。

しかし、ぱっと見には徴兵された新兵にしか見えなくて
軍の施設をウロウロしてたら、上等兵とか下士官とかに
「貴様!何ちんたらしている!」と怒鳴られ、言い訳とかも出来なくて
シドロモドロでいたら「気合いを入れてやる」と
ビンタを張られて・・・・で、担当士官(尉官相当)が、その光景を見て
すっ飛んできて「この方は、帝國が誇る電算機の天才で佐官担当官であられるぞ!」と。

帝大卒で、なおかつ、非常勤の帝大教授くらいはやっててもおかしくは無いのですな。

543 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 18:45:36 ID:i6rABYdI0
コンピュータ開発60年の正解を現物+体系的知識で持っているのです。
彼の講義を帝大の教授が受講しているでしょう。

544 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 19:22:10 ID:tIl0t7H6O
狐耳は……狐耳は無いのか!
絶望した!世界の不条理にぜ(pam

545 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 19:24:08 ID:V31jykOQ0
>彼の講義を帝大の教授が受講しているでしょう。
・・・でもって根がヘタレかつ善人なものなんで見た目には、
一切の隠し事や意地悪をしないでどんな質問に対しても懇切丁寧に
知識を伝授し、講義時間後の質問等にも時間を気にしないで付き合ってくれる。
しかも、酒の席でも威張りもせず人生の先輩達に対して、自分から酌をして回り
教え子である帝大教授達を恐縮させる始末。

爵位とかはともかく、「うちの娘と・・・・」とか「孫娘が女学生でしてね」とか
周辺が五月蝿くなっていそうな気が・・・・。

546 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 20:51:13 ID:guP7mFP20
で、縁談攻勢に戸惑いつつも、やに下がる稲葉のその姿を見て
シャオちゃんがしょんぼり尻尾を丸めて耳を倒すわけですね?!

547 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 21:05:19 ID:xsS49mlo0
つまり終局的にはシャオ×稲葉でFA
あれ?こんな夜中にドアを叩くおt

548 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 21:29:49 ID:njlPJyHw0
つか、シャオだけじゃ足りんのかい

549 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 21:33:54 ID:njlPJyHw0
あとまじめな話も
稲葉は数々のコンピュータ用語(英語)を和訳しなくちゃいけないんだよな?

550 名前:長崎県人:2007/04/22(日) 21:35:55 ID:2MxH4A12O
ええい、耳はいい!尻尾だ!尻尾を映せ!(いや耳も好きだけど)
とにかく、狐っ娘は尻尾多数!うさぎはまるっこいの、たぬっ娘はぽよんとした尻尾が俺のjustice!そしてやっぱりパンツには穴g(射殺されますた)


まぁ冗談はともかく、エデ◯ズボゥイという漫画では、普通にネコミミの種族がいて、ファーマニア(毛皮好き)とかいう名称で存在してましたから、獣人好きが居てもいいかと、いいよね?(汗)


あと、熊っ娘なんかがいて抱きつかれたら、やっぱりベアーバッグになるんかな?(汗)

551 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 21:48:14 ID:guP7mFP20
いや、英語は帝國の教育課程に残ってるみたいだし、
コンピューターで使う言語として、そのまま使うんじゃないの?

552 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 22:16:41 ID:njlPJyHw0
>英語は帝國の教育課程に残ってるみたいだし、
マジか
>コンピューターで使う言語として、そのまま使うんじゃないの?
一つの技術を学ぶために本来全く関係のない言語を学ぶの? 効率悪すぎ

553 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 22:35:44 ID:xL2tt65E0
いや最悪でも16進数でプログラムすればいいし
何とでもなるんじゃない?

554 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/22(日) 22:48:02 ID:xsS49mlo0
>>550見て手持ちのエデボ全巻捨てようと思った。

555 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 00:27:19 ID:guP7mFP20
>>552
マジ。くろべえさんが言ってた。

あと、日本語で一からマシン語の言語構築する方がよっぽど効率悪いと思う。
おそらく稲葉が持ち込んだLINAXが帝國謹製OSを根幹になると思うし。

556 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/23(月) 00:53:00 ID:IMEGmCi60
くろべえ殿投下乙です
マケドニアは印象良くなかったのですが何故か急上昇ですよ。


>>362さま
ごめんなさい、SLAMが何か分かっていません。検索してもAGM−84しか出て来ないです

>>362さま ありがとうございます
ヴァルキリーよりも開発期間は長いので何とかなるかもしれません

>>363 月影様貴重な情報ありがとうございます
意外に超音速風洞お安いですね。技術レベルで値段が左右されるとは言え何とかなりそうですね。

>>364さま
色々大変だったらしいです、はい。

>>365さま 
おっと、元ネタもAAもあるんですね。そこのサイトで色々探して遊んでみます。


皆様遅レスで申し訳ないです…

あと地図の件で話題に上がっていましたが、ユフ戦記は2006年8月時点で公開されていたくろべえ氏の設定をもとにして、F世界帝國のありえるかもしれない昭和30年代という位置づけです。
その後原作で設定が追加されましたが、基本的に使う設定は2006年8月以前に公開されたものです。
というのも一旦設定を考えて話の構想を立てると設定変更が難しくなるからで、そのあたりはご容赦願います。
ということで日本列島は上下逆さま、地図の上のほうが北という設定でユフ戦記は進んでいます。赤道は考えてません

557 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 01:19:33 ID:l9V4ccXk0
>>550
羽は,羽はダメですかぁぁ!?!? 特にヴァルキリーなお姉さんが(PAM PAM

558 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 01:33:39 ID:guP7mFP20
LINAXじゃなくてLinuxだった。

鳥系獣人とかも出てきたら面白いなぁ。
しかしマケドニア、建国40年そこそこなのに、もう「秘宝」が出来てるのかw
このお姫様が、本編に肩書きが出てきた「王」の孫だとすると、
マケドニア王のカテゴリーは「黄金熊」ってことになるのかな。
なんかレアそうな種族だなぁ。
もしかすると外伝の獣人少年が養子に入って、名前が出てきてた王太子になったのかもしれないけど。

559 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 02:08:43 ID:F0.SoTH60
王太子が王犬子に見えてしまった もうだめだ

560 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 02:19:59 ID:Pusv3SwY0
>>556
>SLAM
Supersonic Low-Altitude Missileの略で、アメリカ本土からソヴィエト国内まで1万kmを高度300mでマッハ3オーバーでカッ飛ぶステキなミサイル。
要は「低空飛んでレーダーに捕捉されずに、超音速で飛行して対応時間をとらせない」
という1950年代の単純なコンセプトだった。

その最大の特徴は「核弾頭を核ジェットエンジンで飛ばして、目標のみならず航路も汚染する」
というところ。 コードネーム「Pluto(冥界神)」にふさわしいと言えよう。

しかしながらICBMとの競争に敗れ1964年 プロジェクト中止。
理由は「ICBMに比べあまり(速度が)に遅すぎる」あるいは「ICBMが思ったより早くモノになりそう」
エンジン試作とモックアップのみ完成していたという。

561 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 08:40:51 ID:Ms1qJQwc0
私の記憶によれば、射程1万kmどころか最大射程距離地球2周半だったような・・・
しかも核ミサイルでありながら、戦略爆撃機
確か26発の核弾頭を搭載し、それらを投下し終わると最終目標に突っ込むんだっけ?

562 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 10:36:58 ID:XpD6KBxY0
>>558
なまじ歴史も無いお陰で考古学が盛んになって失われた伝説の獣人文明の秘宝を手に入れるべく、
テンガロンハットと鞭を持った考古学者が遺跡に挑むと言う話が…

冒険とか探検にはある意味最も向いた種族だし。

563 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 10:53:48 ID:nKsnEg5c0
>>562
モンタナ・ジョーンズですか?

564 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 11:47:16 ID:bJFcWGuQ0
くろべえ氏 投下乙
こうやってみると獣人も色々あるんだなぁ
狼系、虎系、レアな熊系 鳥やトカゲはいないというくらいしか
共通点がないこの変り種はいかなる異界の神の落とし子だろう?w

>>562
興奮すると我を忘れるという気性を
制御できる人物ならばという
条件がつくがなw

565 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 13:20:17 ID:83/wJNuE0
>共通点がないこの変り種はいかなる異界の神の落とし子だろう?w

獣耳を作った神様といえば、オンビタイカヤン…あ、ちょっとまてなにをす

〜こどものこーろのゆめーはー〜

566 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 14:14:38 ID:mSiubQ.I0
まあ人間も黒とか白とか黄色とか色々あるしね。
獣人も人間との交配?できるからネタも増えそうだけど色々頭の痛い問題がありそう。

567 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/23(月) 14:36:21 ID:U1uACm8A0
>>490
 490様、有難うございます。

>黒部男爵の短編で前任司令官が自殺したって記述が気になってたんですが、これが原因でしたか。

 これが原因、とも言えるでしょうね。この伏線があり、更にある事件があって自決する訳ですよ。言わば憤死ですね。
 あ、ちなみに彼は大佐から少将に変更しました。

 改訂版黒部男爵物語では1章が「タブリン到着編」、2章が「辺境警備隊隊長編」、第3章が「帝都編」となる予定です。
 で、1章のクライマックスが彼の自決、2章のクライマックスが2代長官の逮捕……暗いなあ(笑)

>しかし、裏で細工した人も、虐殺するのはともかく、食料の目処がついてたのなら食肉にするのは止めた方が良かったんじゃないかな。
>多少の食肉の増加よりも、後世に残る後味の悪さを考えたらちょっとねぇ……。

 「そこまで切羽詰ってるのか!?」という演出かも。
 まあ事情を知らない連中が計画段階で「獣駆除? なら肉よこせや」と追加した可能性も……

>>491
 ヨークタウン 様、有難うございます。

>石田少将は拳銃自殺。冷酷な飯田も、実際は騙された被害者の一人。

 この物語の登場人物、その誰もが『救われない』というお話です。
 きっと他に自殺者も多く出たでしょう。
 ……もしかしたら、以前のSSであった拉致された人の中に『失望から進んで列強に身を投じた者』もいたかも。

568 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/23(月) 14:37:06 ID:U1uACm8A0
>>492
>このやり口は、何というかいまいち日本人の色が見えない。

 この辺は後世様々な説が唱えられています。
 が、どれも証拠に乏しく、憶測の域を出ないのですよ。
 表面化したのが半世紀以上後の上、資料が全くといって良いほど存在しませんからね。
 証言が殆ど唯一の情報ですが、中枢にいた連中は皆鬼籍に入っており、生存しているのは末端の人々のみ、しかも高齢……

>>493
 493様、有難うございます。

>黒歴史

 ですね。『オークは邪悪な獣』という考えに異を唱えることは許されないでしょう。
 幸い他の国々も敵味方問わず、これに関しては似たり寄ったりの立場ですから、世界規模で隠蔽されるでしょうねえ……
 あらゆる国の王、宗教、民……全員が全員『共犯者』なのです。新旧の差はあれど。

>>494
 494様、有難うございます。

>この世界の文献資料も大量にあるだろうし。

 少なくとも公式記録に公正さは期待出来ません。宗教が入っていますから。
 特にオークがメジャーな存在だったのは古い時代の話ですから、相当なアレな内容の筈です。

569 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/23(月) 14:37:57 ID:U1uACm8A0
>>495
>国は、たてまえや綺麗ごとでは運営できないからねぇ。

 以前は『こういう話は書かないようにしよう』なんて思ったりしたのですが……
 “邪悪なオーク”と書いてて『絶対悪な種族なんていて堪るか』なんて自分で反発しちゃって……

>>499
 499様、有難うございます。

>猫耳が居るのならどんなファンタジーにも喜んで。

 アイデアお借りしました。

>>504
 名無し三等兵様、有難うございます。

>旧版のプロトタイプの話も混ぜてありますね。

 はい、あっちこちから流用しました。

>黒い話ですが、善い事しかしていない国家などあるわけはありませんし、作用があれば反作用もありますし。

 旧版本編で帝國はさも救世主の様に振舞っていましたが、帝國の手も列強に負けず劣らず血に濡れていた、というお話です。

570 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/23(月) 14:38:39 ID:U1uACm8A0
>>505
>ジェノサイドしてしまえば植民者との摩擦も起きないし後々ナショナリズムによる独立運動も起きませんしね。

 おかげで後世、完全に内地と同化しました。

>多分シュベリンでの出来事が起こる前に併合した国々では(オークよりはマシとはいえ)似たり寄ったりな事やったんだろうなあ。

 この話を挿入したのは、政策転換するまでの帝國が如何に無慈悲だったか、という説明でもあります。
 ……何故、統治政策を巡って対立が起こったかを納得して頂ければ幸いです。
(無論、今村将軍も小沢提督も神州島での出来事は知りません。が、他地方での出来事を聞き知っていたのですよ)

>>506
 506様、有難うございます。

>今までの作品と作風が違いますね・・・・・
>読んでて胃が・・・

 改訂版では少し黒くしようかと旧版では有耶無耶にしていた部分を書いたのですが……確かに黒過ぎましたね。

>で、やっぱり気になりますね
>誰が食料を隠し、誰が報告書を編集したのか

 これは現在でも不明のままです。

>>507
>そういえば、帝国はオークに保護された村人達の事を知っていたのだろうか?

 “上”と“下”は知りません。が、“中”の一部が知り……

571 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/23(月) 14:39:33 ID:U1uACm8A0
>>508
 508様、有難うございます。

>黒幕はダークエルフなのか?しかし生命を賭して他国の機密情報を持ち出そう
>としたり、惚れた軍人さんに、好かれようと努力しているダークエルフ達とか
>なりの隔たりを感じる

 まあ、『色々な人がいる』ということなのでしょうね。
 あと上でも書きましたが、黒幕は現在でも不明です。

>>509、511〜520
 後世でも様々な説がありますからねえ。
 が、政府やマスコミ、学会からは完全に無視されていますし、臣民も全く知りません。


>>534
 534様、有難うございます。

>いやなんだ・・
>稲葉君 走 り ま く っ て
>ますなw

 それこそが彼の存在理由です(笑)

>>535
>こうですか?わかりません!

 御免なさい。書いたくせに何ですが、くろべえには尻尾は兎も角、イヌミミとネコミミの違いが今ひとつわかりません。
 ……ネコ耳の方が少し幅が広い?
(ミミは“垂れミミ”が一番、なくろべえでした)

572 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/23(月) 14:40:14 ID:U1uACm8A0
>>536
 536様、有難うございます。

>何をやっている稲葉ー!

 日々、萌えを探求しております。

>>537
 537様、有難うございます。

>しかし何故に猫耳娘が居ないのか

 犬娘もいませんしね。まあこっちは狼で代用できる(犬じゃないんですー)のですが、流石に猫を虎や豹で代替できないからなあ……

 狼が汎用性と量産性を兼ね備えたザクなら熊は汎用性と量産性を犠牲にしたパワー重視のグフ、豹は汎用性と量産性を犠牲にした機動力重視のドム、トラは高い汎用性を備える為に量産性を思いっきり犠牲にしたゲルググ……アレ? 一体ナンノハナシヲ?

>>538
 538様、有難うございます。

>なんとなく稲葉君も安定した生活を営めてそうで良かったです。

 こういったバカ話を書くのが当初の目的だったのですよ。

>そこに至るまでの過程も楽しみにしてますので、執筆頑張ってください。

 有難うございます。

>>539
>狐耳

 どうだろう? いるかなあ?

573 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/23(月) 14:41:39 ID:U1uACm8A0
>>540
 540様、有難うございます。

>公文書偽造犯からえらい出世でつな

 多分帝國をそれだけ満足させる程の代価を払ったのでしょう。

>>541
 541様、有難うございます。

>ネコ耳とイヌ耳がいないのは、ネコとイヌが人為的に作られた家畜っていうのがあるのかな?

 犬は“狼の成れの果て”としても猫は……う〜ん、非力過ぎたからかな?

>>542
>佐官担当軍属としての地位をもっていたりして。

 いえ、技術将校です。本人が『軍人の方がイイ!』って駄々捏ねましたからね。
 ……その後、即席も即席ですが軍人としての集中教育と訓練を受けさせられる羽目になって泣きを見る訳ですよ。

>>543
>コンピュータ開発60年の正解を現物+体系的知識で持っているのです。

 ……ホントはこのSSみたいにノンビリしてる暇、無いのですけどねえ。
 多分、企画書類とかの〆切り無視しまくってるんだろうなあ。

>>544
 狐耳は……狐耳は無いのか!

 不明です。ていうか決めてません。
 仮にいたとしてもかなりの少数派かと。

574 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/23(月) 14:42:24 ID:U1uACm8A0
>>545〜548
 縁談ですか……まあこの世界じゃあそろそろ結婚しても不思議では無いですからね。
 独身は男女共に有り得ないし。

>>550
>あと、熊っ娘なんかがいて抱きつかれたら、やっぱりベアーバッグになるんかな?(汗)

 本気でやられたら死にます、冗談抜きに。

>>549、551〜555
>英語
 英語、独語、仏語、露語、支那語に関しては教育続行です。膨大な資料の原書が読めなくなっちゃいますから。
 英語は第一語学(必修)、独語以下は第二語学(上級学校で選択)です。
 頻度は英語>>(越えられない壁)>>独語>>仏語>>(越えられない壁)>>その他かな?
 でも「その他」の露語と支那語も陸軍からのPUSHがありますからねえ。
 
>>556
 猫じゃらし様、有難うございます。

>マケドニアは印象良くなかったのですが何故か急上昇ですよ。

 つい、趣味が出てしまいました(笑)

575 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/23(月) 14:42:56 ID:U1uACm8A0
>>558
>しかしマケドニア、建国40年そこそこなのに、もう「秘宝」が出来てるのかw

 だからこそ、です。きっと力入れて買い漁ってるのでしょう。

>このお姫様が、本編に肩書きが出てきた「王」の孫だとすると、
>マケドニア王のカテゴリーは「黄金熊」ってことになるのかな。
>なんかレアそうな種族だなぁ。

 はい、その通りです。
 「黄金熊」は文字通り金毛の熊で、獣人のクセに魔法も使えます。
 言わば熊族の最上位種ですね。レア中のレアです。

>もしかすると外伝の獣人少年が養子に入って、名前が出てきてた王太子になったのかもしれないけど。

 彼は黄金は黄金でも「黄金狼」、狼族の最上位種です。
 ……で、狼族は獣人の中では最大個体数を誇るの訳なのですよ(謎)

>>564
 564様、有難うございます。

>こうやってみると獣人も色々あるんだなぁ

 様々な用途に合わせ、幅広く御用意させて頂いております。
 え? 犬? 猫? ……お客さん、冷やかしなら帰ってくんな。
 ウチじゃ愛玩動物は扱ってないよ!

 ……失礼しました。何やら電波を受信したもので。
 ちなみに混血しても所謂『合いの子』は出来ません。
 父か母、どちらかの性質を受け継ぎます。
 ま、受け継がなかった方もしっかり遺伝子には刻み込んでいるのですが。

576 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 17:13:52 ID:iDGoLetk0
黄金熊
尻尾が長くて、利口で器用な熊?
・・・
・・


こんがりキツネ色のラスカル!!

577 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 18:10:09 ID:83/wJNuE0
ふむ、野生生物ならばOKという事は、カピバラとか、パンダとかもありか。
肉食カンガルーの獣人とか。

578 名前:長崎県人:2007/04/23(月) 18:48:05 ID:2MxH4A12O
同志>>557にささぐ

579 名前:長崎県人:2007/04/23(月) 18:49:26 ID:2MxH4A12O
1944年


この島に、灯台を造る。

悪天候に苛まれた後、乗せられた海防艦の甲板から降り立った俺は途方に暮れた。平地は嵐があれば波が被るような所にあり、切り立った崖のような岩山が聳え立っている
確かに、他の島よりも海にとびでているし、岩で島が出来ているせいか、標高も他の島より確保されている

ミュール島灯台守に任ず

水路部から発行された命令書にはそう書かれ、水路部を統括している海軍大臣の判(副官が捺したものだろうが)を捺されて、今、自分の手元にある

『あそこは灯台セットで灯台を組んだはいいが、前任者がいきなり喘息に倒れてな』
乗せられた海防艦の艦長はすまなそうに言っていた
つまり、造ってからしばらく放置してたわけだ。大陸に展開した根拠地隊からは少ない人員を分けて、島に残していくわけにもいかない。だからこそ、いきなり本土から俺が呼ばれた訳、か
『食料とかは、週一で近隣部落の人達がもってくれることになってたな』
そう聞いている。ただ、一人だけで灯台守をやっていくのは精神的に参る。という訳で、部落の人がやってくる時には、しかるべき場所から女を連れてくるようになっている・・・給金から天引きなのが、なんとも・・・だが

580 名前:長崎県人:2007/04/23(月) 18:51:04 ID:2MxH4A12O
そうそう、言い忘れたが、灯台セットというのは、広大な海洋を航海することになった帝國海軍が、その航路の安全のために作り出した苦肉の一策である
その内訳は、櫓と居住施設(別名兎小屋)用の木材、周辺海域へ注意を促すための無線機と電池多数、灯となるランプ、そのランプを守るガラス板四枚に、ぜんまい式の反射板(光を回らせるわけだ)という風に、簡易化、軽量、量産を目的として、生産され、必要とあらばすぐに灯台を設置できるよう、5500トン級軽巡を改装した根拠地統制艦に各四基は搭載されて、各地で簡易灯台設置に活躍している

『一年はここに居る訳だよな・・・』
すめば都となってくれるだろうか?
『・・・よし!やるか!』
自分だって海軍軍人、与えられた任務に邁進するだけだ。よく考えれば、灯台があるなしで周辺住人達は安全に漁が出来かだいぶ違ってくるし、座礁沈没した長崎丸の海難事故のような悲劇を未然に防ぐことの一助となれるのだ。ダレかねない任務ではあるが、誇りを持っていこう。俺は大日本帝國の海軍軍人なのだ
『先ずは、置かれたままの装備の確認だな!』
一時的にでも放置したならば、埃をかぶっていたりして不具合を起こしている可能性はけして少なくない

581 名前:長崎県人:2007/04/23(月) 18:53:05 ID:2MxH4A12O
問題は大ありだった
『貴様!部落の人間ではないな!何者だ!』
首元に突き付けられたモリのような柄付きの刃物。意気揚々と兎小屋のような居住施設に入った途端、足を引っ掛けられて転がされ、こんな事になっている
『この誇りある境界護りのヴィラ・スタンモーラの巣にこんな物を建てよって!』
どうしたものか・・・倒れたままで相手が何者かすらよく見ていない。声からして女のようだが
『わ、私は大日本帝國海軍中尉、の姫島勝(ひめしま・すぐる)だ!灯台守として赴任した』
『灯台?大日本?何だそれは?』
『聞きたいのはこっちだ!貴様、一体何者だ!?境界護り?そんな物は聞かされておらんぞ!』

カサカサカサ

クモが床を歩いている・・・これでは埒があかない
『っ!貴様、動くなっ!キャアアアアッ!!!』
クモを掴んで投げつけ、怯んだ所を、首元に突き付けられたモリのような物を払って立ち上がり、距離をとる


・・・そしてその姿に見とれた


バサッバサッバサッ

涙を潤ませつつ、羽根をふるわせてクモを払い、怒り顔でこちらを見る女・・・まるで、天使のようだった
『貴様ぁっ!よくも私に恥を!』


境界護りと灯台守の物語はここからはじま、る?

582 名前:長崎県人:2007/04/23(月) 18:56:53 ID:2MxH4A12O
全部>>557がウリのツボを押すからいけないニダ。ウ、ウリは悪くないニダ!


はい、すいません私が悪いんです、巣に戻りますm(__)m

583 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 19:04:52 ID:YpZRw2zs0
ちょっと待って欲しい

>ケモノミミがリアルで存在するため、“そーいった趣味”が存在しない

この理屈だと耳フェチや足フェチなどの存在を否定しかねないのではないだろうか?

584 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 19:20:27 ID:xsS49mlo0
>>582
羽根娘乙です。
連絡の行き違いって怖いよねw

>>583
それ以前にロイ少年を囲っていたエロイ人の趣味がうわなんだやめrfれあhて

585 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/23(月) 22:02:43 ID:pWXiDBTQ0
長崎県人さん、投下乙です。
ところで、若い尉官ってエリートですよね?
灯台守なんて仕事もやるのでしょうか?

>>584
囲ってない、囲ってない(苦笑)。
囲っていたのは女だけですって。

586 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/23(月) 23:40:33 ID:sOVzuWFs0
そういえば、本家の第一章から全部読んでいるが、有翼人種がでてきた話って
ほとんど無いんだよな。。。 

1だおー氏ぐらいだったかな?

587 名前:557:2007/04/24(火) 01:35:42 ID:l9V4ccXk0
>>582
羽っ娘はドジッ娘でツンキャラですか(ハァハァ

イイゾ,オレサマ悪人……ムッハーーーーーッ!!

588 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/24(火) 18:07:52 ID:xsS49mlo0
>>585
ちょっと思い込みがあったようですね。
確認してみたら違ってました色々な人にスマソ。
中世世界だと男色は比較的ポピュラーだと思ってましたから。

しっかしなあ、この獣人姿かたち設定だと件の町長の気持ちがわからんでもないと言うか
羨ましいと言うか替わって欲しいと言うか同志って言うか。
なんでもないです。

589 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/24(火) 18:27:59 ID:vbFJDZqc0

>>575
くろべえさん、遅ればせながら投下乙です。

>上位種族、黄金狼、黄金熊

なんっって心躍る設定でしょうかw
どうも「国」が出来たことによってそれまで個別に身を隠していた獣人たちが集団になり、
種族ごとの派閥みたいなのが出来てもおかしくないですね、これ。
あ、その辺は是非とも物語の中で読ませていただきたいので、お答えいただかなくとも結構ですw

ただ、これはちょっと教えていただきたいのですが、
転移男の時代では、やはり獣人と帝國人との結婚というのは、あまり褒められたことじゃないのでしょうか?

590 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/24(火) 19:53:59 ID:PrNDtOqYO
>>588
>男色
ポピュラーではあるが主流ではなく、支配階級の嗜みって感じだな
宗主国に跡取り預ける人質制度の影響も大きいだろうな

591 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/25(水) 04:41:37 ID:4ePyWikw0
黄金熊と聞くと、どうしても半万年後にはアレになってそうでいやな俺w

592 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/25(水) 04:48:59 ID:6a9L7hvk0
熊から生まれたという神話を持つ
あの国の人々のことですな。

今のうちに全滅させた方がいいかもしれないorz

593 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/25(水) 08:20:46 ID:bJFcWGuQ0
>>592
黒い山葡萄原人と交配させなきゃ大丈夫w

ヒトモドキといわれるような存在にはならんだろうてw

594 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/25(水) 10:07:38 ID:lKa/s3jg0
>>591
後にF世界全土にその名を轟かす名将(迷将?)
キャプテン・ハーングックの祖となる・・・

595 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/25(水) 10:21:32 ID:U1uACm8A0
 長崎県人様、投下乙です。
 鳥人ですか、便利そうだなあ。軍に真っ先に勧誘されそうだ。

>>576
 長毛種の熊ですね。尻尾と耳が犬型ですので、見た目はあまり熊っぽく無いですが。

>>577
 狼を筆頭とした少数のメジャー種族が獣人の九割以上を占め、残りに多種多様なマイナー種族が犇いている――そんな感じです。

>>583
>この理屈だと耳フェチや足フェチなどの存在を否定しかねないのではないだろうか?
 確かに……
 まあ、メジャーではない、ということでどうでしょ?

>>588
>この獣人姿かたち設定
 あ〜、これはあくまでジャンク設定です。本編では獣化しない限り普通の人間です。
 まあ獣化をしょっちゅうやってれば『ケモノミミと尻尾だけ出す』とか出来るでしょうが、この時期は皆正体隠してますからねえ……
 そういう趣味だとすれば、きっと件の町長は娘達に何度も練習させたのでしょうね。『出来なきゃメシ抜き!』とか。

 ジャンク設定では色々こじ付け、男は獣頭+尻尾、女は獣ミミ+尻尾としています。
 例えば『隠す必要が無くなった上、頻繁に獣化した為末端部は意識しない限りケモノ』とか『余り長くその姿の為、尻尾が無いとバランスがとり難い』とか……

>>589
 589様、有難うございます。

>転移男の時代では、やはり獣人と帝國人との結婚というのは、あまり褒められたことじゃないのでしょうか?

 “いい家”だけでなく、“しっかりした家”とかもそう考えるでしょうね。
 この時代、多くの帝國人が大陸に出て働いてはいますが、やはり帝國人女性と結婚するのが常識です。
 世間体とか色々ありますからね…… 史実の現代日本の様に『個人の自由』って大きな声で主張できないのですよ。
 まあ相手が大陸人でも、自分の家より数段いい所(相対的に見て)のお嬢さんなら別ですが……
 ただ結婚はしなくても、女を囲うことは『よくある話』です。

596 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/25(水) 18:06:58 ID:pp2ETwz20
確か熊は瞬発力などで虎に負けるけど、スタミナは比べ物にならなかったはずだから
熊系獣人は恐ろしく強いはず。トカゲもコモドオオトカゲなんかはマジで化け物じみた
スタミナを持ってる。

597 名前:589:2007/04/25(水) 18:48:13 ID:e7aE./Bc0
くろべえさん、ありがとうございます。
やっぱりそうですか。
でもまぁ、稲葉なら社会的地位はあるけど、
天涯孤独な上に超絶マイペースみたいだから問題はなさそうですねw

598 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/25(水) 18:50:58 ID:dVHABhLY0
>トカゲもコモドオオトカゲなんかはマジで化け物じみた
>スタミナを持ってる。
昔、コドモオオトカゲだと思って
「コドモでこれならオトナはどれだけでかいんだ!」と驚嘆した思い出が
地球防衛軍2の成体ソラスを見てよみがえりますた

599 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/25(水) 19:19:53 ID:xsS49mlo0
>>595
もちろんジャンク限定の設定であることは分かっていて書いた物でして
そこだけの話、ということで満足しておりますです。はい。

600 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/25(水) 23:07:45 ID:IcV1TLP.0
帝國の誇る情報工学の天才にして、高級技術将校殿ですか<転移男
で、偉い帝大の先生方が大衆食堂「まんぷく」まで足を運んで
教えを請うている光景を結構ご近所が目撃している・・・・

「うちの前に行き倒れてくれれば!」と臍を噛んでいる地元有力者
(年頃の娘有り)とかいるでしょうなぁ。

でも、そこまで凄い人材なら、陛下にお目通りできる「帝國園遊会」への
招待とか来そうで、下宿先の「まんぷく」の前に軍から高級車で迎えにきて・・・とか。

「いい人だし、下宿人ってことで一つ屋根の下で暮らしているけど身分違いだからね!」とか
要らんことを言うおばはんが確実にいると見た!

601 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/25(水) 23:23:47 ID:njlPJyHw0
> 要らんことを言うおばはんが確実にいると見た!
でも多分稲葉君はそういう空気読めなさそうだよね

602 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/25(水) 23:29:54 ID:pWXiDBTQ0
>>600
>「帝國園遊会」
陛下はこちらの世界と同じ明仁様(昭和8年生まれ)でしょうから、元の世界と同じ人物に出会った稲葉は感激、号泣してしまうかも。
それを見た周りの人は、陛下にお目通り出来たことに感激した、と勘違いするでしょうが。

603 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/26(木) 00:05:16 ID:8RNT3GbA0
え?昭和帝その頃めでご存命って設定だっけ?

604 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/26(木) 00:18:28 ID:PrNDtOqYO
明仁=今上天皇

605 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/26(木) 00:40:25 ID:srdotPU20
>“まんぷく”の住み込み店員から下宿人にランクアップ(?)した
ってのがあるから、客に毎日黒服の警護兼監視役がいる状況を回避する為に、
研究所用意させてそこで仕事してそうだな・・・

“まんぷく”には偉い先生方より、各種企業のスカウトが群れで着そうな気も・・・

606 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/26(木) 01:15:08 ID:lmbK/0mQ0
>>575
>ちなみに混血しても所謂『合いの子』は出来ません。
>父か母、どちらかの性質を受け継ぎます。

なんと!本物の獣人ライガーがプロレスデビューというのは無理なのですか?w
まぁ出来たとしても繁殖力が無くなりそうですが。


どーでもいいけど父がライオンで母がトラの合いの子がライガーで、父がトラで
母がライオンだとタイゴンと言うそうな。

607 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/26(木) 01:22:09 ID:F0.SoTH60
レオポンは豹と何だっけか

608 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/26(木) 01:37:18 ID:njlPJyHw0
レオじゃねーの

609 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/26(木) 04:40:54 ID:e7aE./Bc0
>>603
転移男の一話目に平成19年って記述があったから
このお話でも既に昭和帝は崩御なさってるんじゃないでしょうか。
でも、一般人のシャオにも広まるくらいに一分野のスペシャリストとして認知されてるのなら
園遊会かはともかく、お偉いさんのところには普通に呼ばれてるかもしれませんね。
貴重な「あのときアメリカと闘っていればどうなっていたか」の証人でもありますから。
かなりディープな軍ヲタみたいだから、大戦の経緯から敗因から細密に説明できるでしょうし。

たぶん話を聞いて、特に転移時代から生存してるお偉いさんとかは転移出来たことを幸運に思うだろうなぁ。
中朝露と物理的に縁が切れた事とかもw

610 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/26(木) 07:45:43 ID:4ePyWikw0
>>601
常識とかしがらみとか色々ぶっちぎってシャオ(犬耳ケモノっ娘とただのお嬢様じゃ勝負にならんのですよ!)
と結婚して、あまりの空気の読めなさに黒部男爵の再来とか言われたりしてなw

611 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 07:19:46 ID:oVuuhHNoO
>>602
でも皇后様は美智子様じゃないんだよね?
ダークエルフの御后様は老化が遅いから美人だろうな

612 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 07:28:42 ID:CNraRg7U0
>『オークは邪悪な獣』という考えに異を唱えることは許されないでしょう。
>あらゆる国の王、宗教、民……全員が全員『共犯者』なのです。新旧の差はあれど。

ふと思ったのですが、<平成日本召還> ◆OZummJyEIoさんの平成日本の研究者ならば、
真面目に学術的に、オークの研究をすることがあれば、真実に近い所までいけるかも?
そんな事考えてしまいました。あそこの日本も今それどころではないから、数年後の事だろうけど。
オークに保護された村人達の事も、オークの集落の事も隠蔽された物を発見したら、
自衛隊員たちは何と思うのだろうか?(オークの集落跡などは、山奥の物は残る可能性あり?)
あの話だと、現代日本人の感覚で考えやすいんですよね。

613 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 07:39:49 ID:Iwt8f3UE0
>>611
え、皇族でダークエルフとご婚約されたのって皇太子殿下だったっけ?
自分はレムリア総督あたりだと思ってた。

ああ、はやくカナ姫の来日、天皇陛下に謁見エピソードが読みたいなぁ。
短編のホラズムの話を見るに、かなり初期に来日してるみたいだし、凄い楽しみ。
異国で王にまで成り上がった同胞の孫娘のお姫様(しかもローティーン)なんて、めちゃくちゃ日本人好みだものねw
街に鈴なりになって日の丸とシュヴェリン国旗(あるのかな?)を振りまくる群衆テラモエスw

614 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 08:32:04 ID:bJFcWGuQ0
>>611
いいやストーリー上の必要性が無い限り
皇后陛下は美智子様だろ そこだけ史実を変える必要性無いし

Dエルフ王家に婿入り(皇族外)になったのは
作中の昭和帝の子供達のなかでも第二皇位継承権を持つ皇太子殿下の弟殿下な

615 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 11:21:02 ID:83/wJNuE0
>シュヴェリン国旗(あるのかな?)

日輪が国旗のどこかに意匠として組み込まれている可能性は高いかも。
なんと言うか滅茶苦茶派手な日の丸?

616 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:36:27 ID:U1uACm8A0
 どうも、カナ姫と前後逆になりましたが『転移男』小ネタ第二弾です。
 頭の切り替えがまだ出来てないもので……ごめんなさい。

 前後編に分かれてます。この後カナ姫→改訂版と進んでいきますので。

617 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:37:07 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 ジャンク編1「転移男」小ネタ2前編

「ねっ、ねっ、学校終わったらさ、どこか遊びに行こうよっ!」

「うん……」

 折角の友人の言葉だが、シャオは悪いと思いつつも軽く聞き流した。
 今は眠くてそれどころでは無いのだ。
 一瞬だけお義理程度にミミを立てるものの、また直ぐに伏せてしまう。

 が、友人達はそれがいたくお気に召さなかったらしい。

「シャオちゃんノリ悪〜い!」

「え〜い、友情より睡眠をとるか?」

 と、集団でシャオを擽りまくる。
 ……これは堪らない。

「わ、わかった、判りましたから……って、尻尾の毛を抜くのヤメテ――っ!?」

 卒業を間近に控えた三月のある登校日。
 修業過程も終え、既に全員の進路が決定していることもあり、最早友人に会いに来ている様なもの、一足早いクラス会のノリだ。
 誰もが将来のことを話し合ったり、友人達との別れを悲しんだり再会を誓ったりしている。結構騒がしい。
 普段は口喧しい先生達も流石にこの時ばかりは黙認――羽目を外し過ぎない限り――だ。となれば楽しまなきゃ損、ということなのだろう。
 ……が、何事にも“限度”というもの存在する。

 ガラッ!

618 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:37:45 ID:U1uACm8A0
「喧しいぞっ!」

 ガヤガヤガヤ……ピタッ

 シャオの悲鳴を聞きつけ、途端に見回りの先生が駆けつけて指導を行う。
 と、あれ程騒がしかった教室内が途端に鎮まりかえった。

「級長!」

「はいっ!」

 真面目そうな生徒が慌てて立ち上がる。
 女子部――この世界では一般的に男女別学級――なので当然女生徒だ。

「しっかり指導せんか!」

「も、申し訳ありません!」

 級長、平謝りである。

「次はないぞ!」

「はいっ!」

 ピシャッ!

 憤然と去っていく先生を、級長は最敬礼で見送った。
 ……そして先生が去った後、ゆっくりとシャオ達の方に振り返る。

「……あなた達?」

「「「ご、御免なさい級長、みんな……」」」

619 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:38:18 ID:U1uACm8A0
 流石にあれは不味かった。
 シャオ達は小さくなって反省する。

「……ま、済んだ事は仕方が無いわ。卒業までもう日も無いし、反省したなら良しとしましょう」

 級長は溜息一つ吐くとそう言い、今度は皆に向かって『はいはい、これでこの件は終わりよ!』と宣言した。
 その言葉で皆それぞれの会話を再開――心なしか先程より気持ち小さな声で――する。

 無論、シャオ達も。

「ううう…… 酷いよ、みんな……」

 シャオは自分のフサフサの尻尾を抱え込み、なでながら訴えた。
 ……余程痛かったのだろう、涙目だ。

「ごめんごめん、こう丁度いい所にあってさ〜 つい……」

「『つい』で毛を毟られたら堪らないよ……」

「でもシャオちゃんさ〜 確か小学生の時、『自分の尻尾の毛で筆を作ろうとした』よね?」

「ああっ!? それを言っちゃ駄目〜〜!!」

 若かりし日の過ちをバラされ、シャオは慌てて友人英子の口を塞ぐ。
 ……いや、何、ほんの出来心だったのだ。
 『毛筆の毛が獣毛から作られている』と学校で教わり、つい……

620 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:38:49 ID:U1uACm8A0
「しかしシャオ、何でそんなに眠いの?」

 幾らヒマだからって、夜更かしは美容に悪いわよ、と今度は友人美子。

「朝方まで代筆やってたのよ……」

 だから昨夜ほとんど寝てないんです、とシャオは伸びをしつつ答える。
 狼のクセにまるで猫の様な伸びだ。

「代筆? お父さんの?」

「稲葉さん……ううん、下宿の人のお仕事」

 シャオは昨晩のことを振り返った。





――――昨晩、“まんぷく”稲葉の部屋。

『あ゛――っ! もう、やってられるか畜生!!』

 そう叫ぶと稲葉は辞書を放り投げ、寝っ転がった。
 明日までに提出しなければならない報告書を作成していたのだが、マトモに字を書くなど高校以来のこと、直ぐに根を上げてしまう。

『こんなのパソコンなら一発なのに……』

 チマチマ辞書を引くのも面倒臭いし、慣れない長文書いて手も痛い。
 ……パソコン、売るんじゃなかった。

621 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:39:20 ID:U1uACm8A0
 この世界にもパソコンがあるが、やはりアルファベットと数字を入力する方式だ。
 何故かと言えばコンピュータ開発時に限られた処理能力を有効に活用する為、表示や入力方式を思いっ切り簡略化したからである。
 コンピュータを扱う人間は専門教育を受けた技術者、ならば文字はアルファベットと数字のみ、後は点と線があればそれで事足りる。後の足りない分は自分の脳内で補え――というステキな“プロフェッショナル思考”って奴だ。ま、現実を考えれば当然の選択ではあったのだが。
 とにかくこれが全ての基礎となっている為、当然パソコンも入力方式はアルファベットと数字だ。御蔭で素人には『何がなんだか』って奴で、これが普及の大きな障害になっていることは否定できないだろう。
 最近では技術も進み、表示も大分改善されてはいるのだが……

 ……そういや、帝國語ワープロソフトってあるのか? 平仮名片仮名はありそうだけど漢字は微妙だ。あってもタブレット方式だったりして……シャレにならね〜〜
 仮にあっても8ビット級のCPUじゃあ書類作成はキツイよなあ…… でも16ビット級以上はミニコンピュータ位にしか載って無いだろうしなあ……
 まあ手書きよりはマシだから、今度買って作るか? もしかしたら16ビット級パソコン売ってるかもしれないし。

 そんな現実逃避的なことを考えていると、襖の外からシャオの声が聞こえてきた。

『稲葉さん、御苦労様です』

『ああ、有難う』

 シャオが持ってきてくれたお茶を飲み、なんとか気分を落ち着ける。

『お仕事、大変ですね』

622 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:39:53 ID:U1uACm8A0
 ……どうやらシャオには書類仕事が珍しいらしく、気になって仕方が無い様だ。
 お茶を手に何度も部屋を訪れては興味深そうに稲葉の仕事姿を見る。

『いや〜仕事自体はそうでも無いんだけどさー 俺、字書くのキライでねー』

『…………』

 ぶっちゃけ、『大卒云々』以前に社会人の言うセリフでは無かった。

『今までは機械に打ち込んで書いてたからね、手書きじゃツライんだ』

 ……ダメダメである。

『機械って、タイプライターですか?』

 シャオは首を捻った。
 アレはかなりの熟練が要る。使いこなせたらそれだけで就職出きる位だ。
 が、これはどちらかと言えば女の技術で男がやるものではない。
 ……矢張り口述筆記だろうか?

『うんにゃ、もっとパッパッと楽に出来るヤツ』

 と言っても判らないだろうなあ〜、と稲葉は首を振る。
 子供扱いされた、と感じたシャオは如何にも不満そうだ。

『む〜? あっ、ワープロですね!? 知ってますよ! TVドラマで見ましたから!』

 得意気に答えるシャオ。
 一方の稲葉はその答えを聞き、顔を輝かせた。

623 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:40:33 ID:U1uACm8A0
『ワープロ! そうか、その手があったか!』

 その存在をすっかり忘れてたよ、と稲葉。
 そして『これで手書きとおさらば〜』と踊り出す。

 この世界でもワープロは既に存在し、主に大企業の間に普及し始めている。
 ……が、ワープロは登場してまだ3年程しか経っていない最新鋭の電子機器である。当然高い、物凄く高い。(ついでにゴツイ)
 低価格の普及機なんてものがある筈もなく高級車並のお値段だ。具体的には安くて数万圓、高いものなら10万圓以上する。
(ちなみにこの世界の物価は稲葉が元の世界の1/100程度)

『でも、高いんじゃあ?』

 シャオが心配する。
 値段は知らないが、TVで見たワープロは机と一体化していて凄く高そうだった。

『ま、そこら辺は何とかするさ』

 値段は知らんが何とか成るだろう。
 具体的には軍にタカる、必要経費と主張してタカるのだ。

『はあ…… でも何れにせよ、今夜は手書きでやらなきゃいけないですね?』

『そ……そうだった……orz』

 当たり前のことだが指摘されて初めて気付き、稲葉は途端に意気消沈した。

 ヒラリ。

624 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:41:04 ID:U1uACm8A0
 とその時、一枚の紙がシャオの目の前に落ちる。

『稲葉さん、書類落ちましたよ……ってコレ何ですか!? 暗号ですか!?」

 判読不能の文字列――象形文字から漢字に進化中?――を前に、シャオは唖然とする。

『いや、普通の帝國語だぞ?』

『え〜と、ワザと汚く読めない様にしてる……のでは無いようですね』

 医師はカルテを書く際にワザと汚く書く、という話を聞いたことがあるが、どうやらこれは“素”の様だ。
 シャオは稲葉にある事実を指摘した。

『コレ、多分誰にも読めませんよ』

『マジですかっ!? ……書き直しorz』

『……私が代筆しましょうか?』

 更に一層深く落ち込む稲葉を見かね、遂言ってしまう。
 無論、稲葉は断るだろうと思っており、単なる慰め以外の何者でも無い。
 ……が、甘かった。相手は“あの”稲葉なのだ。

 キュピーン!

 稲葉は目を光らせると逃がさない様微妙に体の位置を変え、シャオの手を握る。

『有難う! お願いするよ!』

625 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:41:39 ID:U1uACm8A0
『ええっ!? 本気ですか!?』

『本気も本気さ! さっ、レッツトライッ!』

『あううううう…… 私のバカ……』

 合掌。





「――と、言う訳なの……」
                    
 欠伸を交えつつ話された内容に、友人達は唖然とする。

「……何と言うか、“ダメな人”だね」

「うん、“凄くダメな人”だ」

「普通、女の子に仕事手伝わす?」

「まあ、稲葉さんだから…… 悪い人じゃあないんだけど……」

「けど、“ダメな人”なのね?」

「あはは……」

 否定しきれず、笑って誤魔化す。

「で、何の書類だったの?」

626 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/27(金) 11:42:09 ID:U1uACm8A0
「良く判らないけど、『電算機がどうのこうの』って話」

「ふ〜ん? でも稲葉さんって、確かシャオちゃんちの住み込み店員さんじゃあ無かったっけ?」

「そうだったんだけど…… 本当は他にお仕事してて、『飽きたから逃げ出した』んだって……」

 で、捕まって職場に復帰したらしい。

「うわっ! ダメ過ぎる……」

「よくクビにならなかったね……」

「まあ、ね」

「その会社もいい加減だね」

「あはは……」

 『先が危なそ〜』と呆れる友人に、シャオはもう一度笑って誤魔化した。
 ……流石にこの流れで『会社じゃなくて国です』とは言えないではないか。


 そんな他愛も無いおしゃべりが、下校の時間まで続いたのだ。





 投下終了。

627 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 12:01:01 ID:Iwt8f3UE0
くろべえさん、投下乙です。

稲葉、シャオやロンには
「元々国の仕事をしていたのだが、嫌になって逃げ出した」って説明してるんですかね。
しかし、この分だとノートパソコンまで売っちゃったのかな?
自作一式は提供するだろうと思ってましたけど、ノーパソくらいは個人所持しておけば良かったのに。
確か液晶モニタも自作一式の中に含まれてましたから、研究素材は自作パーツだけで事足りますよね。
流石にそんなオーバーテクノロジーを民間の家に置いておくのは保安上難しいでしょうけど、
仕事場に置いておくとか。

そういや、この時代の帝國文字って記述した場合は現代日本と代わらないんでしょうか?
もしかして、昔のカナ主体と簡略前の漢字がそのままとかw

628 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 12:11:01 ID:fk249iDo0
パソコンえらい値で売れたんだろうなあ
一財産築けるくらいはしたってのは言いすぎかな

629 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 14:54:13 ID:pNDvPEHg0
本編とは平行世界みたいなものだし
そもそもネタばれになるかもしれないけど
本編に出てきたマケドニアの大将軍
こっちの世界ではどうなったんだろう

630 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 15:25:46 ID:njlPJyHw0
パソコン売ったのって帝国にですよね?
じゃあ身分の保証と引き換えに二束三文で買い叩かれてたりして(でも気づかない

631 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 16:19:04 ID:FBozg71Y0
>>614
美智子様は平民出身だから華族制度が存続した場合、皇后になることはありえないと思う。
そもそも華族ですら皇后になれる資格を持った家は旧将軍家や御三家、摂関家や清華家といった御歴々だけでしたから。
李王家からの嫁入りすら(逆は〇)拒否する連中ですから平民なんぞもってのほかだと思います。まず宮内省も皇族会議も許可しないでしょう。
明治天皇の例を見るかぎり、女御、更衣、御息所といった所謂側室でも平民だと難しいと思われます。
どうしても史実通りにしたいなら何らかのそれっぽいこじつけ設定は不可欠だと思う。

>>627
ほぼ間違いなくそのままなんじゃないかな?GHQからの圧力もない訳だし。
国語審議会は戦前からありましたが無条件降伏してないから漢字全廃やら平仮名、片仮名全廃してローマ字表記にするなどというタワケた台詞も言わないだろうし。
ただ文語と口語の統一運動は明治時代からあったから平成の世ならある程度は改善されている可能性はある。

632 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 17:44:18 ID:KsVZtvS.O
>>631
そういう家の養女にするって手がありますが。
少なくとも武家の間では江戸時代からよく使われてた手なので、可能性としてはゼロではないはずです。

633 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 19:00:49 ID:kWQv3guE0
くろべえ殿、投下乙です。
このパソコンと稲葉は帝國にどういう影響を与えるんでしょうか?
特に稲葉の平成日本の思考は帝國人には刺激になるでしょうね。

634 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 19:17:37 ID:mSiubQ.I0
つうか並行世界の日本現代史を知り内ゲバや嫉妬や未練の争いが起こりそうw

635 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 19:58:07 ID:Aiv4ngQU0
稲葉が自分で会社つくれば、帝國版ビルゲイツになれるよな

636 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 21:26:12 ID:tIl0t7H6O
<<世界の富の半分を握る稲葉株式会社>>

637 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 22:07:16 ID:i4LwaN6g0
それって、くろべえさんのSS上で否定されているぞ
稲葉氏は、(へたれだけど)恥を知る漢なのですな。

でも、見た目はへたれ以外の何者でもないので、シャオちゃんは元より
お父さんも、時々帝大へ行っているのを、勉強・・・研究、もしかしたら
下働き・・・をやっていると思っており、よもや「帝大教授陣への講義」と
「知識の伝授」をやっている、その気になれば帝大学長をパシらせることも
可能な重要人物であるとは、一時期まで思ってもみなかったりする。
で、帝國園遊会へ招待されるような身分であることを知った旦那とシャオちゃんは!

638 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 22:15:07 ID:njlPJyHw0
ってかご近所さんは如何思ってるんだろうね
情けない行き倒れかと思ってたら帝大出の(情けない)トップエリート!
なのに厄介になってるのは父と年頃の娘さんの二人暮らしの家、しかも娘さん一家は獣人属だって言うんだから…

外堀は当人達の知らぬ間に埋まっちゃってるんじゃないの

639 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 22:19:55 ID:CQ3KIkms0
>稲葉氏は、(へたれだけど)恥を知る漢なのですな。

果たしていつまで元の状態でいられるかな?
最初のうちは白かったのが時が経つにつれて黒くなったという人間はごまんといるわけで

640 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 22:38:32 ID:Iwt8f3UE0
>>631
やっぱまだカナ書きですかね。
文語筆記は、現代日本人の稲葉には荷が重いでしょうね。

>>639
いったん公務員、それも軍人になったからには、
既に稲葉の知識は全て国の管理下にあると考えた方がいいんじゃないかな。
今更好き勝手な事はできんでしょ。

むしろ、国の支持で民生へのコンピュータ普及の為に、
自分の名前を出さずに家庭用ゲームソフトのコピー作成の命令を受けるかもしれないけど。

641 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/27(金) 23:06:34 ID:KU8QS5YM0
会社を作ってWindowsやMacのパチものを作って商売して大儲けというパターンよりも、
帝國製のOSのあまりのチープさにキレた稲葉氏が、自分で使うために自分でOSを作ってしまい、
しかもそれが研究者仲間を通じて静かに広がってゆき、
結果的に帝國製コンピュータの標準OSとなってしまうというパターンはありかも。

642 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 00:24:42 ID:KU8QS5YM0
今ふと思い浮かんだデムパ。


稲葉氏が何の気もなしに書いた二本のレポート。
「コンピュータウイルス 〜電算機に感染する電子の病原体とその防疫〜」
「暴露ウイルス 〜悪意あるコンピュータプログラムがもたらす情報漏洩〜」

その衝撃的な内容は、将来これが防諜上極めて重大な問題になることを理解した軍の研究者たちを震え上がらせ、
特高憲兵隊は、まさか将来こんなルートから軍事機密が漏洩する可能性があるのかと頭を抱え、
おまけにそのタイトルのせいか、なぜか防疫給水部にまでレポートが回ってしまい、
そちらでも「電算機が風邪をひくだと!いったい軍の研究所では何を研究しとるんだ!?」と騒然となる。

そして、パニックが一巡した頃、帝國軍のある電算機室では、
レポートのタイトルだけ読んで内容を理解したつもりになった責任者によって
次のような内容の紙が貼られることになったという。



「電算機に触れる前に手をよく洗うこと」



なお、最後のエピソードは、
コンピュータウイルスが初めて新聞の紙面を賑わせていた頃に、
とある企業であった実話だそうだ。

643 名前:名無し三等兵@F世界:2007/04/28(土) 00:42:10 ID:pWXiDBTQ0
>>642
投下乙です。なかなか面白いSSです。
オチで笑ってしまいました。

644 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 00:52:46 ID:5hseHfuM0
くろべえ氏、投下乙です。
パソコンの所有権は国に移っても稲葉氏がいないと分からないことが多いだろうから、結局縁は切れないのだろうなあ。

稲葉の持つ情報の重要性からすると、毎年最新のワープロ専用機をくれてやっても余裕で元がとれそうです。
初期のワープロ専用機でも単文節変換と単語登録はできるようで、かなり使えそうですね。キーボードはこちらの世界と違うのだろうけど。
延々と平成日本についてのレポートを書かないといけないんだろうけど、いつ終わるともしれないですね。

645 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 01:15:46 ID:5hseHfuM0
>>631
言文一致でも平成日本とは使える表現とか生きてる慣用句とか故事成語あたりにやや差がありそうですね。
旧かな旧漢字はまず確実と思うけど、文字コードのせいで使える漢字に制限はあるかも。

>>640
あちらでも公務員の兼業は不可なんでしょうかね。
そもそも副業やってる暇なんかなさそうだけど。本業だけで過労死しそう。

646 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 01:33:09 ID:X9DoCVGA0
「陸海軍漫画戦争」やらかした経験から「陸海軍電算遊戯戦争」も起こしそうな気もする。
陸軍がパンツァーフロントもどき出したら海軍はアフターバーナーもどき出したり。
ただやりすぎ抑える目的で大型筐体でしか出さなかったり、筐体のコントローラーわざと
重めにして身体鍛えるのを促したりとか。

647 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 01:49:52 ID:FBozg71Y0
>>632
養女で皇室に嫁いだ連中は皆女御、更衣もしくは後宮十二司の女官止まりです。
流石に皇后として立后した者はいません。大正天皇の実母、柳原愛子も典侍止まりです。中宮にすらなれませんでした。
ただ同じ理由で側室としてならば、養女戦術で可能性はあるかもしれません。
どうせ臣下に降ったF世界の王侯貴族連中が皇室へ怒涛の婚姻ラッシュを行うでしょうから側室制度復活も比較的容易いと思いますし。

>>645
>平成日本とは使える表現とか生きてる慣用句とか故事成語あたりにやや差がありそう
同感です。というか確実に違うでしょうね、漢字全廃目的とした当用漢字というステップを踏んでないわけですから。
と、言うより帝國イズナンバーワンですから。
もしかしたら英字やアラビア数字、ヘタすりゃ数学の方程式まで縦書き&右から左に書くようになってるかもしれない。
戦後日本語が横書きに限って左から右へ書くようになったのと逆のノリで。
なんか以外にありえそうな気がするのは私だけだろうか?

648 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 09:17:22 ID:lUmeIgxc0
>>646大戦略や鋼鉄の咆哮も売れると思うんだが

649 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 10:57:34 ID:5hseHfuM0
>>646
米陸軍はゲーム出してますね。海軍、空軍のもあるんだろうか。
PVやテレビCMもなかなか良い感じ。
日本でもあれくらいやってくれると……叩かれるんだろうな。orz

650 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 11:42:45 ID:DX1K1CvU0
>>646
陸軍ならメダル・オブ・オナーに抜刀突撃を追加した物の方が似合うのでは。

チハの横を三八を抱えて戦竜に突撃する?

651 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 12:51:36 ID:dxRUOHDc0
>646
開発予算を取る為に、「初等戦闘訓練用電子装置」なんてパット見た感じでは、
マトモなモノそうなタイトルで予算申請してそうですな

最初はあくまでも軍人専用のおもty・・じゃなくて訓練装置、途中から軍の広報用に一般公開&販売かな?
陸軍電算遊具販売促進中隊とか出てきたらなんかイヤだな・・・

652 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 13:05:34 ID:6ZfEORuo0
>「コンピュータウイルス 〜電算機に感染する電子の病原体とその防疫〜」
>「暴露ウイルス 〜悪意あるコンピュータプログラムがもたらす情報漏洩〜」

軍の電算網への進入と機密情報奪取攻防演習にて、稲葉氏が
オタク時代の「色々」を使って、場末の駐屯地にある型落ちの電算機
(いちおー、電算網には繋がっている)からあっさり成功。
それまで、稲葉氏を軽く見ていた軍中央電算所職員たちの面子を丸つぶれにした上
攻守を変えて、稲葉氏が防御にまわったら難攻不落になったりする。
その際、某国諜報組織が、あと一歩のところまで浸透していた陰謀を発見、
阻止と欺瞞情報を流すことにより、帝國のこの先十年における優位と安全を
ほぼ一人で達成。
民間には秘密にされたが、軍と国家中枢、そして皇室と、敵対国家群において
「帝國電子将軍」との秘匿名で、名が知れ渡り、特に敵対国家諜報機関では
「その人物特定」が最優先課題となる。

653 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 22:07:42 ID:njlPJyHw0
そういえばシャオが代筆してたけどあれは別に機密扱いじゃないの?
電算機=パソコンなんだろうからまだ世界のどこにも無い物についての書類なんじゃ?

654 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/28(土) 23:53:29 ID:k1Jz5JN60

いや、電算機あるぞ。というか、そんなの重要機密なのに代筆やらせるとは!っていうネタだと思うんだが…

655 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 00:40:02 ID:oVuuhHNoO
つか問題なのは任天堂がファミコンを開発してないかもしれないこt(ry

マイコンくらいはあるかもだからMr.Game&Watchやらはあるかもしれないが、
8ビット全盛じゃあファミコンが開発されるのも遠い話か?
もう皇紀2667だと言うのに・・・

656 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 02:57:02 ID:yq0ekbhk0
>>655

「気が付いた!」
「・・・・・・何にですか?」
「どうしてこんな簡単な事に気がつかなかったんだろう」
「・・・何がです?」
「ないんだったら、職権濫用して作ればいいんだ!」
「・・・だから、何をです?」
「ファミコンとスーファミとPCエンジンとサターンとドリキャスとPC98とネトゲとエロゲとFLASHアニメとコミケとニコ動画とWikipediaだよ!」
「・・・・・・。
 あー、とりあえず今は落ち着いてください」
「なんだよその反応。
 もうちょっと君も喜んでくれよこの発見を」
「・・・・・・。(両手を広げて後ろを振り返りつつ)
 ここは道端です・・・」

そこには、いい加減このイタい人にも慣れてきたご近所の皆様が・・・。

657 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 03:00:13 ID:njlPJyHw0
> いや、電算機あるぞ
いや、稲葉が書いたってんなら世間のものとはまったく別物なんじゃないの
T型フォードとプリウスって同じ車かもしれないけれど…って事

658 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 07:12:45 ID:5hseHfuM0
>>655
任天堂って、この世界じゃ花札くらいしかつくってないかも、と思ったらファミコンは83年なんですね。わりと古い。
そろそろ誰かが家庭用汎用ゲーム機を商品化しようと考える頃だとは思います。
こちらだと70年代後半には初期のアーケードゲームが出てるし。

659 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 07:20:01 ID:o.IrM9Js0
>>658
でもファミコンはパソコンをゲームだけの目的に使うために贅肉を削ぎ落とした機体だから
パソコン自体がある程度性能あってパソゲーユーザーが居ないと難しいかも。

つか、レトルト食品とか玩具以外に手を出していた影響で倒産してそうw

660 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 07:47:12 ID:5hseHfuM0
ファミコンのターゲットユーザーはそもそも小学生くらいだと思う。
ハードのコスト的にはこちらの物価で言って数万円程度の8ビットパソコンが出回る頃なら問題無いでしょう。

社会的にこちらの世界より反発が強いような気がするんで「学習にも使えます」みたいな売り方するかな。

661 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 08:04:40 ID:7um2nslU0
東北大学未来科学技術共同研究所 川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のファミコントレーニング

662 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 12:59:41 ID:wD35kphA0
>>659
この世界は帝國が標準だから、
逆に花札メーカとして世界を席巻しているかもしれんぞ

たしか、任天堂は子供が遊ぶ道具って事でファミコンとか頑丈に作ってたはずなんだけど、
こっちの世界だと、獣人の子供とかいるから設計する人大変そう・・・

663 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 13:32:56 ID:04nWV1u60
>>662
注意貼りに
「興奮しても獣化しないよう保護者の方が監督するように」みたいなのが貼られたり

664 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/29(日) 14:20:04 ID:U1uACm8A0
>>627
 627様、有難うございます。

>しかし、この分だとノートパソコンまで売っちゃったのかな?
 身包み全部剥がされました(笑)

>そういや、この時代の帝國文字って記述した場合は現代日本と代わらないんでしょうか?
 結構違います。けど、片仮名語とかも結構豊富にありますよ。
 ……この世界のもの、いちいち全部漢字にできませんし。

>>628
>パソコンえらい値で売れたんだろうなあ
 身包み全部剥がされて100万圓かも(笑)

>>629
>本編に出てきたマケドニアの大将軍
>こっちの世界ではどうなったんだろう
 こっちの世界では……決めてません。

>>630
>パソコン売ったのって帝国にですよね?
 です。正確には軍ですが、政府も噛んでます。

>>633
 633様、有難うございます。

>このパソコンと稲葉は帝國にどういう影響を与えるんでしょうか?
>特に稲葉の平成日本の思考は帝國人には刺激になるでしょうね。
 その点に関しては帝國が取捨選択します。
 その為の軍所属です。軍機ということで囲い込めますし、イザとなれば軍法会議(密室裁判)という手もありますから。

665 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/29(日) 14:20:59 ID:U1uACm8A0
>>634〜639
 本人がその気になっても政府が止めるでしょう。
 余りかき回されるのは好ましくないですからね。

>>641
 ぶっちゃけ、この世界のプログラム能力は侮れません。
 初期型とはいえイージス並の防空システムだって組み上げちゃうんですから。
 だから帝國が欲しいのは稲葉の知る未知の知識や発想であって、腕では無いのですよ。

>>642
 投稿乙です。
 果たして帝國はインターネットを開放するだろうか……

>>644
 644様、有難うございます。

>延々と平成日本についてのレポートを書かないといけないんだろうけど、いつ終わるともしれないですね。
 やはり口述筆記が一番……かな?
 買ったはいいけどやっぱり駄目で、シャオの寝不足が続くかも。

>>646
 この世界にもゲームセンターがありますが、『不良の溜まり場』というイメージなのですよ。
 コンピューターゲームはあまり良いイメージを持たれていません。

>>653
>そういえばシャオが代筆してたけどあれは別に機密扱いじゃないの?
 機密です。普通やりませんし、やらせません。
 ……多分、以後自宅での仕事は禁止されるでしょう。残業です。
(字でバレると思う)

666 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/29(日) 14:22:58 ID:U1uACm8A0
>>655〜661
>ファミコン
 上でもあります様に、コンピューターゲームには悪いイメージがありますからねえ。
 高価な玩具を子供に買う、というのも問題ですし。
 ……この世界はそういうの煩いからなあ。
 親も煩いが周りも煩い……

 あとこの世界、例の計画のせいで凄く大家族です。
 子供は三人が当たり前、四人五人の家も結構あります。
 二人だと『少ない!』 一人だと『はあ?』
 ゼロだと……『そんな産まず女、離婚しろ!』の世界です。

 シャオの家は母親が早く死んだし父親ももう年なので問題ありません。
 ……何より帝國人じゃなくて獣人ですからね。
 これが普通の帝國人の家なら、『母親無し』『一人っ子』で大減点、嫁の先が数段落ちるでしょう。
 ま、『父親無し』よりは百倍マシですけどね。

667 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/29(日) 14:23:43 ID:U1uACm8A0
>ハードのコスト的にはこちらの物価で言って数万円程度の8ビットパソコンが出回る頃なら問題無いでしょう。

 現在の最新型(発売されて無いが発表済)のピンキリ。


 超高性能個人用電算機“轟天号”遂に登場!
 その最上位機種“轟天号一型”の性能に迫る!!

 世界初の16ビット級中央演算処理装置(動作周波数4.5MHz)を搭載!
 16ビットの能力を活かす記憶装置も主記憶装置256KB(最大576KB)、映像記憶装置96KBと充実!
 色彩豊かなカラー8色表示(640x400ドット)
 大容量の8インチ磁気板用記憶媒体2基搭載

 平成19年8月発売!
 ……気になるお値段、17000圓ナリ。


 一家に一台! お買い得電算機“ハッピーコンピュータ”遂に登場!
 1350圓と従来の個人用電算機の半分以下という思い切った低価格を実現!!

 8ビット級中央演算処理装置(動作周波数4MHz)
 記憶装置も主記憶装置16KB(最大32KB)
 カラー2色(256ドット×192ドット)または4色(128×192ドット)表示

 平成19年6月発売!


 ちなみに1圓≒100円
 高卒(元の世界の大卒レベル)初任給は1800〜2000圓程度が相場?
 個人用電算機の相場は3000〜5000圓程度

「こんな性能にこんな大金出せるかっっ!」(稲葉談)

 *この設定は暫定的なものです

668 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 17:17:36 ID:tIl0t7H6O
>>667
月給とんでそれすかwwwww携帯みてぇwwww

669 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 18:59:19 ID:iNNiwMaU0
風潮的に帝國世界には、あまりテレビゲームとかは広まりそうにないですねぇ。
やっぱ子供は外で元気に遊ばなければならないっていう考えが史実の日本よりもっと強そうです。
女性の社会進出もそれほど進んで無さそうだし、結婚は見合いの比率が多そうですね。

そういや稲葉は技術将校だそうですが、月給は幾ら貰ってるんでしょうか。

670 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 19:46:07 ID:0GZN7ADA0
ふと思ったんだけど、
帝國の科学者達は、テレビ、ネット、カメラ、ミュージックプレイヤーが付いた
携帯電話機が1円(帝國の価値だと1銭)で売られてるって聞いても、
絶対に信じないんだろうな・・・

671 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 19:48:13 ID:KU8QS5YM0
レスどうもです。

>>665
>だから帝國が欲しいのは稲葉の知る未知の知識や発想であって、腕では無いのですよ。


なるほど。

よく考えてみれば、GUIインターフェースだの、
オブジェクト指向プログラミングだの、統合開発環境だの、RADツールだのといった、
コンピュータを便利にしたり、ソフト開発の効率を向上させるための
アーキテクチャや概念等は帝國にはまだなかったり、
あったとしてもまだよちよち歩きの段階でしょう。


あとハードウェア方面、例えばCPUに限ったとしても、RISCプロセッサ、
キャッシュメモリ、二次キャッシュ、三次キャッシュ、ライトバックキャッシュ、
分岐予測、アウト・オブ・オーダー実行、投機的実行、スーパースカラ、
パイプライン、レジスタリネーミング、ハイパースレッド等の、
高速化のための設計の概念は帝國のCPU開発にとっても有用でしょう。


>>667
意外と帝國の電算機メーカーも頑張っているような気がします。

16ビット機はPC-9801F2相当で、何倍も4倍ぐらい高いですが、
8ビット機の方はPC-6001相当で値段は1.5倍程度に押さえてありますね。
タイニーゼビウスぐらいなら動きそう。

ところで今ググってみて、あの伝説のタイニーゼビウスを
作ったのが当時小学生だったというのにびっくり。
(ソースによっては中学生というのもあるが、それでも凄い)

672 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 20:52:18 ID:X9DoCVGA0
ピンがPC-9801無印、キリがPC-8001相当すかwww
海外で争う相手がいないから進化遅れまくりだあー。
もうしばらくは軍需や機器制御用で引っ張るしかないってところかな。
(車ではハチロクとかシビックSiなどエンジン電子制御始まった頃だし。)

あと車→レースと考えて思いついたけどリノエアレースみたいのがやってないかな〜。
幾分かは良状態のままで払い下げる機体もあるだろうし。
無制限級でハ50搭載の震電とかハ74搭載の五式とか見てみたひ。

673 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 22:48:21 ID:CQ3KIkms0
ところで稲葉が召喚された世界の帝國には核兵器はあるんですか?


いやね、いまや薔薇色街道まっしぐら(?)の帝國のいるF世界に、
突如2007年4月末の中華人民共和国が召喚された、というお馬鹿なシチュ想像してたんですけど、
その場合核と核の運用手段無いと帝國やばいなと

674 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 22:54:27 ID:CNraRg7U0
>この世界にもゲームセンターがありますが、『不良の溜まり場』というイメージなのですよ。
>コンピューターゲームはあまり良いイメージを持たれていません。

こっちの世界でも、インベーダーが登場してからしばらくは、そんな認識だったような。
そういえば、小学生の頃は先生に、「あそこは不良の溜まり場だから行くな」と指導されたり、
補導員が巡回したりしていたっけ……こっそり行っていたけど(笑)
お子様でお金が無くても、他人がゲームをやっているのを、見るだけでも楽しかったっけ(遠い目)

それはともかく、ファミコンが出る前に、ブロック崩しのようなゲームが出たり(これも任天堂だったり)、
一般にTVゲームが普及するまでには、色々と前フリとか時間とかあったっけかな。

675 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 23:14:19 ID:YpZRw2zs0
例の計画ってなんでしたっけ? これは読み直すべきか…
しかし貧乏国ならともかく、帝國で子供3、4人が普通って言うのはどうなんだろう
今の世界では先進国は軒並み少子化が問題になってるし、個人的には現実的な数字じゃないような気がするんだが

676 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 23:20:53 ID:CNraRg7U0
あと、PC-88や98クラスのパソコンが使えるのなら、テトリスくらいならいけますね。
初期のテトリスは、インベーダーよりも、簡単なプログラムだったらしいですし。

ちなみに、テトリスが登場した頃に聞いた話ですが、ソ連のとある研究所での事
その研究所では、なぜか作業能率が落ちており、所長が現場に怒鳴り込んできた。
何故作業が遅れているのか!!と
現場を見ると、所員たちは研究員の一人がプログラムしたコンピュータゲームに熱中しており、
そのせいで、研究作業が中断しているという。
その事に所長は怒りつつ、試しにそのゲームをやってみて……すっかりはまってしまったとか(苦笑)
数ヵ月後、作業の遅れの責任を取らされて、所長は更迭されましたとさ。めでたしめでた……かな?

うろ覚えの話ですし、これが本当の話なのかどうかはわかりませんが、
帝國の現場でも、同じような事あるかも?

うちの父、某電力会社に勤めていたのですが、休憩時間とか、手が空いて暇な時、
フリーセルを、やっていたという話を聞いたことがありまして、ありうるかなと思ったり(苦笑)

677 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 23:22:01 ID:/p8AtPIM0
>>673
前スレの転移男書き始めの辺りで、帝國のF世界転移前を覚えてるお偉いさんが
万一元の世界に戻ったときの事を考えて核配備してるってくろべえさんが言ってました。
確か世界を五回滅ぼせる程度とか。
しかし、現状で同じ平成19年に戻ったらアメどころか中国にもボロ負けするでしょうな。
マナが無いから、それなりに軍事に融合させているだろう魔法技術も使えなくなるでしょうし。

678 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 23:26:56 ID:oVuuhHNoO
>>677
いや、元の世界に戻ることを前提にしているのなら
純粋に科学力だけで開発してるだろ

679 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 23:30:36 ID:/p8AtPIM0
核以外の軍事技術ですよ

680 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/29(日) 23:32:05 ID:/p8AtPIM0
ちなみにその核も、保持量はもちろん、テクノロジーの差から投下精度も段違いでしょうしね。

681 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 00:01:25 ID:ydhGYZgA0
核弾頭の命中精度は低くても、数と射程さえあれば抑止力として機能するでしょう。
あと、高度が上がるとマナが希薄になるとのことなんで、航空機は魔法技術に頼れないかも。

682 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 00:03:50 ID:5z9hHTYo0
稲葉って軍属じゃなくて技術将校ですよね・・・尉官ですか?佐官ですか?


稲葉なら 「君の階級を中佐にする」と言われても、「
ええっ!? 中佐・・・・・・出来れば大佐を・・・・・・ダメですか||orz なら少佐が良いです!」
って普通に言いそうだな〜w
(ワザワザ低い階級を望んだ為、何だコイツ!? と人事課の職員から変な目で見られてそうw)
それでいて尉官なら尉官で大尉を望む稲葉とかが普通に目に浮かぶw


あと、シャオちゃんが忘れてった弁当を仕事に行くついでに届ける、とか普通にやりそ〜w 
帝國人将校が獣人の娘の弁当を届けに来て、学校中パニック! とかw

683 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 00:42:33 ID:Hbi5p4nI0
>>681
核弾頭なら命中精度が、低い方がある意味、厄介なのでは?

684 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 00:58:16 ID:Pusv3SwY0
>>683
精度が低いとそれを補うために威力を上げる必要がある。
精度が高ければ最低限の威力で済み、弾頭数を増やしたり、コストを落としたりできる。

狙って当てられるなら狙って外すことが出来る、
狙って当てられないなら、数か威力かで補う必要がある。

685 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 01:07:55 ID:o.IrM9Js0
>>676
いや、テトリスって元々知能指数を計る一種の学力テストだから。
意外に面白かったので音楽つけてゲームにしたら大ヒットしたってやつ。

686 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 01:11:54 ID:83/wJNuE0
>帝國人将校が獣人の娘の弁当を届けに来て、学校中パニック! とかw

稲葉っちなら間違いなくやるっさ。
しかも軍服ばっちり着込んで階級章光らせた状態で。
空気を読めない男という通り名は伊達じゃない。

そしてにょろーんとなるシャオちゃん。

687 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/30(月) 05:50:01 ID:bDz7ZGZg0
くろべえ殿投下乙です

いやあ、これは上官も大変ですね。
空気読めないし帝國の常識ないし態度は一般臣民より悪いし。どこかに軟禁したほうがいいんじゃ…


>>560さま561さま 情報ありがとうございます

16発のメガトン核搭載とか28目標攻撃可能とかどちらが正しいのか良く分かりませんが碌でもないことだけは確かですね。
地球二週半というのは高空侵攻の場合の航続距離のようですね。

688 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/30(月) 05:50:56 ID:bDz7ZGZg0
投下開始

ユフ戦記外伝・奇跡の翼 2


部屋はさして大きな空間を持ち合わせていない。部屋の広い、狭いといったものは個人の主観的な評価であり、また同じ機能を持たされる他の部屋との相対的な評価である。
とするならばだ。前者はさておき、後者に関しては他の物と比較しなければ評価を下せないのだが、一介の中佐に過ぎない野中五郎にそのような芸当は不可能だ。
なんとなれば、帝國航空軍全体を統合・管制し得る指揮所は、ここ松代の地下にしか存在しないからだ。
よしんばこの国に予備の指揮所が存在するとしてもその存在は現に秘匿されるべきであり、そして軍首脳部と太いパイプを持つわけではない野中にそのよう機密事項が知らされるわけがない。
よそとの比較と言う点では、同業他社の皆様方が同じ物を拵えていることは確実視されている。が、その空間の詳細は当然伏せられているべきであり、身内の機密すら知らされていない彼に知るすべはない。
何といっても野中は中佐であり、部隊指揮官あるいは社会的な地位と言う点ではそれなりのものがあるが国家規模の事象に纏わる事柄に関しては全くコミットできない。
それが現在の帝國における中佐というものなのだ。

689 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/30(月) 05:51:28 ID:bDz7ZGZg0
厚着を着込んだ男達が慌しく動きたてるなか、自分の出番の来ない野中は部屋の正面(分厚い金属製の扉と正対する壁面)に設置された状況表示板を眺める。
彼が手持ち無沙汰であることを苦々しく思う人間はこの部屋には存在しない。
彼の出番がくるということ、換言すれば多くの帝國軍基地が蒸発ないしガラス質の土に覆われる中で残りの戦力を効率的に掻き集め、最後の攻撃部隊を造り上げるという仕事の出番は来ないほうが望ましいという点において全員の共通した見方が形成されているからだ。
北極を中心にした世界地図と帝國本土の拡大地図の上には無数の光点と記号が踊っており、動きのあるものの多くは北側に集中している。
が、その意味するところを述べる前に、そこにいたる過程を叙述する必要があるかもしれない。

経緯はこうだ。
昭和45年の末に元の世界に舞い戻った帝國だが、彼らを取り巻く政治的環境は転移前と一変していた。
まがりなりにも工業・経済大国としての体裁を整えてしまった帝國が自活するには膨大な資源を海外から運び込み、商品を売りつける必要がある。
が、資源を持つ国も市場も欧米の植民地であり、彼らは帝國の帰還を好ましく捉えられない。

690 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/30(月) 05:52:01 ID:bDz7ZGZg0
帝國は自らが必要とするものは全て製造できるから市場としての魅力を持ち合わせていない。
その上彼らの植民地市場に参入しようとする姿勢を見せるのだから外交が悉く失敗したのも当然と言えよう。
帝國も伊達や酔狂で国家を運営しているわけではないから、資源と市場獲得の為に直截な手段を講じた。東南アジアの植民地を煽動し独立の機運を高め、そこに介入を図る。
仏印での手痛い失敗の後、帝國には次のクーデターを支援する時間的余裕は残されていなかった。転移先で蓄えた資源備蓄は急速に目減りするのに対し、世界の資源地帯を押さえる欧米からは油の一滴も売ってもらえない。
46年5月、追い詰められた帝國は東南アジアへ進駐、同月22日に米国が報復措置としてフィリピン‐台湾‐沖縄のラインを潜水艦で封鎖。沖縄近海は帝國が消えていた間に米国の友邦たる中華民国の領海となっており、沖縄近海での米軍の作戦行動は正当性に裏付けられている、そんな主張を帝國が是認する筈もない。
潜水艦を3隻ほど血祭りに挙げると布哇から太平洋艦隊が来寇、聯合艦隊は稼動艦艇の4割と引き換えにこれを撃退。打つ手のなくなった米軍は意趣返しにとベーリング海で虎の子の熱核巡航誘導弾を搭載した帝國潜水艦を撃沈。
帝國無しで30年やってきた連中にとって帝國がどうなろうと失うものはない。孤立無援のなか、東南アジア進駐から6週間でもはや政治的解決が望めない段階にまで達して現在に至る、という訳だ。

691 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/30(月) 05:52:33 ID:bDz7ZGZg0
空中警戒機、各地の電探、そして衛星からの情報が整理されて状況表示板に反映されるが、その意味する内容は控えめに表現しても、なお深刻と云い得るものだ。
伝統的な敵味方の表示区分(青軍、赤軍といったやつだ)は、ここではなされていない。
赤と青で表示された記号は少なく大半は緑や紫、桃色や橙に黄色といったものだ。
無論、理由がある。

この地下室が航空軍を統合するための部屋であり、その本来の任務に専念するため雑事にとらわれないような配慮がなされている、というのが表面的な説明。
そして公にはされない、それゆえに説得力を持つ説明によれば『一つの指揮所で陸海空の全軍を統合するだけの技術がない』ということと、『空軍は空軍以外のことに口を出すな』というまことに官僚的な発想の帰結であるとされている。
経緯はともかく、状況表示盤には航空軍の攻撃部隊が青で、合衆国のそれは赤で表示されている。航空軍は核兵器で敵に打撃を加えるか、本土防空という役割しか与えられていないから、それは総て核兵器を搭載した(或いはしていると思われる)部隊である。
それ以外は脅威度と情報の信憑性という篩にかけられ大人しい色で表示されている。

全軍が最高度の警戒態勢をとるように指示されてから40時間、青色の記号は北極海付近と太平洋方面で待機している。時折空中給油や基地に戻る機があるが、それでも常時150機以上が侵攻開始地点付近で待機してある。この数字は航空軍が保有する長距離攻撃機の3割(つまり同時オンステージ可能な全戦力)に匹敵するから、その意味するところは全面攻撃の瀬戸際ということだ。

692 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/30(月) 05:53:07 ID:bDz7ZGZg0
合衆国の部隊も同様の態勢をとっており、双方の搭載兵装が熱核兵器のみであるといえば状況がわかると言うものだ。
このにらみ合いに終止符を打つとすれば、政治的に決着がつくか、無茶な警戒態勢のお陰で両空軍の稼働率が極端に低下するか、はたまたどちらか(もしくは双方)が壊滅的な打撃を受けたときだろう。
最初の選択肢が絶望的であり、帝國が航空打撃力を失えば核投射能力を失うのに比べて米軍が代替手段を保有していることに鑑みれば三番目の選択肢の蓋然性が増大する。

第7から第11監視対象に動きがあった、という管制員の言葉につられて手空きの人間が状況板に眼を遣るとミッドウェー西で待機していた米軍の大型機がこれまでと違う行動をとりつつある。それに呼応するようにアラスカ方面の米軍も動き出す、すべて赤で示された部隊だ。
基地に戻ろうというのではない。分散しながら帝國本土への進路をとりつつある。
よくやる様に防空体制を乱すために誘っているのか、それとも先制攻撃なのか判然としないが、上層部は航空軍に全攻撃機と給油機を出撃させるよう指示を飛ばす。
ローテーションを崩して出撃させるということは稼働率がガタ落ちして以後の警戒態勢はとれなくなることに直結するがもはや誰も気にしない。
航空基地が蒸発しようとするなかで(少なくとも上層部は米軍の意図をそう捉えた)、そんなものに何の意味があるというのだ?

693 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/30(月) 05:53:43 ID:bDz7ZGZg0
すべてが目まぐるしい勢いで動いてゆく。
ドイツに中枢を抑えられて大した力を持たないソ連の上空から(あるいは北太平洋から)アラスカを目指す部隊と西海岸や太平洋上の航空基地を目指す部隊。
First Strikeを見舞う彼らの後を緊急離陸した部隊が追い、アラスカ沖からは機動部隊から護衛戦闘機と給油機が飛び立つ。
入れ替わりに赤軍攻撃部隊が帝國防空圏内に侵入しようとする。
双方の攻撃部隊は電探を避けようと低空進入するが空中警戒機と艦船部隊に捕捉され、迎撃機が待ち受ける中での進撃を余儀なくされる。

青軍は戦力を急速に削られていく。北海道、或いは小笠原辺りから出撃して米国本土を目指すのに比べて赤軍はミッドウェーやアラスカといった帝國本土近郊から攻撃を加えられる。この差は大きい。実戦に入るまでの警戒待機や護衛部隊、給油機の負担が軽減されるからだ。対して長躯進撃する青軍は長時間の警戒待機が祟って充分な護衛も給油機も付けられない。
北から侵攻した90機の第一次攻撃隊は、3つの電探基地と4つの航空基地を叩いただけでそれ以上の侵攻は不可能になった。西海岸を目指した攻撃隊も似たような状況であり、目ぼしい戦果と言えば北太平洋上の赤軍根拠地を無力化したということだけ。
防空網に第二派を流し込めるだけの穴を開けられなかった青軍に比べて赤軍はそれなりの働きを見せている。アラスカを飛び立った120機の攻撃隊はほぼ同数の護衛と共に進撃し、8割という全面核戦争の第一波としては奇跡的な損害率に抑えて北の大地に200発程度の熱核弾頭を見舞った。
太平洋の戦いは青軍と似たような状況であり(つまり攻撃隊の全滅と引き換えに基地機能を停止させた)可もなく不可もなくといったところ。

694 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/30(月) 05:54:21 ID:bDz7ZGZg0
第二波は、青軍と赤軍とでさらに大きな差がついた。
アラスカとカナダの防空網に決定的な損害を与えられなかった青軍が米国本土に送り込むことができた攻撃機はわずか8機、そのうち巡航弾発射前に撃墜されたもの6機。2機で合計16発の誘導弾を見舞ったが、最重要地域である東西の海岸や五大湖には侵入できず中部の田舎町を6つ、弾道弾基地を5つ吹き飛ばしただけ。
対する赤軍は焦土となった北海道を通過して本州に誘導弾を見舞う。青軍は北と南洋の基地機能を喪失し、そこから飛び立った警戒機や迎撃機が失われ防空網に混乱が生じている。
本州の基地から上がった警戒機だけでは全域をカバーできないのか、低空進入する赤軍機が状況板から姿を消していく。
こちらは実に120機が攻撃に成功、戦果はいうまでもない。いまや攻撃部隊を纏める担当官が手持ち無沙汰になったのと引き換えに野中の仕事量が増えていく。
努力と成果は必ずしも相関関係を持つわけではない。少なくとも今の野中に関してはその通りだった。
全土の迎撃機と攻撃機を掻き集めても100機に満たない。
海軍と陸軍も似たような状況であるが彼らは核運用能力を持たず、例外はGFの一部艦艇だが、彼らは内南洋に釘付けだ。

第三波がくればどうにもならない、と野中は腹を括った時に赤軍が引き上げてゆき、それに代わって宇宙空間を飛翔する物体を捉えたとの報告。もはや帝國の核戦力は脅威にならないと判断したのか、都市に対する全面核攻撃に踏み切ったらしい。
何処から聞きつけたのか、松代の司令室にも12発の弾道弾が飛来しつつあるという。もはやなすことのなくなった野中は最後に紫煙を吸おうと決意して地下室を後にして、長い通路と階段を登る。野中中佐、と連呼されるが歩みを緩めない。
最後に、白色の世界を見た気がした。

695 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/04/30(月) 05:56:41 ID:bDz7ZGZg0
投下終了

長くなったので途中で切りました。
中佐の名前と階級、年月日で大体分かると思いますが日付が変わるまでに何とか続きを…

696 名前:679:2007/04/30(月) 06:23:07 ID:/p8AtPIM0
よく考えたら、「日本の存在しない」世界の科学技術の発展が現実のそれと同じとも限らないっすね。
案外とんでもなく歪な成長をしてるのかも。

697 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/30(月) 10:54:53 ID:U1uACm8A0
 猫じゃらし様、投稿乙です。
 これは図上演習ですかね?
 しかし長崎広島が無かった訳だから、元の世界じゃあ核の悲惨さは民間に浸透しにくいでしょうなあ。

>>668
 まあ80年代初期レベルですから。

>>669
>やっぱ子供は外で元気に遊ばなければならないっていう考えが史実の日本よりもっと強そうです。
 体育が主要教科として毎日あります。
 中等部になると武道が、更に高等部以上になると軍事教練が加わります。
(その分体育が減るけど)

>そういや稲葉は技術将校だそうですが、月給は幾ら貰ってるんでしょうか。
 通常の規定通りですね。一号俸だから同階級じゃあ一番安いでしょう。
 ……他に特別手当を貰っておりますが。

>>670
>携帯電話機が1円(帝國の価値だと1銭)で売られてるって聞いても、絶対に信じないんだろうな・・・
 というよりも、その技術力に驚くでしょうね。
 技術の差がこれ程離れていたら戦争にならないし。で、ますます核に傾斜するかも。

>>671
 一番の問題は『市場が狭い』ことにつきます。
 国内市場こそ倍近いですが、欧米の様な購買力の高い地域は他に存在しませんからねえ。

698 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/30(月) 10:55:23 ID:U1uACm8A0
>>672
>無制限級でハ50搭載の震電とかハ74搭載の五式とか見てみたひ。
 軍事博物館とかにはチハとか色々あるでしょうね。
 『戦勝国はそういったものが多い』というのが相場ですし。
 ……呉には本物の大和ミュージアムが?
 山城や金剛は解体されたけど、長門とか瑞鶴とかは記念艦になってるかも。

>>673
>ところで稲葉が召喚された世界の帝國には核兵器はあるんですか?
 ありますよ。冷戦期の米ソ並に。
 投射手段は戦略級なら『原子力潜水艦からの弾道弾や巡航誘導弾』『戦略爆撃機からの爆弾や巡航誘導弾』が主力ですね。少数(あくまで前二者と比較しての話)大陸間弾道弾もあります。
 戦術級も砲撃やロケット、誘導弾、爆弾……等々、色々あります。

>>674
>こっちの世界でも、インベーダーが登場してからしばらくは、そんな認識だったような。
 この前呼んだ『ゲームセンターあらし』にもそんな場面がありましたね。
 今は随分開放的でおしゃれだけど……

699 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/30(月) 10:56:00 ID:U1uACm8A0
>一般にTVゲームが普及するまでには、色々と前フリとか時間とかあったっけかな。

 こうですか?

うぃきぺでぃあ 稲葉昌由(皇紀2632?〜2701年)

*このページは、荒らしや編集合戦などを理由として、保護の方針に基づき編集保護されています。現在の記述内容が正しいとは限りません。ノートで合意を形成した後に、保護の解除を依頼してください。

 技術者、経営者。出生地はタブリンと言われているが詳細は不明。
 帝國情報科学の中興の祖、“Teikoku Computer System”(以後TCS)の初代会長。数多の理論を提唱し、現在の帝國情報科学の基礎を作ったことで有名。彼の存在がなければ帝國の情報技術は優に10年は遅れたであろう、と言われている。

 陸軍技術将校を経た後、新設された国営企業TCS初代会長に就任、瞬く間に同社をコンピュータシステムとネット検索情報の独占企業にし、巨万の富を稼ぎ出した。稲葉氏時代にTCSが稼いだ利益は平均年200億圓、実に総計5000億圓を越える。が、国営企業としての性格上その大半は国庫に収められ、稲葉氏本人には理事長としての給料以外は金一封すら出なかったという。理事長としての俸給も国営法人の中で最低だった。これに稲葉氏本人が全く気にしなかったことから、これをもって『稲葉氏は清貧の人』と賞賛する向きも多い。(事実、彼は提唱した様々な技術も“政府保有特許”としている)が、これに関しては『他の技術者が正当な対価を得られなくなった』等の批判も根強い。
 ちなみに彼の遺産は僅か100万圓足らずであった。

 氏が生前時から様々な栄典を全て辞退したことは有名だが、その一人息子が事業に失敗し多額の借金に苦しんだ時、TCSが介入したことは有名である。
(当時のTCS会長は議会で『稲葉会長が息子なら、不肖とは言え見捨てるは忍びない』と発言)


 稲葉氏が“Teikoku Computer System”時代に作成した主な作品

 情報通信部門 代表的な製品 “グーグル”情報検索システム、“リナックス”オペレーティングシステム、他コンピュータシステムやネットに関する様々な基幹特許。
 娯楽部門
 ゲーム機:ゲームウオッチ、ファミリーコンピュータ、スーパーファミリーコンピュータ、プレイステーション、プレイステーション2、ゲームボーイ
 ゲームソフト:インベーダー、テトリス、パックマン、ディグダグ、スーパーマリオブラザーズ、ゼビウス、ドラゴンクエスト、ファイナルファンタジー、女神転生等、52種販売類型5億本超。
 映像:ガンダム

700 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/30(月) 10:56:36 ID:U1uACm8A0
ノート
・一人の人間がいなかった位で10年も遅れる程、帝國の技術開発力はヤワじゃねーよ。
・同感、『氏の技術者としての能力は二流以下だった』という説が有力だよ。
・稲葉氏はパイオニアだぞ? 彼の提唱した理論は現在の基礎となっている。オマイが今使ってるOSやネットだって基本は稲葉氏。
・OSはそうだけどネットは違うよ。稲葉氏は軍ネット網の開放を主張しただけ。ま、その際様々な防護システムや法案を提唱しているから、『ネットの父』っつーのもあながち間違いじゃあない。
・……しかし、法案にしろ防護システムにしろ、まるで現在のことを予見してたみたいだよな。気味悪い位見通してるぜ。
・だから『中興の祖』なんだよ。
・でもコイツ、大半は提唱しただけで後はほったらかしの丸投げじゃねーか。功績の大半は後から真面目に研究した技術者達だ。
・だ〜か〜ら〜その提唱が無ければ研究のしようも無い訳で。
・先駆者の意味とか重要性、全然判ってないなコイツら……
・コロンブスの卵って知ってますか?
・『理事長としての俸給も他の国営法人の中で最低だった』っていうのは言い杉。なんだかんだで年10万は貰ってたハズ。
・“政府保有特許”も当たり前、だって大半は技術将校時代に提唱したんだから。公人だぜ?
・話し逸らすなよ…
・これだけの利益上げて10万かよ。民間ならその百倍なんてもんじゃないぞ?
・5000億稼いだのにそれはあんまり。“Teikoku Computer System”の部長級なんか、理事長より高い給料貰ってたて話しだし。
・バンザイや印天堂からその分貰ったんだろ?
・倒産寸前の印天堂とバンザイに緊急融資したり不利な契約結んだ件ですね? けど、花札会社やおもちゃ会社にそんな金あるとは思えないのですが?『自分の所の電子ゲームのせいで危機になったから責任を感じて』って伝記とかには書いてありますよ?
・傾いたのは印天堂やバンザイだけじゃないだろーが。他は無視してるぞ?


 ……ネタなんで、本気にしないで下さいね?

701 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/04/30(月) 10:58:03 ID:U1uACm8A0
>>675
>しかし貧乏国ならともかく、帝國で子供3、4人が普通って言うのはどうなんだろう
 国策で人口を増やすのに必死なのですよ。
 そりゃあもう、凄い力の入れようです。

>>676
 この世界で唯一子供が電子ゲームを出来る場所はデパートの屋上です(笑)

>>677〜681
 中国はどうだろ?
 一応『80年の米軍並』だから……

>>682
>稲葉って軍属じゃなくて技術将校ですよね・・・尉官ですか?佐官ですか?
 佐官ですね。少佐か中佐かと。

>>687
 猫じゃらし様、有難うございます。

 別に良いのですよ。役に立ちそうなヤツが協力的なのですから、適当にチヤホヤしておだて上げておけば。
 少佐や中佐、なんていうのもそんな訳です。

702 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 11:56:29 ID:sS2OXMfY0
>>699
>氏が生前時から様々な栄典を全て辞退したことは有名だが

爵位授与の話も当然あったでしょうな。
これは、本人が辞退しても孫あたりが何か国家に対する功績をあげたら
「本功績は元より、稲葉家が帝國に貢献した諸々を関与し・・・」とか
十分考えられますな。

稲葉氏本人は、夫人が獣人で周囲から何度も「離縁してそれなりの家の娘と
再婚されれば・・・」と勧められても、夫人を大事にし、妾すら造らなかった
為、帝國勢力圏の獣人全てからの尊敬を受け、孫に囲まれた幸福な晩年をおくったと
言われている。

703 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 15:12:49 ID:ykO8Z3/I0
猫じゃらし殿、投稿乙です。
この後、世界のどこかで伝説の某拳法後継者がモヒカン軍団と戦う物語に・・・なりませんよねw
シャレは置いといてやはり核戦争は米帝が有利ですな。
国力が違いすぎる(涙

704 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 17:41:30 ID:xsS49mlo0
投下乙ですお二方

外交下手なまま不釣合いに戦力増大し、このバランスの世界に戻ったらそりゃ血を見ますな
どう転んでも上手くはいかない八方塞ってやつですかねえ

シャオ嬢が完全に婦人扱いなのに微笑
この二人ならきっとうれしはずかししてくれる!(何を

705 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 18:10:26 ID:F0.SoTH60
そりゃもうしっぽりと。

706 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 19:23:45 ID:kPdSASwo0
夜の営みを結婚首輪を付けたままで所望しそうですねw

707 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 19:46:18 ID:idZjOHjk0
稲葉「シャオさんを僕に下さいっ!!」

その時の周りの反応を取り上げたSSを読んで見たい…
ロンさんは獣化して、MMRのような反応をするのでしょうか?

708 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 19:56:16 ID:F0.SoTH60
予想図

;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;∩___∩;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∩____∩ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;| ノ      ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/      └|;;;;;∩____∩;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;/   ○   ○ |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| ○   ○   ヽ/      └|;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;|    ( _●_)  ミ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;彡  (_●_ )    |○   ○  ヽ;;;;;;;;;;
;;彡、    |∪|  、`\;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/     |∪|    彡  (_●_)    |;;;;;;;;;:
/ __  ヽノ /´>  );;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;(  く   ヽ ノ   /    |∪|    ミ;;;;;;;;;;
(___)   / (_/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\_ )      (  く   ヽ ノ     ヽ;;;;;;

709 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 20:02:07 ID:kPdSASwo0
稲葉まで獣化してますがなw

710 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 20:10:36 ID:xsS49mlo0
稲葉さんまでけだものー(棒読み)



実際結構早い段階で  しそうな予感がひしひしとする訳でして
お盛んですわー(すごい棒読み)

711 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 20:14:02 ID:idZjOHjk0
くろべえさん、ふと思いましたが獣人によるメイド喫茶が生まれる可能性はあるのでしょ…

ゴメンなさい、妄想し過ぎますた

712 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 22:31:46 ID:njlPJyHw0
稲葉の不の遺産だな
その手のものも残しちゃったからいまいち評価が微妙なんだ、きっと


切欠は夫婦の営みからだな間違いなく

713 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 23:10:39 ID:znKN5Fz.0
・・・獣人限定で飼い主喫茶とか。

フリスビーに乗せた軽食をキャッチして、「飼い主」に誉めて(食事も)いただくことができる喫茶店。
文明社会の中で抑圧されている獣人の本能も開放できて、結構流行るかも・・・w

714 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/04/30(月) 23:58:17 ID:F0.SoTH60
イノベーション経営的にはアリなんだけどね、そういうスタンス。

715 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 00:10:39 ID:ydhGYZgA0
猫じゃらし氏、投下乙です。
冷戦状態の世界なら、まだ入り込める可能性はあるけど、
ドイツもソ連もたいした力を持たない世界だと厳しいですね。

元の世界に戻る可能性を考えてるならABMは開発してないのかな。
それに加えて弾道弾があったとしても良くて相打ちでしょうが。
日本列島に全面核攻撃喰らったら草一本残らないかも。

716 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 00:14:02 ID:OS.KIf1.0
問題は、需要のありそうな本国に獣人の方々がそんなに居るかかと、ロイさん家も代々の血の代価で永住許可がおりたわけですし。

……そうか、マケドニアに作って、貴重な外貨獲得の手段にすれば(ばかは なにか おもいついた)

717 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 00:24:19 ID:vH2vrCys0
ガテン系の獣人はけっこう居そうな希ガス。
建築現場や道路工事にはまだまだ引っ張りだこじゃね?

718 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 00:45:21 ID:HGD5Nfgc0
どれだけ工作機械が発達しても、万能の道具である「手」を備えた人型の応用力、利便性には適わないでしょうしねぇ。
しかもそれが重機並のパワー持ってれば、需要は尽きないでしょうし。

719 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 01:15:21 ID:IvX.uGKQ0
重機の出番は大きな土木現場であって、日常よく見かける町の水道工事だとかその辺は獣人に席巻されてそうな気がする。
正直重機並の力を持った人がまとまった数使えるんなら機械の出番はあんまりないのがほとんどだしなあ。

720 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 03:38:08 ID:njlPJyHw0
獣人の凶悪犯罪とか考えるだけで悪夢だな
対獣人用の獣人警察とかあるんだろうけど

いまいち獣人の地位が低い事の一因になってるかもしれん

721 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 05:53:46 ID:Rg95j0iI0
拳銃の大口径化が進みそうだな。

722 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 06:18:43 ID:BjRO8iEk0
>>720
帝國本国内に入れる獣人はメチャクチャ厳しい審査を受けた上で許可を貰ってるのかもしれませんね。
ロンさんみたいに代償を多く払った人でさえ、永住許可止まりなのも納得。
しかし、こう考えると平時になるとただの厄介物になりかねないダークエルフよりも
遙かにある意味必要とされてる種族だっていうのに、
見当違いの方向に暴走し始めてる旧版本編のマケドニアが悲しい。

723 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 06:42:32 ID:njlPJyHw0
> メチャクチャ厳しい審査を受けた上で許可を貰ってるのかもしれませんね。
そうなんでしょうねぇ

でも酒飲んで台無しな罠

724 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 07:13:15 ID:83/wJNuE0
まあ、人型で重機並みの腕力があるなら、ユンボは要らないよなぁ…。

725 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 08:16:26 ID:MsAR/znU0
職人の応用力に機械は追いつけないからな
日本式の土木技術を学んで三代目になる獣人一家が山ほどいたら
それはもう世界で十分通用するマケドニアの国家産業だと思うが

マケドニア本国の獣人だけが気づいていなそうだな

726 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 08:31:57 ID:BjRO8iEk0
直轄地に住んで土木工事に従事してる獣人はそうなれるかもしれませんが
マケドニアに引きこもって権力闘争ごっこしてる連中には無理かもしれませんね。
ほうっておいたら10年後には両者でえらい差がついてそう。

727 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 10:11:45 ID:ydhGYZgA0
建築土木だけでなくて、工場作業でもいろいろ活躍できそう。
重量物の扱いをしてくれるだけでも作業速度が桁違いだけど、
機械並みのパワーと職人芸を併せ持った存在になりうるわけで。
獣人専用工具とかありそうだ。

728 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 11:27:39 ID:yRugYah20
そのうち建設業から新興財閥を築きあげる獣人があらわれたりして

あ、でも金融方面には弱そうだから財閥系銀行に侵食されるかも

729 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 11:42:16 ID:njlPJyHw0
永遠の下請けカワイソス
問題はやっぱり教育か、そこいらへん帝國人と条件は同じなのかしら

しかし獣人といいダークエルフといい種としては人間よりも優れてるんだよなぁ
今は良いけどそのうち問題になりそうな予感

730 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 12:07:04 ID:UKVWjZkI0
その辺は人口増加率とかも関わってきますよね。
DEは出生率がそれほど高く無さそうですけど、獣人はどうなんでしょう。
イメージとしては多産っぽいんですが。

731 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 12:13:01 ID:njlPJyHw0
帝國においては犬は多産の象徴になってるぐらいだものなぁ

シャオもぽんぽこ子供生むんだろうか

732 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 12:14:39 ID:njlPJyHw0
あれ安産だったっけ?

733 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/01(火) 12:48:07 ID:U1uACm8A0
>獣人
 狼タイプでも獣化すれば常人の10倍以上のパワーがありますからねえ。
 そんなケモノが人間の手を持ってる訳ですから……

 獣人の主な仕事は土木作業員です。彼等は頭使うより体動かす方が好きですからね。
 手っ取り早く高収入を得られますし。

 内地ではあまり見かけませんが、直轄領なんかでは一族十数人〜数十人集まって土木屋やってる例が多いです。
 けど彼等はあまり営業や経営が得意で無い……というか『面倒臭い』ので、大概帝國資本の建設会社の傘下となっております。
 空から仕事が降ってくるのを待ってるワケですな。で、経営はドンブリ勘定。
 ……ま、儲かってるから構わないのですが、中には『江戸っ子は宵越しの銭を持たない』を地で行く所も……
(で、次の日『次の仕事マダー?』と寄親企業の担当口へ)

 ロンさんの様に店やってる獣人は圧倒的少数派です。
 別にそんな面倒なことしないでも高収入の仕事(もちろんガテン系)は幾らでもありますからね。

>マケドニア
 上の様に稼いでいる獣人からの税金、その一部が無条件で入ってきます。
 現実世界の某ブル○イ王国みたいなものです。

 ……ちなみに他所の獣人からは、“ナマケドニア”と言われてたり言われてなかったり。

734 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/01(火) 12:50:00 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 外伝1「カナ姫様の細腕繁盛記」22

 カナが天幕に戻ると、そこにはブッデンブルク将軍がいた。どうやら彼女を待っていたらしい。
 その表情から『かなり重要な用件』と察して人払いを命じると、将軍はようやく用件を口にし始めた。
 ……彼が語った内容は驚くべきものだった。

「メクレンブルク王陛下は『戦死した』のではなく『暗殺された』!?」

 驚きの余りカナは思わず叫んだ。
 そして、念のためもう一度確認する。

「……それ、本当?」

「無論です」

 ブッデンブルク将軍は真剣な表情で頷いた。


 戦闘終結後、メクレンブルク王は死体となって発見された。
 馬廻りの騎士達の話によれば、本営が蹂躙され混乱した中で頓死したらしい。『高齢をおして行軍したことによる疲労』に『激しい怒り』が加わったことによる憤死、と彼等は判断した。
 鎧の上からは特に外傷も見られないことから、当初はシュヴェリン軍も同意見だった。
 ……が、清めの為に鎧を脱がせると、その背中は黒く変色していた。
 毒による変色だ。
 直後に判らなかったことから、徐々に広がっていったものと考えられた。

「傷自体は注意して見なければ判らない程小さなものでした。細い毒針の様なものを用いたのでしょう。問題は――」

735 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/01(火) 12:50:30 ID:U1uACm8A0
 将軍はそこで一つ溜息を吐いた。

「問題はその場合、『余程近寄らないと暗殺できない』ということです」

 細い針で鎧――チェーンメイル――の隙間を狙うのは吹き矢では不可能……とまでは言わないが難しい。確実をきすならやはり直接刺す他ないだろう。

「でも、当時は混乱状態だったのでしょう?」

 雑兵にでも扮していれば幾らでも近づく機会はあった筈だ、とカナが指摘する。

「はい、ですが『メクレンブルク軍の本営が大混乱に陥る』などと一体誰が予想出来たでしょう?
 正直、確信を持って準備しておかねばとても……いえ、それでも難しいものです。ましてや誰にも見咎められない様にやるのは」

 少なくとも馬廻りの騎士達には不可能な芸当だろう。これはプロの仕業だ。

「殺害に使われた毒は恐らく“復讐の毒”。間違いありません」

 将軍は断言する。

 “復讐の毒”は魔法薬の一つで、死に至るまでの間激しい苦痛をもたらすことから付けられた名称である。
 気が狂わんばかりの苦痛に遭いながらも指一本動かせず、声一つ発することが出来ない、正に“復讐”の名に相応しい毒薬だ。
 が、『死ぬまでにかなりの時間を要すること』『比較的簡単に解毒出来ること』から暗殺用としては実用性に欠け、主に王や大貴族が憎い相手を死罪にする際に用いられるに過ぎない。
 ――故に、今回これを用いたということは『現在の状況を確信していた』ということになる。

736 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/01(火) 12:51:08 ID:U1uACm8A0
「……じゃあ、帝國軍が?」

「彼等が王を殺したければ普通に出来ましたから、何もこんな汚れた手を使う必要もないでしょう。
 ……第一、“復讐の毒”を用いる程の恨みがあったとも思えません」

 メクレンブルク王に激しい恨みを持ち、かつ先を見通せていた者の仕業でしょう、と将軍。

「それは誰?」

「まあ先を見通す云々は兎も角、ダ―クエルフ――恐らく実行したのは彼等でしょう――を雇える程の財を持ち、かつ王に激しい恨みを持つ者、となればかなり絞られる筈です。もう少々お待ち下さい」

「ダ―クエルフ自身が首謀者、とも考えられるわよ?」

 ダ―クエルフは以前狩られた経験からフランケルの国々、特にメクレンブルクに対して激しい恨みを持っている筈だ。
 ……が、将軍はそれをやんわりと否定した。

「如何な彼等とはいえ、流石にそこまで先を見通せますかどうか。第一、彼等の流儀にも反します」

「流儀?」

「ダ―クエルフが王を殺すなどあり得ないのです」

 彼にもルールがあるのです、と将軍は言った。

737 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/01(火) 12:51:52 ID:U1uACm8A0
 そう。闇に生きる種族ダ―クエルフも好き勝手に行動している訳では無い。その行動には厳格なルールが存在するのだ。
 ダ―クエルフがそれを無視するなど考えられなかった。
 ……何故ならそれは人間との“誓約”であり、彼等が闇の世界で生きていく上で必要不可欠なものだったのだから。


 ダ―クエルフは大昔から迫害されていた種族である。
 何故迫害されたかについては諸説乱れ飛び、詳細不明だ。
 が、かつて大罪を犯したらしく、様々な忌み名――それも尋常でない――で呼ばれていた。
 曰く、“闇の王と交わりし者”
 曰く、“神々に叛し者”
 曰く、“許されざる者”……要は『その存在を否定された種族』であるということだ。
 当然、国どころか安住の地すら持てず、人目を逃れての放浪を余儀無くされたという。
 ……そんなこの世界で生きていくため、遙か昔に彼等はある決断を下した。
 闇の世界で生きていく、という決断を。

 ダ―クエルフは人を超越する知力、体力、魔力を持っている。それを活用する知識にも事欠かない。
 その全てを持って、種族ごと闇の世界に身を投じたのだ。

 幸いにも、人間の国々の大半は闇の世界の住人となったダ―クエルフを雇い入れた。 ……それも喜んで。
 国を、権力を維持するのは奇麗事では済まない。その中には様々な闇が潜んでいる。その闇を担う――汚れ仕事を押し付ける――相手として、彼等ダ―クエルフは最適だったのだ。
 ……それはそうだろう。優れた戦士であり、大魔道士でもある“忍”など他に存在する筈が無い。万が一存在しても、とても使い捨てに出来るような存在では無いだろう。名前だって知られている筈だ。
 が、ダ―クエルフならばそんな存在は山といるし、失敗しても『知らぬ存ぜぬ』で突っ撥ねられる。

738 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/01(火) 12:52:22 ID:U1uACm8A0
『ほう? ダ―クエルフが? それはお気の毒に!
 何しろきゃつ等は“闇の王と交わりし者”、どんな悪逆非道なことだって平然と行う輩です。お気をつけなさい。
 ……で、今日はまた一体何用です? その話しと一体どの様な関係が?』――と。

 以降、人間の国々はその存在が公にならない限り、ダ―クエルフを積極的に狩り出すことは無くなった。
 『闇の世界で』とはいえ、ダ―クエルフは生きることを許された――実際は黙認だが――のだ。
 故に、彼等ダ―クエルフとてむやみやたらと手を汚す訳では無い。ある意味人間と共生している以上、そこにはルールが存在した。

『王や大貴族の暗殺は決して行わない』
『秘密は絶対に守る』
『一国に肩入れしない』等々……どれも生きていく上で絶対に守らねばならないものだった。
 それは誓約であり、究極的には自分達を守るものでもあったから。

 無論、ブッデンブルク将軍はこういった経緯や事情の全てを知る訳では無い。
 が、辺境の小国とはいえ彼も一国の重臣だ。ダ―クエルフのルール位は承知していたし、それを律儀に守る理由も見当が付いた。
 ……故に、ダ―クエルフがやったとは思えない、と断言したのだ。

「え、でも……」

 ちょっと待って欲しい、とカナは思った。

 でも、大叔父様はダ―クエルフに殺されたのだ。
 確証は無いが、多分殺されたのだ。

739 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/01(火) 12:52:52 ID:U1uACm8A0
「何でしょう?」

「叛乱を起こした大貴族とかは?」

「無論、殺しません。その叛乱はもしかしたら成功するかもしれませんからね。
 そしてそれ以上に、貴人から“反感”や“恐怖”を買う事を彼等は好みませんから」

 如何なる理由があろうと、“薄汚い”ダ―クエルフに貴人を殺されれば貴人達は“反感”を持つだろう。そして『次は自分』と考えるかもしれない。何せ彼等は闇に近い場所にいる。殺される理由には事欠かない。
 ……故に、『絶対しない』と保証する必要があったのだ。
 貴人は雇い主であると同時にその安全を保証(黙認)する権力者でもあるのだから。

「ですから例えメクレンブルク王家に恨みがあろうとも、王家自身には絶対に手を出さない筈です。
 その報復対象は平民や中堅以下の家臣に止まるでしょう。 ……事実、あの時もそうでしたから」

 以前フランケルで多数のダ―クエルフが狩られた後、狩りに参加した人々が次々と殺害される事件が起こった。
 ダ―クエルフの報復である。
 狩りに軍を参加させた国々は、中堅以下の家臣が数人ずつ殺害された。
 狩りに参加した平民に至っては、頭格の者全員が殺害された。
 ……が、どの王家もその上級家臣団も、皆無事だったという。

 もう“終わった話”なのだ、と将軍は言った。

「…………」

740 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/01(火) 12:53:35 ID:U1uACm8A0
 将軍の発言にカナは考え込んでしまった。
 そこに決して無視できない事実を発見したからだ。
 既にダ―クエルフがルールを破っている、という事実を。

 帝國の配下になった時点で、既にダ―クエルフは中立の禁を犯している。
 ……いや、それどころかは『もう雇われ仕事はしない』とすら以前会ったダ―クエルフは言っていた。
 それは即ち、『闇の世界から足を抜けた』『(帝國以外の)人間との共生関係を捨てた』ということだ。
 そんなことをすれば後戻りは出来ない、ダ―クエルフは帝國と運命を共にするしかないというのに、である。
 そこまでして帝國に付いた理由は何だろう? 帝國はダ―クエルフに一体何を与えたというのだろう? 主従というが、一体どの程度の関係なのだろう?
 正直、判らないことだらけだ。 ……が、ダ―クエルフがここまで腹を括る以上、生半可なものではないことだけは確かだ。

『この世界の全てを支配できるだけの力を持った御方』

 ふと、以前聞いたそんな言葉が頭を過ぎった。
 もしかして、ダ―クエルフは……
 そこまで考え、カナは首を振った。それは余りにも馬鹿げた考えだったからだ。
 確かに帝國は強大だ。けど、この世界はたった一国で支配できる程――

「姫様?」

「……何でもないわ。ありがとう、下がっていいわ」

「ハッ、このことは帝國やメクレンブルクには?」

「……話を拗らせたくないわ。メクレンブルク王陛下は名誉の戦死を遂げられた、それだけよ」

741 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/01(火) 12:54:06 ID:U1uACm8A0
「畏まりました」



「ふう」

 将軍が下がった後、カナは溜息を吐いた。
 余りにも色々なことが続けて起こったからだ。

「どうやら考えていた以上の大事よね……」

 カナは、メクレンブルク王を殺害したのはダ―クエルフだと確信していた。
 ルールを破り捨てた以上、最早彼等が遠慮する理由は無い。遣り残した復讐を遂げようとするだろう。
 今まで闇に身を潜め、ひたすら屈辱に耐えてきた彼等が突然顔を上げて主張し始めたのだ。

「今まではフランケルだけの問題だとばかり思っていたけど……」

 どうやらそんなものでは済まなそうだ。
 大きな時代の変革が訪れようとしていることをカナはぼんやりながらも感じ取っていた。





 SS投下終了。
 お久し振りです。

742 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 15:57:07 ID:X9DoCVGA0
くろべえさん投下乙です。メクレンブルク滅亡フラグがまた一つ。
ダークエルフがルールを破ったことが伝わったら王族、上級貴族は大衝撃ですな。
暗殺される可能性が出てきたんだし。

>ナマケドニア
ちきしょう、石油より安定した財源持ちやがって・・・orz
問題はその歳入を宝石買う他に、何に使ってやがるかだが。

743 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 18:51:42 ID:u/alkAqA0
ダークエルフは知能・身体能力が人間より上
獣人は?身体能力はすごいの一言だけど知能が低いのかな

744 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 20:01:26 ID:OlAL6eaE0
>>743
学が足りてないだけだと思う。
勤勉かつ頭の回転の速いやつだって居るんじゃね?
ただ、大半が獣の遺伝子か何かでその日暮らしに落ち着きたがるだけで

745 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 22:32:46 ID:OS.KIf1.0
投下乙です、ダークエルフが帝国に付いた事の意味が旧版以上にえらい事だと理解出来ました。

>>743
身体能力が人の10倍だと、人間並みの知性があっても、結局体を動かす方が得意になるのかも。
……帝国が作った名門大学の受験に成功した獣人の人がいたら、やっぱり話題になるのかな? 格闘家が東大受験した時みたいに。

746 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 22:53:50 ID:mSiubQ.I0
獣人と獣人との間の子供は必ず獣人が生まれるのだろうか?
獣人とは知らないものがいるんだから一生変身しないものもいそうw
だいたい赤ん坊の時から変身可能なのかなぁ。
覚醒遺伝子で突然やってくるのかなぁ。
(ロイ?は少年なのでかなり小さくても変身可能らしいけど)
ハーフと獣人、クオーターと人間、人間と獣人
獣人が生まれるその確率はどんなものなのかなぁ。

747 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 23:01:10 ID:X9DoCVGA0
>744
旧版でも元下級騎士な方とか(3章5話〜)忍者のダルカ族(間章3−1話)
がいるからきちんと教育すれば人間とほぼ同じ知能レベルを持てるかと。そこに獣性で-α。

異世界では獣人に対して差別化できる術が少なかった(竜は誰でも持てるわけでもないし、魔法
も黄金熊とか使える者もいる)から、迫害などを行い知能レベルをわざと低下させてたと考えられ。
一方、帝國は機械化という(コストはかかるが)誰でも獣人に対抗できる術をもってたから
異世界に倣わず迫害をせずにすんだと。
 ナマケドニアの軍備も機械化せず携行火器が主体なんでしょうね。
小銃が13mm(フルオート可)とかグレネードランチャーが60mmとか、車載用サイズの
対戦車ミサイル(TOW2くらい)が携行用ミサイルとして採用されてたりとかー・・・
これはこれで恐ろしいな。((((;゚д゚))))ザクグフゲルググ

748 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/01(火) 23:22:13 ID:oVuuhHNoO
獣人は稀に人と人の間に産まれることもあると作中に書かれているから、
獣人と人の知能にそれほど差はないんじゃないですか?
ただ単に、差別の為に教育を受けられないから、全体で差があると思われ。

くろべえさん投下乙です

ダークエルフにもルールがあるのですね。
どうして世界中で忌避されながら報酬を払われているのか疑問でしたけど、
ダークエルフが種として中立な裏稼業をすることによって
微妙な均衡が保たれていたのですか。

749 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 00:43:55 ID:.IbZ2b9Q0
くろべえ殿、投下乙です。
虐げられてきたダークエルフの復讐キター!
けれどこれは下手をすれば反帝國陣営はダークエルフの討伐をこれまで以上に行う可能性がありますな。
時代の変革は必ず血が大量に流れますからこれからのF世界は・・・((((;゚д゚))))ザクグフゲルググ

750 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 01:01:18 ID:V7aKVd5M0
乙です。
なんか本文書くよりネタが増えてどれを書くのか迷いそうですねw
設定を考えるだけで楽しそうですね。

751 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 01:10:58 ID:znKN5Fz.0
しかしまあ、DEのように明らかに全てにおいてヒト族より優れた種、
しかも少数民族、てのはやはり差別の対象にされるんでしょうね。

獣人やエルフのようにどこかパラメータを削って一部をプラスにしている、
というものではないし。

752 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 01:16:55 ID:tjPwJZDE0
くろべえさん投下乙です。
列強あたりならダークエルフの暗殺も防げるでしょうが、
それ以下の国にとっては、ダークエルフのルール破りは驚異だったでしょうね。
旧版本編での列強による邦人誘拐についての描写から察するに、
帝國は諜報活動をする上での暗黙の了解は護るつもりのようなので暗殺合戦とかにはならないでしょうが、
それが分かるまではF世界の富裕層は戦々恐々だったでしょうなw

753 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 18:14:46 ID:FBozg71Y0
>>742
>問題はその歳入を〜
役人の給料に当ててるんじゃないかな?
『役所』が最大の産業だと陰口を叩かれているらしいし。

ダークエルフが滅亡の危険を冒してまでルールを破った原因ってなんだったんでしょうね?
帝國の兵器や国力を総合的に分析して判断したんでしょうけど、多分最後の一押しとなった何がしかの決定的要因があると思うんですが。

754 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 18:25:26 ID:dRkIvAiw0
 皇族とケコーン?

755 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 18:56:23 ID:MsAR/znU0
そりゃまぁ
この世界の王族にしてみれば視界に入る事すら
疎ましい穢れた民族という扱いをうけていた
Dエルフが

未来兵器で装備された100万を超える陸軍、
どうやったら沈められるのか見当がつかない大和を有する海軍

それらを統率する『皇帝』の血筋と血縁関係を結んでの同盟なんて
いわれたら

今までの一切合財を投げ捨てても勝負にでるだろうよ

756 名前:753:2007/05/02(水) 22:32:58 ID:FBozg71Y0
成る程、それならば全て説明が付きますね。
ダークエルフが滅亡の危険を冒してまで大博打に出たのは皇族から婿を迎えて皇胤化するため。
いくらでもいる伏見宮系列ではなく態々直宮である正仁親王殿下と婚約させたのはダークエルフの信頼を得るため。
枢密院や貴族院、宮内省が皇族の婿入りを許容ないし黙認したのは転移という異常事態の打開のため。
全ては御国のために。おお、怖いくらいに一本筋が通っている。
現実では常陸宮様には御子息女がいないから結婚相手が変わっても問題ないしね。う〜む、よく考えてあるなあ。

757 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 22:36:10 ID:idZjOHjk0
>未来兵器で装備された100万を超える陸軍、
>どうやったら沈められるのか見当がつかない大和を有する海軍

確かにこんなの見せられちゃ、全てを賭ける気になりますね。

Various firearms of World War II Japanese empire army
ttp://www.youtube.com/watch?v=CTfOflH-30c

軍艦
ttp://gunka.nanode.ojaru.jp/gnkn.html

758 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 22:39:59 ID:6SmyBoRE0
つーか今まで血涙を流しながら諦めてた復讐だろうからなー。再報復の対象に
なりそうな女子供老人のダークエルフが、スコットランド王国に退避した地域から
大貴族や王様の病死が増えたりして。(もちろん片っ端からやる様な頭の悪い事
はしないだろうけど)

759 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 22:53:43 ID:tjPwJZDE0
帝國傘下になった以上、自分たちの独断で復讐の為の復讐はしないんじゃないかな。
メクレンブルク王暗殺は、帝國の目的達成の過程での「ついで」だろうし。

760 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/02(水) 23:12:21 ID:BXYyXLx.0
人間からして大陸を制覇してないということは、
オークが衰退する原因が人間ってのは眉唾か。
森の人と言うだけに。

むしろ劣化獣人なスペックがな〜。

761 名前:名無し三等兵@F世界:2007/05/03(木) 00:11:38 ID:pWXiDBTQ0
やや遅いですが、くろべえさん、投下乙です。
DEにも感情はありますからねえ。積もり積もっていたものがあるでしょうし。
カナ姫が帝國へ足を踏み入れたら、その理由が彼女にも分かるかも。

762 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 00:45:14 ID:f8el/SpY0
>>760

大陸の沿岸部では人間に、内陸部では他の種族(野生化した獣人等)に駆逐されたのかな?

763 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 00:49:28 ID:o.IrM9Js0
DEが帝國に賭けた要因は時期的にむしろスコットランド建国じゃないかな?
旧版でもレイ大尉がこれから生まれてくる子供達に祖国を贈るために、
この選択に後悔なんかしていない。例えどんな結果になっても、絶対に後悔なんかしてやるものか
って吐露してるし。

764 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 08:32:02 ID:tjPwJZDE0
ふと思ったんですが、>>699でくろべえさんが書いてる「稲葉の作った女神転生」を凄くやってみたいです。
多分、仏教と神道系以外の悪魔は全部F世界固有の神話からもってきてるんでしょうね。
やっぱ敵はボゴミール教、ラスボスはエルフかなw

765 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/03(木) 09:47:24 ID:U1uACm8A0
>>742
 742様、有難うございます。

>ダークエルフがルールを破ったことが伝わったら王族、上級貴族は大衝撃ですな。
>暗殺される可能性が出てきたんだし。
 一応、どさくさ紛れですので直ぐには伝わらないでしょう。自重もしてますし。
 まあ仕事を請けなくなった以上、ダ―クエルフ的には遠慮する必要はないのですが、帝國の立場もありますからね。
 派手にやると、主人の『外交を制約する』所か『周り中敵ばかり』にしてしまいますから。

>>743
>獣人は?身体能力はすごいの一言だけど知能が低いのかな
 一応常人並です。けど、種族的に『机でじっとお勉強』なんて苦手なのですよ。
 今まで必要もありませんでしたしね。
 帝國傘下になった現在でも同じことです。
 わざわざ辛いガリ勉なんかしなくても、普通に楽しく肉体労働すれば大金稼げますから。

>>745
 745様、有難うございます。

>ダークエルフが帝国に付いた事の意味が旧版以上にえらい事だと理解出来ました。
 ダークエルフにとっては全てを賭けた大博打です。
 もし負けたら全て……『種族としての生』すらを失うでしょう。

766 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/03(木) 09:48:00 ID:U1uACm8A0
>>746
>獣人と獣人との間の子供は必ず獣人が生まれるのだろうか?
 そうとも限りません。
 先祖に人間がいれば人間が生まれてくる可能性はあります。
 ましてや人間から生まれた獣人が親ならば尚更です。
 が、全体的に見れば、獣人同士(人間から生まれた獣人同士でも)ならば生まれてくる子供も獣人でしょうね。

>獣人とは知らないものがいるんだから一生変身しないものもいそうw
 獣人ならば一定の年齢に達すると獣化しますので、知らないということは一部の例外を除いて無いでしょう。
 ただ普通の人間でも獣人の遺伝子を持ってる連中が少なからず存在します。
 けど彼等は一般人と同様獣化はしませんので、自分が『獣人の遺伝子を持ってる』なんて気がつかないでしょうね。

>だいたい赤ん坊の時から変身可能なのかなぁ。
 二次性徴の一種みたいなものです。ある程度成長しないと出来ません。
(ただし実際の二次性徴より早く訪れる)

>覚醒遺伝子で突然やってくるのかなぁ。
 ロイ少年は隔世遺伝子ですね。

>ハーフと獣人、クオーターと人間、人間と獣人
>獣人が生まれるその確率はどんなものなのかなぁ。
 これは詳細には決めていません。
 メンデルさん(現実)とファンタジーさん(御都合主義)に相談してから決めようと思います(笑)

767 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/03(木) 09:48:54 ID:U1uACm8A0
>>747
>ナマケドニアの軍備も機械化せず携行火器が主体なんでしょうね。
 旧版の九七式20ミリ自動砲を装備した『銃兵』100人でも凄いですからねえ。
 これで帝國に余裕が出来れば――

 『小銃』は弾頭重量38gの12.7x81SR(陸軍ホ103用弾)使用の『自動小銃』、
 『軽機関銃』は同12.7x81SR使用。
 『重機関銃』は弾頭重量128gの20x101RB(海軍九九式二号機銃用弾)使用

 ――とかでも大丈夫でしょうね。
 こんな連中が1個大隊集まったら凄い火力だ。金も凄く喰いそうだけど。

 *上記武装は仮定のものです。

>>748
 748様、有難うございます。

>ただ単に、差別の為に教育を受けられないから、全体で差があると思われ。
 元のDNA(チマチマ勉強するのめんどい)に加え、そういう環境で何世代も過ごしてますからねえ。
 帝國時代でも『別に勉強しなくても楽しく暮らせる』なんて環境ですから……
 必然、ですね。

>ダークエルフにもルールがあるのですね。
 やはり組織(国家)と組織(ダークエルフ)のことですからねえ。

768 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/03(木) 09:49:55 ID:U1uACm8A0
>>749
 749様、有難うございます。

>けれどこれは下手をすれば反帝國陣営はダークエルフの討伐をこれまで以上に行う可能性がありますな。
 上で挙げた様に復讐は限定的なものです。
 が、『帝國の犬』となった以上、追求はこれまでの比じゃあないでしょうね。

>時代の変革は必ず血が大量に流れますからこれからのF世界は・・・((((;゚д゚))))ザクグフゲルググ
 帝國は既存の秩序を打破する存在ですからねえ。血を見るのは避けられません。
 仮に帝國が穏健な考えを持っていても、その取り巻き(かつての弱者)は――
 ……早期に降ったレムリアは幸運ですよ。

>>750
 750様、有難うございます。

>なんか本文書くよりネタが増えてどれを書くのか迷いそうですねw
 ネタがあって、それをSSにしてますからねえ。
 正直、もう少し筆力があれば……

>>751
>しかしまあ、DEのように明らかに全てにおいてヒト族より優れた種、
>しかも少数民族、てのはやはり差別の対象にされるんでしょうね。
 獣人とかも集団になられたらとんでもないですからねえ。
 ましてやそれが国の様な強固な組織だったら……

769 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/03(木) 09:50:25 ID:U1uACm8A0
>>752
 752様、有難うございます。

>それ以下の国にとっては、ダークエルフのルール破りは驚異だったでしょうね。
 上で挙げた様にあまり公になる様な手段は採っていませんし、限定的なものです。
 正直、きりがありませんし政治的にもマイナスですから。
 が、これからは一定の報復が可能になります。これは画期的です。

>>753〜759、763
 この世界のことを何も知らない、知る手段も無い帝國
 この世界のことを良く知り、知る手段も豊富なダークエルフ
 転移当初、帝國はダークエルフの全面協力を求めましたが、ダークエルフはルール上それは出来ないと拒否、落としどころを巡って両者はかなり突っ込んだ話し合いをしました。
 ルールはダークエルフが生きていく上で必須のもの、それを捨てさせるにはそれ以上のものを提示する必要があったのですよ。
 ……正直、ダークエルフは金銀や武器と引き換えにある程度の情報を渡して幕を引く積りでした。
 が、それでは帝國は行き倒れ決定です。それを回避すべく『御聖断』が下されたのです。
 転移発表も玉音放送で知らされましたし、当時の帝國の危機感たるや相当なものだったのです。

>>760、762
>人間からして大陸を制覇してないということは、
>オークが衰退する原因が人間ってのは眉唾か。
 まあ言い伝えですから。
 人間がオークを狩ったのは事実らしいですが……

770 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/03(木) 09:50:55 ID:U1uACm8A0
>>761
 761様、有難うございます。

>DEにも感情はありますからねえ。積もり積もっていたものがあるでしょうし。
 今回の行動も、『ヤツを殺すのは他の誰でもない、我々だ』という思いからでしょうねえ。

>>764
 関係ありませんが、稲葉は数々の大ヒットゲームを世に送り出しました。(パクリ……というよりコピーですが)
 が、それと同時に伝説級のクソゲーも複数送り出しています。稲葉氏曰く、『この味を知ってこそ真のゲーマー』だそうです。確信犯です。
(そもそもクソゲーなる語彙もこの世界では稲葉氏の造語)

 *これはネタの設定で本設定ではありません。

771 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 13:49:00 ID:F0.SoTH60
>>この味を知ってこそ真のゲーマー

なんてやつだ(棒読み

772 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 14:44:31 ID:4ePyWikw0
バーチャコップに続くFPS第2弾がデスクリムゾン。嫌がらせかw

773 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 16:41:19 ID:bVhmHxZI0
「たけしの挑戦状」もはずせませんねw

774 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 17:42:13 ID:xL2tt65E0
スペランカーもです

775 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 18:24:00 ID:S0s6.qEY0
個人的にはチャレンジャーも

776 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 18:46:31 ID:MIOnkuOk0
> 稲葉氏曰く、『この味を知ってこそ真のゲーマー』
電脳元帥の癖して、この発言……
ペンティアム4に代表されるようなアメリカ式アーキテクチャーに官民一体の反発喰らい倒して胃と性格がわるくなったか
# 旧電電公社のプログラムなんて、それはもー律儀な丁寧ですが、正常処理以外の処理が9割超えます
それとも、ゾンビー的繁殖行動か

777 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 21:35:34 ID:83/wJNuE0
>>772
帝國でもコンバット越前の伝説が…w

778 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/03(木) 22:20:22 ID:/mxtzNyg0
稲葉が中毒性の強い一部のゲームのBGMやらアニソンを作詞・作曲した、ということになってたりして。

779 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 00:25:42 ID:poP3/YbU0
ポートピア殺人事件もな!

780 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 01:41:15 ID:l9V4ccXk0
たけしの挑戦状は無いのか!?

とか言いつつ,PC−エンジン引っ張り出す俺,カッコイイ

781 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 02:17:56 ID:YpZRw2zs0
でも英語とかは専門用語化してるみたいだしなー
デスクリムゾンとかの横文字は日本式の名前になるんだろうか?
どんな名前になるのかさっぱり思い付かんなww

782 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 03:13:45 ID:KU8QS5YM0
>>772
DOOMのコピーを出して、その神クオリティ&超絶的プログラム技術に帝國臣民を驚愕させた後、
Terminator Rampageのコピーを出して、前者に比べてあまりにヘボすぎる低性能プログラムで
その落差に唖然とさせるとか。






ちなみに私のFPS遍歴

最初に遊んだのは「Walfenstein3D」
  →「うお〜〜〜!なんか知らんけどすげー!」

次に遊んだのは「DOOM」
  →「(;゚Д゚)………これはきっと宇宙人か、時空犯罪者が作ったに違いない………」

その次に遊んだのは「Terminator Rampage」
  → (ゲーム開始後10秒でゲームをExitし、もう二度と起動することはなかった)

783 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 12:59:22 ID:XSfBXKRY0
メダルオブオナーなんかもコピーしたとすると
帝國兵が敵になってしまいますな。
それもそんじょそこらの敵ボスが霞むくらいおっかない敵。

784 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 14:15:31 ID:idZjOHjk0
BIOHAZARDやMETAL GEAR SOLIDとかそのままコピーだと
アメリカ人がヒーローになっちゃいますね。

日本人はケンドーやオタコンのような脇役に・・・
そして臣民の怒りを買った稲葉はタイーホ(Q_Q)

785 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 14:17:07 ID:uOA.dNtk0
我慢しきれずにエロゲ作ってタイーホされる可能性の方が高いと思うw

786 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 14:39:28 ID:idZjOHjk0
獣っ娘が出るのとかですか?でもストーリー重視エロ少な目なら
ダイジョウブかもしれない。例えば「うたわれるもの」とか

また獣っ娘は出ないけど泣きゲー(Keyもどき)とかなら…

787 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 18:09:12 ID:83/wJNuE0
>例えば「うたわれるもの」とか

そして帝國版うたわれるものラジオが…

788 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 18:15:47 ID:v2Ux.zXw0
>例えば「うたわれるもの」とか

特撮なしの実写で?

789 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 18:55:15 ID:CQ3KIkms0
>また獣っ娘は出ないけど泣きゲー(Keyもどき)とかなら…

けど服装でNGくらったり。
やれスカートが短いだ、やれ体操服が卑猥だとか。

790 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 19:27:30 ID:YnItC2I60
みんなしてシャオシャオいうからミニスカ眩しい竜の姫を連想してしまった
小ネタの稲葉はきっと某除霊事務所の助手が『模』で変装してるんだ


しかし、稲葉メガテンとはしぶいなぁ

791 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 19:58:49 ID:idZjOHjk0
>>788

実在する獣人のバラエティによると思います


>日本人はケンドーやオタコンのような脇役に・・・

オタコンは日系人じゃなかった・・・OTL(記憶が曖昧だ)

792 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 20:27:28 ID:LQMEt4tY0
>>790
って事は元世界の稲葉の雇い主は守銭奴でちょー傲慢なツンデレ女王様なんですね?w

793 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 20:41:14 ID:tTmSV0hU0
彼はオタ化する必要がないほど恵まれてるだろ・・・

794 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/04(金) 21:48:05 ID:njlPJyHw0
女神転生:主人公&ヒロインはイザナギとイザナミ

帝國的には核地雷ですね

795 名前:aik:2007/05/04(金) 23:07:32 ID:X91pYnQE0
ども、初カキコです。
さっそくですが獣人のマケドニア物を投下させていただきます。
よろしくお願いいたします。

796 名前:aik:2007/05/04(金) 23:08:54 ID:X91pYnQE0

西暦1999年、

マケドニア公国、首都中心部広場、某日、夜。


第13回、国家国民主義マケドニア労働者党党大会。

その場は現在、とてつもない程の熱気と興奮で包まれいた。

林立する旗、なにか一種、幻想的に炎をくゆらすタイマツの列。

誇らしげに行進曲を演奏する軍楽隊。

きっちり1mごとに屹立する兵士の群れ。

そして帝國方式よりも足を高々と上げ、一糸乱れず、規律正しく軍靴を打ち鳴らしながら行進する兵士達。


その兵士たちの黒ずくめの軍服にところどころある、銀の装飾にタイマツの火が反射し煌く。

それら全てが見る者達を興奮させ、そして熱狂させていく。

今の時点ですでにこの場に集う者の数は10万を越え、さらに増えていく。

さらにその興奮は帝國製ラジオを通じてマケドニア全土、1000万の国民全てにつたわっていく。

そしてその興奮は、ある人物が颯爽と壇上にあがる事でさらなる高みに上がる。

国家国民主義マケドニア労働者党の党首、アドルフ=緋虎(ヒトラ)

虎獣人のなかでも希少種といえる緋の虎の獣人である。

会場の割れるような歓声と拍手に迎えられながら壇上にあがるアドルフ。

壇上に上がった彼は背筋をピンとのばし、聴衆を見渡し、会場の歓声等が収まるのを待つ。

その様子に聴衆はアドルフに注目し、会場の雰囲気もピンと張り詰める。

そしてアドルフは静かに語りだす。

797 名前:aik:2007/05/04(金) 23:09:52 ID:X91pYnQE0

「我が親愛なる帝國臣民にして誇り高きマケドニアの公国国民諸君。

我々はこのマケドニアの地において高らかにこの世の春を謳歌している。

実に喜ばしい事だ。

もはや餓死する恐怖などはるか昔のことだ。その日の食事の心配をすることなどもはやありはしない。

寒さに震える事も、人間に追われ、殴られ、蹴られ、野良犬よりも哀れに追い払われる心配などありはしない。

我々が人間より迫害され、差別され、殴られ、蹴られ、親にすら捨てられ、故郷を追われ、そしてたどりついたのがこの地だ。

諸君、存分にこの平和を、幸せを堪能するといい。

帝國より下賜されたこの地は我々の楽園だ。

たからかに、誇り高く、獣人として生きていける楽園だ。」



アドルフはそこで突如、手を振り上げ、烈火の如く声を張り上げる。

798 名前:aik:2007/05/04(金) 23:11:03 ID:X91pYnQE0

「だが諸君、だがしかしだ、諸君!

我々の手にいれたこの平和は、この平穏は、この幸せは、未来永劫続くものなのだろうか!?

諸君、答えは否だ!残念ながら否なのだ!!

諸君、我々は、我々全マケドニア公国臣民は、ひとつの事実を、我々全員が理解し、共有しなければならない!

それは我々には絶対に相容れない敵がいるという事だ!

我々は長い、永い、長い間、ただ獣人である、ただその事実のみで、獣人であるという事だけで、謂われの無い迫害をうけてきた!

彼らは我々にただ奴隷としての服従を求めてきた!

ただ、家畜よりも惨めに搾取され、ドブネズミよりも哀れに死んでいく事のみを求めてきた!

我々獣人は、哀れな存在で、世の摂理から外れ、いてはならない存在だと!

我々獣人は、この世に生きていてはならない存在なのだと!

だから我々獣人には、何をしてもいいのだと!

それは今も、昔も、何も、変わってはいない!

彼らは今も、昔も、何も、理解しないし、何も、変わってはいない!

彼らは、それを理解しようともしなければ、それを理解する能力もありはしない!

諸君、彼らの望みはごく簡単な事実のみだ!

それは彼らの支配する奴隷階級としての獣人だ!

彼らが望む事は、ただひとつだ!

このマケドニアを、滅ぼし、我々獣人が、彼らの奴隷として、家畜よりも惨めに搾取され、ドブネズミよりも哀れに死んでいく事のみだ!

799 名前:aik:2007/05/04(金) 23:11:57 ID:X91pYnQE0

しかしだ、諸君!誇り高き、全マケドニア公国臣民諸君!

我々が彼らの、その無法で、悪辣で、馬鹿げた要求に答えてやる事は、未来永劫、ありはしないのだ!

諸君、彼らは今、この瞬間も、虎視眈々と、我々の事を狙っているのだ!



諸君!誇り高き、全マケドニア公国臣民諸君!

我々は、彼らに思い知らせてやらねばならない!

もはや我々が、ただ彼らに殴られるだけの存在では無いなのだと!

彼らよりも鋭い牙を持ち、彼らに気づかれない速さで彼らの咽喉笛を噛み切る事ができるのだと!

我々マケドニアの獣人の、胸の内には、熱き愛国心と、帝國への堅い忠誠心と、彼らには二度と屈せずという、尊い団結心があるのだという事を!



諸君!誇り高き、全マケドニア公国臣民諸君!

今、我々は覚悟せねばならないのだ!

この地は我々獣人の物だ!

そして、この地は、偉大なる使命をになっているという事を、全マケドニア公国臣民諸君は、理解しなければならない!

この地は、遥か遠き過去から、今現在にいたるまで、吹き荒れ続けている、獣人への迫害という嵐から、全ての獣人を護る為の砦でなければならない!

この地は、我々マケドニア獣人の、自由を護り、我々の幸福と、平和の為の砦でなければならない!

そして私はこの地が、そして諸君が、必ずや、その使命をやり遂げると信じている!

800 名前:aik:2007/05/04(金) 23:12:47 ID:X91pYnQE0

諸君!誇り高き、全マケドニア公国臣民諸君!

彼らは愚かにも我々獣人に、長きに渡ってあらゆる迫害を加え続けてきた!

だがしかしだ、元来、我々獣人は、彼らよりも優れた人種なのだという事を、諸君達は、理解しなければならない!

人と人の間から獣人は生まれる、この事実を彼らは愚かしい事に、呪わしい事のように語っている!

だが違う!我々こそが天照大神に祝福され、産まれた、新人類なのだ!

彼らこそが、獣人として覚醒も出来ない、劣った劣等種なのだという事を、判らせてやらなければならないのだ!

彼らの、完全に閉じて、曇りきった眼に、その眼を抉じ開け、突きつけてやらなければならないのだ!



諸君!誇り高き、全マケドニア公国臣民諸君!

私はこの地にて何度でも宣言しよう!我々には使命がある!

偉大なる天照大神に祝福された、親愛なる帝國と供に、我々はいつの日か、この世界を管理しなければいけない!

彼ら劣等種を、獣人たる我々が管理してやるのは我々の神聖なる義務なのだ!

そして我々は、必ずやその使命をやり遂げると信じている!

諸君達一人一人が、帝國と祖国に対する、労働、勤勉、共同責任と助け合いとによって、大いなる社会的、文化的、経済的問題を解決していく事を私は信じている!!


大日本帝國万歳!

マケドニア公国万歳!

全ての帝國人と我が親愛なるマケドニアの公国国民諸君に栄光あれ!!

801 名前:aik:2007/05/04(金) 23:13:28 ID:X91pYnQE0











その瞬間、








今まで身じろぎもしなかった聴衆達が爆発的な拍手と歓声をあげた。



ある者は滂沱の涙を流し、またある者は感情の高ぶりのあまり卒倒する。

そこにはただ狂ったようなとてつもない熱狂と、そして連帯感があった。




彼こそが後に全マケドニアを指揮し、帝國をも巻き込んだ大戦争を引き起こす事になる男である。

このアドルフ=緋虎という政治家の、帝國での評価は今でも真っ二つにわかれている。

ある学者はマケドニアを非文明国から列強と同じ位置にまで高めた、偉大なる政治家だといい、またある学者は、ただのいかれた狂人であり、彼のせいで意味の無い大量の血が流されたという。

その死後、長い時間がたっても彼の大きすぎる功罪に対する論争はやまない。

802 名前:aik:2007/05/04(金) 23:20:26 ID:X91pYnQE0
投下完了です。

微妙な題材だとは自分でも思いますが、投下させて頂きました。

もしかしたらありうるかもしれない世界ということで。

803 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/05(土) 00:10:01 ID:rdJ54INs0
一行ごとに空行入れなくていいよ。

804 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/05(土) 00:19:51 ID:8RNT3GbA0
投下乙です。

しかし人類を劣等種とすると、帝國人も必然的に劣等種ですよね。
いずれは独立運動とかやりだして帝國から抹殺されそう…

805 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/05(土) 01:13:01 ID:zgY5PHhw0
投下乙
緋虎氏がある学者の言うとおりただのいかれた狂人だったら帝國人も人類だから劣等云々と
言って殲滅されそうですがもしも緋虎氏が有能だったら帝國人は神聖にして人類より上の(以下略)とかいいそうですな

806 名前:aik:2007/05/05(土) 02:06:32 ID:X91pYnQE0
レス、ありがとうございます。

ちなみにこの話しを書くにあたっての緋虎さんの設定ですが彼の生まれはとある辺境の小国です。
彼は生まれてすぐに獣人としての力が具現化してしまい、捨てられてしまいます。
その後、一応は、きわめて運のいいことに教会に引き取られて生き延びることはできましたが、強烈な迫害にさらされます。
この時に人間に対する憎しみが彼の心に植えつけられました。

ちなみに彼は名前すらつけてもらえませんでした。その獣人の特徴からただ緋虎(緋色の虎だから)野郎とかてめえとか呼ばれていました。

しかし彼が5歳の時に大きな転機が訪れます。
その国に帝國軍が進駐してきたのです。もちろん帝國の狙いはその国で産出される銅と石油でしたが彼は結果的に帝國人によって保護されます。

ここで彼はいくつかの幸運に恵まれます。

まず彼は帝國人のたたきあげの軍曹に養子として引き取られたのです。
その軍曹夫妻は子供ができず、本国では肩身が極めて狭いため、辺境の邦国に定住する決意をしていた時に緋虎に会いました。

そこで緋虎少年は溢れんばかりの愛情と極めて高い教育を軍曹夫妻から与えられます。
ちなみにこの家族との生活を通じて、緋虎少年に自分を救って、さらに結果的にですが自分に家族を与えてくれた帝國にたいする愛情のような物が植えつけられたと思われます。

ちなみに彼の名前は養父に「わが国と同盟国だったアドルフ=ヒットラー総統と同じ名前だな。よし、お前の名前は今日からアドルフだ。アドルフ=緋虎だ。」という経緯でつけられました。

その後彼ら家族は住みやすいマケドニアに移住して、緋虎少年は色々活躍することのなるのです。

ちなみに後の学者達が彼の事を批評する時に絶対に意見が分かれないことが二つだけあります。

それは彼の養父・養母に対する絶対的な愛情と同じく絶対的なまでの帝國に対する忠誠心でした。
この二つを疑う者はただの一人もいませんでした。

807 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/05(土) 04:08:09 ID:zgY5PHhw0
>それは彼の養父・養母に対する絶対的な愛情と同じく絶対的なまでの帝國に対する忠誠心でした。
>この二つを疑う者はただの一人もいませんでした。

とすると狂人だろうが有能だろうが帝國に唾を吐きかける事だけは断じてしないでしょうね
何考えてるかわからん連中よりよっぽど帝國上層部には自らの手先として使う価値があるかと

808 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:44:09 ID:ku4Zs81k0
くろべえ殿投下乙です

>確かに帝國は強大だ。けど、この世界はたった一国で支配できる程――
嗚呼、早く帝國本土を見せ付けてやりたいです

aiKどの、投下乙です

緋虎君の熱烈な忠誠心、ここまで来ると迷惑この上ないですね。
ダークエルフの暗殺リストに載ってしまうかも



くろべえ殿ありがとうございます

50年代のアメちゃんは核の使用に忌避感を持っていなかったらしいですから、局地紛争で使っているかもしれませんね。政治情勢次第でしょうけど。

>>703さま ありがとうございます

再転移しても政治情勢が悪すぎますから…何処の国も帝國が滅んでもさしたる痛痒を感じないわけで

>>704さま ありがとうございます

帝國軍が悲観的な予測を受け入れるようになっただけでも進歩といえるかもしれません

>>715さま ありがとうございます

あくまで帝國がいくつか想定した状況のうちの一つです。もっと酷い結果がでた想定もありますので、何とか対抗手段の開発に走るというわけです。
ABMはどうでしょうかね?狭い日本上空でメガトン級の迎撃ミサイルを何百発と撃つと、どの道草木一本残らないかもしれません。

809 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:45:06 ID:ku4Zs81k0
投下開始しますね

ユフ戦記外伝・奇跡の翼 3


「中佐、野中中佐、起きてください。試験飛行の時間ですよ」

太い声と共に辺りが光に包まれ、眠気を追い払われる。
白い光は熱核弾頭ではなく朝日によるものであり、ここは松代ではなく神州島だ。そもそも野中はあの図演が終了した後、部屋から一歩も出ずに沈んだ声で結果が読み上げられるのを聴いたではないか。
寝ぼけ眼を擦れば、不満そうな中年男の痩せぎすな顔が浮かび上がってくる。
基地内に設けられた佐官の個室に入り込んでくる軍人は帝國にはそういないから、恐らく中島の社員だろうと当りをつけと、一言断ってから着替えを始める。
無論、今は昭和46年ではなく昭和26年だ。

/

「軍人という人種は、時間に関して一般人と些か異なる認識をお持ちだと窺っていましたが」

冷え込んだ宿舎の廊下を歩きながら、中島の社員(佐竹と名乗った)が零す。
確かに、試験飛行の2時間前になっても惰眠を貪るテストパイロットなどそう居ないから、彼の愚痴も尤もなのだが。

810 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:45:38 ID:ku4Zs81k0
「分かりました、以後気をつけます佐竹殿。これでいいんだろ?
とはいえ昨晩本土から着いたばかりなんだ、少しは労わってくれてもいいと思うのだが」

野中を第六計画に引きずり込んだ源田に付き合わされて各省庁に折衝に赴いたのは確かだ。
まあ、源田と野中が懇切丁寧に説得する、ということが相手方にどのように受け止められるかは想像に難くないが。
だからといって惰眠を貪っていい訳ではない。
今日が試験飛行の第二段階、その記念すべき初日であることを考えればなおさらだ。


帝國軍と中島は、破天荒ともいえる野心的な機体を実現するために、長期的な計画を練り上げた。
昨年六月の計画開始以来、即座に風洞と実験飛行場の建設が進められた。
遷音速風洞と超音速風洞での空力研究を経て実験機による遷音速、超音速飛行と言う流れだったが、そのプランが変更されるまでさして時間は掛からなかった。風洞建設に関わる技術的な課題が理由だ。ここでは詳しく触れないが、測定部にチョークが発生したり水蒸気が凝縮するなどの障害に直面した結果設計の変更を強いられているのだ。いっそ設計を変更するならレイノルズ数の改善のために特殊な気体を使用しよう、という話が持ち上がり風洞建設は混乱に陥っている。

811 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:46:37 ID:ku4Zs81k0
中島社内で呑気に風洞建設をしている間にも、軍の焦燥感は募るばかりだった。
両者の態度の差異は、中島側が技術史に於ける一つのエポック的存在として計画を俯瞰しているのに対し、軍はあくまでも実用兵器としての必要性から計画を推進している点にある。

そもそも軍が超音速機の開発に本腰を入れたのは、弾道弾への信頼が揺らぎ始めた昭和24年に行われた対米戦研究に起因する。
再転移時には日米両国の国民一人当たり所得は同等、核兵器を含む軍事・科学技術は同等、米国はアジアから撤退しているという楽観的な予測の元で行われた図演でさえ、死者8200万以上(昭和46年の推測人口は12000万)という衝撃的な結果が齎されたのだ。
昭和26年に至っても核兵器の実用に成功していないことや欧米で実用化されているはずのジェットが帝國で実用化されていないことに想起致せば、この図演がどれだけ楽観的な予測に基礎付けられているか分かろうというもの。
それでいてこの結果。
より現実的な条件下での予測に比べればマシなのだが、そんなことで慰められる筈もない。弾道弾が使えないこと、政治的に孤立していること、そしてアラスカや太平洋を押さえられていることを考えれば端から不利なことは予測されていたが、それでも薬が効きすぎた。
慌てふためいた軍上層部は弾道弾以外に米国を牽制し政治的譲歩を引き出しうる兵器を追い求めた。その結果がマッハ3で飛行し、迎撃態勢をすり抜けて中枢部に打撃を加えうる航空機というわけだ。

812 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:52:50 ID:ku4Zs81k0
仮に再転移するとしてもそれまで20年以上の余裕があると言われようが、技術的な立ち遅れを認識していた軍が焦るのも無理はない。第一ダークエルフが本当のことを言っているという保障はない。近々転移すると告げられれば帝國は邦国のことなどほっぽりだして自分のことにかかっりきりになるだろうから、ダークエルフが転移の直前まで帝國に通達しないというのはありえる話なのだ。
軍が空想の産物のような攻撃機を本気で開発推進をしていると気付た中島が本腰を入れたのは、計画開始から半年が過ぎてからのことであった。
要するに計画最初期での動きがテストパイロットに余計な負担を掛けている、というわけだ。
そして野中はそのテストパイロットに含まれており、彼からすれば中島に一言二言あってもよさそうなものだが、おくびにも出さない。どうせ最初から本腰になっていても、現在の技術力でそう簡単に風洞ができる訳ではないというのがその理由だ。


「機体の点検は鹿嶋中佐が済ませました。
ベース機の安全性が確認されているとは云え25試は実戦配備前なんですよ?もう少し緊張感があってもいいではありませんか。
整備不良で墜落死なんて冗談にもなりません」

佐竹の言葉を咀嚼すると、野中は慌てて問いかける。

「おい、噴射試験も無しなのに母機に乗り込むつもりなのか?
地上でのんびりしてくれても構わないんだが」

「いや、一応燃料も積み込みますし、霜の付き具合くらいこの眼で見ようと思いましてね。
それに第1段階程危険な真似もしないでしょう?」

813 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:53:22 ID:ku4Zs81k0
去年の夏ごろから紗那基地で行われた第1段階は、局地戦に感圧機や測定器を積み込んで高空から降下をするというものだった。
無論、唯の降下試験ではない。
遷音速域(機体は音速以下でも一部超音速の空気の流れが生じる速度域)での機体の挙動を調べるためのものであったから、かなり無茶な降下試験が行われ、9機の試験機と5人のテストパイロットと引き換えに貴重なデータが得られたというわけだ。
そして軍は風洞の完成を待たず、水平飛行での遷音速飛行並びに超音速飛行へと踏み込もうとしている。それが今日から行われる第2段階というわけだ。

「まあそうなんだが」

歯切れの悪い口ぶりで表面上は同意すると、二人は格納庫に足を踏み入れる。一介の機長に過ぎぬ野中にこれ以上の抵抗は不可能であった。



野中が叩き起こされてから二時間半、基地を後にした二十五試陸攻(後の連山)は4基の発動機を回して蒼空の高みを目指している。塗装を剥ぎ取り神州島北中部の荒地に巨大な影を落とし飛翔する様はかなり凄みが効いており、この機が非武装であることを忘れさせるほどだ。
その機内、本来なら爆弾庫やら機銃座に当てられるべき空間には機器が節操なく配置されている。機械類に埋もれるように5人ほどの人間が身を寄せ合っており、その中には佐竹や野中も含まれている。

814 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:53:52 ID:ku4Zs81k0
畜生、小山に任せて俺は管制室でのんびりしているんだった。
佐竹がご機嫌麗しくない理由、それは二十五試の乗り心地にあった。如何なる意味でも想像以上なのだ。

ここで二十五試について多少説明する必要があるかもしれない。
三菱が昨年海軍から受注を勝ち取った(腹立たしいことに中島を押しのけてだ)二十五試は、三菱が民間大陸航路に投入した傑作機DS−3をベースにしている。無論Dはダイヤモンドを意味する。
昭和23年に生産の始まったDS−3は、空気抵抗の小さい高高度を排気タービンを装備した発動機で飛行するというもので、高い経済性と高速性で民間大型機市場を席巻した。
昭和15年に開発されたA18発動機を発展させ、18気筒を二列22気筒に改め、気筒容量も54から66に拡大したA20発動機が使用された。無論民間向けにデチューンされているが、それでも排気タービンを装着した信頼性の高い2500馬力級発動機を投入してくる三菱の底力は流石というほかない。
二十五試はDS−3の設計を大幅に流用し、客席を取り払ったものだ。構造強化や防禦鋼板の装着と武装で重量が増大したが、発動機の行程を160から170に変更し、気筒径も150まで拡大することで出力を向上させている。元が旅客機だから安定性もよく、中島の六発機より遥かに安価。(このクラスの機体としては異例のことだが)4発の魚雷を抱えての低空雷撃ができるから、まさに海軍の望む陸攻ということなのだろう。

815 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:54:33 ID:ku4Zs81k0
その二十五試が、重量のある機械類を積み込んだ上に、腹に6トンにも達する荷物を抱えて猶悠然と上昇する様を体感すればライバル社の技術者としては複雑な心持ちだ。
佐竹はちらりと野中を見遣る。
彼は陸攻乗りが長いせいか、自分の身が操縦室から遠ざけられているのが気になるらしい。

「全く、防弾板に消火装置、タンクのゴムに武装も取り払ってるんですよ?
素直にDS−3を使えばいいんじゃないんですか?」

佐竹は何か言わないときがすまない。

「第1段階を陸サンが受け持ったからには、第2段階は全部海軍の機材でやらないと気が済まないんだろうよ。
競争に負けた中島サンは気分よくないかもしれんが、第六計画を請け負っているんだ。細かいこと気にすんなってもんだ」

帝國は一連の超音速攻撃機開発計画に第六計画という正式名称を与えた。
第六計画とは、大和朝廷の統一と大化の改新までの中央集権化、元寇の撃退、明治維新と近代化、転移後の自活体制構築、核研究に続く本邦始まって以来六番目の大事業という意味合いが込められている。
それだけの難事業を臣民の目を欺いて推進するのは並大抵のことではない。
メディアの隆盛と民主化の進む帝國にあって、恐らく最後の大規模秘密計画になると噂されている。

816 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:56:29 ID:ku4Zs81k0
「そんなことより、大丈夫なのかあいつは?
陸攻乗りの俺があんなのに乗ると思うとぞっとしないんだが」

「そいつは空技廠に聞いて貰えませんかな。
ま、計算上は大丈夫らしいですよ。風洞試験もしてないらしいですが」

野中の心中を察したのか佐竹はわざと冗談めかした口調で笑い飛ばすが、実際問題かなり危険な飛行試験といってよい。暫く押し黙った野中に操縦室から規定の位置に到達したことが告げられ、機体の中央に設けられたハッチを開ける。
本来ならばそこに高度8500メートルにおける外気が存在する筈なのだが、爆弾庫の後部に位置するそこには本来の流麗なラインを崩して膨らみが設けられている。

「佐竹君、湊川だぜこいつは。源田さんに引きずりまわされてえらい迷惑だ」

ポツリとつぶやいた野中は梯子の付いた細い通路を通り、二つ目のハッチを開けて潜り込む。
佐竹達は防弾硝子越しに胴体下部に眼を移し、状態を確認する。
胴体後部には砲弾状の子機が吊り下げられており、桜色に塗られた表面には白い霜がおりている。液体酸素のせいなのだろうが、思ったよりもマシだ。乗り込んだ野中からも、操舵系に問題はないと通信が入る。技術者達が固唾を呑んで見守る中、野中を乗せた子機は母機から切り離される。

817 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:57:14 ID:ku4Zs81k0
切り離しの衝撃は存外小さなものだった。
野中の乗り込んだ子機−正式には海軍航空技術廠・特殊試験機桜花−はこれまでの航空機にはない特徴を持っている。陸軍の担当した第1段階の試験飛行に引き続き高速飛行での空力特性を研究するためのものだが、水平飛行で音速を突破しようとする試みの前ではレシプロは採用し得ない。ペラの回転速度が音速に達すると効率的な推進が行われず、それでも高速を追求するには高馬力の発動機が必要とされるからだ。八式戦クラスの単発機を時速1000キロで水平飛行させるには1万3千馬力という途方もない出力が要求される。(無論発動機の大きさはそのままで、だ)
1900年代初頭においてシリンダー内爆発燃焼平均有効圧力は1平方センチあたり4.7kgfであり、回転数も毎分1100回転程度であった。
それから40年以上経て、過給機による呼気の加圧とピストンによる圧縮比強化により平均有効圧力は22.6kgfに、ピストンの軽量化などにより回転数は3000回転オーバーに達した。無論今後も出力・重量比は改善されるだろうが、レシプロの限界が見え始めてきているのは紛れもない事実だ。
とはいえ、パワープラントを積まないわけにはいかない。
ジェットの開発が間に合わない以上、それはロケットしかありえない。

818 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 04:57:45 ID:ku4Zs81k0
推力650キロのロケットを四基、そして1500リットルの液体酸素と1300リットルのアルコールを蓄えた桜花はゆっくりと滑空試験に挑む。
砲弾を改造したような胴体は15Gの加速にも耐えられる構造を持つ。後世の眼から見れば些か過剰ともいえるが、衝撃波の挙動が分からない現状では万全を期してのことだった。小さめの翼は、これまでの降下試験(通称ヘル・ダイブ)の苦い教訓から浅い後退角を持たされ、衝撃波の発生を遅らせる効果があるといわれる薄翼を採用している。
安全を考えて180ノットまで機速を落とした状態で切り離されたが、杞憂であったかもしれない。お世辞にも機動性豊かとはいえないが、野中の操る操縦桿に忠実に機体は反応する。とはいえ着陸速度が高いことは分かっているから最後まで油断はできないが、とりあえずは満足すべきだろう。
野中五郎中佐が昭和26年10月14日に帝國史上初の超音速飛行に成功するまで144日と28回の飛行を必要としたが、第2段階初日としては及第点といえるだろう。

投下終了です

819 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/05(土) 12:21:30 ID:X9DoCVGA0
猫じゃらしさん投下乙です。
 日本版X-1に桜花とは、なかなかのチョイス・・・。しかも、後退角付とは。
試験終わったら無人化版造って皇都にぶち込んじまえと思ったおれはまさに外道。
 あとDS-3用A20発動機ですがボアとストロークいじくらないで回転数下げたり、燃料噴射量
減らす方向がいいのでは。火星系(火星、ハ42=A18、ハ50=A20)のスリーブやピストンなどの部品
使えないと、量産効果無くなって高くつくかと。

aikさん初投下乙です。
 ちょび髭伍長よりは優れた戦略立てそうかな〜。(叩き上げ軍曹が親だし)
立ててもそれを修正実行できる優秀なブレーンがいないとどーしようもないですが。
まー特異なブレーンばっかで振り回される総統も見てみたひ。

820 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/05(土) 12:47:27 ID:U1uACm8A0
 aik様、投稿乙です。
 しかし1000万規模の獣人国に武器を供給できないのが帝國クオリティ。
 ……竹やりじゃあ駄目だろうな、やっぱり。

 猫じゃらし様、投稿乙です。
 一般市民が核の脅威を知らないと抑止効果は落ちちゃいますよね。困ったものだ。

>技術的な立ち遅れ
 ウチの場合、凄まじいです。
 一応、稲葉世界では……

 昭和16年末、転移
 昭和25年、米国の1943年レベル(ようやくレーダーまともになったよ!)
 昭和35年、米国の1945年レベル(原爆開発成功! 近接信管も大量配備!)
 昭和45年、米国の1948年レベル(ダ―クエルフ技術者の増加による急激な科学技術の上昇開始! 昭和49年には水爆開発成功!)
 昭和55年、米国の1955年レベル
 平成2年、米国の1963年レベル
 平成12年、米国の1973年レベル
 平成19年、米国の1980年レベル

 転移後30年間における科学技術の停滞は凄いものです。
 が、この間科学技術こそ停滞しましたが、生産技術や生産力そのものは着実に向上していきました。
 特に最初の20年でようやく大戦時の米英独並の基礎工業力を付けることが出来たのです。

 ま、あくまでジャンク世界の話ですが。

821 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/05(土) 12:48:08 ID:U1uACm8A0
>>771〜794
 多分……
 スーパーマリオの次に「スペランカー」を出したり、
 ドラクエ→FF→真女神転生ときて次に「稲葉の挑戦状」を出したり、
 Myst(PC版)→DOOM(ゲーム機)→「デスクリムゾン」……とかいう展開なんでしょうね。
 しかも稲葉印ではなく小さく「裏」という文字が付いている裏稲葉印シリーズです。
 とはいえこれらはあまりのクソゲーぶりに加え、販売本数も各10万本未満という少数さからかえって伝説となり、10年後には中古屋で定価の云倍で売られてたりして……

 でもまあ実際問題、稲葉に多数のゲームをちまちま作ってるヒマは無いでしょうね。
 だって本業の情報通信部門の利益年200億超に対してゲーム部門は30億以下……これじゃあ部下達に首に縄付けられて引き擦り出されますよ。遊んでないで働けって。
 せいぜい梃入れ用のキラーソフトくらいで、後は企画原案くらいでしょうね。

>コンバット越前
 稲葉が声優やったりいろいろ……

>女神転生:主人公&ヒロインはイザナギとイザナミ
>帝國的には核地雷ですね
 ごめんなさい、真の方でした。

822 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/05(土) 12:49:04 ID:U1uACm8A0
 チラシの裏。

 伝説のRPG『風雲稲葉城』(仮)
 魔王イナバに仕え、悪の限りを尽くせ!
 ……PTAで大問題になり即回収、稲葉は帝國議会に証人喚問された伝説のクソゲー。クソゲーオブクソゲー。

<あらすじ>
 村の一青年だったキバヤシ(名称変更可能)は、勇者にあこがれる平凡な少年だった。
 が……

「勇者様! やめて下さい!」
「うるせえ! 俺様の邪魔をするな!」 バキッ!
「俺は勇者だ〜、媚びろ〜媚びろ〜」
 村を訪れた勇者一行は村中の家々を漁り回り、樽まで壊して目ぼしい物を全て
奪い去っていった。
 ……正義のため、と称して。

 怒りに燃えるキバヤシ。
「こんなに辛いのなら…… こんなに苦しいのなら……正義などいらぬーーー!」
「キ、キバヤシッ!」
「俺は勇者を倒すぞ! ナワヤ、タナカーッ!!」
「「な、なんだってーーー!」」

 ……ごめんなさい、調子に乗りすぎました。
 こんな下らん物語を昨晩ウンKBも書いた自分って……orz

823 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/05(土) 14:11:27 ID:ku4Zs81k0
>>819 さま ありがとうございます

ああ、A20じゃなくてA21の間違えでした、ボア・ストロークはA21の数値です。
なんぼなんでもA20を旅客機用というのは無茶ですかね。
ということでA18→A21→妖星という流れです。A19は史実どおりポシャッて、A21は史実どおりではないのでA19の影響設けています。
桜花は後退角がX1とのちがいですかね、設計は空技廠の三木と服部両名、発案は大田特務中尉です

くろべえ殿ありがとうございます

その世界でしたら対米戦を断念してもよさそうなものですね。彼我の差を認識できればの話ですが

>こんなに辛いのなら
あれ、キバヤシ君の背中に聖帝十字陵が…

824 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/05(土) 14:30:02 ID:zgY5PHhw0
オーラ!ドンサウザー!!(サウザー違いだバカモノ)

825 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/05(土) 15:40:27 ID:l9V4ccXk0
>>822
や,やりてぇぇ!

『風雲稲葉城』のPCネーム変更可能でも,私はデフォのままでプレイするだろう
……ちなみにチーム名は「MMR,つうかお前ら仕事しろ」で

826 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/05(土) 16:21:49 ID:yRugYah20
帝國にPTA(というかそれに類する団体)はあるのだろうか

827 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/05(土) 18:13:19 ID:X9DoCVGA0
>822
ほえー、あれ(『風雲入谷城』)の元ネタそんなゲームだったの・・・。
技術の進歩には多少の犠牲はつきものですよー。

>823
いえいえ。小説で気になる部分をそのつど調べてるだけなので・・・。
A20旅客用は無茶ではないと思いますよ。手っ取り早く確実に3000超馬力のエンジン得たいなら
これがいいかと。輸送機ならあまり高速性は重視されませんし。

>825
(・ω・)人(・ω・)ナカーマ

828 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/06(日) 09:56:28 ID:U1uACm8A0
>その世界でしたら対米戦を断念してもよさそうなものですね。彼我の差を認識できればの話ですが
 彼我の差を痛感しているからこそ、ですよ。
 帝國の採った戦略は『道連れ』『死なば諸共』。
 多数の大威力核兵器で飽和攻撃を行い、アメリカを国ごと吹き飛ばす戦略です。
 その為の弾道弾であり、巡航ミサイルなのですよ。
 仮に元の世界に戻った場合、戦略級の弾道弾は年単位で使えないでしょうが、短距離弾道弾や巡航ミサイルは『なんとか』使えるでしょう。もしかしたら、めくら撃ちで良ければ戦略弾道弾だって使えるかも知れません。これで脅すのです。
(通常兵器の劣勢を補うため、大量の戦術核も保有しています)

 ……正に狂気の計画ですね。(ちなみに、これらの計画が満足いくレベルに達したのはつい最近のことです)
 転移後に生まれた若手・中堅官僚や軍人達など、『老人達の妄執』などと揶揄している位ですから。
 何せ、彼等は『帝國が世界の超大国として君臨している世界』に生を受けた者達です。
 故に、その思考は合理的かつ支配者的。それ以前の世代の『国力が無いから精神力で補うしかない!』という観念的思考とは無縁の方々です。
 そんな彼等の目には、『確かに核戦力は必要不可欠だが現状レベルは明らかに過大』と映っています。
 彼等が主導権を採れば、帝國の核戦力は大きく削減されるでしょうね。
 彼等にとって核兵器とは、『あくまで保険であり使えない兵器』でしかないのですから。

829 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/06(日) 09:57:02 ID:U1uACm8A0
>風雲稲葉城
 ごめんなさい、題名間違えました。ついさっきまで二次創作書いていたもので……
 本当は『キバヤシの奇妙な冒険』です。
 主人公キバヤシが勇者を倒すための冒険を通じて世界の秘密を暴いていく、という内容です。
 ま、MMRのノリですね。でも全体的にはジョジョ風味。スライムも当然ジョジョ風味、相当強い。
 ジョジョにMMRと北斗ネタを少々味付けした訳の判らんRPGです。無意味なCGも満載です。
 主人公達の絵もMMR風とジョジョ風で頻繁に変わる……

830 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/06(日) 14:28:17 ID:C4R5x5eE0
・・・なんか、その設定では辺境邦国から帝都に留学してきた
貴族の子弟が、親の目が届かないのと、いろんなカルチャーショックで
親の願いをぶっちぎって、毎日ゲーム漬けで将来必要な人脈をつくったり
学んだり・・・を、全くしないで卒業証書だけをもって帰国
なんてことがありそうですな。

そう言う設定の人物は、パリとかロンドンとかベルリンとかウィーンで
遊学して帰れなくなったロシア帝国貴族子弟とかに多いですが
邦国の三男坊あたりが、田舎である故郷に帰るのが嫌で一生、帝都で
放蕩して終わる、ということもあるでしょうな。

江戸時代の裕福な上級旗本の三男あたりみたいに。

831 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/06(日) 14:55:15 ID:HGD5Nfgc0
>>829
>>世界の秘密を暴いていく

あー、なんかMMR風にそれをやったら、体制批判っぽくなるかもしれませんね。
政府に強力な力があるであろう帝國世界では強烈な反発があるのも仕方ないかも。

832 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/06(日) 15:45:28 ID:XA/lA57k0
2005年に上映された邦画
ALWAYS 三丁目の夕日を今日見ました
ttp://www.always3.jp/index.html(公式サイト)

帝國の昭和30年代でも下町はきっとこんな感じだったんだろうな

軍人さんやDエルフのおねえさんが闊歩し
獣人の大工が日本人の親方に怒鳴られつつも汗をぬぐって良い笑顔で笑い、
その横を下町の子供達がゴム動力の飛行機をもって遊ぶ町

駄菓子屋におかれている少年雑誌には
帝國の華々しい活躍を題材とした空想小説が載って
子供達が空き地で囲むように読みふける

政府や軍の上層部は激動しつつも庶民は自分達の生活のなかで
毎日を生きていくそんな風景にこの帝國もなっていると良いなぁ

833 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/06(日) 21:23:38 ID:njlPJyHw0
ぶっちゃけ「我等が帝國は異世界から転移してきた」なんてのはどれぐらいの人間が信じてたんだろ
転移後世代にはそれこそファンタジーだろうし

稲葉ってのはそういう意味でも貴重なサンプルだったんだろうなあ
オーバーテクノロジーもって忽然と現れたもう一つの帝國人なんだから

834 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/06(日) 23:17:01 ID:xsS49mlo0
お二人とも投下乙です

マケドニアが強国になる、何かイメージ湧かないなあ…w
しかもアドルフwwwwww

高高度飛行機は漢の夢
しかし今の帝國技術では自殺用の缶詰になるか夢の具現になるか
野中パイロットの運命やいかに、でしょうな

835 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/06(日) 23:39:22 ID:YnrPq2J60
考えてみるとけっこう面白いかもしれない。>マケドニアが強国

マケドニア成立から数十年を経て
帝國式教育を受けた世代が実権を握るようになればあるいは…

836 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/06(日) 23:40:44 ID:Aiv4ngQU0
>マケドニア
おとなしく経済活動をしてればいいものを・・・

837 名前:陸士長:2007/05/07(月) 01:48:47 ID:IeXVgp960

自動人形。
それは和洋で遊戯用に作られた機械仕掛けの人形の事を指す。
定められた仕草をし、お茶を運んだり鐘を鳴らしたりダンスを踊ったりする。
それらはこの異世界でも存在したが、それはゴーレムの類に分類された。
故に、純然たる機械仕掛けは存在しなかったのである。
しかし、それをこの世界に持ち込んだのは大日本帝國。
そして、それを目に付けたのは一部のダークエルフ技術者達であった。

『これを、兵器として使えないだろうか?』と。


帝國が召喚されてから数十年後―――

とある列強国内の辺境にある、政治犯収容所。

「ん?」

暇な監視作業に飽き飽きしていた歩哨が夜空を見上げてみると。
何か黒点のようなモノが落ちて来るのが見えた。

「何だありゃ?」

月明かりを頼りに目を凝らしている内に、それはドンドン大きくなってくる。
円を描くようにして自由落下してくる12の影。

「人か?」

歩哨がそんな感想を洩らした瞬間、彼の眉間に穴が開いた。
スローモーションの様に歩哨が倒れていく間に、次々と12の花が空中に咲く。

「フフフ、みんな準備はいい?」

一輪の花の下で黒髪の少女が酷薄な笑みを浮かべた。

「ショータイムの時間よ」

一斉にコッキングレバーが引かれた。

「落下傘12、帝國の手の者か!」
「対空班何をしている、魔導師を動員して早く対空射撃を……」

中央にある司令塔で怒鳴っていた司令官は、降下してきたパラシュートが目前を通過するのを目にした。
そして、それにぶら下がっているやたらとヒラヒラとしたドレスを着た少女が両手に黒光りするモノを手にしているのを。

「伏せ―――」

司令官の言葉は、司令室を左から右にかけて吹き荒れた鋼鉄の雨によって強制的に終わらされた。
二丁の分隊支援火器によって蜂の巣にされた司令部は、その後向かいから降りてきた少女の投擲した6発の手榴弾で完全に沈黙。

指揮系統を寸断された刑務所守備隊は為す術も無く。
汎用型重機関銃に撃ちまくられ、狙撃銃で正確無比に撃ち抜かれ。
瞬時に詰められた後居合いで両断され、気配もなく投じられたナイフで命を刈り取られた。

「く、ば、化け物どもめ!」

竜車が3人の幼女によってひっくり返されるのを見て、呻きながら守備隊指揮官が身を翻して逃げようとした。
だが、彼が目にしたのは非常口ではなく、突き付けられた銃口だった。

「た、助け」

言い終わる間も与えられず、銃声が鳴り響いた。
帝國の盟邦の名銃を模した拳銃から硝煙を棚引かせながら、黒髪の少女はドレスを揺らめかせながら呟く。

「捕獲対象は……目標は見つかった?」

地面に広がった魔術陣を見つめている眼鏡を掛けた少女がそれに応じる。

「もう少し…………生体反応の照合……見つけた!」

838 名前:陸士長:2007/05/07(月) 01:49:34 ID:IeXVgp960
叫んだ少女が刑務所のとある場所を指さした。
守備隊を壊滅させた少女達がつられてそちらを見る。
刑務所の外壁に立つ人影を見る。そして、黒髪の少女が叫んだ。

「総員、回避!」

同時に、撃ち放たれた光の奔流が数秒前まで少女達が居た場所を吹き飛ばした。
黒煙を突き破るようにして現れた少女達が、狼狽える事なく次々と銃や獲物を構え直す。
左腕を肘から先吹き飛ばされた黒髪の少女が、忌々しげに人影を睨み付ける。
色々な部品が露出した肘の先から、電気が微かに弾けた。

「……あれで、間違いない?」
「ええ、間違いないわ。最後に確認された身体的特徴、生体反応、共に合致している」
「お姉様、あれが目標の……」

手榴弾を手にした少女の問いに、黒髪の少女が答える。

「ええ、そうよ」

外壁に立つ男は、何というか異常だった。
痩身小柄な体を覆うモノは、股間に巻いた越中褌のみ。
右手に得体の知れないオーラに包まれた日本刀を握り締め、左の肩には魔導砲を担いでいる。
その口径はざっと見ても120mmはある。人間が担げる代物ではない。
剃髪した頭からは猛然と湯気が立ち、眼窩にかけた丸眼鏡を白く曇らせている。
……どうやら、怒ってるようだ。

「あれが、辻正信!」

少女の声に答えるようにして、男は魔導砲をぽいと投げ捨てる。
仙人のように長く豊かに伸ばされた髭に覆われた口端がニヤリと歪んだ。

「行儀のなってない婦女子達だ……後で小官がたっぷり再教育してくれる!」

……
…………
………………

「どうされましたか大隊長殿、随分魘されてましたが」
「……いや、今企画している戦闘用自動人形の完成体達が、何故か秘境探検に行った帝國軍大佐と戦っている夢を見ただけだ」
「はて、糖尿病で悪夢を見るような症状は無かった筈でしたが」
「医者の説明では無かったな……ところで目覚めのココアを淹れてくれないかね?」
「なりません。これ以上入院期間を延ばされては困ります」

―――

ゴスロリ少女達が重火器を振り回して戦う様が書きたかった。
今でも反省はしてない。イエフー。

839 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/07(月) 01:53:41 ID:Oyk9xUWE0
ちょwwwそれなんてコヨーテラグタイムショーwwww

840 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/07(月) 01:56:46 ID:xsS49mlo0
辻がまるで塾長のようであるwwwww

841 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/07(月) 04:55:29 ID:lUmeIgxc0
「ワシ陸軍塾塾長 辻正信である!!」
まーた受信した
カチャ
;y=ー( ゚д゚)・∵;; . ターン

842 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/07(月) 09:00:32 ID:U1uACm8A0
 陸士長様、投稿乙です。

>糖尿病
 やっぱりか……
 しかしこの頃の医療レベルではかなりヤバイ病気ですよね、これ。

>>830
 あ〜、長男次男当たりは責任もあるし、お目付けの監視もありますからアレですが、責任の無い三男坊当たりはそうなる可能性が高いですねえ。
 以前ジャンクで書いたタシュケント王国の王様もそういう設定でしたし。
(で、無理矢理連れ戻された)

>>831
>政府に強力な力があるであろう帝國世界では強烈な反発があるのも仕方ないかも。
「では次のニュースです。
 TCSの稲葉会長は議会に呼び出されたことに対し、『ネタにマジレスされてもなあ』などと意味不明の言葉を発していました。
 解説の山田さん? これは一体どいう意味でしょうかね?」

「良く判りませんが、とりあえず『空気嫁』とだけ言っておきましょう」

 ――しばらくお待ち下さい――

「……失礼しました、ニュースを続けます」

>>832
 帝都大開発がどの程度進行するか、でしょうねえ。
 あんまりやり過ぎると……

>>833
 実感湧かないでしょうしね。
 ……数世代たったら大半が知らなさそう。

843 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/07(月) 16:50:54 ID:njlPJyHw0
ダークエルフや獣人達は「神」に見放された種族ではあったけれど「信仰」はあったんじゃなかろうか
たとえば祖霊(むしろトーテム?)信仰とか、以下妄想

シャオ 私達のご先祖様はとっても強い方だったらしいんですよー
稲葉  しっぺいたろうとか?
シャオ だから犬じゃありません!!
     たしか名前は……がる…がるる?
稲葉  がるる…ガルルモンだって?! 知らんかった! ここはデジタルワールドだったんだ!!
シャオ あぁ……また始まっちゃった……
稲葉  完全体にはなれたのか? ジョグレスとかどうなのよシャオちゃん
シャオ 完全鯛って尾頭付きの事ですか? じょぐれすってのは何なんです?
稲葉  ジョグレスってのは合体のことだよ合体
シャオ 合体? 尾頭付き=おめでたい…合体……
     いっいっいっ稲葉さんのバカーーーーーーー


ロン  真昼間から何をやっているんだ何を

844 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/07(月) 21:03:53 ID:TUO7HKS.0
>>842
> 以前ジャンクで書いたタシュケント王国の王様もそういう設定でしたし。
>(で、無理矢理連れ戻された)

その話どこですか?

845 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/07(月) 21:14:59 ID:HGD5Nfgc0
皇軍スレ12の661あたりのSSでしょ。

846 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/07(月) 21:30:03 ID:HGD5Nfgc0
>>842
>>以前ジャンクで書いたタシュケント王国の王様もそういう設定でしたし。

で、一応自分も読み直してみたんですが、
この王様、帝國を「本国」って呼んでるんですね。
もう骨の髄まで帝國に染まってるみたいですな。
いくら邦国とはいえ、一国の王がこの認識ではヤバすぎますw

847 名前:初めての名無しさん:2007/05/07(月) 23:54:20 ID:JIuHZ6lo0
最初の一日


 大日本帝国が置かれている政治状況は、1941年末に至って破局の様相を呈していた。
破局の一歩手前から、完全な破局へと状況を悪化させた7月の南部仏印進駐。
これに対する米国の反応は在米日本資産の凍結と石油輸出の全面的な停止という激烈な物であった。
島国であるが故にその国防力の大半を海軍に依存し、物流の生命線を船舶に頼る大日本帝国にとって
石油の枯渇は、正に悪夢そのものであった。

 大日本帝国は―帝国から見ればだが―この傲岸不遜なる仕打ちをある意味、顔面に手袋を投げつけられた物と
解釈した。
帝国はこれに応じて、11月26日に択捉より大日本帝国の稼動正規空母全てをかき集めた機動部隊を出撃させる。
これが、帝国の返答であった。
政治的な破局は、軍事的な破滅へとその第一歩を踏み出したのだ。

 第一航空艦隊旗艦赤城の艦橋で茫漠たる海洋を半ば手持ち無沙汰に眺めているのは、
水雷屋の第一人者、或いは艦隊運営の名人とも呼ばれている南雲忠一中将その人であった。
だが、その顔色は優れない。
酒と潮風で赤焼け、年月が独特の風貌を与えるべく刻み込んだ皺で
構成された彼の顔面には深い憂慮―簡単に言えば猛烈な不安―が影を落としていた。
その理由は、大日本帝国がこれから圧倒的国力差を相手取った一大戦争をやり遂げる事に対する憂慮
というよりも、自身に与えられた戦力とそれを行使すべき対象にあった。

 彼の手元には、大日本帝国が作り上げた正規空母全てが存在していた。そしてこの破壊力を叩きつける相手は、
米国太平洋艦隊の本拠地・・・真珠湾なのだ。
そこに待っているのは断じてイタリア人ではない。
もしも万が一、この奇襲計画が露呈していたら、ハワイが極めて厳重な警戒態勢にあったら、
更に恐るべき想像として、迎撃を受け、この艦隊を傷つけてしまったなら、彼一人が腹を切ったところで
到底どうにかなるものではない。
その恐るべき想像が事実となれば、帝国の戦争は完全に失われてしまうだろう。

 彼は、第一航空戦隊旗艦赤城の艦橋で、彼自身に対する個人的な戦争を先ず戦っていたのだ。
だから通信参謀が駆け込んできて彼に一通の電文を手渡した時、その不安や恐れを顔面に出すのを
なんとか堪え様とあからさまなしかめっ面をして見せたほどだ。
電文に目を落として、彼は小さく呻いてそのしかめっ面を更に歪めることとなる。

電文にはただこう記されていた。
「ニイタカヤマノボレ 一二○八 」

1941年12月2日の事だった。矢はつがえられたのだ。

848 名前:初めての名無しさん:2007/05/07(月) 23:55:00 ID:JIuHZ6lo0

 赤城の艦橋は厳重な灯火管制下にあった。すでに陽は落ち、海洋がどす黒く変貌した世界で
灯りと言える物は、前方を進む駆逐艦のマストの上に点滅する識別灯のみ。
その暗闇が支配する艦橋には、夜が更けているにも関わらず多くの幕僚が参集している。
今日、この日艦隊は斉動を行い一路真珠湾へ向けて南下することとなっていた。

「長い旅路だと思っておりましたが、千里の道も漸く先が見えてきましたな」
誰一人何も言わない艦橋で、張り詰めた緊張を打ち破るべく声を挙げた人物が居る。
どっぷりと太っていて豪胆で知られる草鹿参謀長である。
「ここまで露見したとは思えません。潜水艦らしきものの触接もどうやら杞憂だったようですし」
これは参謀長なりに南雲中将を安心させようと気を使ったのだ。
最近の南雲中将は、自分自身との戦争にとかく人を巻き込む傾向にあった。

これへ南雲中将がどう答えるべきかと思案し、口を開く前に楽観家の代表格であるような男が口を挟む。
「搭乗員連中はアリゾナのどてっぱらに魚雷をぶち込みたくてうずうずしとります」
艦隊の航空参謀である源田であった。ちなみに南雲は源田のことをあまり好ましく思っていない。
「長躯ここまでやってきましたが、搭乗員の士気は全く問題ありません」
言外に中将閣下の士気の方が些か減衰しておりますが、という含みを持たせた発言に、
南雲は何も答えなかった。

彼はただ茫漠たる黒い海洋を眺め、首からぶら下げた双眼鏡に何気なく右手を添えているだけであった。
もはやルビコン河はとうに後方にある。腹をくくらねばならないときが来たようだった。
再び沈黙に包まれた艦橋で、南雲はただこうつぶやいた。
「来た、見た、勝った」
草鹿参謀長は大きく頷き、源田航空参謀も頷いて言う。
「攻撃隊の発艦は早朝です。キンメルの朝飯に爆弾で伴奏を添えてやりましょう」
これには南雲が少し不愉快な顔をした。南雲はこのような飄々とした物言いはあまり好きではなかったのだ。
だが、好き嫌いとは全く別の次元で、彼ら、第一航空艦隊の主任務は、正にそれであった。

しばらくして前路哨戒で進む駆逐艦の識別灯がかすかにかすんでいるように見えた。
「霧か」
南雲はそう呟いてガラス越しに点滅を繰り返す青みを帯びた光源を見やった。
「濃霧にならなければ良いのですが」
「各艦に発光信号を・・・艦隊距離に注意されたし」
信号機を操作するガチャガチャという機械音を聞きながら、南雲は草鹿の方を振り返って言う。
「なぁに、そう濃い物にはなるまいよ」

 南雲中将の言うとおりであった。五分も経たずに薄い霧は晴れ渡り、再び息を吹き返したように
識別灯が点滅を繰り返している。
其れでは―、僕は休ませて貰うよ。と南雲は告げた。

腹を括った南雲中将は久々にぐっすりと眠った、一時間だけ。

最初にその異変に気が付いたのは航海士官であったり、航海科の下士官であったりした。
何時ものように艦隊位置を天測で割り出そうとした彼らは、見つけるべき星を見つけられなかったのだ。
それも、絶対に不動であるとされている北極星を。

最初にその事実を発見した彼らは、他の星を探すが、その空は彼らの常識を覆す物に支配されていた。
巨大な月が浮かんでいたのだ。

泡を食った彼らはその直属の上官のもとへ、この天変地異を伝える。
長い航海で頭が変になったんだななどと笑って艦橋へ上ってきた航海長―これはほぼ南雲艦隊全艦で
見られた光景だった―は彼らよりも輪をかけてパニックに陥った。
その月は、彼らが眺めていたそれよりさらに大きく、酷く赤かったのだ。

849 名前:初めての名無しさん:2007/05/07(月) 23:55:34 ID:JIuHZ6lo0
投下完了です

850 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/08(火) 01:20:25 ID:Td9UQKsI0
投下乙。
南雲艦隊のみの転移…いろいろとやばそうで…

851 名前:名無し三等兵@F世界:2007/05/08(火) 01:27:07 ID:BsYgcDrM0
投下乙です。
航空母艦6隻+その護衛艦ですから、戦力としては凄いのですが、残りの燃料と弾薬が気になる展開になりそうですね。
帝国自身の戦力も大幅ダウンで大変なことになりそうですが。

852 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/08(火) 02:29:40 ID:RrAkh9vU0
投下お疲れ様です。
皆、このSSどう思う?
すごく・・・続きが気になります。って感じでワクテカ待機です。

853 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/08(火) 08:41:32 ID:U1uACm8A0
 初めての名無しさん様、投稿乙です。
 一航艦のみの転移ですか、これこそ転移物の王道、頑張って下さい。

>>843
>しっぺいたろう
 稲葉、渋いチョイスですね。
 ……しかしシャオちゃん、しっぺいたろう知ってるんだ。

>>846
>いくら邦国とはいえ、一国の王がこの認識ではヤバすぎますw
 帝國での生活の方がタシュケントでの生活よりも長かったですからねえ。
 しかも多感な青少年時代、まるまる帝國で生活してますし。
 ……王位を継ぐことが決まった後、親しかった友人にこう漏らしたそうです。

「嫌だなあ、行きたくないよ。タシュケントは帝都から数千キロも離れているし、本当に何も無い所なんだよ。
 ……嫌だなあ、ぞっとするよ。僕はあんな“この世の果て”で一生を終えるのか」

854 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/08(火) 10:25:45 ID:4ePyWikw0
>>853
貧乏邦国では留学経験アリの王様が凄い勢いで子供を作って王位を譲り、
本人はさっさと隠居して伊豆や軽井沢に別荘建てて優雅に暮らしてたりするんすかねw

855 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/08(火) 10:50:32 ID:83/wJNuE0
>伊豆や軽井沢に別荘

貧乏邦国の場合、街中にその邦国のレストランとか、雑貨品や小物を売る店を作ってその2階に住んでいそう。
いや実際、小国の大使館の中にはそういう所もあるらしいですし。

856 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/08(火) 10:58:58 ID:U1uACm8A0
>>854
 若い内は流石に無理ですが、老後は……という例が多いでしょうね。
 けど滞在に年数十万〜数百万圓かかるだろうから、国家歳入が年数億圓、下手したら数千万圓程度の貧乏国には少なからぬ負担です。
 これに子弟の留学費用や帝國に支払う税金(GDPの5%!)を考えたら……

857 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/08(火) 11:08:47 ID:U1uACm8A0
帝國召喚 外伝1「カナ姫様の細腕繁盛記」

 カナを散々からかって――タチが悪いことに自覚が無い――気分を切り替えた有馬大尉は、ほろ酔い気分で部下達の所へと向かう。
 丘を下りる道からは、シュヴェリン兵が降伏して捕虜となったメクレンブルク兵を使い、戦場の処理に当たっている光景がいたる所で見えた。

 現在、シュヴェリン軍は戦場処理でてんてこ舞いになっている。
 捕虜も、遺体も、戦利品も、何もかもが多過ぎたのだ。
 加えてシュヴェリン兵は疲労しきっていた。早朝からの休み無しの戦闘後、こうして軽装とはいえ鎧兜に身を包み、腰には剣、手には斧槍を携え捕虜を監視・監督しているのだ。ある意味、捕虜のメクレンブルク兵よりも辛い。
 ……ああ、上の連中も大変だ。事務官まで戦闘に投入し、その半数が死傷したため、只でさえ膨大な事務手続きがますます滞っている。
 下の戦争処理が肉体労働なら、上の戦争処理は書類書きである。今頃、彼等は膨大な事務手続きを必死で消化しているだろう。

 この様に、シュヴェリン軍は勝利の祝杯を上げる暇も無い程忙しかった。
 ……まあ帝國軍の力を見せ付けられ、とても祝杯を上げる気分にはなれなかっただろうが。


「ご苦労なことだねえ」

 戦場処理とは無関係――いや本当は大いに関係がある筈なのだが――の有馬大尉は暢気なもの、そんな他人事の様な言葉を呟きながら歩を進める。
 と、前方から何やら兵が駆けてきた。彼の部下だ。

「中隊長殿! 大変であります!」

「何事だ?」

858 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/08(火) 11:09:19 ID:U1uACm8A0
 慌ててはいるものの小声で話す兵の言葉に、有馬大尉の酔いが急速に醒めていく。
 が、それは思いもよらぬ内容だった。

「師団司令部より参謀殿がお見えであります!」

「参謀殿? しかも師団の? ……一体、何用だ?」

 有馬大尉は首を捻った。

「中隊長殿、“さんぼうどの”ではありません、“さんぼうどの”であります!」

「? ……! 参ったなあ、よりによって“三暴殿”か」

 兵が指を3本指し示したことで、ようやく有馬大尉は理解した。
 参謀は参謀でも、“三暴殿”が来たことを。

 第六師団作戦参謀、水谷中佐。通称“三暴殿”。
 その無謀、横暴、乱暴さから『参謀ではなく“三暴”』と陰口を叩かれる程の人物――と言うだけでその人となりが判るだろう。
 以前は関東軍参謀を務めていたのだが、二年前に第六師団参謀に転出し、現在に至る。
 ……事実上の左遷である。『ノモンハンでやり過ぎたため左遷されたらしい』と専らの噂だ。(嘘か真かは不明だが、ノモンハン後に指揮官達に自決を強要したらしい)
 が、左遷後もその性格――これは噂が真実だった場合の話だが――は変わらず、今度は支那で暴れまわっていた。
 当然、そのツケを最も支払わされる立場である中〜大隊長達からの評判は極めて悪かった。(かくいう有馬大尉もその一人だ)

859 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/08(火) 11:09:59 ID:U1uACm8A0
 ――ちっ、よりによって三暴殿かよ。

 有馬大尉は露骨に顔を顰め、内心舌打ちした。
 この手の輩は先の大軍縮でかなり数を減らしたが、全員が全員去った訳では無い。
 “三暴殿”は幸運にも――周りにとっては紛れも無く不幸だが――後者であり、退役を免れた。

「今 軍曹殿が応対しております。お急ぎを」

「判った、直ぐ行く。御苦労だった」

 有馬大尉は兵を労うと足を速めた。
 ……その急な来訪を訝りながら。




「大尉、いつまで『遊んでいる』! さっさと片をつけんか!」

 それが水谷中佐の開口一番の言葉だった。

「……『遊んでいる』とは?」

 軽く聞き流しておこう、と考えていた有馬大尉はこの言葉に顔色を変えた。
 が、水谷中佐は鼻で哂う。

「当然だろう! いつまでも“戦国ごっこ”などしておらんで、今直ぐ三国に侵攻せよ!」

「しかし、自分等はシュヴェリン付になっております、勝手な真似は――」

860 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/08(火) 11:10:42 ID:U1uACm8A0
「命令だ!」

 ――命令、ね…… お前に命令権なんか無いだろう?

 有馬大尉は内心毒づいた。
 参謀に命令権は無い。ましてや軍直属となっている現在、彼と彼の中隊は第六師団から切り離されている。元の大隊からの命令だって聞く必要は無いのだ。
 ……が、それはあくまで形式上の話に過ぎない。
 実際問題“軍直轄”など一時的なものに過ぎない以上、師団の意向を無視することなど出来ないし、その中枢にいる参謀の言葉を無視するなど愚の骨頂である。
 故に、水谷中佐の言葉は相当な強制力を持っていた。
 ――とはいえ、さすがに今回の“命令”は滅茶苦茶だ。これでは軍司令官の意向に真っ向から反してしまうではないか。

「シュヴェリン軍は現在、疲労により戦える様な状態ではありませんが」

 あちらを立てればこちらが立たず、有馬大尉は再度弁明を試みた。
 そして、水谷中佐の真意を探る。
 一体、何を企んでいる? 何が目的だ?

「お前は馬鹿か!? シュヴェリンなぞ関係ない、我が軍単独に決まっておるだろう!」

「……しかし先程も申し上げました様に、我が中隊はシュヴェリン付になっております。勝手な真似は出来ません。
 また、単独での敵地侵攻には不安があります。地理や風俗に不案内過ぎますから」

861 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/08(火) 11:11:14 ID:U1uACm8A0
 そう言いつつ、有馬大尉は確信した。
 水谷中佐は軍司令官の意向を無視し、初期の計画に従ってフランケルを完全制圧しようと考えているのだ。
 ……如何にも“三暴殿”の考えそうなことである。
 恐らく、軍司令官の不在――有馬大尉は知らないが――を奇貨とし、一気に既成事実を作り上げる腹積もりなのだろう。

「先の戦勝でシュヴェリンの危機は去った。である以上、契約は終了したものと判断できる。
 地理についても心配するな。ちゃんと道案内を用意した」

 そう言って水谷中佐が顎で示す先には、一人の男が立っていた。






 SS投下終了。

862 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/08(火) 17:25:28 ID:83/wJNuE0
水谷参謀…水谷一生!?
色々と洒落にならない人が来ましたね…

863 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/08(火) 17:26:08 ID:83/wJNuE0
うぉ、間違えて書き込んじまった…
投下乙です。

864 名前:名無し三等兵@F世界:2007/05/08(火) 18:23:40 ID:Ft8EYybM0
くろべえさん、投下乙です。

「サンボウ殿、戦車がポンコ…、いや整備不…、いえオーバーワークな為に、戦車を伴っての進撃が不可能であります。
軽機と小銃の弾数も作戦行動には不足ですので、補給をした後に行動を開始したく思います!」
嘘は言っていません(笑)。

道案内はダークエルフですかね?

865 名前:陸士長:2007/05/08(火) 21:49:15 ID:.X5kEQkU0
>>839 >>840 >>841 くろべえ氏

感想ありがとうございます。ぶっちゃけラグタイムショーまんまです本当に(ry

糖尿病
やばいみたいですね〜。おまけに治療中はお菓子食えませんし治療後も思いっきり制限されますしね。
なので、ここら辺から彼女は「病気を気にしなくて良い体」に執着を始めます(ヲイ

866 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/08(火) 23:05:45 ID:xsS49mlo0
犬じゃないんですー><
狼なんですー(ヲ

投下乙です
そういう定着する王、たちのおかげで帝國のデザインセンスが向上するとか
考えてみるだけで面白いですなあ
しかし参謀のウザイ事ウザイ事、辻といいこんなんばっかりじゃ勝てるものも勝てません
風紀も乱れるし誰か粛清してくれないかなあ…

空母召喚の人も乙です
戦力大きいけど補給できなければ…
続き待ってますよー

>>865
その先にあるのは電脳サイボーg
なんでもないですw

867 名前:陸士長:2007/05/08(火) 23:24:20 ID:.X5kEQkU0
>>その先にあるのは電脳サイボーg

いやいや、元ネタに忠実な形で吸血鬼に(以下略

868 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/09(水) 07:09:15 ID:U1uACm8A0
>>862、863
 862様、有難うございます。
>色々と洒落にならない人が来ましたね…
 こういう連中も職務に関しては『全く無能』という訳では無いですからねえ。特に平時のデスクワークとかは。
 また過激思想の持ち主の全員が全員『軍事的に無能』ではなく、優秀な野戦将校も大勢おります。
 ……そんな訳で、こういった連中全員排除するのは不可能です。政治はもとより、人材面で軍が崩壊しますから。
 目立った者、運の悪い者を予備役に回すのが精々ですね。
 まあこれだけでも十分画期的ですが。

>>864
 名無し三等兵様、有難うございます。

>嘘は言っていません(笑)。
「馬鹿者! 足らぬ足らぬは気合が足りぬのだ! 足りぬ分は気合で補え!」
 ……的なお方なので、ムリかと。

>>866
 866様、有難うございます。

>犬じゃないんですー><
>狼なんですー(ヲ

 HPに前のSS『ネコミミを求めて三千里』(改題)をUPしました。よかったらどうぞ。
 ……まあ稲葉の場合、三千里どころじゃあないのですが。

>帝國のデザインセンスが向上
 ヒマにまかせていろいろな事やるでしょうからねえ。
 幼い頃から良い物に囲まれ、自然とセンスも磨かれているでしょうし。

>こんなんばっかりじゃ勝てるものも勝てません
 そこが帝國クオリティです(笑)
 上手くいきかけてきたものをブチ壊してくれやがる方々には事欠きません。

869 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/09(水) 18:20:54 ID:CQ3KIkms0
皇軍スレ12のタシュケントの話を見た時に気付いたんですが
旧召喚本編8−1、「自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた(分家)」には投函してなかったんですね。

870 名前:初めての名無しさん:2007/05/09(水) 19:20:44 ID:JIuHZ6lo0
 最初の一日  「軍人的な、あまりにも軍人的な」


  南雲機動艦隊に所属する艦艇に皆等しく人間として当然なパニックに襲われている時、軍人としても
悪夢のような状況が同時に顕在化した場合、或いは人はどう反応するのだろうか。

 
 巡洋戦艦霧島の通信傍受班は、艦外に荒れ狂う喧騒と狂騒を目撃した自身の眼球よりも彼らの目の前に
鎮座している受信機を信用していた。
目は狂っても、耳とそして電信は狂うことがないのだ。或いは彼らの接している機材自体が
半ば彼らにとって―幾ら理解していたとしても―魔法に近い物だったから、なのかもしれない。

霧島のある電信員はそれを聞いてほっとため息をついた。
外じゃなんでも別の世界に飛ばされた、なんて言っているけれども、そんな事はない。
ちゃんと聞こえてくるじゃないか―

「ここで気象情報をお伝えします 西の風晴れ 西の風晴れ 」

帝国本土との繋がりを確信した彼は肩の力を抜いて本来の任務へと戻る。
結果は、電信員にとって衝撃以上の何かだった。

彼は通信長を大声で呼び、悲鳴を上げる。若しも機材の故障であれば、彼はどれだけ安心できた事か。
「米軍の無電を傍受できません!ハワイの放送局も同様です」
通信長はきっかり十分間だけ傍受を続けさせ、電信員が首を横に振ると、設置されている高声電話を手に取った。
「通信長より艦長。艦長、米軍の無電を全く傍受できません、ハワイは完全に沈黙しています」



 赤城の艦橋で、異世界だの世界が終わる日だのと自身の不安をぶつけ合っている参謀連中を呆然と
見やっていた草鹿参謀長のもとへ通信参謀が飛び掛らんばかりに駆け寄って来た時、
南雲中将は、草鹿参謀長と同じように茫然自失の状態にあった。
だから草鹿参謀長が半ば悲鳴に近い声を上げた時、年甲斐も無く飛び上がってしまった程だった。

「南雲さん!霧島が本国の気象放送を傍受しています!」
この一言は、異世界だの世界の終わる日だのという妄想を一挙に消し飛ばした。
だが、これは南雲にとって決定的な一言ではなかったのだ、彼の参謀長は彼にとって最悪な事を告げる。

「ハワイのラジオ局が放送を停止しており、米軍の無線電信も同様に傍受できません」
この絶叫に赤城の艦橋は一瞬にして静まり返った。


「無線封止」
誰かが、まるでそれは神への呪いの言葉であるかのような発音で呟く。
なんてことだ・・・
草鹿は、通信参謀から渡された霧島からの報告にちらりと目をやった後、南雲中将の方をうかがう。

流石、海の男というよりも海軍軍人と評価すべきだろう。
南雲も戦争に役に立たない赤い月の事は当面どうでもいいと即座に思考を切り替えていたようで、
腕を組んで唸るように言う。
「暗号がやられている?」
草鹿も頷く。
「その可能性は極めて大です。攻撃日時の通達があった日の夜に米軍が無線封止を行うなどと」
「しかしハワイのラジオ局まで沈黙とは」
ラジオ局、と呻いた者が居る。
「源田君、どうしたのか?」
「こりゃ作戦そのものが見抜かれとります。攻撃隊は、ハワイまでラジオ長波を辿って向かうんです。
それを止めたとなれば」
この言葉に草鹿は顔を真っ青にして、その巨体を海図台に手を突くことで漸く支える事が出来た。
「暗号だけでなく・・・奇襲計画まで漏洩していたと、そう言うのか」

幕僚達は真っ青を通り越して土気色へ変色した顔を互いに見合わせた。
米軍は、確実に戦争に備えている。
いや、それだけではない市民生活を直撃するラジオ放送まで止めているのだ。
市民の自由を高らかに謳いあげているあの国が、だ!
ハワイへの航空攻撃に備えている、以外の結論は導きだせないではないか。

871 名前:初めての名無しさん:2007/05/09(水) 19:22:02 ID:JIuHZ6lo0
「なるほど・・・それで全てのつじつまが合う」
南雲忠一は、海図上に示されている自艦隊の位置―天測が出来なかった為ある程度の推測位置だ―から
ハワイまで指で一本の直線を引いた。

「つじつまとは?」
恐る恐る尋ねたのは源田であった。普段から源田艦隊と呼ばれる程に一航艦司令部へ影響力を及ぼす彼で
あったが、今回の事態は、彼にとっても青天の霹靂でしかなかった。
航空攻撃を予見されていたという衝撃が普段の彼らしからぬ極めて受身の態度をとらせている。

「赤い月だの北極星が無いだの、変な話だ、そう思わんか?」
源田を含め幕僚全員が、この緊急事態に天気の話か―少なくとも戦争の役に立たない―とばかりに顔を顰める。
「俺もあの赤い月を見たが、あの月が出る前まではちゃんとした月が浮かんどった。
あの霧に突っ込む前、まではな」

なるほど、そう言えば、と皆が先ほどまでの事象を思い出す。
薄い霧がかかり、それが晴れた途端に北極星が無いだの赤い月だのという超常現象が発生している。
となれば、あれは「トリガー」だ。

南雲は幕僚達を一瞥し、自身の言葉が浸透していくのを眺めていた。
そして、彼らに現実を叩き込むべく胸をそらして堅く握り締めた拳を振って言う。
「となれば意味するところは一つ。あの霧は米軍の展張した神経ガスだったんだよ!」

源田は、その言葉に唖然としている。だが、これまで発生した事態は、南雲長官の説明以外では
納得しようがないではないか、異次元に飛ばされたのならば帝国本土の放送を傍受できるわけもない!
周囲の幕僚達も同じ意見らしく、しばし目を交し合った後、同じ言葉が口をついた。
「な、なんですって・・・」

 この意見を否定する事は難しかった。ガス帯に突っ込んだ以外の説明では、異世界へ飛ばされた
世界の終わる前兆だ、これらの意見を強硬に主張せねばならない。
そして、そこまで奇天烈な見解を好む軍人は普通―敗色濃厚でなければ―少ない。

「しかしまた、何の為に?ハワイは太平洋艦隊の本拠地、ガスなど用いずとも迎撃手段には事欠かない・・・」
南雲は一つ咳払いをして、殊更ゆっくりと幕僚達を見回す。
「分からんかね?彼らは我が艦隊が接近しても対応出来ないのだ、だから極めて間接的な手段で阻止を試みている」

その意味するところは?もしや・・・なんということだ!
幾人かの幕僚が結論に達した事に満足して彼は再び拳を振るう。
「これの意味するところはただ一つ、米艦隊主力はすでにハワイ近海には居ない!」
「な、なんだってー!」

それはあまりに軍人的な絶叫だった。

872 名前:初めての名無しさん:2007/05/09(水) 19:27:25 ID:JIuHZ6lo0
投下完了です。
実は、帝国本土と一緒に転移してきた一航艦が内地へ帰るまでのどたばた
珍道中みたいなものを書こうと思ってます。
お付き合いいただければ幸いです。

873 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/09(水) 19:38:33 ID:znKN5Fz.0
ちょ、予想を見事に裏切られたー!


だが、それがいい。

874 名前:陸士長:2007/05/09(水) 19:39:04 ID:DfhZWv5w0
三暴殿みたいな軍人は多かれ少なかれどの軍にも居るわけですしねぇ。
日本軍のやるべき事は彼等の排斥や駆逐では無くて。
責任の所在をはっきりする、暴走したら責任をきっちり取らせ処罰する。
これですね。三暴殿が良いように暴れて懲りずに同じ事繰り返してるのは、
結局のところなぁなぁと甘い処置が根本的な原因ですから。

875 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/09(水) 22:23:55 ID:6ck0EqpQ0
初めての名無しさん乙です

>「これの意味するところはただ一つ、米艦隊主力はすでにハワイ近海には居ない!」
>「な、なんだってー!」

この南雲発言に笑ったww
軍人的にショックな出来事(作戦の米国への漏洩の可能性、それによる作戦の破綻?)を
必死にポジティブ方向に考えられる彼に乾杯!!

876 名前:名無し三等兵@F世界:2007/05/09(水) 23:06:17 ID:BsYgcDrM0
初めての名無しさん、投下乙です。

や、やられた!(笑)
>>870では全く気付きませんでしたよ。

877 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/10(木) 22:39:38 ID:CQ3KIkms0
>一応、稲葉世界では……

>昭和16年末、転移
>昭和25年、米国の1943年レベル(ようやくレーダーまともになったよ!)
>昭和35年、米国の1945年レベル(原爆開発成功! 近接信管も大量配備!)


やはり原爆はエルフの「帝國打倒の呼びかけ」には間に合いそうにありませんね

もっとも間に合えば帝國の一方的勝利になるので面白くもない話になりそうですが

878 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/11(金) 14:17:20 ID:U1uACm8A0
 初めての名無しさん様、投稿乙です。
 なるほど、本国も転移した訳ですか。場所が判らないから大変ですよね。

>>869
 あれ? 多分投稿したと思うのですが……

>>874
>責任の所在をはっきりする、
 今も昔も役所は責任をとらないところですからねえ。
 軍が暴走、というより役人が暴走……

>>877
 生産力が伴わない限り、理屈で判っていても無駄ですからねえ。
 この二十年は基礎基盤の底上げ期間なのですよ。



 え〜、言い訳を一つ。
 カナ姫ですが、どうも書いてて筆が乗りません。
 ……と言いますか、書けません。プロットは出来てるのですけど。
 もう何回も書き直しましたよ……
 そんな訳で、改訂版を前倒しで行きます。本当に申し訳ありません。

879 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/11(金) 14:18:06 ID:U1uACm8A0
「帝國召喚」改訂版001

――――西暦1941年12月8日。

 一つの国家が、その民族と共に永遠にこの世界から消え去った。

 その名は“帝國”。

 大国清と列強ロシアを討ち破り、英米と並ぶ大海軍と数百万の精強な陸軍を擁する“軍事大国”。
 戦艦から航空機まで全ての兵器を自力で造ることが出来る東洋唯一、世界でも数少ない“先進国”。
 そして、非白人国家唯一の“列強”。

 ……それだけの国家と民族が、その本国ごと突然消え去ったのだ。
 それは世界のパワーバランスを……いや、歴史そのものすら大きく変える程の大事件だった。

 が、世界の中心は欧州の地であり、加えて当時は大戦争の真っ最中でもあった。
 そんな彼等にとり遠い極東の地での出来事など、ましてや“黄色い猿”の国のことなど知ったことでは無かった。
 当初こそ“超常現象”として新聞を賑わせ、一部の者達は『神が異物を排除したのだ』と喝采を叫んだが、直ぐに目の前の戦争という日常に忙殺され、忘れられていく。
 加えてこの頃には、帝國の“遺産”――植民地等の海外権益――も他の列強諸国によって完全に分割され、その存在は何の痕跡すら残さずに消滅していた。

 ――ならば、無理に思い出す必要も無い。

880 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/11(金) 14:18:50 ID:U1uACm8A0
 誰が言うでもなく、それはいつしか暗黙の了解事項となっていた。
 『非白人国家唯一の列強』など、彼等にとって好ましい存在では無かったのだ。

 以降、帝國の話は一種の禁忌となり、“帝國”は歴史の中に埋もれていった。
 世界は帝國が無くとも回っていく。
 たとえその歴史の流れが大きく変わろうとも、だ。

 ……そして帝國もまた生きる為に活動する。
 たとえそこが、元の世界でなかったとしても。





――――昭和18年8月、ロッシェル王国南東海域。

「畜生! 奴等好き勝手やりやがって!」

 ロッシェル王国海軍スループ艦“ラ・クロット”の艦長、ジャン・ヴァロア二等海佐は忌々しげに吐き捨てた。

 彼の目の前には、2隻の大型動力船が並行して疾走している。
 海上からは見えないが、この2隻は化け物の様に巨大な網を曳航しており、それで魚を根こそぎ獲っているのだ。
 ……こんな真似を毎日の様に行なわれては王国の漁師達は堪らない。
 漁師達は代官に泣きつき、泣きつかれた代官は所轄の王国海軍第三艦隊に対処を要請、要請を受けた第三艦隊は“ラ・クロット”を派遣した――という訳だ。

 “ラ・クロット”は300総トン程の帆船で、対水上戦闘用に軽砲14門、対水上/対水中戦闘用に臼砲1門、対水上/対空近接防御用に機械式バリスタ4基、対空戦闘用に魔道式バリスタ1基等を装備する王国海軍の標準型スループ艦の1隻である。

881 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/11(金) 14:19:30 ID:U1uACm8A0
 戦列艦を保有しないロッシェル王国海軍では、スループ艦は“主力艦”であるフリゲート艦の代わりとして艦隊のワークホースに位置付けられており、『王国海軍のある所コルベットあり』と言われる程の“なんでも屋”だった。
 が、だからといってこの様な漁民保護にまで駆り出されるのは本来の任務では無い。只の『漁民同士の争い』ならば、武装カッターで十分だ。 ……ならば、何故?

 簡単なこと、これがただの『漁民同士の争い』では無かったからである。


 ロッシェル王国本土南東300〜800qの海域に、イルドーレ王国という島国が存在する。
 総面積2300ku、人口7万人程で、特に資源がある訳でも海上交易の中継地という訳でもない、所謂“貧乏国”“弱小国”といった類の国だ。
(まあそんな辺鄙な場所にある零細国家だからこそ、ロッシェル王国を始めとする本土の大国からお目こぼしされ、その命脈を保ってきた訳であるのだが)

 とはいえ、イルドーレ王国は曲がりなりにも『大文明圏の一つである北東ガルム文明圏に属する』と認められた“文明国家”であり、“大陸同盟”にも参加するれっきとした“独立国家”なのだ。あながち馬鹿にも出来ないだろう。
 故に隣接する大国、ロッシェル王国とも『大小の差はあれど同じ“大陸同盟”に属する国同士』として対等――少なくとも形式上は――の友好関係を保ってきた。

 が、一ヶ月程前に当時のイルドーレ王が急死したことにより、情勢は急変する。
 王位を継いだ王弟は“帝國”を名乗る辺境の国家と結び、こともあろうにその軍勢を国内に招き入れたのである。
 ……これは大陸同盟諸国、中でも隣国ロッシェル王国に対する重大な背信行為であった。

882 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/11(金) 14:20:00 ID:U1uACm8A0
「信号旗を上げろ!」

 もう何度目になるかもわからない命令が、直ちに実行される。

『タダチニ漁ヲ止メ、帰還セヨ』

 命令も同じなら、抗議内容も同じ。
 だがそれのみが彼に許された唯一の抗議法だった。
 ……そして、返ってくる返事もやはり同じ

『ソノ必要ヲ認メズ。我等ハ“イルドーレ王国漁民”ナリ』
 
 姑息にも、あの2隻の動力船はイルドーレ王国籍とされていた。
 イルドーレ王国公認の下、“帝國”が同国の漁民達に船を貸し出し、獲れた魚を買い付ける、という手法だ。
 これは限りなく悪質ではあるが合法――同海域の漁業権はロッシェル王国とイルドーレ王国の共同――だった。
 
「何が“イルドーレ王国漁民”だ!」

「……艦長、いっそ拿捕しましょう」

 副長のダルトア一等海尉が耳元で囁く。
 彼が目配せする先には、“帝國”船に罵声を浴びせる水兵達。
 その多くが漁村出身である彼等にとり、“帝國”の遣り口は憎悪の的でしかなかった。

「……しかし、命令では武力行為は禁止されているぞ?」

 水兵出身――士官としては異例と言って良い――であるダルトア一等海尉は経験も豊富であり、下士官兵達の気持ちを代弁できる貴重な人材である。
 故に、ヴァロアも日頃から彼の助言を重視していたが、流石にこればかりは聞き入れる訳にはいかなかった。

883 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/11(金) 14:20:30 ID:U1uACm8A0
「とはいえ、兵共もそろそろ限界です。このままでは――」

「…………」

 ヴァロアは暫し沈黙する。

 確かに、これ以上兵共の不満が溜まれば面倒なことになる可能性が高い。
 只でさえ気性が荒い連中である。流石に叛乱は起こらないだろうが、一寸した混乱は避けられないだろう。最悪、艦乗り込みの海兵隊の手を煩わせる羽目になるかもしれない。
 ……尤も、ヴァロアの考える『面倒なこと』は、この“混乱”ではなかった。

 “混乱”が起こった場合、当然兵共を処罰する必要がある。
 が、それは“艦で起こった混乱”を司令部に知らせることをも同時に意味する。これが大きな減点対象となることは言うまでもないだろう。
 だからといって、兵共を処罰せねば規律は保てない。これは所謂“内緒処罰”――公式記録には残さない処罰――だろうが同じことだ。
(それに万が一ばれた場合、減点どころの騒ぎではない)

 要するに、どう転んだところで自分にとって好ましくないことには変わりが無いのだ。
 ならば――

「副長、物資の在庫状況はどうかね? ……そういえば、そろそろ艦の補修もそろそろ必要だと思うのだが?」

 ヴァロアの意味ありげな言葉、その意味をダルトアは即座に理解した。
 そして、ヴァロアの望む答えを提示する。

「はい、艦長。物資は十分ですが、“風の魔石”の調子が少々気になります」

884 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/11(金) 14:21:01 ID:U1uACm8A0
 無論、嘘だ。が、帰港時には“真実”になっているだろう。

「おお! それは大変ではないかね!」

 ヴァロアは大袈裟に首を振る。

「“風の魔石”は戦闘時には無くてはならぬもの、あれが無ければ本艦の戦闘力は半減どころの騒ぎではない! 直ちに帰還せねば!」

「了解です。本艦は直ちに帰還します」

「うむ、後は任せた」

 鷹揚に頷き、艦内へと下りていくヴァロア。
 ダルトアはそれを敬礼しつつ見送る。そして完全に見えなくなると、直ちに行動を開始した。

 先ず下士官達に緊急帰還を伝えると共に、兵共を手隙にさせない様にそれとなく匂わす。
 ……何、どんな仕事でも良いのだ。“帝國”の漁船のことなど考える暇も無い位、忙しいのであるならば。
 下士官達にはそれだけで十分だし、それ以上は自分の出る幕では無い。
 自分はもはや下士官ではなく一等海尉、“水兵の提督”なのだから。

 兵共を怒鳴りつける下士官達の罵声を背に、ダルトアは艦内へと下りていった。


 通信室で艦隊司令部に緊急帰還報告を送るように命じると、その足で戦闘用動力室へと向かう。
 動力長と一言二言会話すると、動力長は頷いて部下達に仕事を命じ退室させた。

885 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/11(金) 14:21:31 ID:U1uACm8A0
 そして二人だけになると、動力長は“風の魔石”を繋ぐ動力パイプに一時的な過負荷を与え、破損させる。手馴れたもので、“風の魔石”本体は全くの無傷である。もし必要とあれば、予備のパイプと交換するだけで復旧できるだろう。恐らく10分もかからない筈だ。
 ……が、『規則では』修理は出来ない。故に、帰還して専門の魔道士に修理して貰わなければならないのだ。

 これは、魔道士ギルドとの協定により、魔法関連の器具は全てブラックボックス扱い――魔道士以外には直すことは出来ない(許されない)――とされているからである。
 魔道士ギルドは縄張り意識と権利意識が恐ろしく強く、自分達の領域(権益)が僅かでも侵されれば激しい抵抗を示す。それ故出来た規則だった。
 ああ、彼等は選民思想の塊でもあるから、『自分たち以外は直せない』とも考えているかもしれない。下等な機械技術者如きに、偉大なる魔法技術は理解できないとでも考えているのだろう。 ……魔法技術を理解することと壊れたパイプの交換は関係が無いと思うのだが。

 こうして全ての仕事を終えた後、ダルトアは甲板上の喫煙所で紙巻煙草を吹かしていた。
 後は交代を待ち、帰還するだけである。どうやら“最悪の事態”は見ずに済みそうだった。

 ――ま、これでようやく一安心だ。

 思わず安堵の溜息を漏らす。
 艦長には『兵共もそろそろ限界』と言ったが、それ以上に漁師達は限界――彼等は生活がかかっているのだから当然だ――だろう。
 海軍(王国)が頼りにならぬと判った以上、とうていこのまま黙っているとは思えなかった。

886 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/11(金) 14:22:03 ID:U1uACm8A0
 ――次の連中には悪いが、ね?

 彼の見る所、漁師達は近日中にも行動に出る筈だ。 ……だから、ぼんぼんの艦長をたきつけた。
 直接言わなかったのは、『艦長に変な気を起こさせない』ため。ああ見えて艦長は忠義者だ。王の方針に従わぬ漁師共を止めようとしかねない。
 そうなれば最悪だ。怒り狂った漁師を止めるのは困難だし、仮に止められた所で流血沙汰は避けられないだろう。何れの場合にせよ、自分の評価も下がってしまう。下手をすれば、次の人事移動で艦を降ろされてしまうかもしれない。
 ……まあ艦長はそれでも『忠義を貫いた』と自己満足出来るかもしれないが、自分はそんな未来は御免被る。自分は艦長とは違い軍の俸給だけが収入なのだから、水上勤務手当や副長手当が無くなり、基本俸だけになったらやっていけない。ましてや自宅待機などになったらその基本俸すら半減だ。そうなったら家族で首を括るしかない。

 だから、これは当然の選択だった。

 次の交代仲間は、自分達の不運を呪いながらも漁師達の決起を抑えようと四苦八苦するだろう。
 漁師達は、生きるために何としても『帝國』船を追い返そうとするだろう。ああ、ついでに今までの鬱憤も晴らそうとするかもしれない。
 襲われる“帝國”船の連中も、捕まったら命は無いだろうから必死になって逃げるだろう。 ……まあ、漁師達の船で“帝國”の動力船に追いつけるとは思えないが。

「ま、せいぜい頑張ってくれ」

 次の交代仲間にか、それとも漁師達にか、はたまた“帝國”船に乗り組む連中にか、或いはこれから起こるであろう災難に関わる全ての者にか――それが誰に対して言ったものか、自分すらも判らぬ嘲笑混じりの言葉を吐く。
 次の交代仲間の苦労も、漁師達の怒りと決意も、“帝國”船の連中に起こるであろう災難も、全て自分とは関係の無い、他人事の様に考えていたのだ。

 その判断は大いに間違っていた。

887 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/11(金) 14:22:55 ID:U1uACm8A0
 SS投下終了。
 以前の限定公開版に修正を加えたものです。

888 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/11(金) 20:33:42 ID:UNXyyhIU0
投下乙です

帝國が消えた後の世界はすごいことになっていそうだ
列強各国の植民地支配は続行し、人種差別も苛烈を極め
というか公然と有色人種を人間と認めないでいる世界が
続いていくんじゃないだろうか?

堕落した白人と、人間扱いを受けない有色人種、そこに帝國
が帰ってきたとしても、白人ほとんど全てが敵になれば、
物量に押されて勝てなさそう。

それを想定して帝國は、獣人との結婚を推奨、五つ子なんか珍しくありません!

ところで、獣人の寿命はどんなものなのでしょう、種族によって明確な
違いはあるのでしょうか?

889 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/11(金) 20:44:28 ID:M8Wv3F060
>くろべえ氏
乙〜

>改訂版を前倒しで行きます
そいえば何で旧版の更新やめて、わざわざ新しく書いてるんですか?

890 名前:初めての名無しさん:2007/05/11(金) 21:42:37 ID:JIuHZ6lo0
>>くろべえさん
私の「最初の一日」はくろべえさんの作品群の二次創作のようなもので
最初に断ってから投稿べきでした。いや今更ですが申し訳ないです、はい。
・・・・転移したのは12月8日だったんですね。あちゃー
>>850.851.852.
>>873.875.876 さん レスありがとうございます。
投下開始

891 名前:初めての名無しさん:2007/05/11(金) 21:44:21 ID:JIuHZ6lo0
最初の一日 沈黙の艦隊

「周知の通り、真珠湾奇襲は、あ号作戦の要です。トラック方面の第四艦隊は極めて弱体で太平洋艦隊
主力が来冠した場合、一瞬で消滅です」
「トラックならまだ良い・・・奴らがフィリピンを目指していたら?トラック方面を素通りし、パラオを掠めて
フィリピンへ入ったなら戦争を失うぞ!」
 赤城では幕僚達が半ばパニックに陥っているのを、南雲が目に何かしらの決意のせて見守っている。

「米軍の無線電信は?少しでも手がかりが欲しい」
通信参謀は首を横に振る。残念ですが長官、敵の戦争準備は極めて周到だったようです、と。
暗号がやられている上に、戦争計画の漏洩は確実、全くもって最悪だ。

「こりゃ南方へ向けた艦隊も叩かれておるでしょうな」
草鹿は顔をしかめる。陸兵を満載した船団が叩かれるというのは、彼にとっても帝国にとっても悲劇の始まりだ。
「英極東艦隊は、キングジョージX級を基幹としています、巡戦では歯が立ちません」
半ば冷酷さすら感じさせて草鹿は断定する。

彼の言いたい事はつまりのところ、南方の艦隊は帝国の生命線を握っている、英極東艦隊が出撃したならば、
GFは主力を引っ担いで南方へ出て行くしかないという事実だ。
英艦隊が決戦に応じなければ、長期間に渡って艦隊を南方に貼り付けなければならない。

―マリアナ或いはフィリピンへ向かう米艦隊を一航艦のみで叩かなければならない。
それは南雲にも勿論分かっている。だからこそ、こうして頭を抱えているのだ。

「源田君、空母六隻の打撃力で、米主力を撃滅することは可能か?」

何時もの余裕を感じさせない表情で源田は否定する。
「無理でしょう、艦載機の傘を被った洋上行動中の戦艦群を撃滅するのは」
しかし、慌てて付け加える。このままでは、艦隊の士気がどん底に、特に南雲忠一の士気が瓦解してしまう。
「打撃を与えるのは可能です、撃沈には至らないというだけで」

その心遣いというかちょっとした蔑視に南雲は苦笑する。おいおい、俺を誰だと思っている?
「源田君、俺はね、赤城から水雷戦を指揮しようとおもっとるんだよ」
皆が、南雲を注視した。南雲はただその赤ら顔に決意だけを浮かべている。
「全機激突だ。艦載機が消耗しつくした場合、空母は敵戦艦に体当たりする」

幕僚皆が唖然とする。源田ですら茫然自失、草鹿に至っては失神寸前だ。
ちょっとガスで頭をやられとるんじゃないか、と誰かが呟くほどの雰囲気だ。

その雰囲気を察した南雲は断固胸を張って、低く怒声を飛ばす。
「分からんのか?これは艦隊決戦じゃ、米太平洋艦隊と一航艦の一騎打ちじゃ」

艦隊決戦、艦隊決戦 それは魔法の言葉であると同時に呪いの言葉、これは徐々に浸透していく。
彼らが叩き込まれてきた、そして練り上げてきた一つの魔法、その呪いの真髄が目の前にある。
決戦ならば、たとえ相打ちであっても、ありとあらゆる戦力が磨耗しつくしても、それは許容される!
南雲は、ある意味、呪われたのだ。それの前では全てが矮小な問題でしかなくなるほどに
絶対の、言わば神の言葉に。


「待ってください、待ってください」
草鹿が慌てて、呪詛を打ち消そうと言う。このままでは、一航艦此処にあり、と勇んで突撃、玉砕しかねない。
「源田君、奇襲に成功した場合は?傘を被ってない戦艦なら叩けるな?」

ここで叩けません、と言えるだろうか?それも彼が軍人生活を捧げてきた航空戦、彼の人生の大半がそこにある。
源田は即答する。
「誓って撃滅出来ます。いえ、撃滅してご覧に入れる。搭乗員が全滅したなら、私も出撃します」
草鹿は参謀長としての威厳を込めて南雲へ向き直る。
「長官、奇襲であれば、我が一航艦は極めて激甚な被害を米主力へ与える事が可能です、奇襲を実施すべきです」

それを聞きたかったとばかりに南雲は頷く。
「よーし、では、無線封鎖を続行しつつ、此処を叩いて哨戒線に穴を開ける」
南雲が海図上で指差した先には小さな島、ミッドウェー島がある。
「此処から米艦隊の後ろへ出て、奇襲攻撃を敢行する!」
南雲は更に続ける。
「絶対の奇襲効果を上げる為、位置は厳重に隠匿せねばらなん」
「無電は一切使用しないと?しかし、艦載機を使うのであればある程度の無線電信は」
「今から、全速でミッドウェーへ向かい、ぎりぎりまで接近して攻撃隊を出す」

892 名前:初めての名無しさん:2007/05/11(金) 21:45:07 ID:JIuHZ6lo0

 旗艦赤城の機関室では、洋上で発生している奇奇怪怪な事象に積極的に関わろうと考えている人物は多くなかった。
勿論、下士官兵は別だが、士官、機関長を含めて冷や飯食いとされている彼らは、
上の、特に兵科将校が大弱りしている様にいい気味との思いさえ抱いているのだ。

12月3日 午前1時20分 
 ちりんと高い音を立てる速力指示器が、巡航速度から微速へとその指示を伝えてから30分。
あまりにものろのろと動く旗艦に、流石に不安を覚えた機関長が高声電話へ手を伸ばした瞬間に、
電話ががなりたてた。

「最大戦速即時待機!」

電話を受けた機関長は心底驚いた。
最大戦速即時待機が夜間に下令されるとは、ひょっとして夜襲でもうけとるんじゃないか?
微速で動かしていた機関を大慌てて暖め、不安げに上を―自身の墓穴を覆う鉄板―眺める。

高声電話を握り締めて機関長は、艦橋を呼び出す。
「機関長より艦橋 最大戦速即時待機よろし!」
「機関長、奇襲失敗です。今から米主力を追撃します!」
「け、決戦だな?よし、任せとけ」

速力指示器はそれからかっきり2分後に、機関の全速運転を指示した。

艦隊は、29ノットの高速を振り絞って殆ど突進する。方角は、西へ。

そこにミッドウェー島はない。ただ、なんとも間の悪い事に似たような岩礁が存在した。

彼らに太平洋戦争の続行を諦めさせる程、この世界は異常なる異世界ではなかった。

 或いは彼らが洋上の艦隊ではなく、米国の継戦能力を削ぐ事に注意を向けていたのなら、
六隻の空母の全力を持って、太平洋最大の艦隊泊地、その後方支援設備を叩く事を決意していたら、
彼らは戦争の遂行を諦めただろう。

彼らが存在すると信じているハワイのあるべき場所には海洋が広がっているだけなのだから。

893 名前:初めての名無しさん:2007/05/11(金) 21:46:27 ID:JIuHZ6lo0

最初の一日  悲劇蟹の誕生

 神州と命名される事になる巨大な大陸、その南方80km付近に小さな岩礁が存在した。名前はまだ無い。
外界から遮断された生態系の結果、その岩礁には成体で最大2mほどにまで成長する蟹が多く生息していた事が確認されている。

甲羅が銀色に輝いていた事から、主にその天敵を空にもっていたのだろう、恐らくはワイバーンが天敵だったのではないか
と言われているが詳細は良く分かっていない。
調査の結果から、強靭な甲羅を持っていて群れを形成しており岩礁の生態系、その頂点に君臨していたと考えられている。

幾ら生態系の頂点に君臨する巨大で銀色に輝く支配者のような蟹でも、生態系そのものをぶち壊すような種類の生命体を
相手取って戦うには脆弱に過ぎた。
蟹達自身が予想していたように空から舞い降りてきた天敵を相手にした場合は特に。


1941年12月3日 午前4時20分 
 第五航空戦隊に所属する航空母艦から発艦した攻撃隊が叩きつけた爆弾―八十番から二十五番まで選り取りみどりだ―
は岩礁の表面をほぼ完全に粉砕。
蟹達を次々に宙へと舞い上がらせ、あたかも金属片が散っているような情景を演出する。

「我、奇襲に成功せり」
「おっと、無線電信は打つなよ。何の為にここまで母艦が近づいとるのかわかっとるか?」

これだけの攻撃を受けても蟹達は戦意を失っていない。その大きな鋏を持ち上げて精一杯の威嚇を試みる。

それはまるで岩礁全体がちかちかと銃火を発しているように見え、航空艦隊司令部は要塞化されたミッドウェーに、
米軍の基地設営能力を垣間見て慄然とする。
蟹達のささやかな抵抗が、これはもう少しやっつけておいた方がよいと南雲忠一を判断させたのは悲劇であった。

次の更なる悲劇も頭上より襲い掛かったが、何も見えずただ轟音と共に襲い掛かるという点では、先ほどの天敵より相手が悪かった。

直掩機に頭上を守られた巡洋戦艦二隻が、重巡洋艦を引き連れて岩礁へ接近。
積年の恨みを晴らせとばかりに砲弾―徹甲弾から榴弾まで選り取りみどりだ―を叩き込んだのである。

「艦長より砲術長へ、只今の射撃、極めて効果大。地下指揮所を直撃したものならん」
「砲術長了解・・・さながら戦艦の艦砲は戦場の女王といったところか」


30分に渡る理不尽な攻撃に蟹達は耐えた。だが、それは耐えていただけでなんら有効な反撃を天敵達に加える事は出来なかった。
彼らは、生態系の頂点に君臨していた時代が終わった事を呆然と、去っていく天敵達をみやりながら、悟るのみ。

「無電を発する暇はなかったようです。しかし、ここまで一方的だと戦争とは」
「言うな、源田君。明日は我が身だ」


或いは蟹達が一方的に人間を叩く機会もまた訪れるのかもしれない。
だが、今のところ蟹達の報復は戦場ではない場所で果たされようとしている。

 沖縄より出港した漁船が、海の変貌に度肝を抜かれつつ航海していたところ、
一面を埋め尽くさんばかりに蟹の死骸が流れている。
漁船員はその巨大さにも驚いたが、それよりもその死骸の損壊状況に恐怖する。
引き上げて見た所なんとも堅い甲羅が軽々と引き裂かれているではないか。
漁船員はその事実に、この世界の自然界がなんとも悲劇的な場所である事に、酷く怯えまた驚嘆した。
漁船員たちは一面の骸を前に、しばし黙祷し、恭しくこの蟹達に悲劇蟹の名を進呈する。

蟹達の報復、それは戯れにその蟹を食した者たちに、舌に味蕾の存在する事を呪わしめる、といった
極めて自己犠牲の精神に富んだ、効果的なものであった。

894 名前:初めての名無しさん:2007/05/11(金) 21:47:24 ID:JIuHZ6lo0
投下終了です。

895 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/11(金) 22:50:03 ID:X9DoCVGA0
初めての名無しさん投下乙。
ビバ、勘違い。(オイ
ハワイありませーんと気づいた時どんなアクション取るか楽しみだ・・・プクク。

くろべえさんも投下乙。
改訂版もいいですが稲葉世界の短編で脳味噌ふやかしてみては?

896 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/11(金) 22:54:38 ID:M8Wv3F060
>改訂版もいいですが稲葉世界の短編で脳味噌ふやかしてみては?

いやいや、それよりも食いしん坊男爵や、特務砲術科の某大佐の話も・・・

897 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/11(金) 23:06:08 ID:IvX.uGKQ0
いやいや素晴らしい、GJ
ラストの蟹の下りなどいい具合にひねった表現で楽しゅうございました。

しかし味蕾が存在するのを呪うほどの味ってどんなだろう――或いは英国人なら食せるレベルなのか、はたまた彼らでも逃げ出す代物か……

898 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/11(金) 23:24:31 ID:HN8gBzs20
早く迎えに行ってやらないと、
リータとリーナちゃんが泣いてますよね

899 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/12(土) 09:13:18 ID:aCSsZPJY0
くろべえさん、投下乙です。
改訂版は、個人名を積極的に明示していくのでしょうかね。

900 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/12(土) 10:27:36 ID:U1uACm8A0
 初めての名無しさん様、投稿乙です。
 蟹のクセに不味いのか……

>私の「最初の一日」はくろべえさんの作品群の二次創作のようなもの
 あ、そうなのですか? 御免なさい、気付きませんでした。

>最初に断ってから投稿べきでした。いや今更ですが申し訳ないです、はい。
 これは別に構いません。公序良俗に反しない限り、分家で書かれる限り、ご自由にどうぞ。

>・・・・転移したのは12月8日だったんですね。あちゃー
 そこら辺は御自由に修正されては?
 くろべえの設定を丸々使われるのもよし、気に入った所のみを使うのもよし、です。
 管理人様の言い方をお借りすれば、くろべえ料理は素材の丸焼き風味(←設定のみで洗練されて無い、という意)です。
 ですから素材の好きな所を存分に切り取って下さい。で、駄目なとこはポイ、と。

>>888
 888様、有難うございました。

>ところで、獣人の寿命はどんなものなのでしょう、種族によって明確な違いはあるのでしょうか?
 この世界の人間達と変わりありませんし、種族の差もありません。
 ただし、ダ―クエルフほど極端ではありませんが、人よりもやや老化が遅いです。

>>889
 889様、有難うございました。

>そいえば何で旧版の更新やめて、わざわざ新しく書いてるんですか?

 以前にも書いたと思いますが、
・新たな知識に基づく設定の修正(半分は間違いの訂正だけど)
・「ごちゃごちゃして判り難い!」というご批判に応え、話を判り易く
・第1章の大幅加筆。
・F世界側の戦力パラメーターを一部修正。

 ……要は「俺も戦争書きたい!」ですよ、はい。

>>895
 895様、有難うございました。

>稲葉世界
 これは合間合間にポチポチやっていこうかと。
 まだ方向性が完全に決まってませんからねえ。

>>896、898
>特務砲術科の某大佐の話
 これは本編に合流しました。
 今までの独立話は、いきなり出しても「誰?」ということになるので、まあ説明用に投下したのですよ。

>食いしん坊男爵
 第1章 タブリン着任編
 第2章 辺境警備隊編
 第3章 帝都編
 とりあえず第1章を終わらせる予定です。
(例の長官が自決して黒部が飛ばされるまでの話)

>>899
 899様、有難うございました。

>改訂版は、個人名を積極的に明示していくのでしょうかね。
 ふっきれたので、なるべく出したいですね。
 ……あまり冒涜しない限りで。

901 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/12(土) 11:44:04 ID:FAcOg9C20
くろべえさん こんにちは
タシュケントだけでなく、若い時分帝都で過ごして「不本意な」王座に
ついた邦國国王たちは、競って帝國人を妻に迎えたがりそうですな。
でもって、帝國の料理人を雇い入れ、王宮の一角も帝國風にして・・・

そーいえば、上流階級は自国語を用いずに他国の言葉を使っていた国も
ありますしなぁ
帝政露西亜のフランス語とか。

とりあえず、この世界では学習院が邦國王族・貴族たちと、帝國譜代たちの
サロンとなるのでしょう。
女子部も含めて。

ただ、玉座についた後、政務や公務に忙殺された一生をおくり
今際の際の言葉が「これから銀座のカフェで・・・・」だった
国王とかがいそうな気がします
(帝國の映画とかでこんな話があるかも)

902 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/12(土) 18:39:40 ID:5Eia54S.0
皆様投下乙です。

>初めての名無しさん様
ええっと、蟹は月見海老とはまた別のものなのでしょうか?

>>827さま

いやいや、色々突っ込んでいただくとありがたいです。

>>834さま ありがとうございます

時間がないですから技術的に色々無理してます。

903 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/12(土) 18:42:36 ID:5Eia54S.0
投下開始

ユフ戦記外伝・奇跡の翼 4


昭和26年 

どんよりと垂れ込めた灰褐色の水蒸気の塊からは、水素と酸素の化合物が空気中の微粒子を取り込んで地表を目指してくる。
雪とも霙とも区別の付かないそれは、昨今隆盛を迎えつつある、俗に言うウィンタースポーツに適したものではない。如何に北海道の僻地とはいえ、秋口に入ったばかりの段階で粉雪を望むのは酷といえよう。
例年ならば標茶(しべちゃ)のような田舎の気候など誰も気に留めない筈なのだが、今年ばかりは趣が異なる。雪の影響で航空便の乱れが生じるかもしれないからだ。

/

有史以来、人類は鳥の如く蒼空を自由に闊歩したいという願望を持ち続けた。とはいえ人類は大きな夢の割りに発想力に乏しいので、鳥を手本とした彼らがその飛行形態を真似ようとしたことは必然といえよう。
ダイダロスの息子イカロスは鳥の羽根を蝋で固めて太陽を目指したし、エルマー、ジョバンニ、ダミアン侯といった面々がその後同じ手法で蒼空を目指した。結論は云うまでもないが、一命を取り留めただけで満足せねばなるまい。
2000年以上に渡って同じ失敗を繰り返してきたヨーロッパ人を笑い飛ばすのは容易い。ただ、天明五年に岡山藩の表具師・浮田幸吉が体に羽根を取り付けて旭川に架かる京橋の欄干から人力飛行に挑戦した挙句、満場の見物人の前で川底に叩き付けられたという事実も付け加えておこう。

904 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/12(土) 18:43:07 ID:5Eia54S.0
長らく夢物語に過ぎなかった人類の夢が実現に近づいたのは、ジョージ・ケリー卿の構想によるところが大きい。彼は揚力を発生させる固定翼と推進力を得る動力を分離させることが有人飛行の実現への近道であると考えた。
航空力学における一大金字塔というべきこの構想は、およそ一世紀後ライト兄弟によってその正当性が裏付けられる事となった。
物理学的な見地から述べるなら、帝國の航空技術は1903年のキティーホークにおける肌寒い木曜日の朝から、基本的には何も変わっていない。いや、もっと云えば1809年に発表された理論の射程内、ということになろう。
ライト兄弟が、ちっぽけな布張りの飛行機を作るにあたって、手作りの風洞で研究を繰り返したことはよく知られている。とすれば、帝國人が飛行機の開発に当たって風洞を用いない理由はどこにも見出せない、ということになろう。
長々と書いたことを要約すれば、飛行機の開発にあたっては風洞が不可欠ということだ。

帝國と中島飛行機が超音速攻撃機開発にあたって、計画を極秘裏に進めようとしていることは、以前述べた通りである。そして帝國政府は計画そのものを秘匿するには試験飛行だけではなく研究開発施設、さらに欲を云えば実機製造工場の存在までも秘密裏に建設する必要があるとの結論に達した。
超音速機の開発に際しては超音速風洞の建設が不可避な問題であり、そして超音速風洞が些か特殊かつ大型の施設であることを考慮すれば帝都の近郊に研究施設を設けるなどという発想には辿り着きようがない。
施設の立地条件は人目に付きにくい田舎で、港もしくは鉄道の便がよく飛行場を併設できる平地があること。なによりも再転移時にも影響を受けないよう、帝國本土内であること。
標茶が選定されたのはそういう経緯であった。

905 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/12(土) 18:43:37 ID:5Eia54S.0
/

「3,2,1 スタート」

合図と共に、硝子を隔てた空間にどす黒い煙が流れる。
すべての速度域で同じ煙が通用するわけではないが、今日に限ってはこの汚らしい煙を用いることになった。
高速で吹き付ける空気流が煙によって可視化され、装置が目覚めたことを知らせる。

「まあ、何とかモノにはなりそうだね」

荒木中将が傍らの斉藤に声を掛ける。
斉藤は中島側の代表者としてこの研究施設立ち上げに参加してきたが、本人もその点に関して不満はない。役員兼任の工場長として各地を転任するよりも余程面白みのある話だと飛びついたのは彼自身であった。

「回流式を諦めたのが決め手でしたね。
とりあえず現時点では開放式でデーターを取って、余力が出てくれば回流式の建設に乗り出しましょう」

ライト兄弟が手作りの風洞を製作したことは述べたが、いま少し補足する。
従来風洞に要求されていた800キロ以下の空気流では、伝統的な方式(巨大な扇風機で空気流を発生させるということだ)で事足りた。
が、遷音速域以上ではペラの先端速度が音速付近に達すると急激に効率が悪化するという厄介な問題が生じてくる。何のことはない、プロペラ機の音速突破が極めて困難なことと同じ原理だ。
そこで中島は二つの高速風洞が考案した。
測定部を通過した気流を減速、圧力を回復させた後再び加圧して使用する回流式(連続循環方式とも云う)。もう一つは空気の再利用を行わない開放式である。
開放式はさらに二種類に分けられる。高圧空気を噴出させる吹き出し式と、測定部の後ろに真空の容器を設け、そこに空気が吸い込まれる流れを利用する吸い込み式である。

906 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/12(土) 18:44:23 ID:5Eia54S.0
「回流式はそんなに難しかったのか?利点があると聞いていたんだが」

「ええ、空気槽を用いないので長時間の運転ができますし動力の節約にもなります。
ただそれ以上に技術的な問題が横たわっていますので」

斉藤の言には理由がある。
彼は風洞の専門職ではなく、政治的な折衝や手配など現場のフォローに徹してきたがそんな斉藤でも回流式の困難性は理解できる。
空気の圧力と温度の間には一定の関係が見て取れるが、長時間循環する空気の圧力と温度の管理はかなりの難事であると予想されたし、そうなれば空気流の速度が安定しない。
かてて加えて、空気流の減速に伴う熱をどのように吸収するかという点でも技術者の頭を悩ませた。温度が高いと再圧縮の効率性が低下するから切実な問題といえよう。
一旦閉じ込めた空気を排出するのも困難となれば、開放式に研究の主眼が移ったのも当然といえよう。

「実現性で言えば吸い込み式が一番簡単だと聞いたんだが?」

「開放式はどちらも似たり寄ったりです。
ただ、吸い込み式だと真空タンクを用意するので測定部の圧力は常に大気圧以下となりますので」

「レイノルズ数が低くなって粘性の影響がでかくなり過ぎる、そういうことだな?」

斉藤に先回りして言い当てる。荒木も超音速風洞という壮大な玩具を見ているせいか、少々落ち着きに欠けるむきがある。

「医療保険の掛け金をちょろまかして作ったなんてことがばれちゃあ内閣が吹っ飛ぶかもしれん。
これだけ大掛かりな施設を中島サンに呉れてやるには少々惜しいかな」

「かといって興銀のお堅い連中からこっそりせしめるなんて無理ですよ。
納税者や保険加入者の皆さんには気が引けますが、大事の前の小事と割り切りましょう」

907 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/12(土) 18:44:55 ID:5Eia54S.0
回流式に比べて開放式が安価、手軽といっても程度問題に過ぎない。
当然、膨大な資金が必要とされる。
帝國は基幹産業の大企業を支援するため、興業銀行を設立した。転移前のことだ。
企業が事業を拡大する際に政府の手回しで興銀から融資を受けさせる、というのが従来のやり口だった。現に中島の愛知工場新設も興銀の支援無しでは不可能だったろう。
が、計画の秘匿が前提となれば非常手段を講じるしかない。
昨今の民主化とやらで議員諸兄の眼を欺いて税金を投じるのは困難だから、保険や郵便局を隠れ蓑にする、というのが第六計画の資金調達方だ。

まあ、仕方ないなと思いを巡らせると同時に大きな保険だとも思う。
斉藤も一応は中島の役員だからこの現実性の薄い計画が潰れた時のことも心配しなければならない。
技術的、或いは政治的見地から計画がポシャるとしても、空力研究とエンジン開発は当面軍の金を湯水の如く使える。
計画秘匿のために当面研究成果が表には出ないから、その間に他社との差を広げていけば帝國の空を制することもあながち夢物語とはいえない。
民間機市場に参入するのは知久平さんの志に反するが、そのときはそのとき。
ふふ、そのときには川西の連中が路頭に迷って頭を下げてくるかもしれん。


「斉藤君、自分の世界に閉じこもらないで貰いたいね。
あのマッハ計は信用できるのか?」

川西の凋落という夢から醒めた斉藤はえらく不機嫌だった。
荒木に釣られて硝子の上のマッハ計を見れば、針はM0.7からさらに上昇していく。

908 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/12(土) 18:47:46 ID:5Eia54S.0
標茶の第1吹き出し式風洞の構造は、冷却して水分を除いた空気を二段階に圧縮し、それを貯め込む。
超音速風洞において水蒸気の凝縮に纏わる問題が多いからこその処置である。
次の圧縮にかなり大掛かりな動力が要求されるが、幸い翔鶴級に搭載予定だったガスタービン機関が余っていたのでそれを流用することで解決している。
戦闘艦艇用としては実用に耐えないと酷評され、高千穂級では『対16インチ弾防禦ではなくガスタービン防禦が必要』と言われるほどの厄介モノだが地上においてはそれなりに使えるのだ。
そうして溜め込んだ3.4MPaの空気は、圧力弁を経て集合筒に送られ末細−末広ノズルによって膨張させられ、音速を突破して測定部を駆け抜ける。
測定部の後ろに設けられたディフューザーで減速・圧力回復を行って外に排気される。
このときの空気の運動エネルギーが大きく、当然騒音も凄まじいものになる。
北海道の田舎に施設が設けられたのと騒音は無関係ではありえない。

「ああ、衝撃波のことですか?」

速度の測定にはピトー管が広く使われる。
これは突き出した管に穴を開け管の中心部で流れの総圧を、側壁で静圧を測定して、両者の差から流れの動圧を導く。
これで速度を求めるというものだ。
が、空気の流れが超音速に達すれば、ピトー管の前面に衝撃波が発生し、下流流れ場に影響を及ぼして正確な測定が困難になる。
そうだ、と頷く荒木に横から説明が入る

909 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/12(土) 18:48:39 ID:5Eia54S.0
「ピトー管の総圧と一様流の静圧からレイリー・ピトー公式によってマッハ数が求められます。
総圧を静圧で割ったものは2γをγ+1で割ったものに一様流のマッハ数の二乗を掛けたものからγ−1をγ+1でわ」

「ああ、分かった分かった。衝撃波が出ても速度は測定できるんだな?」

長くなりそうな横槍を抑えてマッハ計を見る。針はマッハ1.4を示している。

「そこだ、行け」「吹き飛ばせ、何がマッハ3だ、何が作戦行動半径12,000キロだ。無茶ばっかりいいやがって」

硝子の前に陣取った中島の研究者たちは気勢を上げている。
測定部には航空模型の代わりに嶋田総理の模型が置かれている。
まあ落成式を兼ねた試運転だし、多少のことは多目に見よう。

「やった、飛んだぞ」「マッハ1.25だ」

模型に貼り付けられたかつらが宙を舞うと一斉に歓声が上がる。
斉藤が隣を見れば荒木は笑うに笑えない。

「あそこで陣頭指揮を執っているのは確か」

「ああ、佐竹君ですね」

「そうそう、佐竹君だ。前にも官邸で会ったな。
しかし首相はそんなに無茶を言ったかな?」

「無茶、ねえ。
音速突破も挫折したジェットエンジンの性能向上、摂氏300度の空力加熱に耐える機体外皮、遷音速と超音速を両立させる機体設計、超高空の低圧環境でも使用できる燃料。
まだありますよ。
これを無茶というのはかなり婉曲的な表現ではありませんか?少なくとも、無茶とはもう少し実現の蓋然性が高い試みに使われる言葉ですよ」

910 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/12(土) 18:50:41 ID:5Eia54S.0
投下終了です。

写真で現役時代嶋田の頭を見て、少し額の辺りが寂しかったのでかつらもありうるかと。
政治家ですし、人気にも関わりますから。
…それにしても技術的な話は書きにくいし見せ場が作りにくいなあ

911 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/13(日) 12:48:12 ID:Td9UQKsI0
投下乙です。
とりあえず超音速の風洞実験は成功…というわけですな。
首相の無茶が現実になるのはいつの日か…

912 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/13(日) 23:01:54 ID:5Eia54S.0
>>911さま ありがとうございます

とりあえずはM0.3〜M3.5位の風洞を念頭においてます。燃焼風洞とか書こうかとも思いましたがややこしくなるので割愛しました。
首相の無茶…さてさて嶋田の存命中に実現するか微妙ですね


ところでくろべえ氏に質問です
ダークエルフが書類仕事してる場面を書こうとして気になったのですが、ダークエルフの文字とか情報伝達手段はどうなっていたのでしょう?
くろべえ氏の本編では帝國公用語の読み書きはできるようになっているんですよね?

彼らオリジナルの文字か周辺の文化圏の文字か、それともそれ以外の手段で記録とかを残していたのか…
世界に散らばるダークエルフは別々の文字を使っていたのか、共有していたのか
ちょっと気になったもので、できればそこら辺の設定を教えてください

913 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/14(月) 09:19:33 ID:xsS49mlo0
投下乙です
嶋田さんちょこっとだけかわいそうw

現実の話、大規模風洞は現実日本にもまだ足りないというか出力不足というか
電子機器の進歩も追いつかないだろうしロシア臭のする日本空軍が脳裏にうかびますわ…
そしてこういう無茶な要求が世界を進歩させる、と

914 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/14(月) 10:54:27 ID:CQ3KIkms0
>>912
>ダークエルフが書類仕事してる場面を書こうとして気になったのですが、ダークエルフの文字とか情報伝達手段はどうなっていたのでしょう?
>くろべえ氏の本編では帝國公用語の読み書きはできるようになっているんですよね?

>彼らオリジナルの文字か周辺の文化圏の文字か、それともそれ以外の手段で記録とかを残していたのか…
>世界に散らばるダークエルフは別々の文字を使っていたのか、共有していたのか
>ちょっと気になったもので、できればそこら辺の設定を教えてください

猫じゃらしさんが自作用に自由に設定していいのでは?

915 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/14(月) 12:21:09 ID:XpD6KBxY0
ふと思った。転移男の時代、邦国の国家予算は数千万〜数億(こちらで言うと数十億〜数百億)
と言うことは、世界的芸能人や漫画家なら国家予算並みに稼いでる人がいてもおかしくはないと。

帝國の国民的アイドルユニット「旅人たち」を取り仕切り、その上がりだけで国家予算を賄う邦国(特産物:美少年)とかw

916 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/14(月) 13:07:14 ID:ZebtL9ik0
帝國と報国の購買力にかなり差があるだろ
芸能人も漫画家も稼げるのは帝國本土に限られるし世界的芸能人は誕生しないだろ?

ところで頭の悪い漏れに905〜909を誰か解説してくれんか?

917 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/14(月) 13:13:49 ID:bJFcWGuQ0
>>915
まぁ中にはキーセン国家もあるだろうが
帝國の事だからアブノーマル系は忌避されるだろうな

空気読めずにそれを売りにしたら帝國の指導と言う名の
国策介入が待ち受けているわけだしw

918 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:39:42 ID:U1uACm8A0
 猫じゃらし様、投稿乙です。
 考えてみれば、まず超音速用の風洞造るだけでも豪い手間ですねえ。

>ところでくろべえ氏に質問です
 独自の文字を持ってます。
 ……エルフと良く似た字を(笑)
 地方の独自性はそれ程ありません。あってもせいぜい軽い方言差位かな?

 これは現在の脳内設定なので、変更される可能性もあります。
 ですから>>914様の仰る通り自由に設定されては?

>>901
 「何事も帝國風」なんてことになるかも知れませんね。
 とはいえ、何をするにもまず先立つものが……

>>915
>転移男の時代、邦国の国家予算は数千万〜数億(こちらで言うと数十億〜数百億)
 これは人口数十万以下の貧乏国、邦の中でも下位レベルの話です。
 経済レベルは80年代のアフリカの小国みたいなものかな?
 資源は無い、技術も無い、場合によっては田畑も無い。あるのは人だけ。けど帝國への税金は納めにゃあならん。
 ……こういう背景があると、文字通り体で稼ぐ軍事国家が出てくるのはある意味当然ですね。
 領主以下領民総出で出稼ぎ(傭兵)ですよ。

919 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:40:59 ID:U1uACm8A0
「帝國召喚」改訂版002

――――レスト島。

 レスト島はクローゼ列島――ロッシェル王国南東海域を北西から南東にかけて横断する島々の集まり――の最南端に位置する島であると同時に、王国最南端の領土でもある。
 ……そしてその目と鼻先にあるアプト島はイルドーレ王国嶺だ。レスト島は“国境の島”でもあったのだ。


 未だ夜明けには程遠い深夜だというのに、海岸は異様な光景に包まれていた。
 多くの島民達が銛や棍棒、鉈といった“武器”を手に集結し、物々しいことこの上ない。
 ……そして何よりも異様なことは、幾ら勝手知ったる島内とはいえ、この集団は深夜に灯り一つ持参していないということだった。(彼等は土地勘と天空に輝く月や星々を頼りに、家からここまで歩いてきたのだ!)
 彼等は全員が集まったことを確認――狭い島内で皆顔見知りだ――すると、幾つかの集団に分かれてそれぞれ船に乗り込み、沖に消えていった。

 彼等は島内に出るまでの間、言葉一つ発しなかった。
 だから、島の高台に住む代官はこのことに全く気付いていなかった。





――――アプト島、“大洋丸”。

 一方その頃、“大洋丸”は“明神丸”と共にアプト島の波止場に仮停泊し、ひと時の休息をとっていた。

920 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:41:29 ID:U1uACm8A0
 ……まあ“波止場”と言ってもアプト島は無人島――何しろ1kuにも満たぬ岩礁だ――なので、天然の波止に多少の手を加えた“天然の港”に過ぎない。
 が、それでも風除け、波除けが出来るのは有り難いし、陸地に揚がれるのはもっと有り難かった。(作業能率が全然違う)
 故に、彼等は毎回ここを利用していた。


 多くの船員達がひと時の眠りに就いている中、“大洋丸”の船長室では船長と監督官が酒を酌み交わして世間話をしていた。

「今まで近代漁法とは無縁だった言わば“手付かずの漁場”ということもありますが、それにしても大したものですね!」

 “大洋丸”船長、大谷満は感嘆した様に言った。
 かつて世界屈指――あくまで“元の世界”の話だが――の漁場“北洋”での操業経験がある彼にとっても、この海域での漁獲量は驚嘆すべきものだったのだ。
 話し相手を務める監督官の海軍大尉も、日本酒の入った茶碗を軽く振りながら返す。

「ここはお国の何百里……じゃあないが、わざわざこんな所まで来た甲斐があったというものだろう?」

「全くですな! ……とはいえ、正直“何百里”じゃあききませんけどね」

 ここは本国から三千海里も離れた大内海と小内海の狭間だ。

「ははは! 違いない!」

 二人の笑い声が船長室中に響いた。

921 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:42:11 ID:U1uACm8A0
 “大洋丸”は僚船の“明神丸”と同様、農林省標準型の160トン型鋼製漁船である。
 両船とも某遠洋漁業会社に所属し、現在は政府――この場合は軍――の委託を受け、同海域での漁を行っていた。

 本国から遠く離れた遠洋漁業とはいえ、漁場そのものは水深の浅い沖合漁場だ。それ故、トロール漁法ではなく二艘曳漁法が採用された。
 2隻の船で巨大な網を曳くこの漁法は、海底付近に生棲する魚を根こそぎ捕獲出来る為、その効率は極めて高い。
 ほぼ連日の漁――1航海(2日)後1日の休養があるから3日に1回――にも関わらず、2隻の船は毎回大漁旗を掲げていた。

 獲れた魚は母港で待機している加工船に送られる。
 加工船内部はちょっとした水産加工工場となっており、運ばれた様々な水産品を乾燥肉(魚肉)や缶詰に加工し、大陸各地に展開している軍に納入する。(ちなみに缶詰は鋼材節約の観点から、一号缶や二号缶といった大型缶詰のみだ)
 直接的には軍の兵站を軽減し、間接的には本国の食糧事情を緩和する重要な任務だった。

 ……とはいえ、2隻だけの操業とは不思議な限りだ。
 この海域に進出した漁船は大小合わせて10隻に上る。ならば10隻で行動すれば効率は更に上がる筈だ。(事実、他の8隻は集団で行動している)
 が、にも関わらず“大洋丸”と“明神丸”の2隻は独立して操業していた。

 実は、“大洋丸”も“明神丸”も他の漁船から孤立した存在なのだ。
 理由は『船員に問題があるから』。
 両船の乗組員は幹部を始めとする基幹要員のみ帝國人で、主な労働力を現地雇用者に頼っている――ここまでは良い。よくあること……とまでは行かないが、大陸沿岸では少なからず見られる構成だ。
 が、船長以下の帝國人が所属会社の社員ではない、というのは珍しい。 ……ましてや全員が“元受刑囚”というのは。
 彼等は“囚人労働者”だったのだ。

922 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:42:43 ID:U1uACm8A0
 そしてその経歴故か、現在一時的に属している会社――当然以前の会社とは無関係――から煙たがれ、こうして2隻だけ、それもロッシェル・イルドーレ国境海域という言わば危険地帯での操業を強いられていた、という訳だ。 ……少なくとも表向きは。

 無論、この船長も囚人である。が、この船長はまるでそんなことを感じさせないくらい監督官と仲が良い。
 とても“囚人と刑務官”の関係には見えないのだ。
 ……苦労を分かち合うことで、友情でも生まれたのだろうか?


 ビイイイイ……

「!」

「……!!」

 と、大尉が胸元に下げていた“首飾り”の石が、突然妖しい音を立てて紅く光った。
 それを確認すると、今まで談笑していた二人の顔が途端に険しくなる。

「……予定より少し早いな」

 大尉は顔を顰めた。
 予定ではまだ間がある筈なのだが……

「もしや“奴等”、“監視”がいるのを承知の上で強行する積りでは?」

 大谷が顔を青ざめて大尉に聞く。
 ……もしそうだとすれば、効果は半減どころか“任務失敗”の恐れすらある。

「……いや、流石にそれはないだろう。何らかの理由で“交代”が早まったのだろうよ」

923 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:43:15 ID:U1uACm8A0
 幾らなんでもそこまで愚かじゃあないだろう、と大尉。
 が、その内心は穏やかではいられなかった。

「どうします?」

「どうもこうも、実行するしかないだろうさ!」

 大尉はそう吐き捨てると、船長室内に備えてあった据付型の金庫から小さな箱を取り出した。
 箱を開けると、中にスイッチが収められているのが見える。
 ……大尉は無造作にそのスイッチを動かした。

「……さて、後は結果待ちだ。船長、準備しておけよ」

「はい、大尉殿」

「……だから、海軍じゃあ“殿”はいらんのさ」

 大尉は苦笑しつつ、何度目になるか判らない船長の癖を訂正した。


 ――――数分後。


 ドンドン!

 突然、船長室をノックする音が聞こえた。

「どうした!」

 大谷がドアを開け、尋ねる。

924 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:44:10 ID:U1uACm8A0
「船長、本部より通信です! “明朝天候悪化ノ恐レアリ、大至急帰還セヨ”!」

「判った、直ぐ行く! 出港準備だ!」

「はい!」

 大谷と大尉は頷き合うと立ち上がった。


 二人が船橋に到着すると、待っていたかの様に通信士が叫んだ。

「船長、“明神丸”より通信です! 『ワレ機関ヲ故障セリ、航行不能』!」

「何? ……不味いなあ、曳航しながらじゃあ時化にぶつかっちまうぞ?」

「……仕方ない、本船だけで出航する。“明神丸”乗組員は総員島に上陸し、避難所に待機せよ」

 獲れた魚が半分無駄になっちまうが仕方無い、と大尉は忌々しそうに舌打ちする。

「本船に乗せれば、そんなことをしないで済むのでは無いのですか?」

 大尉の言葉に反発した航海士が具申する。
 が、大尉は鼻で哂って退けた。

「貴様は阿呆か? 只でさえ過積載なのに、この上人など乗せえられるか!
 子供じゃあ無いのだから、二〜三日位この島で過ごさせろ!」

925 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:44:58 ID:U1uACm8A0
 大尉の言葉は確かに一理も二理もあった。
 島には天然の洞窟を利用した避難所があり、そこには幾ばくかの食料や水が置かれているのだ。
 船の物資も考えれば、二〜三日位どうってことも無いだろう。
 ……が、『人より魚の方が大切』という考えがあからさまな言葉に、その場の誰もが反発を覚えた。
 それを察し、慌てて船長が口添えする。

「目と鼻の先は有人のレスト島だから、何も心配することはないだろう?
 何かあったら『直ぐに駆けつけてくれる』さ。直ぐに……ね?」

 ……こうして“大洋丸”のみが出航し、“明神丸”は島に残ることとなったのだ。





「永久の別れ……か」

 監督官室で大谷は呟いた。

 時計を見ると、出航してから既に一時間以上が経過している。
 アプト島とレスト島は目と鼻の先だ。手漕ぎだろうがそろそろ――

 彼は、彼等は、今頃“明神丸”乗組員に降りかかっているであろう災難を承知していた。
 ……いや、むしろそうなる様に仕向けたのだ。
 例え直接実行したのでは無くとも、それは何の言い訳にもならないだろう。
 二人はまさしく“共犯”だった。

926 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:45:29 ID:U1uACm8A0
「……心配かね?」

 大尉が九四式拳銃の手入れをしながら尋ねる。

「いえ、別に」

「それは結構! ……まあ、どうせ現地人と“主義者”だ。気にする必要もない、か」

 “明神丸”に乗り込んでいる乗員は、帝國人は“主義者の囚人”、原住民も“島流しにされていた囚人”だ――そう大尉は指摘し、『“主義者”は癌と同じだからな』と嘯く。

「全くです」

 阿諛追従でなく、本気で返す大谷。
 それを見て、大尉は満足そうに頷いた。

「ああ、貴様には今回良く働いてもらったな。
 今直ぐは無理だが、一〜二ヶ月後には恩赦が出る筈だ。本国に帰れるぞ?」

「有難うございます!」

 大谷は深々と頭を下げた。

「次の職場は軍が世話してやる。職種希望はあるか?」

「……出きれば陸上でお願いします。家族の傍にいたいので」

「判った。伝えておこう」

 大尉は鷹揚に頷いた。

927 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:45:59 ID:U1uACm8A0
「では、私はこれで」

 大谷は辞を低くし、監督官室を後にした。


 ――これでやっと、やっと家族に苦労をかけずに済む!

 船長室に戻った大谷は胸を撫で下ろした。
 “職場の世話”が監視を意味すること位は判っている。が、それでもようやく人並みの生活に戻る事が出来るのだ。家族を守ることが出来るのだ。
 ……そう思うと、今まで家族にかけてきた苦労に一人涙した。

 大谷は北洋漁業に従事する幹部級船員だった。
 が、一般労働者達の過酷な労働条件や頻発する虐待に義憤し、何時しか主義者達が労働者達を感化・組織することを手助けする様になていった。
 そのため、大谷は大規模争議を引き起こした関係者として逮捕・投獄されたのである。(勿論、会社は解雇だ)

 その後、数年に及ぶ獄中生活を経たある日、見知らぬ軍人が面会に訪れた。

 ――君、悔い改めて御国に尽くす気はないかね?

 なんでも現在、帝國は船舶の大増産を行っており、船員――特に中堅以上の――が極度に不足している状態なのだそうだ。
 それ故、大谷に白羽の矢が立ったのだ。船にのらないか、と。
 危険な遠隔地での任務だったが、大谷は承諾した。
 それなりの給金が支払われる上、三年働けば残りの十年以上の刑期を帳消しにしてくれるという好条件だったが、そんなことよりも出航までの三日間、家族の元に帰れる、という条件に心を動かされたのだ。
 ……が、家族と再会した大谷は愕然とした。

928 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:46:31 ID:U1uACm8A0
 久し振りに遭う妻はやつれ果てていた。 ……子供は一人欠けていた。
 『夫が共産党に入党した』などというデマのため、実家にすら身を寄せることが出来なかったのだ。
 ただでさえ女一人で暮らすには辛い世の中、子供まで抱えて一体今までどんなに苦労をかけただろう?
 だが、妻の口からは一切の恨みつらみは聞く事が出来なかった。
 代わりに聞けたのは、娘を助けられなかった謝罪の言葉。
 その時初めて大谷は自分がしたことの“愚かさ”に気付き、号泣した。
 ……それは、大谷が“今までの自分”と完全に決別した瞬間だった。

 以後、彼は軍の命令に忠実な実行者として、身を粉にして働く事となる。
 そしてそれを認められ、“今回の計画”への参加を打診されたのだ。
 大谷は一も二も無く飛びついた。あらゆる意味で危険な任務だったが、自分と家族が浮き上がるにはそれしか方法が無かったからだ。
 そして現在、今までの苦労がようやく報われようとしていた。 ……他者を犠牲にして。
 が、彼には些かの後悔も、“明神丸”乗組員に対する哀れみも存在しなかった。

『たとえ如何程の悪名を受けようとも、自分は自分と家族の為だけに生きる』

 ――そう誓ったその時から、彼は良心など捨て去っていたのだ。





――――二日後、アプト島。

 “明神丸”乗組員救出の為にアプト島を訪れたのは、“大洋丸”では無く特設砲艦“第三千代田丸”だった。
 “第三千代田丸”は800総トンの民間船を徴用、武装化したもので、『同型の“大洋丸”で曳航は大変だろう』と考えての措置である。 ……表向きは。

929 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:47:01 ID:U1uACm8A0
 だが、第三千代田丸”はその任務を達成することは出来なかった。
 “第三千代田丸”の将兵を待ち受けていたのが、“明神丸”の残骸と“明神丸”乗組員の遺体だったからだ。
 

「……酷え」

 ……その凄惨な光景に誰もが息を呑んだ。
 “明神丸”船員の遺体はどれもまるで私刑(リンチ)にでも遭ったかの様で、“綺麗な”遺体は一つとして見られない。
 未だ燻る船の炎が、一層陰鬱な雰囲気にさせる。

「駄目です! 全乗組員の死体を発見しました! ……生存者ゼロです」

 一縷の望みを託し、探し回っていた将校が首を振った。

「畜生! 一体どこのどいつだ!」

 副長が吐き捨てる。
 その表情は怒りに燃えていた。
 と、船内を調べていた兵が手に何かを持って駆けてきた。

「艦長! 航海日誌を見つけました!」

「でかした!」

 艦長と副長は早速日誌を広げた。

 ……日誌には“大洋丸”と別れて直ぐに通信機も故障したこと、そしてその30分後に100人以上のレスト島住民に襲われたことが書かれていた。
 必死に抵抗するも武器一つ無い上に多勢に無勢、不意を突かれたこともあり呆気なくやられたらしい。

930 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/14(月) 13:47:44 ID:U1uACm8A0
「艦長! 報復しましょう!」

「まあ待て、副長」

 艦長は怒りの余り暴走する副長を抑えた。

「しかし!」

「我が国が承認していないとはいえ、レスト島はれっきとした独立国家の領土だ。
 である以上、我々現場の判断のみで行動することは許されん」

「…………」

「判ったな?」

「はい」

「では遺体と証拠品を収容後帰還する! 急げ!」

 ……こうして、“第三千代田丸”は何ら具体的な行動を起こさず去っていった。
 が、それは決して『泣き寝入り』を意味するものではなかった。
 ただ準備期間を置いた――それだけのことだ。

 何れにせよ、こうして第一幕の幕が閉じた。
 この事件は後に“アプト島事件”と呼ばれ、歴史を大きく動かすことになる大事件だった。



 SS投下終了。

931 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/14(月) 14:12:11 ID:8RNT3GbA0
投下乙です。
一種の自作自演ですか…
何時の時代も大国のやる事は変わりませんね。囚人達に合掌…

932 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/14(月) 14:37:55 ID:YAq95h6U0
投下乙です。
なるほど。ロッシェルとの戦端はこうして作られた訳ですか。
ちょっと非情な感じですが、「彼ら」に甘い顔すると、
後々とんでもないことになりますしねぇ。

933 名前:ヨークタウン ◆r2Exln9QPQ:2007/05/14(月) 14:38:39 ID:4CUjn9IY0
猫じゃらし氏投下お疲れ様です。
風洞実験はひとまず成功ですね。嶋田さんの無茶にはほど遠いですが、日本版チャック・イエーガー
の登場は、少しばかり近くなりましたね。
でも、技術的な問題はこれから出てくるでしょうから、気が抜けぬ日々が続きますね。

くろべえ氏投下お疲れ様です。
明神丸の船員達を捨石にして、後々の物事に利用するとは・・・・
なんともセコく、それでいて鮮やかな方法ですな。オソロシヤ(((( ;゚д゚)))

934 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/14(月) 16:56:06 ID:bJFcWGuQ0
くろべえ氏 投下乙

あぁやりきれない読後の苦さ
しかし
苦味も味のうちこの苦さが後の旨味につながると思えば
それもまた心地よしですな

935 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/14(月) 23:25:02 ID:lUmeIgxc0
投下乙
なんとも合理的で悲しい方法ですなぁ
まるで特攻のようだ

936 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/15(火) 01:06:14 ID:bBA1RBak0
投下乙

>まるで特攻のようだ
いや特攻はぜんぜん合理的じゃないからw
だからこそ恐れられたわけですが…。

この場合どちらかというと米帝の常套手段…

937 名前:名無し三等兵@F世界:2007/05/15(火) 01:47:30 ID:BsYgcDrM0
くろべえさん、投下乙です。

なかなかやり手な手口ですね。ダークエルフの知恵も入っているのかな?

仕事を始めたのは転移からあまり経ってない頃ですかね?
思想犯に刑務所内で食事を与えるよりは、食糧生産に励んでもらうと。

938 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/15(火) 03:24:44 ID:X9DoCVGA0
くろべえさん投下乙です。
エンジンと通信機もったいなす。(オイ
レスト島住民は日本からは報復で、ロッシェルからは口火切らせた ってことで
皆殺しの運命しかない気が。

あと最近気になることがあるのですが、ワイバーン種の飛行限界高度は旧版では6000mと
なってますがこれを緩和する方法ってありますか?
(例:マナを貯蔵する石やボンベを竜にくくりつけ限界高度付近で使用、1撃やったら降下)

939 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/15(火) 14:20:26 ID:U1uACm8A0
>>831
 831様、有難うございます。

>一種の自作自演ですか…
 ここのところ帝國の闇が連続していますね……
 でも大義名分は必要だからなあ……

>>832
 832様、有難うございます。

>なるほど。ロッシェルとの戦端はこうして作られた訳ですか。
 はい、以前お話した『漁業問題がエスカレートして』の件です。

>非情
 ですね。「どうせ死罪か無期懲役だから……」と使い捨てです。

>>833
 ヨークタウン様、有難うございます。

>明神丸の船員達を捨石にして、後々の物事に利用するとは・・・・
 そういう目的で、わざわざ国境水域で孤立操業させていたのですよ。

>>834
 834様、有難うございます。

>あぁやりきれない読後の苦さ
 帝國としても強引に戦争ふっかける訳にはいきませんからねえ……
 『天国に一番近い島』といい、帝國の手も列強と同じ位汚れているのですよ。

940 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/15(火) 14:21:00 ID:U1uACm8A0
>>835
 835様、有難うございます。

>合理的
 確かに元の世界にいた時よりもスマートだ……
 えげつないけど。

>>836
 836様、有難うございます。

>この場合どちらかというと米帝の常套手段…
 帝國には褒め言葉かも。

>>837
 名無し三等兵様、有難うございます。

>ダークエルフの知恵も入っているのかな?
 大尉の首飾りといい、通信機や機関の時間差故障といい、彼等が噛んでるのは間違い無いです。
 ……というか、レスト島住民の行動を伝えたのも彼等だし。

>仕事を始めたのは転移からあまり経ってない頃ですかね?
 昭和17年の中ごろかな? 1年ちょっと前ですね。

>>838
 838様、有難うございます。

>エンジンと通信機もったいなす。(オイ
 後で怪しまれない様にちゃんとしたヤツです。
 あまりこういう所ケチるのもアレなので。

>あと最近気になることがあるのですが、ワイバーン種の飛行限界高度は旧版では6000mと
>なってますがこれを緩和する方法ってありますか?
 旧版ではマナを充填した物を抱え込むとか、指向性を持たせたマナを照射するとか考えました。
 後はナイキみたいなSAMモドキを。

 改訂版ではもう少し上昇性能を上げるつもりです。

941 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/15(火) 14:21:36 ID:U1uACm8A0
「帝國召喚」改訂版003

――――ロッシェル王国、マリティーム。

 マリティームは人口10万を誇る王国第二の都市であると同時に、王国最大の港湾都市でもある。
 “王国の玄関”と称されるだけあり、港には様々な国の船――異文明圏の国々からも――が行き来している。
 ――そんな中、一際巨大な船が入港した。

 帝國海軍一等巡洋艦“筑摩”である。

 “筑摩”は港内の注目を一身に集めていた。
 それはそうだろう。最大級の外航船ですら全長170ブート(49.98m)がやっとであるのにも関わらず、“筑摩”は『全長700ブート近く』という冗談の様な大きさで、船と言うよりは“海に浮かぶ城”だったのだから。
 ……が、その反面、幅は『60ブートをやや出た程度』という非常に慎ましやか――あくまで『全長に比して』の話だが――なもので、その『痩せすぎ』の船体はどことなく奇異な印象を受けるのもまた事実だった。(この世界の船の全長:全幅比は凡そ4:1である。それを見慣れた目で“筑摩”の11:1という細身の船体を見れば、違和感を感じるのは当然のことだろう)
 まあ何れにせよ、その全鋼製の船体といい、マストを一本も持たぬ城塞の様な艦上構造物といい、“筑摩”はおよそ常識からはかけ離れた船だったのだ。


 一方その頃、マリティーム市内にある第四飛竜騎士団司令部は緊張に包まれていた。

「“チクマ”入港! 投錨しました!」

「宜しい。各隊は現状を維持、引き続き警戒態勢をとれ」

942 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/15(火) 14:22:07 ID:U1uACm8A0
「ハッ!」

 通信将校からの報告を受け、第四飛竜騎士団長ベルナッド少将は新たな命令を下した。
 『やれやれ』と胸を撫で下ろしたのもつかの間、団長の一声で司令部内は再び緊張に包まれる。

「……しかし、大きいですね」

 偵察飛行中のワイバーンから送られてきた映像を見て、副団長のオッシュ大佐が何度目になるか判らない言葉を漏らした。
 その目は、机上の魔法陣に映し出された“チクマ”の立体映像に釘付けになっている。
 このワイバーンには魔道士が同乗しており、情報がリアルタイムで送られてくるのだが、映し出された“チクマ”の姿は何度見ても驚嘆せずにはいられない。

 現在、司令部では情報解析のために“チクマ”の縮尺立体映像――勿論海面上の姿だ――を浮かび上がらせていた。
 この映像を観察し、“チクマ”の能力と攻略法を検討しているのだ。気になった箇所は部分的に拡大され、更に詳細に検討されていく。
(この様に魔道士を活用した魔道偵察は非常に便利なのだが、魔道士の希少性や転送距離・転送情報量の制約、そして何よりコストの問題から気楽に多用できないのが玉に瑕だった)
 ……が、この手法は同レベル、或いは同じ技術思想を有する相手にしか通用しない。
 幾ら外見だけ調べても、およそ共通性の見られない技術体系で造られた船を理解することなど不可能なのだ。
 無論、『全くの無駄』という訳では無い。それなりの情報は得られるだろう。 ……が、それだけでしかなかった。

943 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/15(火) 14:23:10 ID:U1uACm8A0
「ああ、確かに大きい。 ……が、それ以上に重要なことがあるのではないかね、大佐?」

「『よく判らないことが判った』ですか、閣下?」

「まったくだな! 動力源も判らなければ、このやたらデカい大砲が本当に撃てるのかどうかすら判らん!」

 オッシュ大佐の揶揄に、ベルナッド少将は自嘲気味に哂った。

 “チクマ”は洋上を時速20ミール(約29.4q)以上で航行していたが、一体何を動力に用いればこれだけの巨体をこれ程の高速で、しかも長時間に渡って動かせるのか、全く見当もつかない。 ……いや、理論的には幾つかの仮説が成り立つのだが、どれも現実的には実現不可能なものばかりなのだ。
 一際目に付く巨大な8門の大砲も問題だった。大きさから考えて後装式なのは間違いなかろうが、これ程の巨砲が果たして実用レベルで運用出来るのだろうか? 威嚇用の飾り、という可能性も捨て切れない。
 ……唯一つ彼等が判った事は、『これ程の巨体に加え、全身くまなく鋼で覆われている以上、相当“沈みにくい”だろう』という、幼子でも判る様なことのみだ。

『海軍では“チクマ”に対抗できない。地上軍も同様だろう。 ……唯一抗し得るのは我ら“飛竜軍”のみ』――それが彼等の下した結論だった。
 
 故に、王国沿岸部を担当空域とする彼等(第四飛竜騎士団)は出来る限りの手を打った。
 隷下の3個飛竜連隊(第四、第八、第一二)の内、北部沿岸を担当する第八飛竜連隊(ワイバーン保有)をマリティーム近郊に全力展開、更に第四飛竜連隊(ワイバーン・ロード保有)から2個中隊引き抜き臨時大隊を編成、後詰めとして待機させている。このため現在マリティーム周辺に展開する航空戦力はワイバーン・ロード12騎、ワイバーン30騎(うち訓練任務6騎)という非常に濃密なものとなっていた。
 加えていざという時には通常爆弾ではなく貴重な魔法爆弾の全面使用すら許可しており、『如何な“チクマ”でもこれなら撃沈できるであろう』と司令部は判断していた。

944 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/15(火) 14:23:54 ID:U1uACm8A0
 ……まるで今にも戦争が起こりそうな警戒振りだが、別にロッシェルは『帝國と戦争になる』などとは毛頭も考えてはいなかった。
 それはそうだろう。何しろ“帝國”などという国家はつい最近風の噂で耳にした程度の遠い国だ。そんな国と戦争になるほどの利害関係があるも無い。
 確かに“帝國”とは中央から遠く離れた国境水域で緊張状態を起こしているが、戦争になる程の火種では無い。せいぜい局地的な小競り合いが起きる程度だろう。
(第一、国交すら無い“帝國”の軍艦を今回受け入れたこととて、『その紛争解決の為のイルドーレ王国使節団を同乗させての親善訪問』ということだからだ)

 が、軍事力が外交よりも上位に立つ以上、武威を示すのは当然だった。
 故に、帝國は強大な軍艦を見せつけ、王国も対抗戦力を見せ付ける――この時点で既に外交は始まっているのだ。
 ……そして何より、自国の大都市に異国の軍艦を受け入れる以上、不測の事態に備えるのは当然の措置だった。
 何れにせよ今回の受け入れで、ロッシェル・イルドーレ・帝國間で複雑に絡み合った状況は好転するもの、とロッシェルは期待していた。

 そんな状況の下、“筑摩”は入港したのである。





 SS投下終了。

945 名前:名無し三等兵@F世界:2007/05/15(火) 15:34:33 ID:jTBsEfBU0
くろべえさん、投下乙です。

おや、「筑摩」ですか。他の重巡の方が砲艦外交には向いてそうなデザインだし、やや旧式で良いと思うのですが。
…もしや近くに空母部隊が?

あと、利根型は10.4:1(全長201.6m、全幅19.4m)、幅は約65ブートです。
(調べると利根型のデータがバラバラでしたが、これが一番近いかと。)

946 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/15(火) 16:32:03 ID:X9DoCVGA0
くろべえさん投下乙。質問への回答ありがとうございます。
軍艦外交キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
この後どんなケンカの売り方するのか楽しみだなぁ。

>945
格納庫にワイバーン隠してそうな気がします。
20cm砲が大き過ぎてかえって脅威になってないのはイルドーレの時に判明してそうだし。
ならこの世界で知れ渡っているワイバーンを複数運用可能な水上艦とすれば・・・。

947 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/15(火) 20:10:32 ID:bJFcWGuQ0
>>946
ワイバーンを水上艦にする?

948 名前:名無し三等兵@F世界:2007/05/15(火) 21:23:22 ID:Ft8EYybM0
>>946
利根型には格納庫はありませんよ。
航空機は露天で後方甲板上に積んでましたし。

わざわざ相手と同じ兵器を使う必要もありませんよ。
F世界にワイバーン母艦のアイディアを与えたいのですか?

949 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/15(火) 21:56:19 ID:X9DoCVGA0
>946
本屋に利根型の本あったので読んだら・・・露天でした。
格納できるのは大和型だった。それとごっちゃにしてたみたいで・・・

950 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/16(水) 00:41:24 ID:mRHIKCIQ0
>>949
巡洋艦だと大淀型でないか?
大和は戦艦だし、でか過ぎるの

951 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/16(水) 07:55:26 ID:U1uACm8A0
>>945
 名無し三等兵様、有難うございます。

>おや、「筑摩」ですか。他の重巡の方が砲艦外交には向いてそうなデザインだし、やや旧式で良いと思うのですが。

 1F(戦艦6、重巡4、軽巡2、駆34、軽空2)も2F(戦艦4、重巡12、軽巡2、駆34、軽空2)も人員充足率が平時並に落とされてますからねえ。扶桑型戦艦に至ってはGFから外されちゃいました――扶桑は兵学校訓練艦に、山城は砲術学校練習艦に――し……
 ぶっちゃけ、戦艦と重巡で乗員定数を満たしているのは利根と筑摩だけなのですよ。
 新しくて綺麗だから、ということもありますが。

>あと、利根型は10.4:1(全長201.6m、全幅19.4m)、幅は約65ブートです。
 ああ、これ現地の人が目測で大まかに見当つけたものですので。

>>946
 946様、有難うございます。

>20cm砲が大き過ぎてかえって脅威になってないのはイルドーレの時に判明してそうだし。

 専門家はSS中の様に考えますが、一般市民とかは軍事知識が無い人が多いですから、驚いています。
 政治家も皆が皆軍事に詳しい訳ではありませんし。

952 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/16(水) 11:39:21 ID:RrAkh9vU0
>利根型には格納庫はありませんよ

こう考えるんだ! 転移した後に改装を施されたんだと!!

953 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/16(水) 21:18:29 ID:duUdi1Ck0
くろべえ殿、投下乙です。
に、匂うぜ。帝國主義の香りが、砲艦外交の匂いが。
さあ、血と汗と涙と歓呼と炎の物語の始まりですな。
しかし、重巡で驚いているのなら戦艦や空母を見た日には・・・

954 名前:ヨークタウン ◆r2Exln9QPQ:2007/05/16(水) 22:21:41 ID:4CUjn9IY0
くろべえ氏投下お疲れ様です。
筑摩の姿を見てあちらさん側はかなり驚いているようですね。
帝國にとってはたかが一隻の重巡ですが、ロッシェルから見ればとてつもない化け物。
これがあの大和や武蔵だったらどうなることやら・・・・

955 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/16(水) 23:11:15 ID:AsvFMiQg0
くろべえ氏、投下乙です。
イルドーレ王国使節団ですか、何が始まるんでしょうね。

956 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:17:56 ID:U1uACm8A0
>>953
 953様、有難うございます。

>に、匂うぜ。帝國主義の香りが、砲艦外交の匂いが。
 はい、いよいよ帝國の初桧舞台です。
 大内海での経験とダ―クエルフの入れ知恵により、帝國はこんなに立派にアレになりました。

>しかし、重巡で驚いているのなら戦艦や空母を見た日には・・・
 実際、『他の艦から人員かき集めて戦艦を出す』という案もありましたが、オーバースペックとされ却下されました。
 ま、重油の問題が一番の理由だったのですが。

>>954
 ヨークタウン様、有難うございます。

>これがあの大和や武蔵だったらどうなることやら・・・・
 大和は出したいのですが、凄い定員と燃料喰いますからねえ……
 他の戦艦と一緒にすっかり柱島ホテルになっておりますよ。

>>955
 955様、有難うございます。

>イルドーレ王国使節団ですか、何が始まるんでしょうね。
 次回、イルドーレ王国の内情が明らかになります。

957 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:18:49 ID:U1uACm8A0
「帝國召喚」改訂版004

 この当時、イルドーレ王国は膨大な借金を抱え込んでいた。
 具体的には国内の商人衆から300万リバー(年利12%)、国外の商人衆から100万リバー(年利25%)の計400万リバーである。
 ……つい先日急死した先代の王が大変な浪費家だったことが原因だ。
 それにしても400万リバーだ、大金である。イルドーレ王国の歳入が平均240〜250万リバーだということを考えれば、その膨大さが判るだろう。利子を払うだけでも精一杯、とても元金を返すアテなど無い、というのが正直な所だった。(返済法は『四半期毎に利子のみを払い、返済期日に元金と最後の四半期分の利子をまとめて払う』という方式だ)
 が、期日に元金を返せねば利率は更に跳ね上がる。そして今度は確実を期すために、商人衆は容赦なく差し押さえを行うだろう。(彼等は年貢の換金や交易等を一手に引き受ける御用商人衆だから、差し押さえる手段は幾らでもあるのだ)
 この差し押さえを逃れる手段は事実上無い。そんなことをすれば信用は地に落ち、まともな商人からは相手にされなくなるからだ。
 そうなれば国外との交易は大打撃を受け、国内は大不況に陥るだろう。少なくとも『素直に差し押さえを受けた方がマシ』と思える位に、だ。
 確かに国内経済を国外とリンクさせれば国は豊かになる。が、リンクした以上、大昔の様な自由勝手な振る舞いは許されない――あくまで『以前と比べれば』のレベルでしかないが――のだ。
 ……ましてやイルドーレ王国の様な僻地の小国は。

958 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:19:34 ID:U1uACm8A0
 要するに、後10年もすれば『とんでもない事態』(差し押さえ)が起きるのは避けられない様な状態だったのである。
 ……が、その“素晴しき未来”は思ったよりも早くやって来た。
 悪いことに今年は大凶作のため税収が大きく落ち込むことが確実となり、『200万リバーを割り込む』とすら予想されたのだ。 ……これでは利子すら払えない。
 そこで何とか利子分を捻り出そうと、様々な手段が模索された。

 まず第一に考えられたのが増税だが、ただでさえ大凶作で収入が落ち込んでいるのに、そんなことが出来る筈も無い。反対に減税が必要な状態だった。
 ……このため、貴族や騎士達の家禄に手をつける案が王と側近達の間で内々に検討された。

 イルドーレの貴族や騎士達は王都在住を義務付けられ、領地から切り離されている。
 領地は国が管理し、彼等は名目上の領主でしかないのだ。
 代わりに王国から毎年相応の金額を家禄として受け取っているが、この総額は年およそ80万リバーにも上る。(王国の平均歳入240〜250万リバーという数字は、この80万リバーを含んで、の額だ)
 これを一時削減し、返済に充てよう――そう考えたのだ。

 ……が、この案は直ぐに洩れ、大反発を受けた。
 既に『財政困難につき』という理由で1/8の10万リバーを数年間に渡って“借り上げ”(徴収)ている。この上更なる減額は到底受け入れられる筈もなかった。(『1/2借り上げ』という噂がまた火に油を注ぎ、騒ぎを大きくしていた)

959 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:20:52 ID:U1uACm8A0
 ――そもそもの原因は、陛下の浪費癖によるものではないか!

 そんな声が巷に溢れた。
 王はそれでも“借り上げ”を強行しようとしたが、その直前に死亡、計画は白紙撤回された。
 ……その余りにもタイミングの良い王の死に、巷では謀殺の噂が絶えなかったという。
 曰く、『側近のみで物事を進める王に愛想を尽かしていた重臣達が、今回の件で腹を括った』のだそうだ。
 まあ何れにせよ、王の死に誰もが――上は貴族から下は庶民まで――ホッと胸を撫で下ろしたことからも、この王の評価が判るというものだろう。

 新王は王の異母弟。その手腕は未知数なれど、幾らなんでも前王よりはマシだろう、と多くの者から歓迎された。
 ……金を貸していた商人衆を除いて。
 無から有は作り出せない。体制が一新したことにより借金はどうなるのか、と彼等は戦々恐々と眺めていたのだ。
 そして心配していた通り、商人達の元にイルドーレからの使者がやって来た。

 ――すわ、借金の繰り延べか!? それとも利子の減額交渉か!?

 そう身構えた彼等に切り出された内容は、思いもかけないものだった。
 イルドーレは、借金の“繰上げ返済”を打診してきたのだ。

 ――大変申し訳無いが、借金契約を解消させて欲しい。その代わり違約金として、元金と今期分の利子の他に3/4ヶ年分の利子、つまり元金と1年分の利子を支払おう。

960 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:21:50 ID:U1uACm8A0
 イルドーレの打診に商人達は耳を疑った。
 何でも新王は借金を大幅に整理する方針で、特に利子の高い国外の商人衆からの借金を優先して返済してしまおうと考えているらしい。
 が、国外の借金は100万リバー、1年分の利子を含めれば125万リバーにも上る。 ……この金は一体何処から捻り出すのだ?
 首を捻ったが、現物を見せられれば嫌も応も無い。狐に包まれた様な気持ちで彼等は契約解消を承諾した。

 次いで新王は、家臣達から借り上げていた家禄を一括返済した。 ……しかも低利とはいえ利子を付けて、である。
 家臣達は狂喜し、新王はその支配を確固たるものにすることに成功した。

 ……しかし、誰もが疑問に思うことがあった。
 国外の商人衆からの借金の返済に125万リバー。
 家臣達からの“借り上げ”の返済に45万リバー。
 計170万リバーにも上る金を、新王は一体何処から調達したのだろう?

 その疑問は直ぐに氷解した。
 なんと新王は、200万リバーで国土の一部を売却していたのだ!
 先払いされたこの200万リバーこそが、借金返済の原資だった
 
 『国土の売却』

 前代未聞……とまでは言わないが、恥も外聞も捨てたなりふり構わぬ行為、と評せるだろう。およそ独立国としては恥ずかしい限りだ。
 ……まあ確かに、恥も外聞も気にしていられる様な状況では無かったのではあるが。

961 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:22:52 ID:U1uACm8A0
 が、重臣達からは目立った反発は出なかった。
 背に腹は代えられなかったこともあるが、帝國に売却した領土が西端の海域に位置する極々小規模な一諸島に過ぎなかったからだ。
 人口も数十人程で、それすらも移住という形で返還される。イルドーレの懐は毛ほども傷まない。
 かえってこんな土地に200万リバーも出した相手の経済感覚を疑う程で、一部の重臣など『何を企んでいる?』と疑心暗鬼に陥っていた。
 ……が、判明した相手の目論みは馬鹿馬鹿しい程素朴なものだった。

 最近、大内海で急速に勢力を伸ばしつつあったその新興国家は、中央世界との直接交易を望んでいた。
 とはいえ、如何な“大内海の覇者”を自称しようが中央世界では大田舎者、蛮族でしかない。
 それを痛感した“その国”は、如何にも“成り上がりの田舎者”の様なことを考えた。

 ――ならば中央世界の土地を手に入れ、文明国の仲間入りをしよう!

 ……呆れる程無邪気な考えだった。
 が、当の本人は大真面目でこれを実行した。
 イルドーレ王国が借金漬けになっていると聞き、領土の購入を打診して来たのだ。

 無論、島だけで200万リバーも払う訳では無い。
 これには、その後『北東ガルム文明圏入り出来るよう仲介する』仲介料が含まれたいたのだ。
 具体的には北東ガルム文明圏諸国が多数参加する“大陸同盟”への加盟である。

962 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:23:55 ID:U1uACm8A0
 イルドーレ王国にとってもこれは悪い話では無かった。
 いや、それどころか実に“美味しい話”だった。

 200万リバーという大金もそうだが、もし“その国”が“大陸同盟”への加盟を認められ、購入した島を拠点に本格的な交易に乗り出せば、大内海と中央世界との交易の中継点となれるかもしれないのだ。
 仮に失敗しても200万リバーは残るし、もしかしたら更なる金を引き出せるかもしれない。どちらに転んでも悪い話ではなかった。

 ……まあ何れにせよ、契約は成立した後だ。今更反対する様な話では無いだろう。
 そう考え、重臣達は領土売却を容認したのだ。
 そんなことよりも残りの借金、300万リバーの返済を考える方が重要だった。
 ようやく返済の見通しは立ったものの、今後数十年に渡る緊縮財政が必要なのだから。
 こんな夢話に200万リバーも払える様な国を羨み、かつ呆れながら。

 その夢見る国の名を、“帝國”といった。





 ところで話は変わるが、この“リバー”という通貨単位、イルドーレ王国のものではない。
 いや、確かにイルドーレでも“リバー”という通貨単位を採用してはいるが発行してはおらず、補助通貨の“イルドーレ・センテ”銅貨のみを発行し、“リバー”とリンクさせているのだ。

963 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:24:36 ID:U1uACm8A0
 これは金も銀も産出しないイルドーレにおいては必然の選択だった。(とはいえ金銀貨の裏打ちの無い“イルドーレ・センテ”の信用は低く、国外で通用しないどころか国内ですら忌避され、鐚銭扱いされている。この為、イルドーレ国内で流通する銅貨の主役は国外通貨だった)

 さて“リバー”は種々あるが、一般に言えば“レムリア・リバー”、即ちレムリア王国で発行した通貨を指す。
 実はレムリア王国の通貨は、事実上“中央世界の標準通貨”と見做されているのだ。無論、中央世界全土で流通している訳では無いが、国際通貨として外国間取引の際の指針とされていた。
 これは、レムリア通過の高品質・高信頼性故である。


 レムリア王国は、他国とは異なる貨幣政策を採っている。
 例えば1オース金貨――“オース”は質量単位(国により微妙に異なるがレムリアの場合は1オース≒32g)――と言えば、他国では『総重量1オースの金貨』だが、レムリアでは『1オースの金を含む金貨』なのである。
 つまり、他国では金銀貨の品位が頻繁に変わるのに対し、レムリアのそれは常に一定なのだ。
 ……これが評価されない筈が無いだろう。これこそがレムリア通貨の地位を不動のものとしている最大の所以である。無論、その国力――何しろ世界の列強が一つだ――も通貨の価値をより高めてはいたが。
 何れにせよ、世界の金銀産出量の四割を占める“黄金の国”だからこそ出来ることで、他の国々には到底不可能な芸当だった。

964 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:25:07 ID:U1uACm8A0
 ちなみに、レムリアの通貨単位は以下の通りである。

 16フロル貨(大金貨):金重量1オース(約32g)    総重量1+1/4オース(約40g)     金含有率80%
  4フロル貨(正金貨):金重量1/4オース(約8g)  総重量1/4+1/16オース(約10g)  金含有率80%
  1フロル貨(小金貨):金重量1/16オース(約2g) 総重量1/16+1/16オース(約4g) 金含有率50%
 16リバー貨(大銀貨):銀重量1オース(約32g)    総重量1+1/4オース(約40g)     銀含有率80%
  4リバー貨(正銀貨):銀重量1/4オース(約8g)  総重量1/4+1/16オース(約10g)  銀含有率80%
  1リバー貨(小銀貨):銀重量1/16オース(約2g) 総重量1/16+1/16オース(約4g) 銀含有率50%
 1/4リバー貨(豆銀貨):銀重量1/64オース(約0.5g)総重量1/64+1/16オース(約2.5g)銀含有率20%
  4ソル貨(大銅貨)
  1ソル貨(大銅貨)
 *大金貨と大銀貨は儀礼用の特別貨幣で、一般には流通していない。
 *時と場所により金銀銅貨間の相場は変化するが、おおよそ1フロル≒16リバー≒1750ソル、1リバー≒110ソル。

965 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:25:37 ID:U1uACm8A0
 “帝國”は200万リバーをイルドーレに支払ったが、これは正銀貨50万枚に匹敵する。
 ……一体何処から、どうやってこれ程の量の銀貨を手に入れたのだろう?
 実はレムリアの某大商人から、純金1000リブラ――“オース”より重い質量単位(国により微妙に異なるがレムリアの場合は1リブラ=16オース≒512sなので、この場合約512s)――で『買い取った』のである。

 200万リバーに含まれる銀の総量は約4000sだ。
 が、200万リバーと銀4000sはイコールではない。純銀と交換するなら三倍の12000s程は必要だろう。(実際の取引例では四〜五倍といった例すら存在する!)
 通貨には含有されている貴金属の価値に加え、“通貨そのもの”に対する信用も上乗せされているからだ。
 ……まあ、“最低補償額(含有されている貴金属)付の国債”と考えた方が判り易いかもしれない。何れにせよ、『そういう約束』でこの世界の経済は成り立っているのだ。

 ところが“帝國”が支払った純金は約512s、金1gはおよそ銀16gだからおよそ銀8200s分にしかならない。これでは上の12000sの2/3だ。
 が、これは妥当な取引だった。銀貨を買い求める場合、『銀ならば三倍以上、金ならば二倍以上』という相場感が成り立っているからだ。
 理由は金の方が希少であり、金を基準として銀の価値が決定されるからだった。(金と銀の関係を判りやすく言えば、『金を銀と交換することを拒否されることは有り得ないが、その逆は十分有り得る』だ)

966 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 12:26:38 ID:U1uACm8A0
 ……とはいえ相場こそは妥当だが、今回の様にいきなり『現生で200万リバーを用意しろ』とはかなり無茶苦茶な要求だった、ということだけは付け加えておく必要があるだろう。
 何しろ総重量で5000sにもなる上、それだけの“遊び金”――商人である以上、手元資金は右から左――を持つ者は少ない。
 前々からの約束ならばともかく、この場合で『200万リバー=純金1000リブラ』は有り得ない。通常ならば三倍の1500リブラは要求されて当然だろう。
 にも関わらず通常相場で取引するということは、どうやらこの大商人と帝國、かなり親密な付き合いと見えた。

 話は長くなったが、そんな訳で帝國は純金512sも出して、辺鄙な島々を買い取ったのである。
 かなり……いや恐ろしく高い買い物だった、と言えよう。
 故に、イルドーレ王国の重臣達は“帝國”を哂ったのだ。

 愚か者、と。





 SS投下終了。
 前回と逆にすれば良かった。

967 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 13:25:10 ID:X9DoCVGA0
くろべえさん投下乙。
怪し過ぎる取引だなー。ロッシェルとの口火切るだけではまず成立しませんよ。
漁業権、資源採掘権(レアメタルでも埋まってるのか?)がついてもおつりくる気も。

968 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 13:36:56 ID:XkWqMwM.0
くろべえさん、投下乙です。
前回の水上速度の時も思ったんですが、
どうやら改訂版では単位も異世界独自の物を使われるようですね。
こういう細かいディテールを考えるのは書き手にとって大変でしょうが、
読んでる側にとっては凄くワクワクしてきます。

しかし、この時期の帝國ではまだまだ貴重なはずの外貨を使うって事は
その島にはよっぽどの価値があるんでしょうかね。

969 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 13:46:04 ID:U1uACm8A0
 ああ……申し訳ありません。古い方投稿してしまいました。
 訂正します。

>>962
 ……まあ何れにせよ、契約は成立した後だ。今更反対する様な話では無いだろう。
 そんなことよりも残りの借金、300万リバーの返済を考える方が重要だった。
 ようやく返済の見通しは立ったものの、今後数十年に渡る緊縮財政が必要なのだから。

 そう考え、重臣達は領土売却を容認したのだ。
 こんな夢話に200万リバーも払える様な国を羨み、かつ呆れながら。

>>964
 16フロル貨(大金貨):金重量1オース(約32g)    総重量1+1/4オース(約40g)     金含有率80%
  4フロル貨(正金貨):金重量1/4オース(約8g)  総重量1/4+1/16オース(約10g)  金含有率80%
  1フロル貨(小金貨):金重量1/16オース(約2g) 総重量1/16+1/64オース(約2.5g)金含有率80%
 16リバー貨(大銀貨):銀重量1オース(約32g)    総重量1+1/4オース(約40g)     銀含有率80%
  4リバー貨(正銀貨):銀重量1/4オース(約8g)  総重量1/4+1/16オース(約10g)  銀含有率80%
  1リバー貨(小銀貨):銀重量1/16オース(約2g) 総重量1/16+1/64オース(約2.5g)銀含有率80%
 1/4リバー貨(豆銀貨):銀重量1/64オース(約0.5g)総重量1/64+1/64オース(約1g) 銀含有率50%

970 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 13:55:07 ID:LkvTlL420
くろべえさん、投下乙です。

一つ気付いたので指摘を
>>961の2行目にて帝國の名前が出てしまっております。

971 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/17(木) 13:55:12 ID:U1uACm8A0
>>967
 967様、有難うございます。

>怪し過ぎる取引だなー
 怪し過ぎます。これをマトモに信じるイルドーレの重臣はやはり相当なアレか、それとも余程切羽詰ってたのかのどちらかでしょうね。
 ……或いはその両方か? まあだからこそ狙われた訳ですが。

>>968
 968様、有難うございます。

>どうやら改訂版では単位も異世界独自の物を使われるようですね。
 はい、なるべくリアリティを出すべく、なんとか捻り出しました。
 しかし自分で設定しておいてなんですが、正金貨の金含有量が8gとは相当良質な金貨ですよ、これ。

>その島にはよっぽどの価値があるんでしょうかね。
 確かにそれだけの価値はあるのです。
 軍事的政治的に、ですが。

972 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 14:47:01 ID:ASp3xMXQ0
くろべえさん、投下乙です。
旧版ではレムリアは商業国家という設定だったと思いますが、
今度は黄金の国ですか。
色々と変わってきそうですね。

973 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 17:14:28 ID:V5Y2Msm60
くろべえ殿、投下乙です。
レムリアは豊かですね。南アフリカ共和国の倍は金山を保有しているのでしょうね。
だからこそ帝國に目を付けられたのでしょうか?
さてさて、他の列強は一体どんな強みを持っているのでしょうね。
続編がんばってください^^

974 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 18:43:49 ID:lUmeIgxc0
投下乙華麗
あーあやっちゃった
よりにもよって帝國を哂うとは・・・合掌と言うしかありませんな
後でフルボッコされればの話ですが

975 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 19:30:11 ID:oVuuhHNoO
くろべえさん投下乙です。
帝國の取った行動には何か理由があったんでしょうな
わざわざ大金叩いて買ったのは、後にそのことで問題にならないように、とか
イルドーレは後に帝國が中央世界で初めて接触した国として帝國史に載るんだろうか・・・

976 名前:名無し三等兵@F世界:2007/05/17(木) 19:44:09 ID:BsYgcDrM0
くろべえさん、投下乙です。
金512kgで島を買いましたか。航空基地でも作るのかな?

>実はレムリアの某大商人から、純金1000リブラ――“オース”より重い質量単位(国により微妙に異なるがレムリアの場合は1リブラ=16オース≒512sなので、この場合約512s)――
1リブラ=16オース≒512「g」ですよね。
(普段、誤字はくろべえさんのHPで報告するのですが、1000倍の間違いは大きい為、今報告します)

977 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 21:00:49 ID:8ANSKoCM0
くろべえさん、投下乙です。
帝國にとってのルシタニア号なわけですな?
レムリアかわいそうにw

978 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 22:20:59 ID:83/wJNuE0
>>974
>後でフルボッコされればの話ですが

フルボッコで済めば御の字(´・ω・`)
気付かぬうちに頭から丸呑みにされている可能性大。

979 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 23:48:45 ID:AsvFMiQg0
くろべえ氏、投下乙です。
中央世界との直接交易の必要があるんですね。
当面は原住文明とあまりかかわらないほうが無難そうだけど、
辺境だけでは食糧など不足でしょうか。

980 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/17(木) 23:58:36 ID:cahlntV.0
中央世界との貿易は塩や肥料、和紙、綿製品といったこの時代では大量生産されにくい物は大人気になって貿易問題になりそうw

981 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/18(金) 07:30:51 ID:U1uACm8A0
>>970
 970様、有難うございます。

>一つ気付いたので指摘を
 うわあ……本当だ。御指摘有難うございました。

>>972
 972様、有難うございます。

>旧版ではレムリアは商業国家という設定だったと思いますが、
>今度は黄金の国ですか。
>色々と変わってきそうですね。
 帝國が狙う理由をより明確にしてみました。

>>973
 973様、有難うございます。

>南アフリカ共和国の倍は金山を保有しているのでしょうね。
 んー、何処かで「南アフリカは世界に埋蔵している金の40%が眠っている」と読みましたから……どうだろ?
 まあこの世界の陸地の方が倍以上広いから、同じかもしかしたら多いかも。

>続編がんばってください
 有難うございます。

>>974
 974様、有難うございます。

>よりにもよって帝國を哂うとは・・・合掌と言うしかありませんな
 ピエロですから(笑)
 後世、史書に何と書かれることやら……

982 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/18(金) 07:31:43 ID:U1uACm8A0
>>975
 975様、有難うございます。

>帝國の取った行動には何か理由があったんでしょうな
>わざわざ大金叩いて買ったのは、後にそのことで問題にならないように、とか
 この辺の理由はおいおいSS中で……

>>976
 名無し三等兵様、有難うございます。

>金512kgで島を買いましたか。航空基地でも作るのかな?
 ここもおいおいSS中で……

>普段、誤字はくろべえさんのHPで報告するのですが、1000倍の間違いは大きい為、今報告します
 有難うございます。間違い多いなあ……

>>977
 977様、有難うございます。

>帝國にとってのルシタニア号なわけですな?
 そんなところですね。国内で大々的に騒ぐ……という訳ではありません(コントロールが効かなくなると困るから)が、開戦理由にはなりますから。

>>979
 979様、有難うございます。

>中央世界との直接交易の必要があるんですね。
 現在もちまちまやっておりますが、将来的には大々的に行う必要があるでしょうね。
 尤も今回の本当の理由は貿易ではなく……

983 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/18(金) 12:57:29 ID:U1uACm8A0
「帝國召喚」改訂版005

――――帝國海軍一等巡洋艦“筑摩”。

 基準排水量:11,213t、出力:152000馬力、速力:35ノット、航続力:18ノットで8000海里(重油搭載量2690トン)
 装甲:水線100o、甲板35o
 兵装:20.3p50口径砲連装4基、12.7p40口径高角砲連装4基、25o機銃三連装6基(*)、61p魚雷発射菅三連装4基
 *対空火力増強のため連装から換装。

 “筑摩”は帝國海軍が建造した一等巡洋艦の中で最も新しい艦である。
 昭和14年5月に竣工した本艦は未だ艦齢4年を越えたばかりという若武者で、正に異国訪問にはうってつけの存在だろう。
 確かに重巡よりは戦艦、百歩譲って重巡としても他の艦――敢て言えば妙高/高雄/最上型――の方が押しの効く外見ではあるが、何しろ艦内に要人を招く事態も十分に考えられる。新しいに越したことはなかった。
 ……まあ、人員不足から第一艦隊と第二艦隊が平時並に人員を落とされている以上、他に選択の余地など無かったのではあるが。(戦艦と重巡合わせて30隻の内、定員を充足しているのは利根型2隻のみ。扶桑型に至っては連合艦隊から除籍され、“扶桑”は兵学校訓練艦に、“山城”は砲術学校練習艦に復帰していた)

 その予想は的中し、現在イルドーレ王国の使節団を同乗させてロッシェル王国マリティーム港に入港しようとしている。
 イルドーレ王国使節団は、“帝國”軍を自国内に受け入れたことに対する釈明を行うため、
 そして“帝國”使節団は、ロッシェル王国と国交を結ぶと共に“大陸同盟”への加盟申請を行うため、それぞれロッシェル王国を訪れたのだ。
(帝國の場合、上は表向きの理由に過ぎないが、少なくともイルドーレ王国はそう信じている)

984 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/18(金) 12:58:03 ID:U1uACm8A0

「いやあ! 貴国の艦は実に早いな!」

 テセル“中老”は感心した様に、一体何度目になるか判らない言葉を口にした。

 “中老”とはイルドーレ王国の官職の一つで、まあ大臣の様なものだ。
 “家老”(通常1名)に次ぐ地位で通常3〜5名が存在し、それぞれ担当する部門を持っている。
 ちなみにテセルが担当している分野は“対外交渉”であり、“外務大臣”と言って良いだろう。
 彼は今回の総責任として、ロッシェル王国を訪れようとしていたのだ。

 ……が、それにしても、“家老”に“中老”である。
 この様な“巨大な家”風の古臭い職制を未だ維持していることからも、イルドーレ王国の前近代振りが判るというものだろう。
 大文明圏に属するとはいえ中心(大陸)から遠く離れた謂わば田舎、加えて要衝でもなければ資源も無いこの小国は、島内統一後はさしたる外敵も存在せず太平を謳歌してきた――要するに、半ば時代に取り残された存在だったのだ。
 そしてそれ故に権謀術数とは無縁の存在であり、そこを“帝國”に突かれ、利用されたのである。

「閣下、お気に召したかな?」

 テセルの言葉を受け、“帝國”代理公使は愛想笑いを浮かべる。
 ……『高慢を絵に描いた様な存在』とすら陰口を叩かれる帝國”高級外交官とは思えない姿だ。

「うむ、僅か半日と少しでロッシェルに到着するとは!」

985 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/18(金) 12:58:44 ID:U1uACm8A0
 テセルは興奮気味に頷いた。

 イルドーレの王都からロッシェル本土までおよそ340ミール(約500km)。
 テセルの“常識”では丸二日以上かかる距離だ、興奮するのも無理は無いだろう。

「ははは、我が国は大内海を越える必要がありますからなあ。船足は必須なのですよ、閣下」

「うむ、貴国が“大内海の覇者”というのも頷ける話だ」

「有難うございます、閣下。 ……とはいえ、今のままでは“お山の大将”“鳥無き里の蝙蝠”に過ぎません。
 ですから、是非とも閣下のお力が必要なのですよ」

 そう言うと、代理公使はそっと小袋をテセルに渡す。

 しゃらん、しゃらん

 金属の擦れ合う音と共に、ずっしりと重い感触が掌に伝わる。
 ……この重みと心地良い響きは金貨だ。
 テセルは直ぐにそれを懐に収めると、満面の笑みを浮かべて頷いた。

「うむうむ、私に任せておけ! 必ずや貴国は名誉ある北東ガルム文明圏の一員となれるであろう!」

「……感謝します、閣下」

 代理公使は笑みを貼り付けたまま、頭を下げた。

986 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/18(金) 12:59:36 ID:U1uACm8A0

「ふん! 俗物が!」

 控え室に戻った代理公使は途端に形相を変え、忌々しそうに吐き捨てた。

「何故“帝國”高等官三等のこの俺が、あんな吹けば飛ぶ様な小国の大臣風情を相手に、幇間の真似事などせねばならんのだ!?」

 あの愚か者(テセル)は、あの愚かな国(イルドーレ王国)は、本気で『“帝國”が本心から自分達に頭を下げて“北東ガルム文明圏入り”“大陸同盟入り”の仲介を頼んでいる』などと考えているのか? 何たる無能! 何たる夜郎自大! ……全く、度し難い程の愚かさだ!

 “帝國”がちっぽけな島々を求めたのは、大陸進出の“拠点”と事を構える“大義名分”を得るため。
 “帝國”が大陸同盟への加盟を望むのは、いざ事を構えた際に他の国々が介入しないで済む理由を与えてやるため。

 只それだけの話、目的達成のための手段に過ぎないのだ。
 ……北東ガルム文明圏入り? 
 はっ! そんなちっぽけな事など“帝國”は望んでいない。“帝國”が真に望むものは――

 そこまで考え、代理公使は薄く哂った。

「……まあいい。暫しの間、幇間を演じてやろう。精々楽しんでおくことだ」

 そう、この一年半における外務省の窮状を考えれば耐えねばならなかった。
 今回の計画は帝國は無論、外務省にとっても非常に重要なもの。その成否に省の興廃がかかっているのだから。

987 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/18(金) 13:01:18 ID:U1uACm8A0
 “転移”さえなければ、と何度思ったことだろう?

 外務省にとって、転移は悪夢そのものだった。
 その緊急性故に外交など碌に必要とされず、助言しようにもこの世界を知らぬ身では不可能だったし知る手段も無い。
 本来自分らがやるべき(と思われる)仕事も軍や宮内省を始めとする他省に奪われていく、という有様。
 何より大使職どころか大使館そのものを全て失い、仕事といえば軍の助手か以前の書類整理のみ……一時は大リストラすら囁かれた程である。
 ……かつての栄耀栄華を知る身にこの屈辱は耐えられるものでは無い、もう我慢の限界だった。

 故に、何としてもかつての栄光を取り戻さねばならなかったのだ。
 それこそが、ひいては御国の為でもあるのだから。

「そうだ、何時までも軍人共や宮内省の連中に外交など任せる訳にはいかん。
 我々こそが帝國”の外交を担うべき存在なのだ」

 それこそが外務省の総意だった。
 省の復権は自分の双肩にかかっている――そう自分に言い聞かせ、代理公使は気持ちを落ち着けた。






 SS投下終了。
 流れ的には前々回の続きかな?
 001→002→004→003→005って感じで。

988 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/18(金) 14:22:21 ID:BwdEDKmM0
投下乙
フルボッコフラグwktk
「やぁ(´・ω・`)ようこそ連合艦隊へ このストレートとカーブの魔境は(ry」
ってなりそうですな(しかし魚雷の使い道がこの時代じゃ無いな)
そろそろ次スレの時期でしょうか

989 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/18(金) 17:38:09 ID:qVD0R.a.0
くろべえ殿、投下乙です。
うわ、愚か者(テセル)&愚かな国(イルドーレ王国)の頭の中は黒船に対応した時の
老中以上のお花畑ですなw 北東ガルム文明圏入りするためにあれだけの金と軍艦を使うわけないでしょう。
次回はいよいよ外交官による口の戦争の開始ですか?

990 名前:名無し三等兵@F世界:2007/05/19(土) 03:11:20 ID:BsYgcDrM0
くろべえさん、投下乙です。

この外交官、まだまだ若いですね。誰かに聞かれたらどうするんだと。
内心では思っていても、溜息一つで我慢しろと。

しかし、帝國も1世紀前はイルドーレ王国とあまり変わらなかったんですよね。
あの頃の日本人はよく頑張ったなあ。

991 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/19(土) 03:24:08 ID:X9DoCVGA0
くろべえさん投下乙。
筑摩がお花畑に・・・。次回どーやって刈り取られますかな、(゚∀。)アヒャヒャ〜

992 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/19(土) 06:40:34 ID:lUmeIgxc0
気がついた時には世界最強の軍事国家に飲み込まれる諸国…合掌
そして血を!もっと血を!!一心不乱の虐殺を!!戦争!戦争!戦争!!

993 名前:くろべえ ◆7dmdXxLH3w:2007/05/19(土) 10:03:11 ID:U1uACm8A0
>>988
 988様、有難うございます。

>フルボッコフラグwktk
 もし旧版の様にロッシェルを帝國の邦にすれば、イルドーレは周囲を帝國領で……

>そろそろ次スレの時期でしょうか
 ですね。いよいよ15スレ目か……

>>989
 989様、有難うございます。

>うわ、愚か者(テセル)&愚かな国(イルドーレ王国)の頭の中は黒船に対応した時の老中以上のお花畑ですなw 
 少なくとも当時の幕閣は中国の状況を熟知していましたからねえ。
 加えて当時の日本の様な国力も無いし……

>>990
 名無し三等兵様、有難うございます。

>この外交官、まだまだ若いですね。誰かに聞かれたらどうするんだと。
 一応防音・対盗聴が施された部屋ですから大丈夫です。

>>991
 991様、有難うございます。

>筑摩がお花畑に・・・
 艦長も顔を引きつらせていることでしょう。

>>992
>そして血を!もっと血を!!一心不乱の虐殺を!!戦争!戦争!戦争!!
 あと少しで戦争ですよ。
 本当に久し振りです……

994 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/19(土) 13:10:12 ID:Hogiu2220
くろべえ殿投下乙です。

このころになると帝國も超大国気取りですね。
それにしても帝國がだんだん闇色に染まってきた気が…
ダークエルフの影響ですかね


>>913 さま ありがとうございます

現代日本は数値風洞もありますからそこまで無理をしなくてもいいのですが、コンピューターがないと色々つらいです。
進歩に関してはそうですね、この外伝の目的は帝國の科学水準を強引に向上させるというものですから。

>>914さま、くろべえ殿
分かりました、適当にでっち上げてみます。

>>933 ヨークタウン殿ありがとうございます

とりあえず、有人ロケットの超音速飛行は風洞の完成に先立って行っています。
無茶もいいとこですが、ここら辺はイエーガーと同じ流れです。
テストパイロットは過酷な仕事ですよ、ほんとに

995 名前:猫じゃらし ◆VNwb/XaA9.:2007/05/19(土) 21:54:17 ID:Hogiu2220
次スレです
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/4152/1179579011/

996 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/19(土) 22:10:50 ID:TZb3/YBM0
梅梅

997 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/19(土) 22:11:22 ID:TZb3/YBM0
産産

998 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/19(土) 23:10:53 ID:X9DoCVGA0
<<上も下も梅だらけだ!!>>

999 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/19(土) 23:13:56 ID:HN8gBzs20


1000 名前:名無し三等陸士@F世界:2007/05/20(日) 00:08:29 ID:b6x6sdsI0
めぇ


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