ペルソナ3 ~漆黒の仮面を使役するもの~ (オラクリオン)
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学園生活とVSマジシャン戦のお話です



VSマジシャン

雪姫SIDE
ホテル風の建物。灯の落ちた薄暗いエントランスロビーで、
ようやく目的地にたどり着いたと思ったら、囚人服のような服を着た泣き黒子の少年に妙なことを言われて...


「誰っ!?」

ヒステリックな声の持ち主は、ピンク色のカーディガンに際どい丈のスカートを着た同世代の女の子。茶色いセミロングがかわいらしい、有り体に言えば何の変哲もない今時の女子高生である。
...太股に拳銃をつけていなければそういった印象を受けたのだろう
普通拳銃なんて持ってるはずがない
だが`それ`は確かにあった

「もしかしてッ!?」

どこか錯乱した様子の少女は、右股に着けたガンベルトに刺ささった銀色の拳銃に手をかける


まずいっ!?

「待て!」

 不意に、凛々しい声がフロアに響く
それと同時に照明が付く

「到着が遅れたようだね」

 声の主は、紅い髪の美しい麗人だった。

「有里雪姫さんだね。はじめまして、私は桐条美鶴(きりじょうみつる)。ここの寮長を勤めている者だ」

彼女は、さも何事もなかったかのように自己紹介する
身につけている衣服も高級感ある仕立てのものばかりだ

「え...あ、はいどうも。ってあれここ女子寮なんですか?」
「そういうわけではないんだが...」

?なんで言葉を濁すんだろう?

「誰ですか?」

拳銃を持っている少女が紅い髪の人に聞く

「彼女は“転入生”だ。ここへの入寮が急に決まってね……。いずれ、女子寮への割り当てが正式にされるだろう」
「……いいんですか?」
「さあな……」

完全に置いてけぼりを食らった雪姫は、やや憮然として二人を見ていた。

「彼女は岳羽ゆかり。この春から二年生だから、君と同じだな」
「……岳羽です」

 少女――ゆかりに目線には明らかな不信感が含まれている。
 そういう棘のある視線には慣れっこな雪姫は、なんだかもやもやしたものを抱えながらも、表面上は努めてにこやかに挨拶することにした。

「雪姫です。よろしくね」
「あ、うん。こちらこそ、よろしく」

 雪姫が愛想良く微笑むと、険のあった表情もいくらか和らいだ。
 
「今日はもう遅い。ゆっくり休むといい」
「あ、はい」

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階段を上っている途中岳羽さんに

「来る途中大丈夫だったの?」
「?特に何もなかったけど?」
「なら...いいんだけど」

そんなことを話しているうちに部屋の前についたらしい
岳羽さんが立ち止まる

「ここだね...じゃあまた明日ね」

部屋に入りベッドに倒れこむ
色々なことがあった一日だ
そのままアタシの意識は途絶えた


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寮のある『巖戸台』と、埋め立て地『辰巳ポートアイランド』を繋ぐモノレールの車内。
学生でごった返した中で
私立月光館学園に登校する道すがら、すっかり打ち解けたアタシとゆかりはお喋りに興じていた
仲良くなったアタシたちはすでに名前で呼び合う仲だ

「珍しいよね。モノレールで通学なんて」
「私も初めは驚いたのよね」



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響SIDE

新しい転校生ねぇ
つーかこの感覚...
あの女ペルソナとは違う何かを...?
考えてもらちが明かねえな...
俺は俺の仕事をするだけだ...

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雪姫SIDE

やっと終わって、放課後だ

「よっ、転校生!!」

後ろから声をかけられる

「なぁんだよ、そんなマジでびっくりした顔すんなって」
「後ろから声かけられたら、絶対びっくりすると思うよ、後、誰?」
「ん、俺?自己紹介のときにいったと思うんだけど」
「あの時、寝てた」
「マジかよ…改めて紹介しなおすぜ。俺は伊織順平、ジュンペーでいいぜ。
 実はオレも、中2ん時に、転校でココに来てさ。転校生っていろいろと一人じゃわかんねぇじゃ  ん?だからな?」

そんな会話をしていると

「お、ゆかりっチじゃん!まーたおんなじクラスになれちゃうとは思わなかったぜ」
「全く、相変わらずだね…誰彼かまわず、なれなれしくてさ…」
「まーまー、いいんじゃない?」
「今転校生の話してたでしょ?だったら彼もじゃない?」

ゆかりが見た方向には黒髪のダルそうにしている男の子がいる
暗い光の藍色の瞳を眠そうに半目にしている

「だれ?」
「マジで聞いてなかったのな...確か」
「黒神響君よ」

順平より先にゆかりが教えてくれる

「お~!なになにゆかりっち彼に気でもあんのかい?」
「ばっかじゃないの!?」
「うわひでぇ!」
「順平馬鹿だね~」
「雪姫っちまで!?」

楽しいおしゃべりをしていたから気が付かなかった
彼が...黒神君がこちらを睨んでいたことを...



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「こっちに来て!早く!」

何が起きてるの?
普段道理の学生としての生活を送って帰ってきて
ご飯を食べていつも道理の日常が壊れかけている

ドオオオオォン!

大きな物音がして建物が揺れる

「とにかく急いでっ!!」

慌てた様子の彼女に続き一階まで下りれば、再び大きな物音
だんだんと迫りくる音から逃げて付いた屋上
ゆかりがカギを占めてひと段落したと思い質問を口にする

「ねぇ、いったい何が...」

べちゃっ...

その音は静かにだが確かに屋上に響いた
蒼色の仮面にぽっかり空いた眼窩と、目があってしまった
仮面の周囲には無数の手が現れ、それぞれが短剣を握ってこちらへと迫りくる
腰のホルスターから拳銃を抜くゆかり
先ほどから怯えた様子だった彼女は、何を狂ったのか、自身の額に銃口を向けた
自殺するような構えをとったその少女は、しかし、敵から発せられた火の玉のようなものに煽られ、大きく態勢を崩した。その拍子に手から零れ落ちた拳銃が、足元へと転がってくる
右手が銀の塊を拾い上げる
拳銃を頭部に突き付ける
それと同時に一人の少年、囚人服のような服を着た泣き黒子の少年を思い出した
彼は側頭に手で銃の形を作って人差し指を押し当てると、一言だけの問いを投げた。

「君には、できる?」

「ぺ、」

なんでこんなことしてるんだろう?

「ル、」

普通こんなことをしたら死んでしまうのに

「ソ、」

だが、無意識に指が引き金を引く

「ナ……!!」

瞬間、その場に破砕音が響き渡った。ガラスの砕けるような、高い音階。
音の発生源、アタシの周囲を青い光の渦が囲み、収束し、一つのシルエットを創る


「我は汝、汝は我...我は幽弦の奏者オルフェウスなり」

だがそれが名乗ると同時に体に奇妙な感覚が生まれる
それをこらえようと膝を折ると頭の中に妙にノイズのかかった声が聞こえてくる

壊せ砕け呪え恨め怒れ喰らえ...!

だがその声は不思議とノイズの中でもはっきりと聞こえていた
そして...


殺せ!



その声が響くと同時にオルフェウスの体が砕け中から蒼い怪人が現れる
いくつもの棺桶を周りに浮かべ髑髏のような仮面をつけて拘束着を着た怪人が...


「オオオオオオオオオオオオオッッ!!!」

怪人が吠える
目の前の化け物に襲い掛かる
怪人VS化け物
普通なら男の子が興奮するような情景なのだろう
アニメの中なら...だが目の前で実際に起きているのは現実だ
なぜかそうはっきり解っていた
怪人が化け物を切り刻む
四散する化け物の手足
その一本がゆかりの前に飛び散る

「ひっ!」

声にならない悲鳴を上げるゆかり
だがそれを気にも留めない怪人
あらかた斬り終わったのか怪人が大人しくなり消える
そしてまたあらわれるオルフェウス

「おわっ...た?」

ホッと溜息をつこうとした瞬間

「キャアアアアアアア!」

ゆかりが悲鳴を上げる
切り裂かれた手足が形を変え泥のようになる
そこから手が生え仮面を被った顔が現れる
その数ざっと八体とてもじゃないが相手にするのは無理だ
もう...だめなのかな...?

「アスクレピオス!利剣乱舞!」

凛と張った男の声が響く
すると黒い騎士が現れその手の持つ剣を振り回す
放たれる斬撃が化け物を斬り刻む
ズタズタにされた化け物は跡形もなく消える

「はぁ~あ...何がどうなってんだかさっぱり解らん」

さっきの声とは打って変わって気だるそうな声が聞こえてくる
なんで彼がここにいるの?

「よぉ転校生。夜遅くは危ないぜ?今日みたいにな」

そういって屋上の淵に立つ黒神君
ここから...私のつらくて
悲しくて
それでも楽しかった
最後の
一年が始まったのだった









少し長くなりました

次回 話し合い


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