AMDは2013年6月5日、デスクトップPC向けの新Aシリーズを正式発表した。開発コード名は「Richland」で、前世代の「Trinity」(開発コード名)をマイナーチェンジした。日経WinPCは最上位製品のA10-6800K Black Edition(以下BE)を入手。従来モデルと性能や消費電力を比較した。
主な仕様は表の通り。RichlandはTrinityと同じく32nmの製造プロセスを採用し、1個で同時に2スレッドを処理できる「Piledriverモジュール」を搭載している。Trinity世代のAシリーズと比べて動作周波数が上がった。内蔵グラフィックス機能もTrinity世代の「Radeon HD 7000D」シリーズから「同8000D」シリーズになり、動作周波数が上がっている。メモリーは最上位製品でDDR3-1866対応だったのが、DDR3-2133対応になった。
Richlandのソケット形状はTrinityと同じ「Socket FM2」で互換性がある。ただし、これまで販売されてきたSocket FM2対応マザーボードの場合、BIOSをRichland対応の最新版に更新する必要がある。
今回はA10-6800K BEと、Trinityで最上位だったA10-5800K BEの性能を比較した。他にも、2013年6月2日に発売されたIntelの新CPU「Haswell」(ハズウェル、開発コード名)の、Core i5-4670Kもテストした。ただし、Core i5-4670Kは物理的に4コアを搭載し、実勢価格が2万7000円前後と1万円近く高額なので、直接競合しない。
CPUの演算性能を調べる「CINEBENCH R11.5」(MAXON Computer)では、1スレッドで実行する「CPU(シングルコア)」と、実行可能な最大のスレッド数で実行する「CPU」のどちらも、A10-6800K BEがA10-5800K BEを1割弱上回った。DirectX 11に対応した「3DMark」(Futuremark)で、グラフィックス性能を見る「Graphics score」を比べたところ、こちらもA10-6800K BEがA10-5800K BEを1割弱上回った。A10-6800K BEはCINEBENCH R11.5では、Core i5-4670Kに対して6割以上下回ったが、3DMarkでは逆に2割以上上回った。グラフィックスボードと比べると、A10-6800K BEは「GeForce GT 640」と「GeForce GT 630」の間に入った。
負荷の高い3Dゲーム「バトルフィールド 3」(エレクトロニック・アーツ)をプレーしているときの平均フレームレートも調べた。グラフィックス品質は「最高」、解像度は1280×1024ドットでプレーした。A10-6800K BEはA10-5800K BEに対して12%の伸びと、3DMarkより差が大きくなった。Core i5-4670Kに対しては1.4倍以上の伸びだ。GeForce GT 640をA10-6800K BEが3割ほど下回るのは3DMarkと同じだが、GeForce GT 630との差は14%に縮まった。
システム全体の消費電力も調べた。「アイドル時」はWindowsのアイドル状態、「負荷時」はCINEBENCH R11.5の「CPU」を実行して全コアに高い負荷をかけた状態だ。A10-6800K BEとA10-5800K BEは同じマザーボードを使用しているため、消費電力の違いが分かりやすい。A10-6800K BEはA10-5800K BEに対してアイドル時はほぼ同じだが、負荷時は9W高かった。
A10-6800K BEとA10-5800K BEを比べると、動作周波数や内蔵グラフィックスを強化した分、それぞれ性能が1割前後上昇している。ただ、それに伴い負荷時の消費電力も上がっている。Trinityからの買い替えだとあまり大きなメリットは無いが、内蔵グラフィックスで少しでも快適にゲームを楽しみたいユーザーには最適な製品だ。
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