高畑京一郎 【内容紹介】 MDB9000。コードネームは「ギガント」。日本企業と政府が総力を結集して作り上げたスーパー・コンピュータである。世界最高の機能を誇るこの電子頭脳は、256人の同時プレイが可能な仮想現実型RPG「ダンジョントライアル」に投入された。その一般試写で現実さながらの仮想世界を堪能する主人公たちであったが、彼らを待っていたのは、身も凍るような恐怖だった。RPGの目的は、ダンジョンの最下層である5階にいる「ギガント」を倒すこと。「俺」こと、盗賊のゲイル、戦士リリス、ケイン、シェイン、魔法使いミナ、ユートらはパーティを組み、下層に降りてゆく。「ダンジョントライアル」のルールは、プレイヤー・キャラクターが殺されると「死体」は消去され、仮想現実から現実に戻ることができる。実際に感じる痛みもそれほどではない。だが、彼らが見た「死体」は、いつまでも冷たくその場に留まっていた……。 【感想】 ふうむ。ありがちな設定で、よくここまで「読める」作品を書くではないですか。 私は「クリス・クロス」には「タイム・リープ」ほどの面白さは感じませんでしたが、まあまあ面白かったです。途中で治癒魔法をケチっている僧侶など、RPGをプレイしている自分が実際にそうしているので、ほうほう、と面白く読んでしまいました。 ネタバラへ(薫) 以下、ネタバラシです。 ただ、読者としての私の希望は、あれだけ頑張った仲間たちなんですから、最後には現実で再会させてあげたかったなー、ということです。(ゲイルとリリスについては、ゲームの中で恋愛ごっこをしたら、現実に戻ってからはどーなるのかなー、なんて想像をもてあそんでしまいましたね!)。ま、こんな感想を抱くのは、私が「クリス・クロス」の哀愁感ただよう終わり方を評価しているからであり、結局はこのお話を気に入っているからなのでしょうね。(1997 薫) |