福島の甲状腺癌の変な^2話
2013/06/05 01:54:00

[info]メカAG
これまで福島で甲状腺癌が増えているという話を耳にしても、あまり興味がなかった。というのも福島ではスクリーニングをしているらしい。検査を厳格にやればやるほど、普通の診察では発見されないような癌も発見されるから、見かけ上数値は増加する。

まあこれについてはチェルノブイリでも同様のことがあったようだから、今更の話。

   *   *   *

なんか片瀬久美子関連のツイートを見てたら、背理法がどうとかいう話題が目についた。興味を惹かれて読んでみたけれど、背理法の話は削除したのかわからないがあまり残ってなかった。

そもそもどんな話なのかを読んでみたところ、これらしい。

  福島県での甲状腺がん検診のこれまでの結果で、甲状腺がんの発生が多発と言えるのか? - warblerの日記
  http://d.hatena.ne.jp/warbler/20130323/1364060938

もともとの話はこれで、

  福島県での甲状腺がん検診の結果に関する考察 ver.3.02
岡山大学大学院・津田敏秀氏
  http://www.kinyobi.co.jp/blog/wp-content/uploads/2013/03/fefc48e1bcaef4b4191bb12c61f176731.pdf

福島の甲状腺癌の発見率は計算すると通常の10倍ぐらいになるという主張。とはいえこの値が直ちに正しいと言っているわけではなく、ひとつの算出方法だということらしい。

   *   *   *

福島の38114人を検査したところ、3人に甲状腺癌が発見されたという。たとえ癌が存在してもそれが発見されるとは限らない。発見される確率を「発見率」、存在する確率を「発生率」とすると、以下の様な関係があるという。

  発生率=発見率/平均有病期間

平均有病期間というのはその病気が発見されてから治るもしくは死亡するまでの期間。この人は経験から7年と仮定した。

38114人と検査して3人癌が発見されたから、発見率は3/38114。これを平均有病期間の7で割るとがんの発生率になるはず。だいたい100万人のうち11人に癌が発生することになる。

一方で癌の発生率は大雑把には100万人に1人だという。つまり福島のがんの発生率は11倍も大きい。

   *   *   *

片瀬久美子はこれに反論しているのだが、なんか反論の方もおかしい。先に俺の結論を書く。片瀬久美子が引用している

  http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html

を見ると甲状腺の罹患率は男で10万人に3.4人だという。ところで福島の発見率は3/38114でこれは10万人に7.9人となる。

この時点であれ?と思った。数値は違うが3.4人と7.9人なら、それほど大きな違いではないんじゃなかろうか。無論両者の数値の意味は違う。

福島の場合、診察した人間に対して癌と診断された人数。罹患率の場合は人口あたりの癌と診断されている人数。分母には診察に来ない人も含まれるから当然こっちの方が数値は低い。

それなら3.4と7.9ぐらいの差は出るのではないの?と。この後ややこしい計算をしなくても、それほど福島と他の地域で大差ないのではなかろうか。少なくとも10倍の違いが出るとは思えない。

   *   *   *

ここから片瀬久美子の計算の話。福島で甲状腺癌はそんなに増えてない(少なくともそれを示すデータは読み取れない)という結論は正しいと思うのだが、なんか計算がよくわからない。

あちこちに出てくる「D」が冒頭の「平均有病期間」なのだが、これを片瀬久美子は何かのデータから求めようとしている。しかしなんのデータから求めようとしているのか?

  D=0.0049/(7.1/100000)=69

で求めている。すなわち元記事の人が7年と見積もった平均有病期間を片瀬久美子は69年と算出している。

   *   *   *

しかしこの算出方法が理解不能。7.1/100000というのは10万人あたりの罹患率。男が3.4人、女が10.8人なので平均して7.1人としている。これは良いと思う。

しかし0.0049という値は

  成人の検診における超音波検査における甲状腺がん発見確率(有病割合)。「日本における甲状腺腫瘍の頻度と経過−人間ドックからのデータ」の表3
  http://www.japanthyroid.jp/commmon/20100102_07.pdf

から発見率0.49%を拾っていているようだ。

  発生率=発見率/平均有病期間

なのだから、変形すると

  平均有病期間=発見率/発生率

となるはず。で、片瀬久美子が計算しているのは

  D=0.0049/(7.1/100000)

だから、0.49%というのが発見率、(7.1/100000)が発生率というkとになる。

   *   *   *

しかし…この7.1/100000というのは罹患率だよね。人口10万人に7.1人甲状腺癌を患っている人がいるということ。甲状腺癌を患っていると診断されている人なのだから、これはしいて当てはめるなら発見率なんじゃ?

また0.49%というのは甲状腺癌の診断手法に関する記事のようだ。触診だと0.49%だが超音波だと0.72%といった比較の表がある。

しかし0.49%の分子と分母はなんなのか?罹患率とかは10万人に7.1人とかなのに、0.49%なら1000人に5人だ。異常に大きい。

元記事を読むと所見者数に対して癌と診断された割合らしい。所見者数というのは、なんらかの理由で検査が必要ですよと判断された人らしい。

となるとこの数値というのは、同じ条件である程度比較はできるかもしれないが(触診よりも超音波の方がこんなに発見出来ますよ、と)、この数値自体はあまり意味がないのではなかろうか。

   *   *   *

思うにたまたま名前が「有病割合」(=発見率)と同じだったから、このデータを持ってきただけで、このデータ自体は

  平均有病期間=発見率/発生率

でいう「有病割合」(=発見率)とは、なんの関係もない数値ではなかろうか。

つまり片瀬久美子は「発見率」も「発生率」も、よくわからない数値を割り算しているだけ。

   *   *   *

ということで一連の片瀬久美子の計算は俺にはでたらめとしか思えないのだが…。NATROMはコメントでこの片瀬久美子の計算は大きな問題はないと言っているが、ホントか?ちゃんと読んでないんじゃないのか。

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