薬ネット販売:「全面解禁」せめぎ合い 新ルール検討
毎日新聞 2013年06月05日 01時06分(最終更新 06月05日 07時53分)
政府は4日、一般用医薬品(市販薬)のインターネット販売を、副作用のリスクが高い一部を除いて解禁する方針を固めた。市販薬約1万1400品目のうち99%超のネット販売が認められることになる。医師の診断と処方が求められる医療用医薬品から市販薬に転用して間もない鼻炎用薬、解熱鎮痛薬などリスクが高いとされる25品目を中心に、解禁の例外として専門家が安全性を審査し直すなど新たなルールを検討する。
安倍晋三首相が5日、成長戦略第3弾に関する演説で表明し、政府が14日に閣議決定する成長戦略に盛り込む。
菅義偉官房長官、田村憲久厚生労働相、甘利明経済再生担当相、稲田朋美行政改革担当相が4日、首相官邸で協議し大筋合意した。
これに関連し、首相は4日の参院経済産業委員会で「ネット販売を広く認めることで、店頭で購入できない消費者の利便性を高める」と強調。「安全性を確保できる新たなルールを早急に策定するよう尽力する」と理解を求めた。
市販薬は、副作用リスクの高い順に1〜3類に分類されており、厚労省は1、2類のネット販売を認めていない。しかし最高裁は1月の判決で、この規制を違法と判断。ネット販売が事実上「解禁」された状態になった。首相官邸は、これを規制改革の「目玉」作りにつなげようと、厚労省を押し切った。
4日の4閣僚会合では、残る1%未満の薬の扱いをめぐる結論を持ち越したが、妥協策として、ネット販売にふさわしいかどうか、厚労省が専門家による会議を設け、決めてもらう案が浮上。「全面解禁」をアピールしたい官邸としては、ネット販売に適さないと判断された市販薬を、医療用医薬品に分類してしまえば「結果的に市販薬を100%解禁した形にできる」(首相周辺)というわけだ。
一方、自民党内に目立った反発は出ていない。ある厚労族議員は「首相はネット業者の言い分を聞いた。ネット販売の99%解禁に踏み切れば、参院選で日本薬剤師連盟は自民党のために動いてくれないだろう」と語るが、最高裁判決に加え、7月の参院選に向けて政府・与党が「一枚岩」であることを演出する必要もあり、不満の声は大きくなっていない。