昨年2012年5月、日本人俳優による性犯罪事件が起き、全米のメディアを賑わせた。彼の名は、金田芳朋(かねだよしとも)・45歳。ロサンゼルスのコリアタウンを中心に、俳優、声優、スタントマン、アクタースクール経営者として活動し、
クリント・イーストウッド監督の映画「硫黄島からの手紙」や、
北野武監督の映画「BROTHER」へのエキストラ他、テレビドラマ、CMにも出演経験がある。
事件から遡ること数年。もともとテコンドーの有段者であった金田は、ロサンゼルスのトーランスにある某空手道場にて黒帯を取得すると、自ら「金田道場」なる道場を開く。その後は、「道場生」である俳優志望の生徒を相手に、「胴廻し回転蹴り」のようなカメラ映えする大技をかける映像を動画サイト・YOUTUBEで公開したり、80年代の人気格闘ゲーム「ストリートファイター」を真似た真っ赤な空手着姿で、アメリカ人の観客相手に瓦割りの街頭パフォーマンス等をする。また、たびたび空手着にサングラスを着用するなど、およそ日本人空手家からはかけ離れた姿を晒し続けた。そもそも空手着にサングラスを掛けて良いのは
極真空手の祖・大山倍達と、元極真会館本部道場師範代であり、
梶原一騎の実弟・真樹日佐夫だけだというのは、空手に携わる人間のあいだでは常識だが、目立つためならどんなタブーも犯す男、それが金田道場師範・金田芳朋だった。ロサンゼルスの日本人空手家のあいだでは「空手は黒帯でも心は白帯以下」と煙たがるものも少なくなかった。ただ、アメリカの空手は「SUSHI」と同様に根強い人気のため、外国人が経営するカラテ道場には、テコンドーやカンフーを教えながら「KARATE」と称するような胡散臭い道場も五万と存在する。
一方、俳優としての金田は、当時「カネダアキラ」という芸名を使用していた。これは世界中で人気の
カルト映画「AKIRA(アキラ)」を意識した芸名(主人公の名前がカネダ)であるが、「AKIRA(アキラ)」の題名が、作者の大友克洋が大ファンであった
映画監督・黒澤明に由来することを考えれば、「AKIRA」と同時に、黒澤明をも冒涜する行為でもあり、金田容疑者のこの様な行動に対して事件以前から批判の声もあった。しかし、「自由の国アメリカ」という言葉の裏で、金田の身近には忠告できる者もなく、そういう声が彼の耳に届くことはなかった。
またプライベートにおいても金田には様々なエピソードがあるが、2000年代中ごろ
「ミクシィ」をはじめとするソーシャルネットワークがロサンゼルスでも人気になりはじめると、金田は「アキラ」の名前で、ロサンゼルス在住の日本人女性と見れば手当たり次第に「マイミクを申請」していたようで、会ったことはなくとも「アキラ」の名前と顔だけは知っているという女性も少なくなかった。
そんな彼が、2012年2月22日、自らの経営する学校に通う16歳の少女を自宅に呼んで日本語を教えた後、少女に対して性的虐待、性的暴行(殴打)、局部への異物挿入、不法監禁、さらには目撃者の口止めを強要したなどとされ、左記の6件の容疑により身柄を拘束された。「有罪なら最長で2年の禁錮刑」と報道されていた。(参照:
LA WEEKLY誌など)
事件が報道された日、カネダのフェイスブックフレンドであるアメリカ人たちの間では…
「前々から変なヤツだと思ってた」
「子供に手を出すなんて許せない」
「たった今フレンドリストから外してやった」
など、なかば感情的な書き込みがあり、彼に追随して他のアメリカ人女性達も…
「I KNEW IT!!! ( 分かってたわ!) 」
「彼はどこか妙だった」
「教えてくれてありがとう!たったいま私もアンフレンドしたわ」
などの書き込みが続いた。アメリカでは、小児愛者や未成年に対する性犯罪者を「PEDOPHILE」と呼び、そのような犯罪者が刑務所に入ると、制裁として必ずと言ってよいほど、他の囚人たちから制的虐待を受けるといわれている。アメリカ人はそれほどに未成年に対する性犯罪を嫌悪するのだが、LA WEEKLYなどの同事件の記事に対する書き込みから見ると、「16歳と言えば結婚して子供を産んでいるケースも少なくないから子供ではない」「野望を持ったモデル志望の16歳の少女がカネダを誘惑した結果なのでは」「カネダが特別というわけじゃない。ハリウッドは狂っている」などの声も散見する。ただ、カネダを知る日本人たちのあいだでも、今回の事件に関して、どこか納得するという声が多かった。
そして、事件発生から24時間以内に、彼のフェイスブックアカウントは停止され、学校名義で登録されていた動画サイトYOUTUBEのアカウントも削除され、数年間続けていたアメーバブログのブログも停止、さらには彼が経営する学校のホームページ
「ハリウッドエンターテインメントアカデミー」も、サーバー会社であるGO DADDYにより削除され、今ではどういうわけか、風俗関連サイト
「風俗アルバイトの学校」に乗っ取られている。唯一、映画データベースサイトのIMDB(インターネットムービーデータベース)には、
金田芳朋(Yoshi Tomo Kaneda)のページが残っている。
この金田事件は、日本国内のメディアでも大きく報道され、テレビや新聞をはじめ、インターネット等での反響も大きかった。また金田のブログにあった
「浅田真央よりもキムヨナを応援していた」「日本はK-POPに勝てない」などの発言が各方面で取り沙汰されたり、金田の知人の話として
「金田の兄弟が現役AV男優である」などの情報も飛び交い、事件直後は日本国内のネットユーザーを賑わせていたが、あれから約半年後の2013年1月4日、ロサンゼルス裁判所は、金田芳朋(かねだよしとも)容疑者に6ヶ月の懲役という判決を下した。
金田本人にとっては、社会的制裁もすでにかなりのものではあると思うが、彼と同様にロサンゼルスで俳優として成功することを夢見て活動しているほかの日本人たちや、彼が所属した空手道場関係者、またこれまで彼が出演してきた作品の共演者らに対する影響も計り知れない。
金田は事件後、被害者の母親に数回に渡って謝罪メッセージを残したというが、職業が俳優だけに、刑期を短くするための手段だったに過ぎないのではという声もある。6ヶ月の懲役に加えて、今後は被害者家族に対する一切のコンタクトを禁じられている。この判決をみなさんはどう受け止められるでしょうか?