現在「魔王が地上では救世主になっている理由」の書籍化の話が進んでおります。
詳しくは活動報告をどうぞ。
クラムフォード魔法学院にある執務室の、光と闇を反転させたかのような空間。
メルルは自らの作ったその影の世界を漂いながら、椅子に座るリーゼロッテと対面していた。
外の世界で夫が頭を床に擦りつけて必死に謝っているのを放置しながら、おずおずと他愛もない話を娘と続ける。
しばらくして、夫への仕返しはもう十分だと判断したメルルは、最後に前々から聞きたかったことを娘に質問した。
「リーゼロッテ、もし貴方がゲームに勝って魔王になれたとしたら、何をしたいの?」
「お母様?」
なんとなく、らしくない質問だと感じてリーゼロッテは小さく首を傾げるも、素直に思ったことを答えた。
「まずはお父様に褒めて欲しいわ」
「……他には?」
リーゼロッテの口から自分の夫の話題が出てきて、メルルは不快そうに眉間に皺を寄せる。
まだ完全には怒りが治まっていないせいか、リーゼロッテが父親に対して好意的な言葉を口するのは、この夫婦喧嘩で娘が夫の味方をしているような気がして嫌だったのだ。
そんなメルルの内心を察したのか、リーゼロッテは若干気まずそうにしながらも、話を続けた。
「そうね……せっかく魔王になるんですもの。私に逆らう者を皆殺しにするわ」
事も無げにそう言い切るリーゼロッテ。
ある意味でもっとも魔族らしい返答に、メルルは特に何も言うことはなく頷いた。
だが続く彼女の言葉に、メルルは目を僅かに見開く。
「そして、私に仕える者や庇護下に入る者には最大の安息を。魔族も人間も神族も、私に支配されて良かったと思えるぐらいに、世界を楽園にしたいわね」
魔族の彼女が謳う楽園と、人間や神族の考える楽園は違うかもしれない。
やたらお祭り騒ぎが好きだったり、自らを含めた命の扱いが軽かったりと、魔族と地上にいる人々では価値観が全然違うだろう。
だから、リーゼロッテの作る楽園が人間にとっての楽園とは限らない。
しかし彼女が魔王になった暁には、平穏からはほど遠くても、楽しい世界になるのではないだろうか。
そんな予感を感じて、メルルは微かに微笑んだ。
「……そう。頑張りなさい」
「はい、お母様」
満面の笑みで、リーゼロッテはやる気の漲った返事をする。
彼女のゲームは、まだまだ続く――
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