原爆被爆:がん死リスク要因に初期放射線以外の可能性
毎日新聞 2013年06月01日 21時54分
広島大原爆放射線医科学研究所(原医研)の大瀧慈(おおたき・めぐ)教授らの研究グループが、広島で被爆した人ががんで死亡するリスクを分析した結果、当時10〜44歳だった人は、原爆爆発時に放出される初期放射線の影響を除いても、他の年齢層の人と異なり、リスクが高いことが分かった。被爆によるがんの死亡リスクについて国は従来、初期放射線のみが関係するとしてきたが、放射性降下物や残留放射性物質など、初期放射線以外の要因があった可能性を示すデータという。広島市で2日に開かれる原爆後障害研究会で発表される。
研究では、1970年時点で生存していた被爆者手帳保有者で、被爆時の所在地が分かり、初期放射線による被爆量が推定できる約6万4000人分のデータを分析した。初期線量による白血病以外のがん死のリスクを調べると、全体では成人よりも未成年者が大幅に高く、女性は男性の約3倍高かった。一方、初期線量によるリスクを差し引いて検討すると、爆心から約2キロ以内で被爆した場合、被爆時年齢が10〜44歳では最大約7%、リスクが高かった。
大瀧教授らは理由について「この年代の人々は原爆投下直後、放射性物質に汚染された区域で家族を捜したり救護に携わるケースが多かったからではないか」とみている。【吉村周平】