福島の被ばく:発がん危険性を否定 国連科学委
毎日新聞 2013年06月01日 00時05分(最終更新 06月01日 03時23分)
【ウィーン樋口直樹】国連科学委員会は31日、ウィーンで記者会見し、東京電力福島第1原発事故の周辺住民への健康影響調査結果を発表した。放射性ヨウ素131とセシウム137の甲状腺被ばく線量の推計値はいずれも発がん率の増加が予想されるレベルを大きく下回っているとして、被ばくによる発がんなどの危険性に否定的な見解を示した。
記者会見を前に毎日新聞の取材に応じた同委員会のバイス議長は、甲状腺がんが「今調査で推計された被ばく線量によって増えることはない」と言明。旧ソ連のチェルノブイリ原発事故(1986年)に比べ、福島原発ではチェルノブイリ原発にはなかった格納容器が放射性物質の放出量を減らし、危険度の高いストロンチウムやプルトニウムの拡散を防ぐことができたと指摘した。福島県が未成年者を対象に行った甲状腺検査で多数の受診者から小さな嚢胞(のうほう)などが見つかった点については、「香港や韓国でも同様の事例がより多くみられる。原因は不明だ」と述べた。
影響調査に関する報告書案によると、事故後1年間の甲状腺被ばく線量の推計値は、原発から30キロ圏外の福島県の1歳児で最大66ミリシーベルト、30キロ圏内から避難した1歳児でも最大82ミリシーベルトで、いずれもがんが増えるとされる100ミリシーベルトを下回った。