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大学では教えられない歴史講義

2011年1月30日(日曜日)

安住思想統制事件

カテゴリー: - kurayama @ 22時13分45秒

 ことの重大性をわかっている人があまりいないようなので、とりあげます。

 まずは事実関係を。
防衛次官通達、安住氏が主導 政務官再考促すも耳を貸さず
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110127/plc11012701310010-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110127/stt11012723360079-n1.htm

 要するに、自衛隊の集まりで民主党政権打倒を発言した人を、締め出したり、保全隊と言う組織を使って監視したりしたということです。その主導者が安住淳防衛副大臣(当時)だったということです。

 メディアを見ると「言論統制」という批判が多いのですが、それどころではないほど深刻なのです。結論から先に言うと、

安住淳は自由の敵

です!
 なぜか?単に「言論の自由」に対する「言論統制」の問題だけではないからです。

 まずは、「言論統制」とか「言論の自由」を考える上で、日本国憲法を読み直しましょう。

第19条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 
第20条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。(以下略) 
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 憲法上は、安住副大臣の所業は21条1項に違反しています。これは誰でも言えます。これだけでも現職なら副大臣辞職だったでしょうね。北澤大臣は意思決定に関わっている以上、今からでも辞表を提出すべきでしょう。
 小池百合子自民党総務会長が「スターリン時代を想起させる。何より憲法違反だ」
と衆議院で首相に追及されていますが、その通り。まったく正しい。ちなみに保全隊というのは、ソ連だとGRUという組織にあたります。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110126/plc11012622020162-n1.htm

 しかし、これだけでは終わりません。
 そもそも自由とはどのように認められてきたのか、それを思い出せば安住副大臣の所業がいかに野蛮かわかります。
 ヨーロッパにおいて近代とはいつからはじまるのでしょうか?
 1648年ウェストファリア条約締結からです。
 この事実を記載していない憲法の教科書など憲法学について何も語っていないということです。それくらい重要な事実です。
この時に、「心の中では何を考えていても良い。心の中で自分と違うことを考えていても殺さなくてよい!」と、スウェーデンのクリスチーナ女王が主張して、はじめて自由とか人権が認められるようになったのです。
 ここで大事なのは、「殺してはならない」と合意ができるのはまだまだ先だと言うことです。
あくまで「殺さなくても良い」です。
 つまり、それ以前のヨーロッパでは、自分と違うことを考えている奴は「殺さなくてはならない」だったのです。
 そういう世界がどれくらい恐ろしいかは、「三十年戦争」「十字軍」「魔女狩り」「異端審問」「宗教戦争」などを調べてみてください。
 心の中では何を考えていても良い(日本国憲法だと19条)から、
 どんな宗教を信じても良い(同20条)、
 思ったことを口にしたりするなどあらゆる表現の自由は認められる(同21条)、
と自由は認められていきます。こうして人権は拡大されました。

 大日本帝国憲法を創る時にも、こういう歴史は吟味されました。
 ただ、日本国憲法20条の内容は帝国憲法28条に21条は29条にありますが、19条にあたる内容はありません。なぜでしょうか。帝国憲法が欠陥憲法だからでしょうか。違います。あまりにも当たり前の事すぎるからです。
 本当にその人が何を考えているかはわからないので、裁判で問題になることはありえません。
憲法典の条文には裁判で準則となる規範だけを書くべきであって、何でもかんでもきれいごとを書くものではないと考えていたからです。だから、「信教の自由」だけはかなり神経質に条文を書いて運用しています。
 逆に権力の側が、本当にその人が何を考えているかを知ろうとすれば、「監禁して拷問」とかが必要になります。「家の中に好き勝手に入っていく」とか、「24時間行動を監視する」とかにもなります。小池総務会長が引用しているスターリンは本当にそういうことをやりました。
 近代国家であれば、絶対に犯してはならないのが19条の内心の自由です。
 ただ19条と21条には一線があります。

 近代憲法の大原則は
「心の中は無制限に自由。行動に出したら制約されることもありうる」
です。
「完全なる自由は他人の自由を侵害する自由も認められてしまう。
 だから、自由と自由が衝突したら調整し制約するのが政府の役割である」
という考え方で近代国家はなりたっています。
 どこで制約するかは別にして、表現の自由は無制限ではありません。
 宗教的活動もまた然りです。ただ、その人が心の中でどんな邪悪な宗教を信じていても、行動にしなければ権力が介入してはいけません。
 日本国憲法19条の「思想良心の自由」など、これ以上ないほど抽象的な規定で、権力者がよほどの横暴をしない限り破りようがないような規定です。そもそも憲法典に規定すべきかどうかというような当たり前すぎる内容です。

 ところが19条は、日本国憲法の中で真っ先に、9条よりも先に破られた規定です。
 レッドパージ事件でマッカーサーと言う人が破りました。
 ついでに田母神騒動での麻生総理と浜田防衛大臣も破りました。
 近代国家として守らなければならない一線を自民党に続いて民主党も踏み越えました。
 麻生内閣は総選挙の敗北で憲法違反の制裁を受けました。
 さて菅内閣は?

 我思うに、即刻、民主党国会対策委員長をはじめあらゆる役職を返上するだけでなく、
議員辞職すべきである。と言っても、やるはずがないですが。

 ただ、安住思想統制問題の重要性を、国民のほとんどが認識していないのは真の危機だと思います。


2011年1月29日(土曜日)

国際人ノえいご

カテゴリー: - kurayama @ 14時19分01秒

 解答制限時間、一秒の問題。

 岡倉天心が弟子の横山大観を連れて、和服でニューヨークを歩いていた。
 で、無礼なアメリカ人に話しかけられた。

What a sort of nese, are you Chinese, or Japanese, or Javanese?

 そこで、天心先生、即答。

We are Japanese gentlemen.

But, what a kind of key, are you a Yankee, or a monkey, or a donkey?

 これが本当の国際人というもの。ちなみにdonkeyには「バカ」「愚か者」の意味もある。

 なお、件のアメリカ人の反応は伝わっていない。


2011年1月27日(木曜日)

一字の違い

カテゴリー: - kurayama @ 23時47分14秒

 非戦の反対は好戦?
 似て非なる言葉に、避戦があります。
 避戦には覚悟と計算があります。
 非戦はえてして大戦を起こします。

 それはそうと安住議員、洒落にならんことをやってくれましたね。田母神騒動と今回の一件、許したら日本は近代国家ではなくなります。

 ドイツだったら非合法化される政党=民主党、自民党、共産党・・・社民はぎりぎりセーフ。

 フランスで非合法化されている政党=公明党。

 この話、じっくり書けるときにやります。


2011年1月26日(水曜日)

さらに近況と予定

カテゴリー: - kurayama @ 22時04分51秒

「毎日が締め切り」のような日々が続いています。ありがたいことです。朦朧とした意識の中でなぜか、「神聖でもローマでも帝国でもない」などとつぶやいていました。夢の中で仕事をしているのは良いのですが、終わった仕事とか、関係の無い仕事をしているのは如何なものかと。

 教訓。イブクイックで治る頭痛は気のせい!

 さて、隔月の予定の仙台吉野作造研究会ですが、ご協力していただける方が(数もそうですが質はそれ以上に)飛躍的に増強されたので、来月もやります。で、お題が、禁断のテーマ。

中大生救う会、かく戦えり!

 当然ですが、録画録音、一切禁止です。東京では絶対にやりません。ちなみに当日は無料ですが、紹介制です。

 予習用教材としてはこれ。

 拉致救出運動の2000日

 この前、著者の荒木さんも、この本に「倉山メモ」が使用されていることを知ったという次第。私が木っ端役人を嫌いな本当の理由、話します。たぶん惨すぎて、日本人でいるのがイヤになりますよ。

 ちなみに、2コマだけ私が登場するのが以下。

 奪還 

 作者さんではない人に、2時間くらい電話取材されたので当時の裏話をしたら、「現在進行形すぎるので不採用!」ということに。たぶん、伝えてないと思う。

 まあ、書けんはなあ。でも聞いてたら、日本人に生まれてツクヅク良かったと思える話です。

 ほとんど、平成の功山寺決起、みたいな話です。  

 明日は、月に一度の倫理法人会講話なので、町田へ向かいます。


2011年1月24日(月曜日)

近況、採点、予告

カテゴリー: - kurayama @ 23時47分49秒

 先週は何やかんやと一週間連続外出でした。週末は仙台で歓待されました。my日本の皆さん、ありがとうございます。

 さて、19日の採点。もちろん正解は「誤り」です。根拠は「又は命令」とか余計なものが入っているからです。法律に委任された命令の根拠は法律です。「財務省令で明日から消費税を17%にします」とかできたら、こんな騒動にはなっていません。

 で、出題意図は、「お役所仕事とは、長大な書類の中にスルリとこういう仕掛けを混入させることにある」ということです。受験では、そういうのが求められますから。こういうのができないと、「政治主導だ!」「官僚支配の打破だ!」と威張ってもむなしいだけなので。

 何でもかんでも官僚と名のつく人に喧嘩売るのは、何でもかんでも官僚と名のつく人の言いなりになるのと同じくらい愚かです。今の官僚制の問題点は、仕事をしない人やできない人が異様に保護されて特権を享受して、真面目に働いて能力もある人が報われないという制度にあることですから。叩けば良いという物ではありません。

 さて、予告。亡国前夜以来の大型企画。

誰も知らない、戦前大蔵省の歴史

 乞御期待。って、書き溜めないと。。。そんなヒマあるのか???


2011年1月21日(金曜日)

忘れない内に

カテゴリー: - kurayama @ 19時02分28秒

 思わず見出しで買ってしまった『日刊ゲンダイ』1月22日号3面。

 ウィキリークスによれば、鳩山小沢政権に危機感を強めたキャンベル国務次官補は、2010年2月3日の金星煥外交通商相との会談で「菅財務相と岡田外相と直接の接触を持つことが重要だ」と指摘、金外相も同意、とか。

 さもありなん。

 あと同面に、嶋田隆通経済産業省商機構部長が与謝野馨大臣の秘書官に。五回目とか。霞ヶ関の事情を知る人は見落とさない人事なので、備忘録代わりに。

 明日は仙台吉野作造研究会です。お題は主催者要請で、「漫談!ウィルヘルム二世」です。原稿持って出張でございます。最近レスできてなくてすいません。落ち着いたら「亡国前夜」以来の大型企画やるかも、です。


2011年1月19日(水曜日)

長考の合間に

カテゴリー: - kurayama @ 15時05分45秒

 加藤一二三先生張りの長考になっていました。
 本当は朝から晩まで仕事三昧ですが。
 しかし、悩み深い長考は余計なことが浮かんでしまいますね。

「上杉謙信=勝率十割の谷川浩司、性格は加藤一二三」

とか。…しかし、こネタわかる人、どれくらいいるのだろうか。。。
というか、本当に本筋の読みとまったく関係ない。。。

 それはそうと、ウチの大学の学生に聞くと「砦」でおもしろかった記事はほとんどが「将棋の話」とか言うので、時々するかもです。(うーん。考え込む)

 さぁて、定期試験が終わったぞぉ。(皆さまお忘れかもしれませんが、出す方です)

 毎回、「絶対出すぞ」と、問題も、答えすらも教えているのに、泣きたくなるくらい正解率が悪い問題がこれ。

 内容同じで少しだけ出題形式を変えて以下。(改、平成教育委員会風)

問題:以下の文章は正しいか間違っているか。根拠を指摘したうえで答えよ。

租税法律主義とは、あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は命令によらねばならない、とする原則のことである。古くは「代表無ければ課税なし」と称された。

 これ、日本人の正解率が悪ければ、消費税は簡単に増税できます。
 官僚批判、政治主導など、いくらやっても無駄です。

 ということで、再び長考に?


2011年1月15日(土曜日)

改造の焦点

カテゴリー: - kurayama @ 03時53分12秒

 日本憲政史を観る時に重要なこと。

指導力ではなく、拒否権に注目せよ!

 つまり、「何ができるか」ではなく、「何をさせないか」が、その人間や組織の権力をはかるバロメーターです。

 前官房長官の至上命題は二つ。拉致問題の進展と日銀法の改正は阻止する!でした。特に、法相と拉致担当の兼任などはその意思の現れでしょう。

 さて今回の「不条理内閣」改造人事に関して。あちらこちらに火種がありますが、日銀法改正阻止の優先順位が上がりましたね。藤井さんまで官房副長官とは。。。これじゃあ絶対に閣議は通りませんね。そんなに日本の長期不況を続け、若者を就職不況で白痴化させていきたいのか。まあ日本の近隣諸国にとってはそれが都合が良いのでしょうが。これで大半の若者はしたり顔で絶望しきって何もしないときているのだから、目も当てられない。

 ただ、今回の騒動で支持率が劇的に上がるとはとても思えないので、単に軋轢を抱えただけになるでしょう。また、日銀法も改正できない代わりに消費税増税もできないかもしれないです。「総辞職するから上げさせて」とまではできないだろうし。

 一方で、拉致問題は中野寛成大臣。菅総理、拉致問題で実績を上げれば支持率上がると考えていてくれればまだ希望がある。何でも良いからとり返して欲しい。「進展」などどうでも良いので。

 30代が立ち上がる方法を長考中。


2011年1月13日(木曜日)

与謝野馨氏、入閣?

カテゴリー: - kurayama @ 18時19分26秒

 昨日の近くする会は多数御来場、ありがとうございました。正月早々誰も来ないだろうとか内心思っていましたのに、実数で60人くらいでした。重ねてありがとうございます。

 さて、民主党大会が何だか白けた感じでやってましたね。私の関心は、拉致担当大臣が誰になるかだけなのですが、下手すれば死ぬまでやりたいと思っていかねない菅総理が「政権浮揚だ」「歴史に名を残すぞ!」とすべての拉致被害者、特に私が関わっている生島孝子さんを取り返してくれればと思うのですが。。。

 世の中では与謝野馨さんの離党と重要閣僚での入閣が取りざたされていますね。本日は与謝野さんについて。

 まず、永田町では「与謝野が入閣すれば内閣は潰れる」などという噂が流れているのですが、その真偽を確かめてみましょう。

 その1 小泉内閣=政調会長・金融&経済財政担当担当大臣

 明らかに与謝野さんのせいで潰れた訳ではないです。党と政府で、中川秀直さんや竹中平蔵さんと対立していたので、しかも与謝野・竹中論争では小泉さんは竹中さんを取った、などということがあったので、突出した政治力を発揮できなかったというのが妥当でしょうか。

 その昔、足利義満という政治家がいて、細川派と斯波派を喧嘩させて、自分に楯突いた方を叩いて権力を維持していた、という歴史があるのですが、小泉さんのやったことこれに近いかも。ちなみに実力の無い政治家が義満の真似をすると応仁の乱になる。

 

 その2 安部内閣=官房長官

 就任二週間で退陣。人によっては「霞ヶ関が死に体の安部内閣にトドメを刺すために送り込んだ」とか言いますが、どうなのでしょう。安部さん、既に病気だった訳ですし。ちなみに、私が考える安部内閣退陣の理由は以下。

http://www.kurayama.jp/modules/wordpress/index.php?p=297

 ここに与謝野さんが重要な役割として関わっているかどうかは議論が分かれるところだと思います。

 

 その3 福田内閣=経済財政担当大臣

 就任一ヶ月で退陣。この頃に「与謝野怪談」みたいなのが流れる。でも福田さん、総選挙での敗北が確実でジリ貧の自民党を、支持率が高いと思われていた麻生さんを後継にして何とか負けを最小限にしようと政権を明け渡したのだと思っているのですが。

 

 その4 麻生内閣=財務大臣他

 福田内閣から留任していたら、そのまま色んな大臣がついてきた。この内閣ではむしろ倒閣を図ろうとして失敗しています。麻生総理が「サミットに行きたいetc」と一日でも長く総理の座にいようとしがみついたので。

 

 以上、総理が「何が何でも辞めない!」といった際に辞めさせるのは、与謝野さんだろうが誰だろうが無理なのですね。むしろ私は、与謝野さんには入閣して菅内閣の介錯人になってほしいのですが。断っておきますが、皮肉ではなく本気です。

 そうなれば、「西郷隆盛・伊達直人・与謝野馨」として並び称されるでしょう。

 最後に注目点。白川日銀総裁閣下、与謝野さんが「会いたい」といっても電話一本ですますのだろうか。誰か教えて欲しいです。

 まとめ一、与謝野さんが政権に対して拒否権を持っているか?

      菅内閣が早期に退陣するかどうかでわかる。

 まとめ二、与謝野さんが政策に対する拒否権を持っているか?

      白川日銀総裁の態度でわかる。(=わからない可能性が高い)

 財政再建は歓迎ですが、デフレ不況下での増税はご勘弁を。


2011年1月12日(水曜日)

倉山訳「最期の詞」

カテゴリー: - kurayama @ 01時42分48秒

 日本で唯一の演説政治家といえば誰でしょう。
 北條政子です。
「純粋に演説によって世の中を動かして」という意味での演説政治家です。
 西洋だと、ギリシャのデモステネスやローマのアントニーの時代から、人心を演説によって一変せしめた、などという例は枚挙に暇がないのですが、日本だと北條政子だけでしょう。

 承久三年(一二二一年)、後鳥羽上皇は時の鎌倉幕府執権の北條義時を逆賊として追討する院宣を発しました。
 理由は、「将軍に皇族を出してやるから、上皇のお妾さんの領地から幕府の地頭を追い出せ」
という要求が無視されたからだそうです。
 多くの武士の反応は、「上皇と執権で勝手にやってください」でした。
 ということは、北條義時は孤立無援で絶体絶命。そこで大管領・大江広元の助言により登場したのが、義時の姉にして創業者・源頼朝の妻である政子。
 政子様、鎌倉中の白け切った御家人を集めて大演説。

 ソ連歴史科学アカデミーの如く正しい態度で史実を記す鎌倉幕府公式歴史書によれば以下。
(面倒くさい人は読み飛ばしてください)

『吾妻鑑』
 皆心を一にして奉るべし。これ最期の詞なり。
 故右大将軍朝敵を征罰し、関東を草創してより以降、
 官位と云ひ俸禄と云ひ、其の恩既に山岳よりも高く、溟渤よりも深し。 
 報謝の志これ浅からんや。
 而るに今逆臣の讒に依り非義の綸旨を下さる。
 名を惜しむの族は、早く秀康・胤義等を討取り
 三代将軍の遺跡を全うすべし。
 但し院中に参らんと欲する者は、只今申し切るべし。

で、乱の直後に記された軍記物語には以下。
(これも面倒くさい人は読み飛ばしてください)

『前田本承久記』
 人々見給はずや。
 昔東国の殿原は、平家の宮仕へせしには徒歩(かち)跣にて上り下りしぞかし。
 故殿鎌倉を建てさせ給ひて、京都の宮仕へも止みぬ。
 恩賞打ち続き楽しみ栄えてあるぞかし。
 故殿の御恩をば、いつの世にか報じ尽し奉るべき。
 身の為恩の為、三代将軍の御墓をば、いかでか京家の馬の蹄にかくべき。
 ただ今各々申し切るべし。宣旨に従はんと思はれば、
 先づ尼を殺して鎌倉中を焼き払ひて後、京へ参り給へ

 では、両者を合わせた倉山訳をどうぞ。
「声は岩下志麻」でお読みください。

 皆さん、心を一つにしてお聞きください。
 これが私の最後の言葉です。
 昔、ノンキャリアの公務員の人々は、別に天下りでおいしい思いが出来る訳でもないのに、現場で汗水流し、身体と家庭を犠牲にしてまで一生懸命お国のためにはたらいてきました。
 ノンキャリだったくせにキャリアづらして威張り散らしていた平家の輩を、頼朝公が打ち滅ぼし、「働く人が主人公」をモットーとする鎌倉幕府を打ち立てて以来、理不尽なコクイチ偏重主義はなくなりました。真面目に働けば能力のある人は局長・次官になれるようになりました。この御恩は山より高く、海より深いはずです。亡き頼朝公の御恩をどうして忘れることができるでしょうか。
 ところが、今や君臣の奸の讒言により非義の綸旨が下されました。
 公務員改革を逆戻りさせようとする勢力の暗躍です。
 保身をはかる人たちは、どうぞ好きにしなさい。
 今この場で申し出て、私を殺してからその首を持って、何の能力も無いのに東大法学部を出て試験に受かったというだけの特権官僚のもとに馳せ参じなさい。
 再び犬のような暮らしに戻ればよろしいでしょう。
 しかし、命を惜しまず名を惜しむ人は、即刻、
 羽毛田白川を討ち取りに行きなさい。
 
 
 ちなみにこれが「現代語鎌倉史劇」こと「草燃える」です。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8443634

極妻より恐い。。。

 おどろおどろしいなあ。
 結果、岩下志麻、じゃなかった北条政子の至誠溢るる稀世の大演説はたちまちにして鎌倉御家人の考えを一変し、「主上御謀反」を倒すの挙にいでしめましたとさ。

 私、尊皇家として人後に落ちないつもりですが、特権官僚を擁護する勅命は「非議の勅命」であり、従う必要は無いと思っています。
 などというのは私が勝手に言っているわけではなくて、かの『神皇正統記』でも本当に主張されています。

「陛下の側近が言っていることは大御心だ」という議論、いかに間違っているか、ということです。
 以上、 『別冊正論』所収

“つくられた大御心”と側近たちの大罪

の予備知識でした。ただいま絶賛発売中。


2011年1月10日(月曜日)

「タイガーマスクブーム」に物申す

カテゴリー: - kurayama @ 00時08分24秒

 全国でタイガーマスクブームとか。「伊達直人」を名乗る人から、ランドセルやらおもちゃやら現金やらが届けられる事件が続発とか。

正体は佐山サトル?

 という冗談はさておいて、あえて「世の良識派」的なモノイイをしてみる。

 どんな出所のカネかわからないものを受け取るのは気持ち悪くないのだろうか。それが盗品だったりしたらどうするのか?寄付者は、「私がやりました」と自慢げに言いふらす必要はないが、届けた相手には不正な手段で入手したものではないと伝えるべきだと思う。

 漫画『タイガーマスク』の主人公の伊達直人は、正体を明かせない事情があったので「ハワイの親族から莫大な遺産が入った」などと嘘をついていただけで。別に「本名を明かさないのが良いことだ」と思っていたわけではなく、子供達が気持ちよく受け取れるように気を使っています。気持ちはちゃんと言葉にしないと伝わらないです。このあたりの事情は作品を御覧ください。

 ちなみにそんな伊達直人が尊敬していた人が、

西郷隆盛!

 事情があって「カネに目がくらんだ裏切り者」扱いされて仲間全員と別れて上野の町を彷徨していた時に流れ着いたのが、西郷像の前。

 この時、「西郷さん、あなたはたとえ逆賊だといわれても日本を愛していた!」などと心の中で絶叫していたシーンがありました。「右翼的センチメンタリズム」とか言われた梶原一騎の面目躍如ですな。


2011年1月9日(日曜日)

たまには無題

カテゴリー: - kurayama @ 23時41分17秒

 昨日は引き続き対談してました。今度は鍛冶俊樹先生です。去年来薄々告知の企画とはまた別に。

 一昨日の宮脇淳子先生との話との共通の中身は

日中戦争は早慶戦だ!

です。(笑)

 乞御期待!って、これじゃ中身が想像できなさすぎかぁ。

 

 ちなみに『別冊正論』の松浦先生の論稿、大爆笑した。そうか、

 中井ハマグリは土岐頼遠

だったのか。ちなみに小沢一郎は高師直とか。言いえて妙。

 土岐頼遠と言う人がどういう人だったかというと、駄洒落が下手だったので打ち首になった人です。


2011年1月7日(金曜日)

『別冊正論』に寄稿しました。

カテゴリー: - kurayama @ 23時30分17秒

 本日は、対談の仕事で久しぶりに外出。まさか写真を撮るとは露知らず。。。今日のが使われていたら、人造人間18号(@ドラゴンボール)みたいな髪型になっていると思われます。宮脇先生になおされてしまった。。。まあ、明日も引き続きなので、今年初美容院!かなあ。(寝坊しない限り)。

 さて、本日発売の『別冊正論』に寄稿しました。

http://www.sankei.co.jp/seiron/etra/no14/ex14.html

 題して、

“つくられた大御心”と側近達の大罪

です。

 編集後記と他の人の論文を読んではじめて「小林よしのり批判特集」だと知った私。というのは、私が聞いた企画意図は

「世の中には羽毛田信吾宮内庁長官が女系推進を言っているから、陛下の大御心は女系推進にあるに違いない、という誤謬を正したい」

とのことだったので。まあ、小林氏が「羽毛田長官が言っているから云々」という発言をしているのは一応知っていましたが、彼はすぐに発言を変える人なので(それが必ずしも悪いわけではありませんが)、彼の言動という現象面でどうこうしても。。。そういうのは他の人の役割で、私に求められるのは本質的な話ですから。ただ、行政学や行政実務の実態を教えてくれるブレーンがいたらそういう発言はしなかったでしょうね。

 牧野伸顕・斎藤実・湯浅倉平・木戸幸一・入江相政・富田朝彦・・・そして羽毛田信吾

と並べた際、ある特定の立場の存在にたどり着きます。

 高級官僚は優秀な人達だ!

 陛下の側近は全員、忠臣に決まっている!

 だから、羽毛田長官以下宮内官僚は優秀な忠臣だ!

だと信じている人には、読んで欲しいです。

 それ、行政学の基礎や霞ヶ関の実務を知っている人からすればありえないですから。

 皇室を語る際に知っておいて欲しい、側近官僚の歴史です。

 ジェットコースターに乗った気分でお読みください。日本近現代史を全部書き換える!みたいな論稿になってしまったので、あんまりいっぺんに説明しても難しいので、お読みになられた方でご質問があればお答えします。ただし、攻撃的で非礼な質問に対してはその限りではありませんが。

 とりあえず本日はこれくらいで。


2011年1月6日(木曜日)

外交官になりたい人へ

カテゴリー: - kurayama @ 23時39分14秒

 別に笑わせるつもりはまったく無かったが、妙にウケた標語。

自殺の大蔵、離婚の外務、汚職の通産。

 佐藤優氏によれば「今や外務が三冠王」とか。何のタイトル争いだか。

 しかし、日本人の官僚信仰ってどこまで根強いのかと思う。「官僚だから優秀」という意味での。 官僚でも優秀な人もいれば、普通の人以下の無能者もいる訳で、「官僚だから全員が普通の人より優秀」などという思い込みは失礼だと思う。日本の官僚で優秀な人というのは、「普通の人どころか、人としてどうよ」という生き物の妨害を乗り越えながら仕事をしているので大変なのですから。特に外務省では。

 将来の進路希望を聞くとやたらと「外交官になりたい」という学生との遭遇率が高くなっているので、「ではまずこの本を読みましょう」と推薦しているのがこれ。

 佐藤優『外務省ハレンチ物語』(徳間書店、二〇〇九年)

 とりあえず外務省は何の抗議もしていない。したらもっとバラされるから。というか、この暴露本でバラされていること、下手すれば本人達は武勇伝だと思っていかねないから恐い。

 これを氷山の一角と思って読んで、どうしても日本外務省でなければできない仕事をしたいと思う決心があるのなら、止めはしませんが。


2011年1月5日(水曜日)

近代日本政治思想史を四分割する(11)―山本七平と江藤淳

カテゴリー: - kurayama @ 15時55分50秒

 最後は保守論客で締めようということでこの二人でした。
 いかに戦後の言論空間が悲惨だったかという意味で。
 もちろん、存命中の人は却下。

 人選では福田恆存という案もありましたが、この思想史コラムの肝が漱石なので、江藤淳になりました。芥川を入れていたらアリだったのですが。
 あと、私が書くとしたらそんなに時間が無い状況が想定されていたので、書きやすい人という事情も。

 仮に福田にしても、最終的に選んだ二人にしてもアンチアカデミズムの評論家、とは決めていました。山本七平の記述って全部、丸山への当てこすりに読めなくもない?

 それはそうと、二人とも自己認識は第三の立場ですね。
 日本を愛するがゆえに日本政府を批判する立場です。
 ところが世の評者が勝手に「日本を愛するために日本政府を批判しないで肯定する」という
第四の立場にしている感がありますが。

 このコラム、最後は完全に「あとがき」になっていますね。意図的ですが。
 ということで、このシリーズの締めくくりとして再掲。

 冷戦は終結したが、日本は敗戦国のままである。オリンピックやワールドカップでは老若男女を問わず日の丸を片手に日本を応援するが、自国のことを自信を持って「我が国」と呼ぶ習慣は廃れた。
 戦後体制を維持するのか、脱却するのか。現代日本における思想的争点となっている。

『総図解 よくわかる日本の近現代史』

(新人物往来社、税込1470円)

好評発売中です。

続編、乞御期待!


2011年1月4日(火曜日)

デフレ容認派の池田信夫氏、とうとう本性露呈?

カテゴリー: - kurayama @ 18時21分00秒

 まず公式を思い出してください。

リフレ景気回復派=親米・親台湾(李登輝)

VS.

デフレ不況容認派=親中・親北、つまり反日

 池田信夫氏と言えば、デフレマンセーを唱え続ける経済評論家。お正月の『朝までテレビ』で反論できずに怒鳴り散らすという醜態をさらした人ですね。正月早々、とんでもないことを言い出しました。

関西は独立せよ
http://news.livedoor.com/article/detail/5244909/

私が期待したいのは、大阪(あるいは近畿圏)や愛知がカナダのケベックやスペインのバスクのように分離・独立運動を起こすことです。

だそうです。
 この人、民族運動の恐さをまったくわかっていないらしい。
 欧米で「日本でもケベックやバスクのように運動を起こします」とか言ったら、下手すれば即刻逮捕になりかねないとか知らないのかなあ。少なくとも危険人物として警察の監視下ですね。入国拒否くらいはされて仕方がない。ブッシュ大統領が宣言した「テロとの戦争」まだ終わっていないので諮問押捺も復活したのですし。

 池田信夫氏の言説を1990年代のユーゴでやると↓こうなる。
http://www.youtube.com/watch?v=8BfzyaZLkXU

 しかし、気が狂いそうだ。。。これで武器を取る人が続出するのだからすごい。
 さすがミルコ・クロコップの母国。(?)
 でも、池田氏の主張は、こういうことをやれ、ということですからね。
 たぶんご本人、まったくわかっていないだろうけれども。

 ユーゴ連邦内には六つの共和国があったのですが、スロベニア・クロアチア・マケドニア・ボスニア=ヘルツゴビナ・モンテネグロが次々と独立していき、さらに残ったセルビアからコソボが独立してしまいました。で、これで終わりかと思いきや、そのコソボでは「北コソボ独立運動」が今も盛んで。。。などと分離独立は無限連鎖していきます。ついでに社会全体のマフィア化が深刻です。

 バルカンは今のところ静穏だからマシですが、コーカサスでは大変ですね。
 ソ連崩壊の際に独立したグルジアから、さらに親露派のアブハジアと南オセチアが独立しました。北京五輪の最中に紛争をはじめたのは覚えてないでしょうか。たった3年前です。両国をロシア以外の国はほとんど国家承認をしておらず、紛議が続いています。

 池田氏はそういう殺し合いとか、社会のマフィア化がお望み?

 おそらく池田氏が真に主張したいのは、

地方政府に外交・防衛以外の機能はすべて移管し、徴税権も地方がもつ代わり、地方交付税は廃止して所得移転は行なわない。これが本当の「地域主権」です。

の部分でしょう。でも、これ全然、穏健な主張でも常識論でもないですから。
 これを本当にやった国をあげます。
 オーストリア=ハンガリー帝国です。二重帝国と呼ばれます。
 オーストリア帝国内のハンガリー人は「分離独立が駄目なら広範な自治権をよこせ!」と言って、1867年に本当に勝ち取ってしまいました。外交と防衛とそれらにかかる財政を担当する大臣のみ共通で、その他はすべてそれぞれの自治に任せると。
 その結果どうなったか。ハンガリーはチェコ=スロバキア人を弾圧し、今度はチェコ=スロバキア人が「三重帝国」を要求します。などと無限連鎖に火をつけただけでした。
 彼らが真に独立を勝ち取ったのは1991年のソ連崩壊ですが、今のチェコとスロバキアが別の国なのはご存知ですよね。

 チベット・新疆ウイグル・内蒙古・満洲みたいに元々別の国だったのを漢民族に無理やり併合され、どう考えても人道問題としか思えないような状況に置かれている国の独立運動ならいざ知らず、基本的には現状維持が国際社会の基本です。
 自国からの分離独立運動をいやしくも知識人が促す国とどうなるか。
 ヒトラーやスターリンに侵略された国の歴史をちょっと勉強すればわかるのですが、それら占領された国には必ず売国奴がいるのですね。
 もしくは政府官僚があまりにも無能で無自覚に売国行為をしているかどちらかです。

 池田信夫氏が確信犯の危険分子なのか、ただのモノ知らずのバカなのか、
 それが問題だ。

 教訓。
 反日左翼は、デフレ容認と分離独立運動を言い出す。


近代日本政治思想史を四分割する(10)―丸山真男

カテゴリー: - kurayama @ 17時22分45秒

 こいつについて書くの、

欝だ、欝だ、欝だ欝だ欝だ、欝だ、・・・

 というかこの人がいまだにマトモな学者として扱われていることが理解できん。。。
 言ってること、支離滅裂だし。

 丸山真男。
 日本を代表する思想家。らしい。
 「超国家主義」の発明者。らしい。
 って、思想家なのに発明???
 一応、「発見」と言うことにしておきましょう。
 この「超国家主義」が普通の「国家主義」とどう違うか?
 つまり「超」にはどのような意味が含まれているかと言うと、
 渋谷の女子高生が良く使いそうな「チョー何々」と余り変わらない。
 本当に変わらない。

 一応、中身らしきものを説明しておくと、、、丸山氏、「戦前の日本はファシズムだ!」と絶叫。この場合のファシズムは「悪者」くらいの意味でしか受け取られなかった。
ただ、丸山を「進歩的文化人」として賛美するような軽佻浮薄な連中よりは、丸山教授殿は少しだけ頭が良かったので、「ファシズムである以上、国家主義とは言えない」くらいのことは気付いた。

というのは、
 ファシズム=一国一党体制。党が国家の上位にある体制。
 国家主義 =国家を至上とする体制。
なので、絶対に両立できないので。
 そこで、丸山様は「戦前の日本は国家主義ではない。超国家主義だったのだ」とか言い出したまでは良かったのだけれども、彼の生涯の著作のどこを読んでも「超国家主義」特に「超」の定義はついぞ書いていない。なぜなら丸山の言説など、自分が軍隊で苛められた怨念だけで戦前の日本を悪魔化しているだけで、中身なんかある訳がないので。
 要するに戦前の日本の悪口であれば何でも良いのですね。例えば、

その一:戦前の日本はファシズムという悪い体制だった。
その二:戦前の日本は同時代のナチスのようにファシズムになれなかった劣等民族だ。

 えーと。どちらか一つにしてください。

 本人は第一の立場「日本国も日本政府も嫌い!」という自己認識でいたらしいのですが、当時の勉強もしないで政治運動をやっていた学生達からは、「お前はしょせん権威主義者じゃないないか」と敵視されるようになりました。自分の研究室が水浸しにされて初めて「共産主義者はナチスよりも強暴だった」などと気付いた頭の悪さ。確かに国立大学の教授をやりながら反日的言論を行なうって、いい根性していますね。第二の立場「日本が嫌いなくせいに政府からカネをもらう」とみられても仕方ないでしょう。こいつの鬱憤晴らしの売文が学問で、吉野の真面目な言説が学問ではないって、どうしても納得がいかない。。。

 この思想史コラムのテーマが「日本人は150年間でどう変わったか」なのですが、緒方洪庵や吉田松陰と同じ日本人とは思えないほどの変貌ですね。

 丸山と日本赤軍の岡本公三について勉強していた時に思ったのがこれ。

お前はアカじゃない!ただのバカだ!

 今年はみんなで賢くなって、アカもバカも絶滅させましょう!

『総図解 よくわかる日本の近現代史』

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2011年1月3日(月曜日)

近代日本政治思想史を四分割する(9)―南原繁

カテゴリー: - kurayama @ 15時33分46秒

 思想史コラム、
 吉野⇒河合⇒南原⇒丸山
と、十人中四人も東大教授を選んでしまった。しかも河合以外は全員、法学部。
 東大がどんどんバカになっていく過程、というか吉野や河合の方が突然変異です。
 本当は吉野の師匠の小野塚喜平次を含む七博士とかも選びたかったのですが、まあ幸徳秋水の方が大事だろうと言うことで。
 幸徳と七博士、どちらも丙丁つけがたいバカですが。

 よく、「まじめな学術論文をあまり書かなかった吉野に対し、小野塚は実証的アカデミズムに閉じこもった」などというどこからツッコミを入れたら良いのかわからん話が流布されているのですが、単に小野塚は学界で守られていなければ「日露即時開戦論」みたいなタワゴトしか言えなかったのでは?

 ちなみに、よく聞かれる質問。
 そんなに東大(法学部)の悪口を言って大丈夫ですか。
 答え。
 大丈夫です。
 東大(法学部)の頭の良い人は、東大(法学部)の悪口は全員思っていますから。
 なぜかと言うと、東大(法学部)の中で優秀な人は、別に東大(法学部)を目指して入った訳ではなく、子供の時から勉強はずっと一番なので、たまたま一番と言われる所に入っただけです。別に愛着がないどころか、新興宗教の幹部の如き講義を聞かされて、「ハイハイあなたの求める答案はこれでしょ」と大人の対応をしているものです。今も昔も。
 で、東大だけをこき下ろすのは不公正なので、二つ追加。
その一:その他の大学は東大の劣化コピーである。
    そうではないと言い張る京都帝国大学からしてそう。他は推して知るべし。
その二:突然変異が出る可能性が高い大学ではある。

 そんな東京大学の総長を務めたのが南原繁。
 なぜか副学長の上が学長ではなく総長。

 この南原さん、時の吉田茂総理と公開論争をして

曲学阿世の徒

と罵られたので有名。
 なぜかと言うと、アメリカなど多数の国との講和を優先させ一刻も早く独立を回復しようとした吉田に対し、ソ連を含む共産国が調印しないような方法は駄目だ、などと世論を煽りまくったのが南原。
吉田の論を「片面講和」、自説を「全面講和」と称した。
 えーと、結局吉田は48カ国と調印し、ソ連に従って調印しなかったのは3カ国ですが。。。
 ということで、吉田のことを私は「多数講和論」と呼んだ。
 何をどう呼ぶかによっても歴史観は現れるものです。しかし、南原に曲げるほどの学があったのかなあ。

 南原と言う人、思想にははっきり言って見るべきものがあるとは思えないのですが、
 まあ日本で数少ないフィヒテの研究者ですね。
 本場ドイツでもあまり研究されてはおらず、ドイツフィヒテ学会よりも日本フィヒテ学会の方が先にできたようで。
 確かに『全知識学の基礎』とか何を書いてあるのかすらわからん。。。
 でも『日本フィヒテ学会会報』とか若い頃読んでも、観念論とか難しい話をしているのに、
 ドイツナショナリズムの話になると哲学者の人たちはついていけないようで。
 フィヒテの『ドイツ国民に告ぐ』とか、戦前の帝国大学生は全員読んでる必読書でしたが。

 フィヒテきどりの南原本人は第三の立場のつもりでしょうが、やってることは第二の立場で、
彼の言動により得をしたのが第一の立場です。

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 次は丸山かあ、欝だ。このシリーズ、河合で止まっていたの、私の心身の健康上の理由です。


2011年1月2日(日曜日)

近代日本政治思想史を四分割する(8)―徳富蘇峰

カテゴリー: - kurayama @ 20時54分18秒

 随分久しぶりですが、このシリーズ終わらせてしまいます。
 おさらいしておきますと、「右対左」とう構図だと世の中よくわからなくなる、という趣旨ではじめました。で、せめて四分割はしようと。

 第一の立場:日本国も、日本政府も嫌い
⇒筋金入りの左翼。実は少数派。

 第二の立場:日本国は嫌いなくせに、日本政府は大好き。
⇒常に中枢。腐れ官僚。宮内庁・日銀・最高裁・・・。

 第三の立場:日本国を愛するから、日本政府を批判する。
⇒真の保守。日露戦勝後は常に少数派。

 第四の立場:日本国を愛するから、日本政府を批判しない。
⇒「善良」な日本人。

 左右の対立だと、第一の立場と第四の立場だけになってしまうのですが、本質は「第二の立場対第三の立場」ですね。現在、第一の立場は第二の立場に合流していますが。官房長官とか与党参議院会長とか。

 さて、本日は徳富蘇峰。
 第四の立場の筆頭です。こういうのを御用学者と言います。
 大正昭和期の論壇の大御所です。
 戦時中は「東條英機と徳富蘇峰には不敬罪が適用される」とか言われていました。
「支那事変の難局に直面している今なすべきことはアメリカに喧嘩を売ることだ」とか、無茶苦茶な煽り方をした人です。
 今で言うと、「この長期不景気に直面している今なすべきことは消費税を増税することだ」
みたいな議論です。
 どういう理屈でそうなるのかわかりませんが、恐いのは徳富本人は善意だということです。       
今で言うと、年末の朝までテレビで大声で下品に怒鳴り散らしていた池田信夫みたいなもの?
 で、誰が得をしたかというと、第二の立場の人たちになります。
 要するに、利用されている訳です。

 第二の立場と第四の立場の共通点は、愛国者に見えてしまうことです。
 ところが、彼らが擁護しているのは国家や国民ではなく、政府や政府の特定の人たちだったりするのです。

 第三の立場と第四の立場のおさらい。
「特攻隊は犬死である」
 これを聞いただけで、それ以上尋問もせず反論もさせずに激怒するのは第四の立場。
 お国のために死んでくれた人に敬意を表しつつ、誰が犬死したのかを追及するのが第三の立場です。

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 日本政府や特定の官僚たちの誤りをこれでもかと追究しているので、
ある意味で反日的記述?
 違います。政府や官僚は国家の一部であって、国家そのものではありません。
 国家や皇室を持ち出して国民に政府や官僚への盲従を強いるのは許せない。
 蘇峰をことごとく論破しながらも憤死の如く早世に追い込まれた吉野作造の言葉です。
 


2011年1月1日(土曜日)

年初のご挨拶と書初め

カテゴリー: - kurayama @ 00時43分03秒

 あけましておめでとうございます。

 今年は良い年にしましょう

 去年は「神風を吹かせましょう」とか諸葛孔明みたいなことを言っていましたが、まあ瞬間的には夏に吹いて、敵方にすぐに取り返されましたね。即死は逃れたけれども、今でも瀕死でという状況には変わりなく。ただ、鳥羽伏見の一瞬の大逆転まで、維新回天を目指すものは劣勢でしたから。しかも吉田松陰も高杉新作も坂本龍馬もその時にはこの世にいない訳です。

 でも一瞬だけ神風が吹いたのは、三月に

敵国降伏!

とお伊勢さんにお願いした効果ですかねえ。笑

 ちなみに、年初に立て続けに「いますぐ坂本竜馬になる方法」という講話をするのですが、三語で要約できますのでこれを今年の書初めにします。

 感動!伝達!参加!

 砦とは義によりて集う者の場!来たれ!百人の龍馬!

 今年もよろしくお願いします。


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