●国際社会から総スカン
5月27日の外国特派員協会での記者会見を打ち止めの場にしようと目論んだ彼は、ツイッター的な衝動的発言で失敗を繰り返すことを避けるべく、維新の国会議員有志によるサポートチームの助けを得て入念にペーパーを用意して2時間半にもわたって釈明を繰り返したものの、「大阪市長、スキャンダルの中で立ち往生」(仏フィガロ紙)と書かれただけに終わった。
その影響だろう、31日には米国の対人地雷禁止運動の指導者=ジョディ・ウィリアムズをはじめ5人の女性ノーベル平和賞受賞者が連名で「戦時における“性奴隷”は性暴力であり、今日では戦争犯罪と定義されている」と強く非難する声明を出した。
同日にはまた、国連の拷問禁止委員会が、旧日本軍の慰安婦問題について「日本の政治家や地方の高官が事実を否定し、被害者を傷つけている」として、このような行為に対し日本政府がきっぱりと反論すべきであると勧告した。予定されていた訪米が中止になったのは当然として、それに限らず、当分の間、橋下は国際社会の表通りを歩くことが許されないような存在になり下がった。
●都議選も参院選も1桁?
国内でも大変で、参院選の前哨戦となる都議選では、維新は現有の3議席に対して35人の候補者を擁立し、20議席を確保する方針だったが、25日に都内で開いた「決起集会」には、橋下はもちろんもう1人の代表=石原慎太郎も欠席、200席を用意した会場には40人しか集まらなかったという(候補者でも来なかった人がいるということ?)。週刊誌などの予測では、維新は下手をすれば1〜2議席に終わり、その延長で参院選でも「第2党」に躍進、安倍=自民党と手に手を取って「改憲まっしぐら」など夢のまた夢、これまた下手をすれば「1桁台に止まる可能性も出て来た」(維新番記者)。
そうなったら代表を引責辞任、タレント弁護士に戻るしかないが、『AERA』6月10日号によると「あの発言の釈明で橋下氏が番組に登場しても、視聴率が伸びなかった。橋下氏で数字が取れなくなった」(テレビ局関係者)のだそうだから、タレントとして再起用されるかどうか。
ならば真面目に弁護士業にいそしむことになるが、日弁連も所属の大阪弁護士会も「女性の尊厳を つけた」とする抗議の談話や声明を発表し、29日には、橋下が最初にイソ弁として所属して世話になった樺島正法弁護士はじめ約740人の弁護士らが、「女性を男性の性欲処理の道具としてしか見ていない人権無視、女性蔑視」「弁護士の品格・品性をどん底にまで貶めた」として橋下に対する「懲戒請求」を行った。懲戒が成立したとしても弁護士資格まで剥奪されるわけではないから、商売は続けられるが、まあ女性の依頼人は1人も来ないだろう。
●ジタバタするのが最悪の選択
さて、14歳の中学生にいじめの問題を含めて人間関係の極意を説いた本があって、その中に、いじめに遭った子はどうすればいいかについての適切なアドバイスが書いてある。
「いじめられる立場が固定してしまうとすれば、その原因はどこにあるのか……いじめられた子があの手この手を使って、なんとかみんなに好かれようともがいてしまうのです」
「もがけばもがくほど、そのTF0$O<~0O$N?M4V$K$O%+%C%30-$/!"=9$/1G$j$^$9!#$3$&$J$k$H!"$$$8$a$i$l$kN)>l$+$iF($2=P$9$N$O4JC1$J$3$H$G$O$"$j$^$;$s!#%8%?%P%?$b$,$$$F$7$^$&$N$O:G0-$NA*Br$G$9!W
「いじめる相手にしてみれば、もがいているのがまた気にくわなくて、よりいっそう嫌いになって、いじめは加速してしまいます。当面。止むことはないでしょう」
「そこで君がやるべきことは、ただひとつ。……とりあえずは動かないこと。動かずにいるのはつらいと思うけれども、なにもせずにじっとしている。ここが正念場です」
「自分の居場所がどこにもないような気がして、本当につらいでしょう。しんどいはずです。でも、あえて動かずにいる」
まったく、このアドバイスと正反対のことをやって墓穴を掘ったのが橋下である。「あの手この手を使って、なんとかみんなに好かれようともがいて」「もがくほどカッコ悪く、醜くなって」「いっそう嫌われていじめが加速されるという」「最悪の選択」。
この本のタイトルは『どうして君は友だちがいないのか』、河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズの1冊で、2007年刊。著者はもちろん橋下徹という弁護士です。
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高野 孟
早稲田大学文学部西洋哲学科卒業。80年に(株)インサイダーを設立し、代表兼編集長に。2002年に早稲田大学客員教授に就任、「大隈塾」担当。
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