パーソナリティ障害の認知療法

パーソナリティ障害の認知療法

●パーソナリティ障害の認知療法

ケースから学ぶ臨床の実際


井上和臣 編著

判型: A5判並製

頁数: 240頁

価格: 3,150円(税込)

ISBN(旧):

ISBN(新): 【978-4-7533-1019-7】

刊行年: 2011-03-28


●認知療法を新たな領域に適用した野心的試み

新刊

目次●
 
 プロローグ 「標準的」認知療法
第I部 総  論
 第1章理論
 第2章臨床
 第3章鑑別治療学
第II部 各  論
 第4章 情緒不安定性パーソナリティ障害で認知行動療法が有効であった一症例
 第5章 「認知療法は苦手です」と標準的認知行動療法に躊躇を示した情緒不安定性パーソナリティ障害患者の入院心理療法―患者の認知行動スタイルとニーズに合わせた認知行動療法の活用
 第6章 認知療法中止例に学ぶ情緒不安定性パーソナリティ障害における精神療法的介入の工夫
 第7章 演技性パーソナリティ障害への弁証法的行動療法
 第8章 神経性無食欲症を合併した強迫性パーソナリティ障害に対する認知行動療法
 第9章 不登校からひきこもりを呈した青年期事例における不安性(回避性)パーソナリティ障害への介入
 第10章 不安性(回避性)パーソナリティ障害の認知療法―自責と拒絶の怖れを訴える女性への,認知的概念化と介入
 第11章 不安性(回避性)パーソナリティ障害を伴った重症対人恐怖症に対する認知療法
 第12章 セックス・セラピーを求めてきた夫が不安性(回避性)パーソナリティ障害の一症例
 第13章 パニック障害をともなった依存性パーソナリティ障害に対する認知行動療法的介入
 
 エピローグ 認知療法の新しい地平
 あとがき
 索  引
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編著者略歴●
井上 和臣(いのうえ かずおみ)(編著者)
1977年 京都府立医科大学卒業
1980~90年 京都府立医科大学精神医学教室
1983年 京都府立医科大学医学博士
1988~89年 米国ペンシルベニア大学認知療法センター留学
1989~90年 京都府立精神保健総合センター
1990年~ 鳴門教育大学
現 職 鳴門教育大学基礎・臨床系教育部教授
著 書  『認知療法への招待』(金芳堂),『認知療法・西から東へ』(編集・著,星和書店),『認知療法の世界へようこそ』(岩波書店),ほか
訳 書  『人格障害の認知療法』(監訳,岩崎学術出版社),『認知行動療法を始める人のために』(監訳,星和書店),ほか

あとがきより抜粋●
 本書では,原則として,世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)に依拠したパーソナリティ障害の下位分類を用いた。日常診療でICD-10による臨床診断が求められるからである。特定のパーソナリティ障害(F60)には,妄想性パーソナリティ障害(F60.0)から依存性パーソナリティ障害(F60.7)までが区別される。認知療法は,Beckらの著書にあるように,どのパーソナリティ障害にも適用可能である。しかし,本書には情緒不安定性パーソナリティ障害(F60.3)以降を取り上げた。
 各論の最初を飾るのは情緒不安定性パーソナリティ障害である。第4章は外来での治療の粋が提示され,第5章は入院を含む継続的な関わりが論じられる。第7章には演技性パーソナリティ障害(F60.4)が登場する。ここではマインドフルネスがキーワードである。第8章は強迫性パーソナリティ障害(F60.5)で,摂食障害を伴っている。そして,第9章から第12章までの4ケースは,不安性(回避性)パーソナリティ障害(F60.6)である。不登校・ひきこもり,リストカット,対人恐怖,セックス・レスといった病歴がみられる。最後は第13章のパニック障害を伴う依存性パーソナリティ障害で締め括られる。鑑別治療学にいう治療の場・治療の形態も一様ではない。いずれも日常臨床で出合いうるケースばかりである。
 興味深いのは第6章の情緒不安定性パーソナリティ障害である。総じて,新しい治療を提示するとき,成功例が並ぶのは当然かもしれない。しかし,『臨床の実際』という場合,多くの,大小さまざまな失敗を経験することは不可避であろう。エビデンスが強調される昨今の趨勢を鑑みると,認知療法中止例から学ぶことはむしろ大きいかもしれない。
 本書を手にされた専門職の方々が,パーソナリティ障害に関わる新しい視点を得て,これを温め,そして日々の臨床活動に活用されることを切に願っている。


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