大阪府八尾市の田中市長、オスプレイ受け入れ「ＮＯ」

　日本維新の会幹事長の松井一郎大阪府知事（４９）が米軍新型輸送機ＭＶ２２オスプレイの訓練の一部受け入れを検討していることについて、候補地に浮上した八尾空港の地元、大阪府八尾市の田中誠太市長（５６）は３日、「市民の安全確保を最優先に、反対の立場で対応したい」と“ＮＯ”を突き付けた。日本維新共同代表の橋下徹大阪市長（４３）は実現の可能性の明言は避けたが、受け入れを提案する方針を言及。今後の新たな火種となりそうだ。

　大阪へのオスプレイ受け入れ検討の報道を受け、地元からすぐさま「ＮＯ」の声が上がった。

　松井知事と橋下市長は６日、菅義偉官房長官（６４）と都内で会談。沖縄・米軍普天間飛行場に配備されているオスプレイの訓練の一部受け入れ構想を示し、沖縄の負担軽減をめぐり意見交換する予定だ。

　これに対し、八尾市の田中市長は「市民生活に大きな影響をもたらす事案で、八尾市との調整や市民への事前説明がないのは遺憾だ」と表明した。

　八尾空港周辺は住宅密集地だ。２００８年８月、八尾空港を離陸した軽飛行機が市内の国道に墜落。１０年１０月には空港に隣接する陸上自衛隊八尾駐屯地のヘリコプターが墜落するなど、周辺で墜落事故が相次いでいる。田中市長は、オスプレイについて「これまで訓練中に延べ３０人以上が亡くなっており、まだ安全性に対する不安が残っている」と強調。「市民の不安感はぬぐえず、受け入れられない」と、府に対し十分協議するよう申し入れる考えを示した。

　オスプレイが低空飛行訓練に使用する「オレンジルート」の一部となる和歌山県の仁坂吉伸知事も「受け入れとは何なのか。どうするのか、質問したい」と疑問を呈した。

　一方、橋下市長は３日の退庁時の報道対応で、６日の菅官房長官との会談で受け入れを提案することを認めた。「大阪府民や八尾市民から反発が出るのは当たり前」と反対に理解を示しつつ、「沖縄県の在日米軍基地負担軽減のため、オスプレイの訓練くらい本州で受けよう」と、本州で受け入れる案の一つとして挙げたと説明。ただ、「防衛政策の観点で精査したわけではない。できるかどうかは分からない」と実現の明言は避けた。

　橋下市長は大阪府知事時代の０９年、米軍の戦闘機の一部訓練を関西空港で受け入れる案に「国から提案があるなら、議論は拒否しない」と述べたことがあるが、在日米軍に風俗業活用を提案した発言が問題になったばかり。すでにおわびと発言の撤回を表明しているものの、このタイミングでの受け入れ検討は、米軍や沖縄へのアピールや支持率が急落する維新の存在感をアピールする狙いもあるとみられ、議論はさらに紛糾しそうだ。

　◆八尾空港　大阪府東部の八尾市にある、国が設置、管理する空港。滑走路は交差した形で１４９０メートルと１２００メートルの２本がある。定期便は就航しておらず、２０１２年の離着陸は計約４万回。測量や写真撮影のために発着する小型機やヘリコプターが多く、大阪府警や大阪市消防局のヘリも拠点にしている。陸上自衛隊八尾駐屯地も隣接しており、陸自の航空機が滑走路を利用することもある。

（2013年6月4日06時02分スポーツ報知）