放射能汚泥問題の影で、震災がれきの広域処理問題が報道されていませんが、今も各地で受け入れ表明が続いています(まだ公式にはがれきを受け入れた自治体はない)。
被災地の瓦礫を受け入れると言っているのは、報道によると全国41都道府県にある「自治体・一部事務組合」です。この「一部事務組合って何だろう?」とずっと疑問に思っていました。「財団法人や企業が自前で焼却炉を持っていて、そこで瓦礫を燃やすつもりなのかな?」と思っていました。
恥ずかしながら、私は震災以前のゴミ問題についてはほとんど知識がありません。社会科見学でゴミ処理場を見学した程度の知識しかありません。
山本氏の本はまだ読んでいる最中で、これはこれで大きな問題なのですが、瓦礫問題は流れが速いため、速報性を重視してざっくりとブログ記事にします。最近の廃棄物行政がどのように行われてきたか、経緯・事情を押さえておくことは、震災がれきの処理が今後どのように行われていくかを占う上で重要な目安になるかもしれません。
『ごみ処理広域化計画』によれば、従来は各市町村ごとにゴミ行政を行ってきたのを、ダイオキシンが問題になった90年代後半、旧厚生省(現在はごみ問題は環境省が管轄)が音頭を取って、全国の焼却炉を大型焼却炉に順次作り替え、広域処理しようという流れを作ったそうです。
というか、厚生省は「大型焼却炉を全国に作ろう」という結論ありきで、ダイオキシン騒動を仕掛けた雰囲気があります。この大型焼却炉導入・広域処理化というゴミ行政の一大転換は、国会で法律の改正を経ておらず、厚生省が通達だけでほとんど絵を描いていったので(通達行政)、当時あまり騒がれなかったようです。
ごみ処理の広域化というのは、例えば神奈川県藤沢市の場合、藤沢市・茅ヶ崎市・寒川町の三つの自治体で「湘南東ブロック」と位置づけ、ここから出たゴミは一つのクリーンセンターで処理されます。全国で、ゴミ行政についてはこのようなブロック化がなされているそうです(水道や介護などでも似たような広域化の流れがあるらしい)。
問題なのは、
・複数の市町村のゴミを広域処理することで、責任の所在があいまいになる
・住民自治が奪われている、地方分権の流れに逆行している
・広域化では、地域のゴミ処理サービスの権限は単独の市町村から取り上げられる。複数の近隣市町村をブロック化し共同でサービスを実施させるために、「一部事務組合」(通称“一組”。特別地方自治体)を作らせ、独自の議会と規約で運営させる。一見民主的だが、実態は、巨額のゴミ処理事業の予算(税金)について、住民や国民、議員からの直接チェックを受けずに、権益集団間で都合よく使える仕組みになっている。
※今回の震災がれきの広域処分の場合は、もしがれきを受け入れた場合の責任は受入れ自治体の首長になるそうです(青木泰さんによる)。
・肝心なデータは「ノウハウだから秘密」と情報隠蔽がされやすい仕組みになっていること。
・大規模焼却炉建設は限られた大手プラントメーカーの寡占市場。焼却炉の建設や設備の発注者は自治体または「一組」。「一度指名業者になると、次の(15~20年後)入札の時にも同じように落札される仕組み」となっていて、この談合構造は長いあいだほとんどチェックされなかった。そのため、住民は割高の施設を押しつけられることに
・厚生省によれば、大型焼却炉の高温でごみを焼却すればダイオキシンが無害化できるというロジックだが、ダイオキシンは高温にしても一時分解するだけで、温度が下がればまた再合成するため、抜本的対策になっていない
・高温焼却炉は24時間ゴミ焼却炉を燃やし続けなければいけないのだが、少子化その他で燃やすごみが不足し、廃プラも燃やしてしまおうという本末転倒になった
・さらに産業界の要請で、産業廃棄物まで一般廃棄物用の焼却炉で燃やそう(!)流れが出ていること
・ごみに金属類すら混入しているので、重金属が大気中にでていること
*プラスチック製品にも重金属や有害物質使われている。プラ製品を燃すと危険なのは、製品の組成が企業秘密なので、何が含まれているかわからないから。
・焼却炉は大気汚染防止法の適用外なので、排ガス中のカドミウム・鉛だけが基準値があり、あとは自主基準
*たぶん、自治体のだけではないと思います。大気汚染防止法:規制対象の「ばい煙発生施設」=焼却炉の場合、カドミウムと鉛だけが規制されている。他は、規制なし。
・排ガスに含まれる粒子状物質(SPM)が健康被害をもたらす
こんなところが問題点でしょうか。一夜漬けなので細部が間違っているかもしれません。また後日、訂正入れます(瓦礫・汚泥問題をフォローしながらの同時並行なので、精密な記事を書けなくてすみません)。
山本さんには『ごみを燃やす社会』(築地書館、2004)という別の著書もあります。本書によれば、「ごみは焼却するもの」という日本人の固定観念は、世界のごみ処理トレンドに照らし合わせると異様で、実際、全世界の焼却炉の2/3が日本に集中しているんだそうです。
各国が焼却を嫌がるのは、石油製品のごみが増えてきた昨今、焼却するとダイオキシンや重金属を含む有害物質が出るからで、実際、世界のダイオキシン排出量のかなりの割合が日本が占めているという話もある(ちょっと古いデータですが1999年の国連報告書で世界のダイオキシンの40%を日本が排出)。
ごみを焼却することによりどんな健康被害が出るかという研究も多数なされており、焼却や焼却炉の新設を禁じる法律の制定も各国で多数なされている。では焼却の代わりにどうゴミ処理をしているかというと、可能な限りゴミになるものを生産しない、コンポスト化する、分別を厳しくする、排出責任を義務づける、などという方策が取られているようです。
(どのゴミ処理方法がもっとも環境負荷が少ないかという議論は、データの採り方によって玉虫色の結論が出ますので、海外のやり方が妥当かどうかという検討は、ここではしません。あくまで、山本氏の本にそのような記述があるという要旨だけ紹介するにとどめます)
日本ができる限りゴミを燃やそうとする一方、世界の潮流は可能な限り焼却しないという方向性になっている。
類書がないので「トンデモ本なのかな?」と思いきや(著書も「類書がない中で、正面切って反焼却論を展開するのは、正直手に余りました」とあとがきに記している)、書き下ろしのしっかりした調査報道の本ですし、裏を取ろうと思って海外ニュースをググると、やっぱり最近の海外のゴミ処理は日本とだいぶちがう印象……。
ひょっとしたら日本はゴミ行政も、原子力行政と似た構図になっているのかもしれません。大企業が儲かる仕組みを作り、官僚の無謬性を保つため「焼却神話」を流布させ、健康被害の研究には研究費が付かず、公害情報は隠蔽する……という構造になっているのかもしれません。
このような点を踏まえて、@jerico4さん(ブログ『ごみ探偵団』)に話を伺いました。
――もともと、どうしてゴミ問題に関心を持ったんですか?
「サイエンスライターの柳澤桂子さんが一時期ブログをやっておられまして、私は愛読者でした。そのブログを通じて、若い世代の人たちとメール交換をする機会があったんですがあるとき八丈島からSOSが来まして、
『八丈島の水源地になっている水海山というところがある。そこは国立公園に指定されているのだが、ゴミの最終処分場を作る計画が持ちあがっていて、環境省が法改正するためにパブリック・コメントを求めているから、ぜひ反対意見を寄せてほしい』
というものでした。
八丈島は東京都の一部です。それなのに、島民の半数以上が反対しているごみ最終処分場計画について、都民である私は何も知らなかった! 新聞もテレビも報道していない。パブコメの書き方も知らなかったのですが、見よう見まねで書いて送って、それからゴミ問題を調べ始めました。ゴミ関係のこと何も知らなかったので。反対意見は送ったけど、本当の所はどうなのかなって? だいたい最終処分場についてもよくわかっていなかった。
ネットで検索して調べたら「一組」という言葉に行き当たった。「○○○清掃一部事務組合」=「一組」。(一組は特別地方自治体で、ごみ処理に特化した行政組織。「○○○」の所は、例えば、「東京23区」なら「東京二十三区清掃一部事務組合」、八丈島だったら「島嶼9町村清掃一部事務組合」となる)。
単独の自治体からゴミ処理事業を取り上げて、広域化させ、複数の自治体に共同で「一組」を作らせる。そこでゴミ処理事業の予算を取り仕切る。施設の建設や装置の発注を決める。一組には独自の議員と議会があるが、住民から直接選ばれたのではなく、その一組を構成する各参加自治体の議員または議長が一組の議員に自動的になる。(各自治体から一名づつ)。だから、住民や他の政治家のチェック無しに、予算を使うことができる。日本のゴミ処理事業費の年間予算総額は約2兆円で防衛費の2分の一。巨額の税金が、住民や国民だけでなく政治家の審査すら受けずに、特定の役人達だけが使えるシステムを作り上げている。」
――もともと@jerico4さんはどんな経歴なのですか?
「私は62歳で、図書館短期大学という(今はもうないのですが)ところを卒業し、民間の企業の資料室に勤めたり、海外の企業に日本の市場情報を送る仕事したり、去年まで技術翻訳で食べていたので調べることが必要で、資料の検索、参照、解読をやってきました。データを短時間で読みとることが常に必要だったのです。
一組という仕組みがわかった後、山本節子さんの『ごみ処理広域化計画』に出会いました。この本は、柳澤桂子さんの「希望の日記」(ブログ)に参加していたとき、知り合った若い友人から教えてもらいました。それまで謎だったことが「そうだったのか」と理解できました。ばらばらだったピースが絵になりました。ゴミ問題は、ゴミ処理行政の問題だ、と。今年の2月に山本さんの講演会に参加しましたが、「ごみ問題は環境問題ではありません。ごみ問題は政治問題です。人間社会の最もどろどろした欲望や権力や金が複雑にからんだ、全ての人に関係する政治問題です」と山本さん。そうだなと思います。
話を戻しますが、それ以来、山本さんの本は私のバイブルとなりました。この本について教えてくれた仲間たちに「すごいすごい」と話したら、「でも山本さんたちゴミ焼却に反対するひとたちの本の内容が正しいってどうしてわかるの?」って聞かれて。そうだなと。焼却は安全と言う行政側の言い分が間違っているかどうかもよく分っていないしな~、と。
そんな時、2009年11月27日に廃棄物資源循環学会主催のセミナー「プラスチックごみ混合焼却処理と排ガス・環境への影響」が開かれました。参加費が3,000円もしたのですが、23区の一組が廃プラ焼却の実証実験結果を初めて報告すると聞いて出席しました。行政側の言うことがどんなものか確認できると思ったのです。参加してみて、こりゃ行政の言っていることは駄目だと思いました。「安心安全」の大合唱なのです。国立環境研究所の研究者達、京大の先生、そして一組が一致団結して報告、発表。説得力なき広報活動だと感じられました。
以下は、あとで友人たちに送った感想です。
2010年2月12日金曜日
廃棄物資源循環学会セミナー「プラスチックごみ混合焼却処理と排ガス・環境への影響」~参加後の感想
また、このセミナーの時に佐藤禮子さん、青木泰さんに初めてお会いしました。そこで二人から名刺をもらって彼らが毎月一回池袋で開いている勉強会に誘われ参加するようになりました。2009年の12月の集まりに行ってすぐに、23区廃プラ焼却の実証試験のデータが一組からだされた600ページ位の膨大なものだったのですが、青木さんたちが、 「環境総合研(究所、民間のシンクタンク)に頼んで検証作業を始めてもらった。自分たちは市民検証委員会を作って報告書をまとめることと、講演会を開いて結果を世の中に知らせましょう」となったのです。
参考HP:
――行政がやるという「資料責め」というやつですね。
「私は600ページものデータをどう眺めていいかもわからなかったんですが、池田こみちさん(環境総合研究所。放射能汚染がれき問題でもいち早く環境省を批判した)たちが読んで、「これは分析するに値しない、無意味なデータだ」と。水銀問題のときは、国のお墨付きの報告書で日本の水銀排出量や回収の数値が出されているのですが、中国・インドの排出量の多さとか、水俣の頃に比較すると、排出量は格段に少なくなっているから、焼却炉などからのものは心配ないというロジックでした。」
――原発の御用学者が使うようなロジックですね。「レントゲンと比較すると大したことない量ですよ」というような……。
「自治体の焼却炉は大気汚染防止法の抜け穴になっています。飛灰は大気に出して薄めて拡散しています。ダイオキシン対策のために大型焼却炉を作り、広域処理が必要だという青写真は厚生省が書きましたが、それはダイオキシン対策にはなっていない。自治体の焼却炉の排気ガスは24時間モニターされていないので、実際にどのくらい排出されているかわからないのです。正確な数値がないから対策も何もあったものではないでしょ。自主規制でちゃんとやっていますと担当当局は言う。でもその発表内容をチェックする独立した第三者機関は日本にはない。」
――震災以前のゴミ問題・環境保護活動ってどうだったんですか? ゴミ問題に取り組んでいる市民団体の間では、今回の放射能汚染がれき・汚泥の問題はどう受け止められていますか? 実は「環境保護団体やごみ問題に取り組む市民団体が、放射能汚染がれきの問題にも反応してもよさそうなのに、反対の声があんまり聞こえてこないのはどうしてなのかな?」と素朴な疑問を感じていました。2ちゃんねるでグリーンピースに電話した人がいるのですが、いまは海洋汚染調査で忙しいという回答でした(たしかに海洋調査はグリーンピースが得意な分野ですしね)。「グリーンピース以外にも環境保護団体はあったはずなのに反対の声が聞こえてこないな」と、中学生時代にべストセラー『地球を救う50の方法』を読んだ私は素朴な疑問を持っていました。
「青木泰さんは環境省などに問い合わせて、取材活動をしていました。環境総合県は早くから直接福島に入り、かねてから産廃問題でつきあいがあった桜井勝延・南相馬市長を支援するなど、独自の活動を続けてきました。
環境総合研 青山貞一氏によるインタビュー:現代の宮沢賢治・櫻井勝延南相馬市長単独インタビュー
放射能に汚染されたゴミが出てきたことで、ゴミ問題の関ヶ原と私は捉えています。でも他の人たちや団体がどう感じているかはまったくわからないのです。佐藤禮子さんは早い時期から夏の「第十六回東京とことん討論会」で放射能ごみのことをやると決めていたから、他の関係者とそういう話をしているとは思うのですが。
この2年間で聞いた話ですが、特にバブルがはじけた90年代以降、ごみ問題の市民運動はずたずたにされた、と。長年続けてやれているのは政党関係者か、組合関係あるいは生協などの組織的なバックがある人だけだ、と。青木泰さんはもともと民間企業研究所の研究者だった人で、書類やデータを読むのに慣れていて、地元の東村山市のゴミ問題をきっかけにゴミ問題に取り組むようになったそうです。
ゴミ問題の市民運動も、政党や組織関係者が乗っ取ってしまうことが多く、というのは、表向きは焼却炉反対を掲げていても内実は焼却炉を維持しなければならない事情があるとかで、結局巧妙に運動が切り崩されて、個人で入っていた方がやめていくということになる。」
――共産党などは反対しないんですか?
「ごみ焼却ではどの政党もみんな乗っているというか。大手プラントメーカーは自民党と、中小は公明党と、下請け作業を請け負う弱零細の仕事は共産党というように。ですからどの政党も、焼却がなくては実は困るといった都合を抱えている。ゴミ処理場では、現場で一番危険な仕事に当たっているのは非正規の労働者だと聞いています。正規の職員は自分の職場を維持したいわけで、労働組合も焼却炉維持だと思います。」
――非正規職員がいちばん危険な労働? 原発ジプシーならぬ焼却所ジプシーみたいな構造ですね。
――そうですか……。放射能ごみ以前から、廃棄物行政には問題がたくさんあったようですが、市民によってチェックされづらい仕組みになっているようですね。
「別の知人が、『真剣にごみ問題や処分場の反対運動をしてきた人達はみんな体を壊した』って言うので、『村八分とかそういうのがあるから?』と聞いたら、『というよりか、新聞やテレビが地元住民が反対している問題を報道しなくなった。行政が発表することを流すだけになった。だから、反対運動が社会とつながるパイプが無くなってしまった。運動がどんどん孤立させられて行って、個人でやっている人達は体がやられてしまう。市民運動に残るのは政党か組織関係者だけになった』って。
ゴミ問題の勉強会に参加して、とにかく人が少ない、わずかしか集まらないことに気づきました。市民運動がずたずたにされた結果だと思います。その中で続けてきた少数の方々は高齢化しており、若い世代の参加者は殆どいませんでした。私は、廃プラ焼却の問題と、水銀ごみ焼却問題(東京都のゴミ処理場で誤って水銀ゴミが燃やされたという事件。都側は愉快犯が血圧計を自治体回収に出したのではと言っているのだが、どうも以前から常習的に水銀ゴミは燃やされていたのではないかという指摘もある)の二つで、偶々ご縁のあった佐藤さんや青木さんがやっている市民グループに参加し手伝いました。そこで講演会や学習会を開催しましたが、長年やってきた彼らは、人が来てくれるかどうかとにかくすごく心配していました。
毎回、でもみんなで呼びかけて、時には80人近くの参加者があったりで、よかったようです。講師の方々の知名度が高かったからというのもあったと思います。昨年夏に起きた水銀ごみ問題では、ちょうど同じ頃、国連の水銀関係国際会議が開かれて、その関係で一人19歳の若者が講演会に来てくれました。グループのメンバーや参加者は中・高齢者が殆どです。また、あちこちで焼却場や最終処分場に反対する住民運動はあるのですが、横の連帯がなかったと聞いています。」
――活動資金はどうしてるんでしょうか?
「23区が廃プラの実証実験をしたときに、一組はパッと4億近い費用を使いました。それに対して、市民団体は一組が出した膨大な600ページにも昇る資料を第三者の研究機関に分析してもらうために、廃プラ焼却に反対を表明していた区議達から政務調査費の一部を出してもらい、約80万円の調査費を集めました。そのお金で学習会1回、講演会1回を主催し、分析機関や講師への支払、最後に報告書を作りました。市民グループのメンバーは全員無料で協力です。
その時思ったのです。行政からわたしは不当な扱いを受けていると。バカにしていると。わたしはこんな扱いを受けるいわれはないと。なんで意味もない実験をするのに4億も行政(一組)は使えて、それも税金を彼らは使ってる。彼らのばかげた資料を検証するのにこっちは忙しい中集まって自腹で調べたりお願いしたり。それが今の社会の仕組みなんだと実感しました。猛烈に腹が立ちました。これではまるで、ミサイルにつまようじで戦っているようなものだと感じました。なんで、一組の資料ややっていることをちゃんと検証する第三者機関がこの国にはないのか、と。」
「ゴミ問題ではいろんな人がいろんな思惑で発言しています。私は、役人はヤクザより悪いと思っています。ヤクザは自分たちが悪いことをしているとわかってやっている。世間もそれを知ってる。役人は国民のため、住民のためといいながら、実際は自分たちの権益を守るために問題を利用しているだけ。できるだけ多くの予算が取れるようにやらなくてもいいことばかりやっている。それが実体なのに役人たちはそれを悪いと思っていない。予算(税金)の3分の2は役所や組織の維持と人件費と書類づくり、メーカーへの支払に使われ、残りの3分の1くらいしか問題の処理そのものや住民や国民のために使われていないのではないでしょうか。
権力を持っている側は消耗しないと言われます。ごみ問題でも制度や仕組みが問題だらけでも、関係者はお仕事として粛々とやり続ける。一人の住民として、問題に直面せざるを得なくて「困った!」「これは変」となったとき、役所と交渉しなければならなくなったとき、「一対組織」という構図で立ち向かうことになる。こっちは無い袖振って、身銭を使って立ち向かう。相手は税金でいくらでも賄える。要するに、情報でも金でも非対称の世界に住民とか国民はいるのよね。
それを念頭において住民同士、反対する側の人間同士が、互いの足をひっぱらないで、行政や国や組織の仕組みと立ち向かって変えさせないと簡単にきりくずされちゃうから、気をつけてやろうと思っています。考え方が右でも左でも真ん中でも上でも下でも、その問題が「変」と思って互いに協力できるんだったら誰の力でも借りて、「無礼」な体制を変えたい。ばらばらな沢山の人がそれぞれのやり方で協力できればいい。」
――原発事故報道についてはどう思われましたか。
「3.11に大津波と大地震そして原発事故。その夜テレビで枝野官房長官の記者会見を見て、私は『政府や東電の言うことを聞いていたら殺されちゃう』と思いました。それまでは政府や国がおかしなことをしても『ああまたか』くらいでやり過ごせました。でも3.11でそういう世界は終わったと思いました。極限を超えてしまった、どこにも手本のない世界にいると思っています。情報収集のためにツイッターをフルに利用しました。身内に生後5ヶ月から5歳までの子供たちと赤ん坊が6人いるので必死でした。沢山の人達の発信に助けられました。直後は後藤さんや小出さん、田中光彦さん、早川由紀夫さん、@BB45_Coloradoさんたちにたどり着きました。
武田邦彦さんはリサイクルの嘘を書いた人で、内容は一理も二理もあるのですが、ゴミ問題では国は武田さんの言説を上手く利用したので、あまりいい印象を持っていませんでした。でも、今回の原発事故では誰よりも早く、あなたが自分と家族の身を守るために何をすべきか、事態の進展に沿って刻々必要な情報と助言をしてくださった。そのことに感謝しています。信頼できる情報は、根底のところで命が大切があると感じ取れました。とにかく助けられました。今も助けられています。3.11以後溢れ出た膨大な情報、味噌と糞が混じり合い、自分に何が必要か見極めつづけています」
「若い人たちには、とにかく体を守って守って、生き抜いていただきたい。ご自分の体をまず安全な場所において、そこからゆっくりゆっくり……。妊娠中の方、乳幼児子供たちを抱えたお母さんお父さんが無事に安全圏に行って暮らせますように。Twitterやネットの情報も玉石混淆で、ジェットコースターにのっている気分になります。希望も絶望もなく生きる日々が始まってしまった。危険を察知すれば本能スイッチが入って、最も無理のない動きと決断ができるはず。ご自分の中の根源的な力を頼んで生きれば、きっとうまくゆくと思います。『今の若いものは何をやっているんだ』なんて言われたって無視すればいいです。自分と自分の家族の身を守る動きはそれ自体が社会を変えることになります。それで十二分。何も特別なことをする必要はない。」
――生き抜くためにたくさんのことに取り組まなければならない時代になってしまいました。関東の人たちも最初は瓦礫問題に関心が高かったのですが、今はモニタリングや給食問題(福島県産野菜が公立学校の給食に使われていた)、汚泥、校庭や公園の除染問題など、取り組まなければいけない問題が多様化しています。
「そうして無能力感をあおるのでしょう。国際的な原子力マフィアが動いているという話もあります。わたしにはよくわかりません。とにかく地球上の誰も経験したことのない世界に今の日本人はいる。繰り返しますが、どこにもお手本がない。一人一人が最善手を自分で打って行くしかない。わたしやあなたがやることなすことがすべて後に続く人々の前例になってしまう。自分の生命力を信じて、本能スイッチを入れてそれに応じて動けばいいし動けるはず。社会を変革するとかいう以前に、生き延びてもらいたいと思います。」
「3.11後しばらくしてから瓦礫処理の問題が出てきました。膨大な量の瓦礫とそれに放射能汚染問題まで重なって。ああ、これで一廃(一般廃棄物)と産廃の壁が取り払われてしまうなと思いました。それを役人や関係者は狙っていたはず。災害処理にかこつけて、一廃と産廃の壁を取り払って、全国の自治体の一般家庭ゴミ用の焼却炉で処分するという流れに持っていこうとしています。産業界にとってみれば、国の補助金で作られ住民税で運営されている自治体の焼却炉で、本来全額自己負担の産廃が処分できれば、コスト削減になるわけです。さらに原発震災になってしまったことで、放射性廃棄物までが焼却されることになってしまっています。
わたしは燃やすのに反対ではない。ただ、ごみ問題をたった2年かじっただけなのに国や行政の発表するデータにはごまかしが多すぎる。だから今の焼却炉、過剰な不要技術の大型施設で危険がいっぱい。だから燃やして欲しくない。それだけ。本当に残念だし、悔しい。ゴミ処理行政がまっとうだったら、世界の2/3の焼却炉があるんだから、ばんばん燃やしたって安全だったわけで……。表向きは安心安全を謳っているけど実体は違うから、燃やしたら毒ガスが出たり、放射能がでるものは燃しては駄目。一廃と産廃の壁を取っ払ったって本当はぜんぜんかまわない。実際に最も効率よく安全にゴミや瓦礫が最適費用で処分されるのなら民間方式だって大歓迎。だけどこの国のゴミ処理の仕組みはそうなってない。だから最悪の事態のさらに上塗りはごめんこうむりたい。」
お話を聞かせてくれた@jerico4さん、ありがとうございました。
ごみ探偵団の過去のエントリーより。赤が国のレポートや学者のいい加減さを指摘した記事です。:
2010年2月10日水曜日
東京23区廃プラ焼却~これって変!!
2010年2月11日木曜日 「学習会」:池田こみちさんに会いました!!(3)
2010年2月11日木曜日 環境総合研究所サイト、今回の問題に関する青木氏掲載記事 と池田氏・鷹取氏「学習会」記事
2010年2月12日金曜日
「一組」って何?~八丈島「水海山」からごみ問題が始りました。
2010年2月12日金曜日
廃棄物資源循環学会セミナー「プラスチックごみ混合焼却処理と排ガス・環境への影響」~参加後の感想
「昨年の11月27日に廃棄物資源循環学会主催のセミナー「プラスチックごみ混合焼却処理と排ガス・環境への影響」に出席、そのあとで友人たちに送った感想です。また、この時に佐藤禮子さん、青木泰さんに初めてお会いしました。」
2010年2月12日金曜日
2009.11.28. 杉並清掃工場見学後の感慨と仕切り直し
2010年2月13日土曜日
ごみの焼却はなぜ危険なのか?
2010年3月5日金曜日
3月6日講演シンポジウム「23区廃プラ焼却と廃プラの今後」、いよいよ明日です!!
2010年3月10日水曜日
私的感想、講演シンポジウムに参加して
2010年3月20日土曜日
資料、2010/2/20瀬戸昌之氏【日の出の森・支える会 連続講座】焼却しないごみ処理ー生ごみ堆肥化を阻害するものー
2010年3月22日月曜日
私的感想、"garbage in, garbage out(ごみを入れたらごみしか出てこない)"~最終「報告書」を読んで
2010年4月25日日曜日
(英語)多読のおすすめ~「たねまき日記」から関連記事のご紹介
2010年4月30日金曜日
柳川喜郎著「襲われてー産廃の闇、自治の光」
2010年5月23日日曜日
感想~5/22 曽我部義明氏(マイエンザ=えひめAI=源流きらりの生みの親)の講演会に参加して
2010年5月30日日曜日
5/29、会田節子さん講演会(追記)
2010年8月15日日曜日
『なにがケインズを復活させたのか?』ロバート・スキデルスキー
2010年8月21日土曜日
真夏の夜の贈り物~「魔法の洗剤『源流きらり』」by 柳澤桂子先生
2010年9月25日土曜日
10月10日(日)説明会~八丈島「水海山」守る会、パタゴニア「ボイス・ユア・チョイス」に参加(東京・ゲートシティ大崎店)
2010年10月30日土曜日
水銀問題~昨日の記者会見のてんまつ~感想文
2010年2月10日水曜日
東京23区廃プラ焼却~これって変!!
2010年11月1日月曜日
水銀関係~資料「総合研究報告書」への疑問点
2010年11月22日月曜日
八丈島「水海山」ごみ処分場~つぶやき~守る会の長田さんに会って、坂巻先生の講演会に行って
2010年12月8日水曜日
感想:2010.11.19一組の水銀関係区民との対話集会に参加して;追記一組資料
2011年3月3日木曜日
山本節子さん
2011年3月14日月曜日
ドイツ在住の友人から届いたメール「危険です、どうか避難して下さい 緊急です!お願いですから真摯に聞いて下さい!!!」