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証言/焦点 3.11大震災
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焦点/危険区域外も住宅再建支援/岩手、宮城の市町村独自策

 東日本大震災の津波浸水域で災害危険区域から外れ、住宅の自力再建を迫られている被災者に、岩手、宮城の被災市町村が相次いで支援策を打ち出している。各自治体が生活再建と並んで目指すのは、深刻な人口流出を食い止めることだ。定住促進に向け、独自色の創出に腐心している。(馬場崇)

◎人口流出歯止め狙う

<市外なら制限>
 宮城県は2月、国の震災復興特別交付税などを財源に総額728億円の交付金制度を創設。災害危険区域外の被災者の住宅再建に独自支援策を講じる15市町に配分した。配分額は表の通り。
 岩手県は住宅被害がほとんどなかった普代村を除く沿岸11市町村に、約214億円の配分を決定(内訳は非公表)。福島県は沿岸10市町に対する配分額を調整中だ。
 宮城県内の各市町は県の交付金制度をベースに、被災者の定住を促す独自支援に知恵を絞る。
 震災前と比べた人口減少率が県内最大の22%に上る女川町は約17億円の配分を受けた。町内で土地を買い、自宅を新築する被災者への支給額を、従来の200万円から1.5倍の300万円に引き上げた。
 町復興推進課は「居住する市町の財政力にかかわらず、同じ条件の被災者が同じように支援できるようになった」と胸をなで下ろす。
 町内での住宅再建を期待するが、ジレンマも抱える。町外に移転する世帯に最大200万円のローン利子補給を認めたことが、流出につながる状況も予想されるからだ。
 町は「被災者にはそれぞれの事情がある。町を出たからといって支援をゼロにするわけにはいかない」と話す。
 気仙沼市は、市外で自宅を再建した被災者の支援に一定の制限を設けた。最大100万円の利子補給か上限50万円の補助を行うが、市外への移転時期が昨年7月の危険区域指定後の場合、支援を適用しない。
 これにより、市外へ移転した支援対象は約120世帯にとどまり、市震災復興企画課は「人口流出を最小限に食い止められている」とみている。

<転入呼び水に>
 740人以上の住民が津波で犠牲になった名取市閖上地区。市は、災害危険区域外の貞山堀西側に位置する居住区域(閖上1〜2丁目など)の住民に、住宅再建の利子補給などとして最大400万円を支給する考えだ。
 市は現地再建を目指しており、同地区内で住宅を再建する被災者に上限100万円を上乗せする優遇策も打ち出した。
 しかし、市が4〜5月に実施した個別面談では、同地区に戻る意向を示した住民は25%にとどまった。移転希望の40代男性は「金で気持ちが変わることはない」と話すなど、市の狙い通りに進まない現実もある。
 被災者の転入を呼び込む動きも出てきた。東松島市は市外の浸水域から市内に移り住む世帯に住宅の新築・購入費として100万円を助成する。市生活再建支援課は「市外から来てくれる人も支援することで定住化を図れる」と狙いを語る。


2013年06月03日月曜日

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