宮城のニュース

震災の教訓積み上げ 岩沼の人工丘第1号9日完成

完成が近づく「千年希望の丘」の第1号。階段や柵、藤棚なども設ける=岩沼市下野郷

 宮城県岩沼市が東日本大震災で被災した沿岸部で進める「千年希望の丘」事業の第1号となる人工丘が9日、完成する。震災廃棄物を埋め立てた丘が避難場所になり、津波の勢いを失わせる効果もあるという。市は「震災で得た数々の教訓を、1000年後の子どもたちに残す歴史的プロジェクト」として力を注ぐ。(岩沼支局・成田浩二)

 計画では、玉浦西地区への集団移転跡地の沿岸部約10キロで高さ約10メートル、直径70〜100メートルの人工丘を15基程度並べる。このうち2基は既設の丘を活用。丘の間は高さ約3メートルの堤防でつなぎ、さまざまな樹木を植える。
 「いざという時、逃げ遅れた方々の避難場所になる」と市復興整備課は説明する。仮に今回の震災と同規模(7.2メートル)の津波が襲ったとしても、丘が勢いを減衰し、避難時間を確保する役割も果たすと期待する。
 震災廃棄物の処理を同時に進める狙いから、丘の造成には廃棄物や津波堆積土を利用する。平時は震災の記憶をつなぐメモリアル公園となり、防災教育にも生かす。
 用地取得費を含む総事業費は約45億円。第1号は寄付金約6000万円を元に造成した。国からは6基分の復興交付金が認められ、第5次配分で本年度の事業費5億6300万円が計上された。
 既設の2基を合わせ、2015年度末までに計9基が並ぶ見通しがついた。ただ、残り6基については財源のめどが立っていない。
 市は復興交付金の拡充を望むが、「今のところ壁は厚い」(市復興整備課)。国内外に寄付金を募るほか、それぞれの丘にネーミングライツ(命名権)の手法を導入して資金を捻出することも検討している。
 9日は現地で「メモリアル樹望(きぼう)式」を開催。市民と3万本の苗木を植え、事業の意義の浸透を図る。


◎難航した事業認可市/「復興交付金柔軟運用を」

 新規に造成する13基の人工丘のうち、6基分の復興交付金が認められたのは3月だった。市復興整備課は「ここまでこぎ着けるのも容易ではなかった」と明かす。
 国は集団移転跡地で行う都市公園事業について、津波を減衰させる「津波防災緑地」か、避難地機能などを持つ「防災公園」のいずれかに合致することを復興交付金事業の要件としている。
 市は当初、千年希望の丘を津波防災緑地と位置付けたが、海岸堤防やかさ上げ道路などの津波対策と目的が重複するとして、事業認可が見送られてきた。
 このため市は事業目的を防災公園に切り替えた。一帯には工業団地や寺院などがあり、昼間人口は1750人と推計される。津波発生時に1割の人が逃げ遅れると仮定し、175人が登れる丘が必要−。この理屈で6基分が認められたという。
 井口経明市長は「丘の造成にはがれき処理やメモリアル公園などさまざまな意味がある。個別の目的でなく、総合的な趣旨を酌んで対応してほしい」と復興交付金の柔軟な運用を求めている。


2013年06月02日日曜日


Ads by Google

△先頭に戻る

新着情報
»一覧
特集
»一覧
  • 47NEWS