電子書籍:「キンドル」国内発売…値下げ競争に拍車
2012年11月19日
米インターネット通販大手のアマゾンは19日、電子書籍専用端末「キンドル」を国内発売した。迎え撃つ国内勢がキンドルを意識して値下げに踏み切るなか、アマゾンも発売前から1機種について500円の値下げを表明するなど価格競争も激化。世界シェア6割の「本命」登場が、国内書籍市場の活性化につながるか注目される。一方、アマゾンを家電販売のライバルと位置づける家電量販店の中には、キンドルを扱わない動きも出ている。【大久保陽一、岡田悟】
今回発売したキンドルは、白黒画面の「ペーパーホワイト」と呼ばれるタイプ。初日出荷分はすべて売り切れで、アマゾンのサイトで注文すると「来年1月12日に発送される予定」(同社)という品薄状態だ。
国内勢も新機種を相次ぎ投入。今月7日には凸版印刷系の「ブックライブ」が、専用端末「リディオ」(定価8480円)を、12月に三省堂書店の店頭やネット通販で発売すると発表した。ほぼ全国をカバーする高速無線通信「WiMAX(ワイマックス)」対応で、無線LAN環境にない所でも通信料不要で使用できる。電子書籍は現時点で国内最多の約9万5000点をそろえる。
端末の低価格化も加速している。楽天は7月に「コボタッチ」(7980円)を発売。アマゾンが10月にキンドル発売を発表すると、これに対抗する形で楽天は6980円に値下げ。これを受け、アマゾンも発売2機種のうち、無線LANのみに対応する機種を当初の価格から500円値下げし、7980円とすると発表した。ソニーも昨年10月に2万円前後で発売した端末を、今年9月に8980円程度とするなど大幅な値下げに踏み切っている。
現在、各社の主要機器の価格は1万円未満が相場。アマゾンのキンドルデバイス事業部バイスプレジデント、デーブ・リンプ氏は「端末の販売で利益を上げようとは思っていない。長期的にコンテンツを利用してもらうことで、事業が成り立てばいい」と語る。
一方、店頭販売が20日に始まるキンドルについて大手家電量販店の対応は分かれる。販売しないのはヨドバシカメラで、最大手のヤマダ電機のほか、エディオンも当面見合わせる方向だ。エディオンは「時期は未定」ながら「いずれ販売する」という。アマゾンはネット通販で家電製品を大量に扱っており、「商売敵(がたき)」の端末は扱わないとの判断をした社もあったようだ。一方、ケーズホールディングスやビックカメラ、上新電機は20日から販売する。
◇電子書籍端末◇
紙に印刷された本や雑誌を電子データ化した電子書籍を読むための機器。専用端末では米アマゾンが07年に米国で初代機を発売した「キンドル」が世界的に普及が進んでいる。ソニーの「リーダー」も日米で販売実績がある。端末には通常、1000冊以上保存できる。紙の本のページをめくるようにして切り替わる画面を読み進む。米アップルの「iPad(アイパッド)」に代表されるタブレット端末やスマートフォン(多機能携帯電話)でも電子書籍は読める。電子書籍を購入するには、これらの端末からインターネットの販売サイトに接続しダウンロードする。カード決済が一般的で、ダウンロードにかかる時間は1冊あたり1分程度のことが多い。