「笑い」と「嗤い」は違う—ネットのユーモアにみる弱者の批判根性

2013/06/04


ベストセラー本「困ってるひと」の著者である、大野更紗さんの対談まとめ本。ぎゅっと詰まったコストパフォーマンスの良い一冊です。気になった部分をピックアップしてご紹介。


「笑い」と「嗤い」は違う

中島岳志さんとの対談で出ている、「笑い」と「嗤い」についての話が興味深かったです。

僕も「わらい」についてよく考えますが、「わらい」にも「笑う」と「嗤う」の二つの漢字があるでしょう。いま、日本は後者の「嗤い」、他者をさげすんだり、敵意を見せる「嗤い」になってしまっているのではないかと感じます。そういう「嗤い」に対してちゃんとした「笑い」を突きつけなくてはいけない。

「笑い」には人を麻痺させる瞬間があります。一気に共感させてしまう力と言うのかな。(中略)これはテクニックとして使うと有効だけれど、ファシズム的に使うとヤバいなと思うことがあります。「笑い」には心をほぐすがゆえにコミットしすぎる部分があって、それが嘲笑の「嗤い」に持っていかれると非常に怖い。

あぁ、ずっともやもやと感じていたことが、かなりスッキリしました。ぼくはユーモアを疑っているのですが、それは「嗤い」への嫌悪感が背後にあるがためのようです。「わらい」は基本的にすばらしいものですが、それが他者を攻撃する道具として使われるとき、強烈な暴力に変わるのです。


「嗤いと暴力」については、切込隊長との対話のなかでも触れたテーマです(「「人を笑い者にする」天才、やまもといちろう氏」)。別段蒸し返すつもりはありませんが、こういう記事とかは完全に「嗤い」だと思うんですがいかがでしょうかね。

イケダハヤト師が不快がられるのは、読まなければいいのに思わず釣られてしまって読んだ結果、クソの役にも立たない質の低い考察を読まされイラッときただけでなく時間の無駄になったという読み手が自分自身を責める心にある。つまり、精神修養が至らない自分に対する怒りなのだ。イケダハヤト師の文章を苦もなく流し読めるようになってこそ、真の知性なのではないかと。

イケダハヤト師型炎上をどう表現するべきか?: やまもといちろうBLOG(ブログ)

これを見て、彼のファンたちは「嗤って」いるわけです。ぼくは、このイナゴの群れたちの微弱な暴力の集積と、それを操るイナゴの王様に、生理的な嫌悪感を抱きます。(強がりのように聞こえるかもしれませんが、自分が嗤われていることはどうでもいいです。メディア運営者的には美味しいことなので。)


切込氏にかぎらず、この種の「嗤い」はネット空間に充満しています。別に晒し上げませんが、ぼくのことを攻撃する人たちは、みなさん「嗤い」という手段を使っているケースが多いです。


では、人が「嗤い」に頼るのは、なぜなのでしょうか?それは、彼らが「弱い」からです。

中島さんが語るように、「笑いには、人を麻痺させる瞬間があります」。正々堂々と戦っても勝つことができない弱者たちは、相手を攻撃するために、「嗤い」を取り入れます。「嗤い」によって、自分のことばに注目が集まり、攻撃性が高まり、しかもそれでいて、「ふざけているだけ」という逃げ道が用意されることを知っているからです。

攻撃力も高まって、逃げ道もできる。こんなにおいしい道はなかなかありません。…が、そこには覚悟がないので、良識ある人は彼らの攻撃に取り合うこともありません。ぼくは「嗤い」を利用した言説は、それだけで言及するに値しないと考えています。発言主に覚悟はありませんので、逃げられるのがオチですしね。


十分に強い人間は、「嗤い」に頼ることの狡さを知っているので、決してそれを利用しません。もしも使うことがあったとしても、それは非力を覆すためのツールとして使うにすぎません。「嗤い」はそれを使う自分にも中毒をもたらすので、極力使うべきでもありません。


みなさんはどうぞ、「嗤い」に加担するようなことはないようにしてください。あれは心の隙間にスッと入り込む、恐ろしい呪詛です。振り払ってください。

やるべきことは、努めて「笑い」を提供することです。他者攻撃ではなく、純粋に、壁を打ち破るような笑顔をもたらす行為です。ぼくは苦手なので、基本的にみなさまにお任せします。


その他、刺激的な対談が多数収録されています。ぜひぜひ手に取ってみてください。読破するのに4〜5時間は掛かるボリューム満点な本です。

「困ってる人」は、まさにユーモアの力を感じさせる一冊。合わせてぜひ。こちらはサクッと読めます。


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