同白書のデータからは、その他にも「若者や30代女性の間で社会貢献がブームになっているように見えるが、実際に寄付しているのは高齢者」とか「(寄付するのは)他人や社会のためであり、問題の解決に役立ちたいから寄付している人は、寄付者全体の18.4%しかいない(震災以外の寄付)」など、意外な事実がいくつも見えてくる。日本の生活者の社会貢献意識、志向の実態が見えるので、NPOやNGOのスタッフ、ファンドレイジング担当者だけでなく、企業のCSR担当者やマーケティング担当者にもぜひ読んでいただきたい。
ちなみに、イギリスのCharity Aid Foundationの世界寄付指数(寄付やボランティアをした人の割合を調査して出された指数)では、世界153ヵ国中、日本は105位である。前回の第81回記事で「日本の社員のやる気は世界最低」ということを伝えたが、寄付指数でもほぼ同様の傾向。東アジアでは、中国の140位に次いで、下から2番目である。
日本に「社会的投資としての寄付」
を増やすためには?
ところで、社会セクターで常識となりつつあるのが「寄付とは社会的投資である」という考え方である。社会問題の解決という社会的リターンを得るための投資、それが寄付という考え方である。この考え方に則れば、日本の寄付も、社会貢献分野への寄付額の割合がもっと増えるべきだろうし、「社会の問題解決のために役立ちたいから寄付する人」の比率ももっと高まるべきである。
ちなみに分野別で見た場合、イギリスでは「医学研究」への寄付が最も多い。これは、寄付というものへのイギリス人のリテラシーの高さの表れではないかと思う。日本でも、iPS細胞の山中教授のような優れた研究者や、世界を救うテクノロジーも技術者も数多い。そのような人たち、技術の開発研究にもっと寄付が集まるようになればいいと思う。
こうした「社会的投資」としての寄付をする人と寄付額を増やす。そのためには寄付というものへのリテラシー向上が必要となるが、それがファンドレイザーという人たちの役割なのだろう。
今年も日本のファンドレイザーの祭典「ファンドレイジング・日本2013」が開催される。最先端のファンドレイジング事例も多数、知ることができる。ファンドレイジングの成功事例を知ることは、日本の生活者の社会意識がどこに向かっているのかを知ることにつながる。社会貢献の新しい地平のヒントを与えてくれる。社会貢献を志す人たちは、ぜひこのイベントに参加してほしい。
ファンドレイジング・日本2013の詳細はこちらから。