CSR3.0は別名「儲かるCSR」であると、発売当初からセミナーや講演では言っていたが、当時はこの考え方も賛否両論だった。社会起業家フォーラム代表の田坂広志氏などは「けしからん!」と、経団連セミナーなどで激しく批判した。「CSRは企業の利益などとは、まったく別次元のものである」というわけだ。しかし、今年元日の「日経MJ」に掲載されたビジネスパーソンを対象としたアンケートにより、「企業は利益を度外視してもCSRをやるべきだ」という考え方を支持する人は、たったの3%しかいないことがわかった。また、「日経エコロジー」2012年4月号では「儲かるCSR」特集が組まれた。こんな特集が堂々と組まれるような時代になったわけである。
CSR4.0に向けた方向性①:
CSR活動のスピンアウト
この「CSR3.0」に関しては、当初から「次の4.0はありますか?」という質問をよくされていた。正直に言って、当時は筆者自身もよく分からなかったので「もしかしたら3.0は最終形かもね」という回答をしていた。しかし不思議なもので、それから2年たったいま、次の方向性が見えてきたように思える。まだハッキリとは見えていないが、2つの方向性があり、どちらかの方向性に行くのではないかと思っている。あくまでもジャスト・アイデアの段階だが、本書の増補版のつもりで2つの方向性を示しておこう。
その前に、「CSRは社会的インパクトを最大化することが最重要であることを、まず大前提に考えるべきだ」と言っておく。この前提に立ったうえで、ひとつ目の方向性としては、『CSR活動のスピンアウト』がある。
現状では、CSR活動はCSR部が行なっている。正確に言えば、CSR部の部員が行なっている。場合によっては、宣伝部やマーケティング部がコーズ・マーケティングを行なう場合もある(コーズ・マーケティングがCSRか? という議論もあるが、CSR3.0の考え方からはCSRである)。いずれにせよ社員が外部のNPO・NGOと協力して行なうというのがスタンダードなやり方だ。
しかし、この方法論では、さらに大きなインパクトを求めるには、いずれリソースが足りなくなる。企業のCSR予算には限りがあり、NPOの力にも限界があるからだ。その限界を打ち破るには、なるべく多くの人たちをプロジェクトに巻き込む必要がある。筆者が常に企業に提案しているのは、「社外CSR部員の採用」だ。高校生・大学生から社会人まで、自社のCSR活動に関心があり、参加したいという人は誰でもその活動に参加できる仕組みを作る。そのことで、CSR活動は社会活動として大きくなる。
また、CSRプロジェクトは派生プロジェクトを生むことがある。たとえば、ある企業が教育支援NGO「Room to Read(以下RTR)」と協働して、途上国の少女奨学金プロジェクトを始めたとする。しかし、途上国の女性支援という意味では、本当は高等教育や職業訓練までが必要だ。しかし、RTRは初等教育に特化しているのでこの部分はプロジェクトとしては実施できない。そこで、高等教育、職業訓練をテーマとした別プロジェクトを立ち上げる必要が出てくる。この別プロジェクトは、RTRとは別のNGOと組んで行なうことも可能だが、これまでの経験を活かし、自らNGOを立ち上げることもできる。