残念ながら彼女はそれが最後の誕生日となり、昨年のクリスマスイブに、看護師仲間と弟さんに囲まれて亡くなりました。生前に献体を申し込んでいて、お世話になった人への手紙も書き残していた。最期まで自分の生き方を貫き、本当に立派でした」
加藤さんは、石飛医師にこう言ったという。「がんが完全に治って、元気にまた日常生活が送れるわけではない。もうあと僅かなのに自分の生き方を否定されるのはつらいんです。医者は終末期の患者に『絶対こうしなければならない』と押しつけないでほしい。これは、私の遺言です。先生、このことを世の中の医者に伝えてください」と。
治療を拒否した結果、自分の意志で穏やかな最期を迎えられる患者がいる一方、わずかな可能性にかけて治療に執着し続けた結果、逆に苦しみながら死を迎える人もいる。
進行性の肺がんと診断された会社役員の中村益三さん(仮名・享年65)が、そうだった。日の出ヶ丘病院のホスピス医・小野寺時夫医師がその様子を語る。
「最初に入院した病院で、もう手術は無理だし、このがんには抗がん剤も効かないので、治療はせず元気なうちにやりたいことをやるのが一番いいとアドバイスされたのですが、中村さんはインターネットで肺がんの名医を探し出し、そこで抗がん剤治療を始めたのです。効果が思わしくないということで抗がん剤を何度か変えて治療を続けました。
体調はどんどん悪化し、4ヵ月後には脊椎骨転移で歩けなくなり、5ヵ月目に右手がしびれ、会話ができなくなって脳転移と判明。私のところに来られたときは意識も混濁しており、2週間ほどで亡くなりました。
奥さんと約束していた南米旅行も果たせず、抗がん剤治療で苦しみ抜いた末に死を迎えたのです」
もちろん、何とか助かりたいという一念から、最後まで治療に専念した中村さんの選択を否定することは誰にもできない。とことんまで治療にこだわること自体が、その人の生きがいになっていることもある。
治療するか、しないか。それは個人個人の生き方、あるいは死に方をどう考えるかに委ねられる。前出の樋野医師は、治療を拒否してもよい最期を迎えられるかどうかを決めるのは、患者の「覚悟」だと語る。
「がん治療をしないと決めて幸せな最期を迎える人と、そうでない人の最大の違いは『覚悟』の有無です。
覚悟をもってがんを受け入れた人は後悔しません。自分はもう決めたのだから、大丈夫だと言い切れる。そういう人は、たとえ寝たきりであっても、他人を感化します。家族のため、誰かのために何かができる。勇気を与えることができる。そのときその人は、自分の社会的な地位や役割などを超越して、自分の存在自体に役割があるのだという人間観の転換ができている。そういう人は、幸せな人生を遂げられるのです」
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