前立腺がんは骨への転移があり、進行するとやはり背中に痛みが現れます。肺がんの場合はがんが気管を圧迫し、空気が通らなくなることで苦しくなる。末期の呼吸困難はこれです。消化器系のがんでは腸閉塞になって食べ物がつかえ、苦痛とともに食欲が衰えて全身衰弱していきます」
骨への転移が進行すると、かなり脆くなりちょっとした衝撃で骨折してしまう。骨折を機に寝たきりとなり、衰弱が進むケースは多い。がんが転移して体中の臓器を蝕んでいくと、食べ物も口から受け入れられなくなってやせ衰える。結果、臓器不全となって死に至るのだ。
一方、進行したがんが原因で起こる痛みは、モルヒネなどを使った緩和ケアで「85%程度までは抑えられる」(前出・鈴木医師)。つまり、治療を拒否して症状が進んだとしても、「健やかに生き、安らかに逝く」ことは可能なのだ。
訪問看護師だった40代の加藤真弓さん(仮名)は、まさにその道を選んで逝った。
彼女を襲ったのは、胃がんの中でもとくにたちの悪いスキルス性胃がん。胃の違和感に気づいて開腹手術をしたところ、お腹の中にがんが散らばった状態で発見された。もはや手術で取りきれる段階ではなく、がんを切除できないままお腹を閉じることになった。
主治医は加藤さんに「延命措置があるのなら、やることが当然。治療しないのはあなたの罪悪だ」とまで言い、抗がん剤治療を強く勧めた。だが、加藤さんはそれをきっぱりと断った。
「がん治療で仕事ができなくなるくらいなら、何も治療せず仕事を全うしたい」—これがその理由だった。
居酒屋にも行ける
加藤さんと親しく接してきた医師で、『こうして死ねたら悔いはない』などの著書もある石飛幸三氏が思い出を語る。
「加藤さんは、仕事で終末期の方と接する中で、がんも自分の一部なのだから、一心同体のものとして受け入れていくしかないと考えていたようです。抗がん剤などでがんを叩けば、あるいは延命できるかもしれない。でもそうしたら副作用で衰えて、人の役に立つことができなくなる。
彼女にとっての"生きる意味"は看護を通して世の中の役に立つことだから、看護の仕事が続けられなくなったら、仮に延命しても、生き続ける意味がなくなってしまうと言うのです」
宣告された余命は3~4ヵ月。けれども、加藤さんは2年以上生き、できる限りの間、訪問看護の仕事を続けた。
石飛医師は、昨年加藤さんの誕生会に招かれ、そこでこんな光景を目にした。
「居酒屋で開かれた誕生会では、彼女は中心静脈栄養の管をつけていて、何も飲めず食べられない状態でした。でも友人たちに囲まれて快活に笑い、おしゃべりしており、その姿はとてもすがすがしいものでした。
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