【桜井紀雄の劇的半島、熱烈大陸】
安倍晋三首相が試乗した自衛隊練習機の番号「731」は「旧日本軍で生体実験をした731部隊を意識したもの」−。日本人からすれば突拍子もない非難は「日本への原爆投下は神の懲罰だ」との常軌を逸したコラムまで生んだ。これら韓国メディアにあふれる度を超した論調を見ていくと、共通した誤解が根底にあることに気づく。日本に対しては見境なく投げつけられる非難の背景にはいったい何があるのか。
■「右傾化は選挙目当て」?
韓国メディアがそろってやり玉に挙げたのが、安倍首相が被災地の宮城県東松島市の航空自衛隊基地を訪れた際、試乗した曲芸飛行チーム「ブルーインパルス」の練習機の機体番号が「731」だったことだ。
「生体実験をした」として中韓で悪名高い「731部隊」を連想する機体に乗り、「親指まで立てた」と非難の大合唱が巻き起こった。
有力紙の東亜日報は「安倍の計算された“数字政治”だ」と確信犯であることを強調し、「安倍は70%台の高い支持率を基盤に7月の参院選で勝利するために右傾化の火をつけている」と論じた。
別の有力紙、中央日報の日曜版コラムも「731」の機体に試乗したことは偶然ではないとの見方を示し、「日本の右派は敏感な問題を順に取り出し、相手の反発の程度を見ながら『どこまで可能か』探ろうとしている」「7月の参院選で勝って改憲を達成するという戦略的な目標のために戦術は問わない勢いだ」と記した。
そもそも「731部隊」の連想はこじつけ以外の何ものでもないが、この「右傾化は選挙目当てだ」とみる単純化は韓国メディア全体に散見される誤解の最たるものの一つだ。
安倍首相の改憲論など国のあり方を問い直す姿勢は第1次安倍政権のころから一貫したもので、日本では逆に選挙を控え、抑制すらしていると理解されている。それなのに、韓国では単なるポピュリズムにおとしめられている。