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【社会】

タマゾン ミドリガメ席巻

ブロックの上でひしめき合うカメ=川崎市多摩区の多摩川で

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 川崎市多摩区の多摩川で、外来種のミドリガメが急増している。捨てられたペットが繁殖したとみられ、すでに在来種を駆逐した可能性もある一方、国などの対策は遅れている。見かねた地元のNPOが2日、ボランティアで捕獲に乗り出す。 (栗原淳)

 「今年春ごろから急に増えだした」と話すのは、NPO法人「おさかなポストの会」創設者の山崎充哲(みつあき)さん(54)。特に、河口から二十六キロの二ケ領上河原堰(にかりょうかみがわらぜき)付近では、数十匹のカメが岸辺のブロックや中州で折り重なるように甲羅干しする姿が見られる。

 山崎さんは、南米アマゾン川にすむアロワナなどの観賞魚が多摩川でも泳ぐようになったと知り、「タマゾン川」と名付けたことがある。

 二〇〇五年からは、飼い主が手放した外来の魚やカメを引き取り、新たな飼い主に引き渡す「おさかなポスト」の活動を続けてきた。市から管理を委ねられた多摩川近くのいけすに、外来種を一時保管。学校など新たな飼い主を探すことで外来種を殺処分せず、在来種を守りたいと考えた。

 これまでポストに持ち込まれたカメは、ほとんどがミドリガメで、五十匹に上った月もあった。新たな飼い主探しに奔走したが、いけすの許容量をオーバー。四月中旬にカメの受け入れを中止した。現在も二百二十匹近くがいけすに残る。

 山崎さんは、受け入れ中止でカメの遺棄が増えるのではと心配する。多摩川では一九七〇年代の水質悪化と、ミドリガメの増加で、在来種のイシガメはほとんど姿を消したという。カメを遺棄しないよう、飼い主への啓発などに「行政が責任を持って取り組んでほしい」と訴える。

 環境省によると、ミドリガメとその亜種は、爬虫(はちゅう)類の中で最も多い年数十万〜百万匹が、ペット用として輸入される。成長すると攻撃的になって飼いにくくなるため、手放す人が後を絶たないという。

 繁殖力が強く、汚れた水質にも適応するため、同省は「要注意外来生物」に指定し、生態系に悪影響を及ぼすと警告している。だが、法規制はこれからという段階だ。

 動物愛護法が改正され、九月からは爬虫類の対面販売が義務付けられる。生態の特徴や飼育方法などを飼い主に説明することが必須になり、ネット販売は禁止に。縁日などで売りさばくこともできなくなる。

 筑波大の吉田正人教授(保全生態学)はそれでも、輸入や販売、飼育が原則禁止のカミツキガメと比べ、ミドリガメの対策は遅れていると指摘する。「安易な輸入が横行しており、総量を制限するなど、入り口での対策が必要だ」と話す。

<ミドリガメ> 正式な名称はミシシッピアカミミガメ。米南部からメキシコ北東部の国境地帯が原産で、成長すると甲羅の長さが30センチ近くになる。雑食性で水草や小魚のほか、他のカメ類の卵なども食べる。1950年代からペット用として輸入が始まり、遺棄されたものが全国に分布。寿命は50〜100年と長く、一度に10〜20個の卵を産む。

 

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