鉱工業生産は予想超上昇、安倍円安で自動車好調-都物価プラスに (1)
5月31日(ブルームバーグ):4月の鉱工業生産指数は前月比で1.7%上昇 と市場予想を上回るプラスになった。安倍晋三首相の経済政策で円安が進む中、自動車の生産が伸びて全体の指数を押し上げた。
経済産業省が31日発表した4月の鉱工業生産指数(季節調整済み、2005年=100)は91.9と5カ月連続で上昇した。電子部品や精密機械も伸びた。出荷指数は同1.1%上昇、在庫指数は0.6%上昇。経産省は「生産は緩やかな持ち直しの動きがみられる」との基調判断を維持した。ブルームバーグ調査の予想中央値は0.6%のプラスだった。
アベノミクスで円安が進行、自動車業界の輸出環境は好転している。円安と北米需要増で普通乗用車の生産が、国内需要増で小型乗用車の生産が伸びた。自動車を含む輸送機械工業は12%上昇と指数をけん引、メモリーを含む電子部品・デバイス工業も2.3%プラスだった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石島利浩、佐治信行両エコノミストは鉱工業生産について「全体は持ち直しつつあるが、伸びは緩やかになるとの見方に変更はない」とリポートに記した。背景として輸送機械工業の生産が予想以上に伸びた反動が出る、スマートフォン向け需要が回復している電子部品・デバイス工業も在庫率が2けた上昇に転じて生産調整の可能性がある、といったことを示した。
先行きの生産動向を示す製造工業生産予測指数は、5月が前月比横ばい、6月は同1.4%低下が見込まれている。この指数を前提とすると4-6月期の指数は前期比2.0%上昇と2期連続のプラスになる。
4年強ぶり上昇、東京都物価総務省が31日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除くコア指数が前年同月比で0.4%低下した。6カ月連続の前年割れ。前年同時期に石油製品の値上がりや調査銘柄の変更で一部耐久消費財が上昇した反動が出ているが、こうした要因が徐々にはく落することで年央にはプラスに転換するとみられている。
先行指数とされる5月の東京都区部CPI(中旬のコア速報)は0.1%上昇した。2009年3月以来4年2カ月ぶりのプラス。ブルームバーグ・ニュースがまとめた予想中央値は全国が0.4%低下、都区部が0.2%低下。前月は全国が0.5%低下、都区部が0.3%低下だった。
日本銀行は23日公表した金融経済月報で、景気は「持ち直しつつある」として、前月の「下げ止まっており、持ち直しに向かう動きもみられている」から上方修正した。コアCPI前年比も「当面、マイナス幅を縮小した後、次第にプラスに転じていく」に判断を引き上げた。予想物価上昇率についても「上昇を示唆する指標がみられる」と指摘した。
今後の物価石島、佐治両エコノミストは、5月の全国CPIについて、東京都区部の5月のCPIを考慮すると「マイナス幅はもう一段と縮小する見通し」と予想した。同時に消費支出は低水準で需要サイドからの物価上昇のスピードは遅いとして「日銀の物価目標2%の達成には時間がかかる」と付け加えた。
RBS証券の西岡純子チーフエコノミストは、コアCPIの前年比について「6月にも物価はプラス圏に浮上すると見られるが、目先は物価の上振れリスクの方が高い」と統計発表前のリポートで述べている。
厚生労働省が31日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.03ポイント上昇の0.89倍で2カ月連続で改善した。総務省が31日発表した4月の完全失業率は4.1%と前月と同じだった。
同じく総務省が発表した4月の家計調査では、2人以上の世帯の実質消費支出は前年同月比で1.5%増加、4カ月連続のプラスになった。
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更新日時: 2013/05/31 16:01 JST