在日朝鮮人の「特権」剥奪を目指す、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)をはじめとする差別排外主義扇動団体は、毎週末、各地で街宣活動を繰り広げている。彼らの情宣活動に密着し、在特会会長への突撃インタビューを試みた。(ラジオフォーラム リ・シネ)
在特会会長の桜井誠氏 2月JR東神奈川駅前にて 写真提供小林ユウジさん |
◇桜井誠会長が神戸に
5月5日、神戸・三宮で、排外主義団体による街頭宣伝、「三ノ宮定例街宣 『韓国、北朝鮮への幻想的迎合を捨てろ!我々日本人は冷静に韓国朝鮮人の正体を知ろう!!』」が行われた。この街宣には、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」の桜井誠会長も参加すると聞き、私は現地の三宮センター街東口まで足を運んだ。
桜井会長に先立ち、何人かの弁士が登場した。彼らの口からは、「在日コリアンが戦後暴動を起こした」、「パチンコマネーが北朝鮮に送金されている」などといった、お決まりの主張が繰り返された。
その後、遅れて桜井会長が到着。参加者らと打ち合わせを済ませた後、マイクを握った。
「この街宣をやってる途中に邪魔した馬鹿が今、兵庫県警にひっぱられた。この国には表現の自由がある。きちんと許可取ってやってる分には、街宣を邪魔されるいわれはない。逮捕されて楽しいか、この馬鹿たれが」
自己紹介も挨拶も無く、いきなりヒートアップした調子で抗議の声をあげた。周囲はあっけにとられ、何が起こったのかと桜井会長に一気に注目が集まる。「つかみ」はOK、やっぱりこういったパフォーマンスは上手いなと感じた。
その後、桜井会長による5分間の街宣が行われたが、最初の2分20秒は私への罵詈雑言に終始した。最近は私の顔をプデチゲ(韓国の鍋料理)のようだと罵倒するのがお気に入りのようだが、あいにくプデチゲは美味しい。とはいいつつ、街頭であれだけ罵倒されると、しばらくは眠れないほど暗鬱とした気持ちになる。
「韓国人と話せばわかるというのは間違い、分かりあえるわけがない」
「パク・クネ大統領が千年反日、千年間日本をうらみ続けるといった。天皇陛下を侮辱するなど、そんな国と仲良くできるわけがない」
「北朝鮮が日本に対して核ミサイルを撃ち込むといったが、在日の中に朝鮮総連を通じて抗議したものはいない」
「そんな国とは国交断絶あるのみ!」
弁士のすべての演説の時間を計っていたが、桜井会長だけが罵声も含め、こういった内容を5分きっちりで語った。人々の憎悪をあおるのが彼の仕事だ。その実践的舞台である街宣の場に備え、練習に練習を重ね、準備を整えているに違いない。
3月大阪鶴橋駅前で情宣活動を行う在特会ら差別排外主義グループ 撮影 石丸次郎 |
◇在特会らの活動は今後どうなっていくのか
この日、在特会らと近しい愛国矜持会代表の竹井信一氏から話を伺った。
私は2月からこれまで、差別排外デモについて、大阪・東京の反対行動参加者を始め、京都朝鮮学校襲撃事件の関係者、地元の人、在特会や行動する保守系の人など、200人以上に話を聞いた。
悲しいけれど、多くの人が現在の状況について、「差別を育てる土壌が日本にある以上、在特会的なものはなくならないのではないか」、「死ね、殺せと言わなければいいと思っているだけ。(逮捕者が出たことで)参加者が減ったのは、逆風が収まるまで大人しくしているだけで、根本的なところは変わってないのでは」と答えた。
また、「なくしていかなければいけないと思うが、本来それは、日本社会と日本人の仕事ではないか」と答えた在日コリアンの保護者もいた。
こうした悲観的、後ろ向きな意見が多数を占める中、竹井氏の回答は私に希望を与えるものだった。
「今がピーク、あとは何らかの形で(在日コリアン側と)歩み寄っていく。それを今、僕も考えている。歩み寄るというか、ほんまに仲良くせなアカンと思うんですよ、仲良くできる範囲で。その仲良くできる範囲を今、僕は探している。個人的な考えだけれども。中にはそんなことはできないという人もいるが、それをまとめる人が必要。(お互いの団体に)そういう方がいないので、そういった人が出てくれば(差別排外主義の活動は)なくなると思いますよ」
在特会と近い立場の人から、こういった意見が出たことに驚くとともに、光が見えたようにも感じた。
その一方で、竹井氏の回答には疑問も残る。「お互いに歩み寄る」とはどういうことなのだろうか。在日側からすれば、ありもしない「在日特権」を理由に糾弾され、一方的に罵声を浴びせられているようにしか思えないのだ。
ただ、対話のチャンネルは残しておかなければと思っている。在特会側と対話することには様々な方面から反発もあるし、自分自身も葛藤を抱いている。けれど、どうせ罵声を浴びせられるのなら、前向きな気持ちでそれに臨みたい。
神戸で、私は、街宣を終えた桜井会長にインタビューを試みた。
(続き)