元自衛官が「内部文書」元に証言、「私は自衛隊で毒ガスサリンの製造に関わっていた」(2/5)
週刊金曜日 5月31日(金)19時22分配信
NBC兵器の防護研究
かつて国会で次のような質問主意書が出たことがあった。質問者は参議院の井上美代、緒方靖夫、阿部幸代、畑野君枝の各議員(当時)。質問主意書は第一五〇回国会中の二〇〇〇年一一月九日付で出された。
〈政府、防衛庁の進める核・生物・化学兵器対処研究が、大都市部で公然と行われることに対し、基地や研究施設などの周辺地域住民を始め、多くの国民は不安を持っている。生物・化学兵器の禁止が世界の流れとなっている中で、なぜ今、生物・化学兵器対処研究が必要なのか〉
〈埼玉県大宮市にある陸上自衛隊化学学校は、これまで、核・生物・化学兵器対処研究とのかかわりで、どのようなことを行ってきたのか。(略)明らかにされたい〉(抜粋。地名は当時)
これに対し、同年一二月一日付の答弁書で森喜朗総理大臣(当時)は、化学学校について次のように答えている(その部分のみ抜粋)。
〈陸上自衛隊化学学校においては、これまで、NBC兵器が使用された場合の偵察、防護及び除染を行うため、化学防護、化学技術等に関する研究を行ってきた。今後、同学校においては、(略〉引き続き、かかる研究を行っていく予定である〉
きわめて具体性を欠いた答弁であるが、「核・生物・化学兵器対処関連事業」として一九九九年度は二億九〇〇〇万円余、二〇〇〇年度には二四億三六〇〇万円余とゼロが一つ増え、一三年度はさらにその約三倍の七一億八二〇〇万円余の予算が付いている。通算すれば巨額な税金が投入されているものの、「防護」のための活動内容は以上のとおり抽象的な域を出ない。
陸自・化学学校はNBC兵器(下の記事参照)の防護要員であり、「防護」研究のために化学兵器と放射性物質を扱うことのできる日本で唯一の機関である。前身である化学教育隊が化学学校に昇格(一九五七年)してから半世紀余り。現在の学校長は二〇一一年八月に就任した川上幸則陸将補である。(つづく)
◆◆毒ガスとは◆◆
核兵器(Nuclear=ニュークリア)生物兵器(Bio=バイオ)化学兵器(Chemical=ケミカル)の頭文字をとって「NBC兵器」というが、このうち毒ガスC(ケミカル)兵器に属する。生物兵器=B(バイオ)兵器が天然痘ウイルスやコレラ菌、炭疽菌、ボツリヌス菌などの生物剤を用い、自然発生の疾病との区別が困難なのに対して、化学兵器は人の手で開発された毒性の化学剤を用い、弾薬などを爆発させることで一度に多くの人を殺傷する大量殺人兵器である。
外務省総合外交政策局が公表している資料によると、化学兵器として開発された毒性化学物質は大まかにわけ、【1】血液剤(塩化シアンなど血液中の酸素摂取を阻害し身体機能を喪失させるもの)、【2】窒息剤(ホスゲンなど気管支や肺に影響を与えて窒息させるもの)、【3】糜爛剤(マスタードなど皮膚や呼吸器系統に深刻な炎症を引き起こすもの)、【4】神経剤(サリンなど神経伝達を阻害し筋肉痙攣や呼吸障害を引き起こすもの)――などの種類がある。
最終更新:5月31日(金)19時22分
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