日本共産党ダミーサークルが部室を追い出される──書類提出の締切を守れず

2013/01/25 18:00


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※イメージ画像 photo by sir.Kir from flickr

昨年、東京大学教養学部学生自治会が、長らく加盟していた日本共産党系の全学連(全日本学生自治会総連合)からの脱退を決議。日本共産党が将来の幹部党員の養成所兼資金源を失った事件として、注目を集めた。

その東京大学から、ついに日本共産党が完全に拠点を失うことが明らかになった。さまざまな組織・政治団体の草刈り場としての側面もある東京大学の今後はどうなるのだろうか?


■「日が変わる前に提出した」と強弁する共産党

教養学部学生自治会が全学連を脱退。同時に、多くの党員・民青(日本民主青年同盟。共産党傘下の学生青年組織)同盟員からも三行半を叩きつけられた共産党。彼らが最後の拠点としていたのが、駒場キャンパスのキャンパスプラザB109号室にある「平和研究会」と「環境研究会『青空の会』」の部室だ。この同居する2つのサークルは、学内の共産党員で構成される、いわばダミーサークル。このサークルが、駒場キャンパスの部室割り振りを担当する学友会学生理事会から、部室取り上げ処分を受けることになってしまったのだ。

しかも理由は、部室使用継続申請書を、昨年12月7日の期限までに提出できなかったこと。すなわち、締切を守れなかったから、というから笑えない。

「青空の会」代表責任者の小西祐司(法学部4年)氏名義で配布されたビラによれば、共産党側は「締切間際でしたが、12月7日中に部室使用継続申請書を学友会ポストに提出したにもかかわらず、申請書の提出期限遅れを理由に部室取り上げとなっています」と主張する。

学友会は、キャンパスプラザが閉館される21時35分に受付を締め切ったとする。対して、「青空の会(と、平和研究会)」は、担当者が閉館後もキャンパスプラザの外のポストに投函できると勘違いしていたことが原因。同日の22時半頃、学生会館キャンパスプラザ運営委員に依頼して、館内の学友会のポストに投函した。その上で、同日23時52分に、謝罪と事情説明のメールを送信したとする。

整理すると「青空の会(と、平和研究会)」側は、閉館時間を過ぎてしまったが、12月7日中には投函した。キャンパスプラザ外のポストに投函すればよいと勘違いしていたのだから考慮してほしいと主張。対して、学友会側は閉館時間=締切なのは当然。さらに、前述の22時半頃、学生会館キャンパスプラザ運営委員に依頼した際に、締切を過ぎていることは説明していること。さらに、キャンパスプラザ外のポストは学友会のものではなく、提出先は学友会室か館内の学友会ポストに限られることは申請書にも記載し、再三にわたって説明していると、突っぱねたのだ。


■実態は共産党・民青のオルグ部屋だと、元関係者も証言

次年度の部室の割り振りも決定し、1月18日を退去期限に定められた「青空の会(と、平和研究会)」は、同じく部室取り上げの通告を受けたサークル、フォイヤーヴェルク管弦楽団と平和研究会、青空の会の連名で異議を申し立て、評議員会(学友会の議決機関)を開催して公平な判断を下すよう要求するビラを各サークルに配布した(フォイヤーヴェルク管弦楽団は、今年度の学生会館の連絡委員を登録していなかったことが取り上げの理由と見られる。その後「東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団は、特定の政治的思想、信条とは一切関係ありません」として、共同申し立ての撤回を表明)。

これに対して、元教養学部学生自治会委員長で、昨年の全学連脱退決議の主要メンバーだった何ろく氏(教養学部3年)は、共産党のやり方を批判するビラを配布。この中で「窓口の時間までで締め切られるのは自明のこと」「言い訳はおよそ通用するものではありません」「特定政党がダミーサークルを作って部室を確保するような、学生を欺く行為は許されるべきではない」と非難する。さらに「『青空の会』の人は、現在、法学部4年生です。1~3年生に動ける人がいないような『サークル』に部室を割り振っていいのでしょうか」と、共産党系ダミーサークルのお粗末な内情をも暴露する。

元・平和研究会の会員でもあった何氏によれば、部室は実質的に共産党と民青が利用しており、平和研究会も、青空の会も活動実態はほとんど存在しないと断言する。

「そもそも、平和研究会・青空の会には実態のある会員がいません。党員の中に、平和研究会担当があったといったほうがよいでしょう。青空の会については、実態ゼロでした。今回の彼らの弁明文書に書かれたものを読むと、要は、民青のやってる環境問題関係の活動が、すなわち青空の会の活動のようです。今回の騒動でも、平和研究会・青空の会の会員の存在を見ることはついぞありませんでした。人材が枯渇していることがうかがえます」

この部室を共産党と民青は、活動拠点として大いに活用してきた。駒場キャンパス近くのマンションには、共産党の東京都委員会が家賃を払う拠点もある。ここに連れ込んで、オルグしてメンバーに仕立て上げるのが、彼らの最終目標。部室は、その前段で関係性を築く場所として大いに活用されてきたのである。

このことは、以前にも問題になっており、2010年初めに同年度の部室を割り振る際にも学友会内部で「民青がダミーサークルを作ってB109を使っている」ことが問題になったが、この時は学友会内に党員がいたため「民青とは関係ない」というキャンペーンを張って、難を逃れている。そうしてまで確保してきた拠点を、ささいなミスで失うことになってしまったのだ。いま、党内で、どれだけ問題(というか、関係者の針のムシロっぷり)になっているのか……想像に難くない。


■最後の日は、一人で荷物を運び出し……

一時は「部室に立てこもりか?」とのウワサも流れたが、協議の結果18日に一旦退去の上で23日に学友会が臨時の評議員会を開催し、再検討を行うことで合意。18日には、小西氏が一人で荷物を運び出す寂しい姿が見られたという。

23日に開催された評議員会では青空の会と平和研究会が、あらためて「部室継続申請を期限内に提出した」と主張し、「民青に彼らの部室として使わせていたというのは大きな誤解」とも発言したが、認められることはなく、部室取り上げが確定することとなった。

昨年の党員及び民青同盟員の集団脱党と、それに続く教養学部学生自治会の全学連脱退決議により、風前のともしびだった東大内の共産党勢力。

現在、東大で存在が確認される左翼系組織として、まず挙げられるのが革マル派。彼らと関係が深いとされるサークルは依然として部室を維持しているものの、駒場祭期間を除けば、学内における活動はあまり目にしない。またPOSSE(NPO法人POSSEの名称で労働問題へのコミットで知られるが、もとは京大政経研グループと呼ばれる新左翼組織)は、若者論への言及で知られる教育学部の本田由紀教授ら教員との強い関係性を持っているが、学内での活動はあまり盛んではない。一部の授業で、教員がPOSSEのビラを学生に配布している姿が見られる程度である。

東京大学には、教養学部学生自治会のほかに本郷キャンパスの情報学環教育部に自治会があるが、こちらは長年にわたって政治色のカケラもない(昨年は自治会長選挙で立候補者ゼロで、仕切り直しという事態も……)。

つまり、今回、共産党系サークルが部室を取り上げられたことで、東京大学から学生運動は、ほぼ姿を消したといってよいだろう。前述の新左翼系をはじめ、右派系や新興宗教系のものまで、東大内部には依然としてさまざまなサークルが存在するものの、活発に活動しているところは、まずない。せいぜい、年に2度の学園祭、五月祭と駒場祭の時に、存在しているのがわかる程度である。

怪しいサークルも、大学生活の彩りと思う筆者としては、ちょっと寂しい気もする。
(取材・文=昼間たかし)





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