政治いま:安倍好きVS安倍嫌い(その1) じわり、安倍カラー 靖国、秋参拝に照準
毎日新聞 2013年03月29日 東京朝刊
◇春例大祭、真榊奉納を検討
安倍晋三首相(58)は靖国神社の春季例大祭(4月21〜23日)に「真榊(まさかき)」と呼ばれる供え物を奉納する意向を神社側に伝えた。首相周辺が明らかにした。7月の参院選までは経済優先の安全運転に徹するのが政権運営の基本方針。参院選前の靖国参拝は見送るが、真榊の奉納によって意欲を示し、秋の例大祭(10月17〜20日)参拝へ向けた布石とする意味がある。参院選後の「安倍カラー」全開を期待する保守層へのメッセージでもある。
「靖国神社のお祭りは8月15日(終戦記念日)ではない。春と秋の例大祭です」
衆院解散前日の昨年11月15日夜、安倍氏は東京都内で会食した神社関係者からこう説明を受けた。特に秋の例大祭は年1回の合祀(ごうし)が行われるという意味で春よりも大事な行事。安倍氏は「そうだよね」と相づちを打った。
第1次安倍内閣時に靖国神社に参拝しなかったことを首相は「痛恨の極み」と悔いてきた。首相として迎えた07年春の例大祭にも真榊を奉納し、秋の例大祭に参拝するかどうかが注目されたが、その前の同年9月、健康不良を理由に突然退陣。第2次内閣の発足後、靖国参拝について首相は「行く、行かないは差し控えたい」と明言を避けているが、長年、首相を支持してきた保守派には再チャレンジへの期待が高まる。
ブレーンの一人、高崎経済大の八木秀次教授(51)=憲法学=は「参院選後、政権が落ち着いたら参拝すると思う」と語る。参院選直後に終戦記念日が控えるが、第1次内閣のときも8月参拝は見送った。小泉純一郎首相が06年8月15日に参拝し、中国の反発がピークに達したこともあるが、そもそも終戦記念日は正式の祭事ではない。秋の例大祭参拝を見据える首相の心情を八木氏は「中国、韓国を無用に刺激せず、戦没者に対する慰霊と感謝の表明という本来の目的を果たすことができる」と代弁する。