政治いま:安倍好きVS安倍嫌い(その2止) 高支持に保守派高揚 リベラル派は苦悩
毎日新聞 2013年03月29日 東京朝刊
<1面からつづく>
「また支持率が上がったよ」
昨年末の第2次安倍内閣発足から1カ月半が過ぎた2月10日、保守系シンクタンク「日本政策研究センター」の伊藤哲夫代表(65)は羽田発福岡行きの民間機に乗り合わせた八木秀次高崎経済大教授(51)に語りかけた。金融緩和・財政出動・成長戦略の「三本の矢」を掲げた安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」は市場から歓迎され、狙い通りの「ロケットスタート」に2人は高揚していた。
両氏はともに第1次内閣の政権構想を練った「安倍ブレーン」。保守色を前面に押し出した前回の反省も共有する。「経済を先に出すのはいい」「安倍さんはあんなに経済に詳しかったんですね」と会話は弾んだ。
憲法改正、集団的自衛権の行使容認、教育改革−−。首相は「やりたいこと」を隠しているわけではない。八木氏は「課題は全部提示してある。実現する優先順位を考えているだけだ。最初に国民の支持を得て、その後にやりたいことを国民に共感を持って迎えてもらうことだ」と語る。
戦後体制を守りたい護憲派や、個人の権利や自由重視のリベラル勢力は首相の安全運転を「衣の下によろい」と警戒し、世論の高支持率を前に苦悩する。
「本当に賢いならもっとタカの爪を隠す。安倍氏は正直すぎる」
早稲田大の水島朝穂教授(59)=憲法学=は、参院選後の優先課題として憲法96条(改憲条項)の改正を公言する首相の「正直さ」に脅威を感じている。
改憲の発議要件を衆参各院の3分の2以上から半分以上に緩和し、そのうえで9条改正による自衛隊の「国防軍」化などを目指す首相の意向はだれの目にも明らかだ。その「危険性」を訴えれば「反安倍」の世論が盛り上がるのではないか。
そう考える水島氏は「権力者を制限する憲法を権力者自身が変えようとしている」と96条改正の問題点を雑誌の論文やメールマガジンで訴えているが、内閣支持率は高水準を維持している。
◇中間層「フワッと人気」
「安倍好き」と「安倍嫌い」が鋭く対立する中、有権者の大半を占める中間層に首相支持が広がる。その最大の要因は景気回復への期待とみられるが、若者のサブカルチャーに詳しい評論家の宇野常寛氏(34)は「憲法改正などイデオロギーの面も含めて評価されている」とみる。