宇宙航空研究機構(JAXA)は2013年5月30日、低ソニックブーム設計概念プロジェクト「D-SENDプロジェクト」の第2フェーズ試験(以下、D-SEND第2)で使用する超音速試験機を、富士重工業宇都宮製作所で報道陣に公開した。同試験機は、超音速飛行時に発生する衝撃波を軽減するような形状に設計されており、その効果の実証試験が7~8月にスウェーデンのエスレンジ実験場で実施される予定だ。
D-SEND第2は、超音速試験機(エンジンを搭載せず、自律飛行可能な無人機)を気球によって高度30kmまで持ち上げてから分離して落下させる。試験機は滑空しながら加速し、指定された位置でマッハ数1.3、経路角50度に達するようGPS衛星の情報などから自動操縦される。計測点の直下、高度1kmには計測用の気球を係留しておき、超音速飛行時に発生するソニックブームの波形を計測する。
ソニックブームは、航空機が超音速で飛行した際に機体各部から発生する衝撃波が大気中を伝播する間に統合し、地上においては瞬間的な爆音として聞こえる現象。音圧が急激に高まってから徐々に負圧まで下がり、再び元の圧力へと急激に高まるN字形の波形として観測される。2003年に退役したコンコルドは、このソニックブームが大きかったため超音速飛行は海上のみに制限されていた。
超音速試験機の機体は全長約8mで、衝撃波の発生タイミングを分散するような形状に設計されている。こうすることで地上に伝播するまでに統合しにくくなり、N字形波形の高さを抑える(ソニックブームを低減する)ことが可能になる。具体的には、機体下面が先端から後端に向かって波打つような形状になっている。膨らみは大きく3つあり、その3つの膨らみの長さは先端から後端へと徐々に小さくなる。
このため、機体下面の形状が非常に重要となる。超音速試験機の上面は複数の部品で構成されているのが一目で分かるが、継ぎ目がないように見える下面も実際には複数の部品から成る。これを磨きと塗装で滑らかになるようにした。機体を構成する部品の多くはアルミニウム合金の削り出しで作られており、「主翼を構成する部品など、手作業による仕上げで高精度に仕上げている」(富士重工)という。
超音速試験機は全く同じ形状、仕様のものが2機製造されている。今後、それぞれについて主翼2枚を取り外した上で現地に輸送し、6月24日から試験準備を開始。7月25日から8月24日を試験期間として、天候などの条件を見ながら実証試験を行う予定だ。
(日経ものづくり 中山力)
[Tech-On! 2013年5月30日掲載]
富士重工業、JAXA、ソニックブーム、無人機
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