特集ワイド:続報真相 橋下氏弁明 倫理で失速、建前に失笑 「ウソついてはるわ」追及に守勢
毎日新聞 2013年05月31日 東京夕刊
橋下徹氏は、政治家として一体何がしたいのだろうか−−。橋下日本維新の会共同代表(大阪市長)による従軍慰安婦に関する発言から騒動が延々続いている。慰安婦発言は依然撤回されないまま、橋下氏は市長選で信を問う作戦までちらつかせた。一連の騒動から見えてくるものは一体何か。
「橋下さんの本気度を示せた。維新にとって間違いなく追い風だ」。維新のある衆院議員はそう息巻いた。
一連の慰安婦発言で支持率が急落し、窮地に追い詰められた維新。30日に大阪市議会で問責決議が可決されそうになると出直し市長選を示唆して先制。お得意のけんか手法で議会を揺さぶり、公明党を離反させて決議を否決に追い込んだ。同日夜、報道陣に平然とした顔で、出直し市長選は「しない」と明言した。
この維新議員は「本気度が低い市議会に対し、橋下さんは、政治家の立場はいつでもすてられる、それほど本気で取り組んでいるという姿勢を見せることができた」と語った。
はたして本当にそうか。
現状を整理しよう。橋下氏は沖縄県の在日米軍司令官に風俗業活用を求めた件については「誤解を招く不適切な発言」として撤回、謝罪した。しかし従軍慰安婦「必要」発言は「『私が』容認していると誤報された」と持論を繰り返し、撤回していない。
そもそも風俗発言は、1日に橋下氏と維新議員ら約30人が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)を視察し、ジェームス・フリン司令官から説明を受けた際のものだ。沖縄の政党そうぞう代表の下地幹郎・前衆院議員はその場に同席していた。「橋下氏から、自分は日米同盟を推進する立場だが、事件事故が多すぎると同盟が危うくなる、あなた方の対応はどうかと聞いたのです」。司令官は「ジョギングとフィットネス」と2度答えた。「橋下氏は『あなた方は性的な事件事故を起こしている。だから具体的な対策をどうしているのかと聞いている』と言って、例えばという話で、法にのっとった風俗(活用)という話をしちゃった。司令官は凍り付いた表情だった」
この発言内容は橋下氏自ら13日午後、明らかにした。「彼の認識では、風俗の話よりも自分は綱紀粛正を強く言ったという意識が強いから、軽く(発言内容を)言ってしまったのではないかと思う」と下地氏。一連の問題の背景には、人権感覚を巡る橋下氏と米軍、世論との大きなギャップがある。
橋下氏の苦境が決定的になったのは、24日に予定されていた元従軍慰安婦の女性2人との面談を断られたことだ。