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街を歩いてみると・・・
こちらの方も、こちらの方も、また、こちらの方も、手元に夢中になっている。
すべて、スマートフォンだ。
<街の声・男性>
「パソコンと一緒なんで、手放せないですね」
<街の声・男性>
「スマートフォンにして、幅が広がったかなと思います」
<街の声・女性>
「アプリあったら、何でもできるって感じなんで、それが便利やと思います」
<マル調>
「今、スマートフォンがなくなっても大丈夫?」
<街の声・女性>
「それ、絶対、無理です!」
スマートフォンは「多機能携帯」と呼ばれ、電話やメール機能に加えて画面も大きく、インターネットの使い勝手がいいのが特徴だ。
従来の携帯のようにボタンを押すのではなく、画面にタッチすることで操作する。
スマートフォンの人気は、高まるばかりだ。
出荷台数をみてみると、2008年には年間110万台だったのが
年々、増え続け、2012年度はその30倍近い、2,900万台に達した。

しかし、人気の一方で、こんな声も・・・
<街の声・女性>
「歩き持ってしてるね、あれね、危ないね」
「前から歩いて来やんのに、全然見てないから、私がわざわざのけてるって感じやな」
<街の声・男性>
「危ないですよね、もう当たりそうになって、当たるよっていうのは何度もあります」
<マル調>
「そういうのやめてほしい思います?」
<街の声・男性>
「思います。めっちゃ思います」
JR大阪駅で、観察してみよう。
まずは電車を待つ人たち。
スマホをいじっている人は、予想以上に多かった。
スマホの上に、ゲーム機を置いて熱中する若い男性。
人ごみをかき分けて・・・ なかなか画面から目を離せない。
ホームの真ん中に立ち止まってしまった。

こちらの少年は、アニメ動画に夢中。
行き先を間違え、ようやく画面から目を離したが、スマホを大事そうに両手で抱えていた。
いよいよ、電車が入ってくる。
電車のすぐ脇を通るときも、手には、やはりスマホが。
実際、ホームで悲惨な事故がおきている。
2009年、神奈川県のJR京浜東北線で、男性がホームから線路に転落、電車にひかれて死亡した。
男性は、携帯電話を触りながら、白線の内側を歩いているうちにバランスを崩したという。
スマートフォンを操作しながら歩いた場合、どの程度、反応が鈍くなるのか。
「マル調」は、実験を行うことにした。
今、街で多くの人が持っているスマートフォン。
大きな画面で機能も多く、持ち歩けるパソコンとも言われる。
しかし歩きながら、操作に夢中になってしまうと危険な事態に陥りかねないのだ。
そこで、スマホを使いながら歩いた場合、障害物に対してどのくらい反応が鈍くなるのか実験してみた。
<首都大学東京“人間健康科学研究科” 樋口貴広准教授>
「これをかぶっている最中、視線がどこを向いているかというのを測定することができます」
この「アイカメラ」という機械は、眼球の動きを捉えどこを見ているかが白い点となって、表示される仕組みになっている。
歩行者が3メートル前に近づくと、自動的に閉まるドア。
ふつうは、難なくドアを避けることができる。
「アイカメラ」でみても、視線はまっすぐ前を見ている。
次にスマホを見ながら歩くと・・・
閉まるドアに気付くのは、直前だった。

「アイカメラ」でみると、視線はスマホに集中し、動いている扉に視線がいったのは、ほんの数10センチ手前だった。
<首都大学東京“人間健康科学研究科” 樋口貴広准教授>
「私たちは、『インアテンショナル・ブラインドネス』という概念をよく使って、この現象を説明します。本来ならば、見えるべきものが見えなくなる」
「ものをよける時には、最低でも数メートル前にその障害物がある時にはその存在が分かって、予測的によけるための準備動作を始めます。ところがスマートフォンを使っていると、そうした準備動作ができませんから、当然よけ方も危ないですし、相手も自分に突っ込んくるような印象を与えます。そういった意味では、非常に危険な状況になりやすくなりますね」
スマホに集中していると、周囲の気配に気付かず、犯罪に巻き込まれる可能性も高まるという。
2012年に、大阪府警に寄せられた路上わいせつ事件の通報のうち、およそ14パーセントの被害者がスマホなどの操作中に被害にあったという。
こんな光景にもひやりとさせられる。
<街の声・男性>
「自転車に乗りながら、いじっている人がいるじゃないですか、結構」
<街の声・男性>
「ゲームとかしながら自転車乗るとかね」
こちらの大学では、自転車に乗りながらスマホを使用した場合の視線の動きを計測している。
実際にスマホを触りながら、自転車に乗って走行してもらった。
これが、スマホを使っている時の視線の動き。

使っていない時と比べると、視界の幅が極端に狭くなっている。
<愛知工科大学(工学部) 小塚一宏教授>
「たまに前をちらっと見て、自分から歩いていく方向を、ほんのちらちらっと確認するような視線の動きをしますが、一番極端な例は、左右に視線がいかない。ですから、左右が全く見れてないですから、両側を通る高齢の人とか、体が不自由な方とか小さい子ども連れとか、そんな人が蹴られる可能性が十分あります」
視力に障害がある仁枝さん。
外出の時は必ず盲導犬と一緒だが、最近、盲導犬の動きが変化してきたという。
<兵庫県視覚障害者福祉協会 仁枝玲子さん>
「元々、障害物をよけるんですけれども、相手が人間だと、どうしても相手がよけてくれるかなと思いこんでますので、結構、直進する子だったんです。それが、相手がスマートフォン持ってるとですね、ん?って感じで、だいぶ手前から様子をうかがうような歩き方になりまして」

盲導犬がとまどうことで、危ない経験もしたという。
<兵庫県視覚障害者福祉協会 仁枝玲子さん>
「気づく瞬間が、どうしても相手は遅くなりますので、あっと思って気づいた時には、もうほんと、ぶつかる寸前とか、ぎりぎりぶつかるかぶつからないかのすれ違いになってしまうということは、多々あります」
<駅のアナウンス>
「駅構内で、携帯電話やスマートフォンを操作しながら歩かれますと、他のお客様との接触が、線路への転落などのおそれがあり、大変危険です」
こうした事態を重くみたJR西日本は、乗客に注意を促しはじめた。
<JR西日本広報部 長谷川仁志さん>
「東西線の北新地駅などではですね、可動式ホーム柵というのが導入されまして、順次、導入していきたいなと考えてます」
専門家は、業界側の思い切った取り組みが必要だと言う。
<愛知工科大学(工学部) 小塚一宏教授>
「今、『GPS』がほとんどの機種についていますね。今、自分がいるところが駅のホームなのか、大きな交差点なのか、そういったことが分かるぐらいの精度で位置情報が取れますから、公共の場、階段、非常に危険性があるようなところ、そういったところでは、軽い注意喚起を出すとかですね、そのようなことは業界でも考えるべきじゃないかなと思いますね」
今後、ますます、わたしたちの生活に入り込んでくるスマートフォン。
時と場所に注意して使わないと、自分だけではなく他人も危険に陥れることを自覚しなければならない。
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