米ハリウッドやインドのボリウッドと並ぶ映画産業の拠点として近年、注目されるのがナイジェリア南西部・ラゴスを中心とする「ノリウッド」。年間２０００本近い映画が量産される中、随一の質で注目を集める国民的映画監督だ。「他作品に比べ時間も予算もかけている。ノリウッドのイメージを確実に変えている」と自負する。

　映画監督兼俳優だった父から「お前には映画は無理だ」と言われ、大学で経営学を学んだ。銀行に就職して７年間のサラリーマン生活。しかし、「どうしても父の後を追いたくて」映画界に飛び込んだ。

　ナイジェリアの伝統や日常生活に根ざした綿密なストーリーが持ち味。女神像の呪いをテーマにしたサスペンス「アラロミレ」は２０１０年のアフリカ映画アカデミー賞で、最優秀作品賞など五つの賞を獲得。国際的な注目を集めた。

　最新作の「恋するケータイｉｎラゴス」は、見知らぬ男女の携帯電話が偶然入れ替わってしまうラブコメディー。「ナイジェリア人は自分たちが投影されているナイジェリアの映画が見たい。だから僕は人々を楽しませる映画を作り続ける」

　ノリウッドには課題も多い。特に、公開されるとすぐに廉価な海賊版ＤＶＤが出回り、興行収入を確保するのが難しいという。「質の高い映画を作り続けるために、ネット配信など新たなモデルも築いていきたい」。ビジネスマンとしての経験を、映画界で生かしてみたいと思っている。【平野光芳】

　【略歴】クンレ・アフォラヤン　東京で今月開かれたアフリカ映画祭のため初来日。好きな日本映画は黒澤明監督の「影武者」。３７歳。