かつてアフリカが「暗黒大陸」と呼ばれた時代があったことを知る人はどれほどいるだろう。それほどまでに、近年のアフリカの成長には目を見張る。だが、順調に見える成長にもゆがみ[記事全文]
外国に比べて見劣りがしてきた日本政府の文化予算が、急に膨らもうとしている。日本の文化を海外に売り込むクールジャパン戦略では、昨年度補正予算と今年度予算で840億円以上が[記事全文]
かつてアフリカが「暗黒大陸」と呼ばれた時代があったことを知る人はどれほどいるだろう。それほどまでに、近年のアフリカの成長には目を見張る。
だが、順調に見える成長にもゆがみが見える。一番の課題は、成長が天然資源頼みになりがちなことだ。すそ野の広い、持続的な発展への脱皮を後押ししなければならない。
日本が音頭をとって20年前に始めたアフリカ開発会議(TICAD)が、1日から横浜市で開かれる。5回目となる会議には、地域の50余国の首脳たちや国際機関の代表が集まる。
原油や希少金属といった資源の開発、輸出が本格化したのは世紀が変わった頃だ。過去10年の地域の平均成長率は約6%に達するが、この豊かさが全体の人々に行き渡っていない。
例えば、アフリカ中西部の赤道ギニアという国では石油生産が始まってから一人あたり所得が先進国並みになった。ところが5歳までに乳幼児の1割以上が亡くなっている。貧富の格差が広がり、衛生状況の改善が遅れているからだ。
食糧の生産性も低い。農村の貧困が解消されず、海外からの穀物輸入が増え続けている。
サハラ砂漠周辺では、地球温暖化による干ばつや地域紛争に住民が苦しんでいる。
日本はこの5年間に、アフリカ向けの政府の途上国援助(ODA)を倍増させ、コメ増産や教育、保健支援に取り組んできた。製品の品質や生産性を向上させるカイゼン運動も各国に広がっている。
こうした日本の得意技を生かしつつ、工業化や農業強化への支援を拡充する。草の根の人々の生活や福祉に目を配る「人間の安全保障」の理念を支えにしたい。
アフリカの巨大な消費市場や資源開発への経済界の関心は高い。投資リスクを減らすためにも、各国は腐敗を一掃し、政治安定に努めてもらいたい。
近年はインド、ブラジルなどの新興国や韓国も、アフリカとの経済交流を深めている。中国は、日本を大きく上回る援助や貿易投資をしている。
今回の会議では、11年前に発足し、地域統合を目標に掲げるアフリカ連合(AU)が共催者に加わる。アフリカ側が実力と自信をつけてきた表れだろう。
大陸の人口は10億人。2050年には世界の5人に1人がアフリカ人になる見込みだ。
雄大な自然や独自の文化。アフリカの魅力は多様だ。
この会議を日本とアフリカとの信頼構築につなげたい。
外国に比べて見劣りがしてきた日本政府の文化予算が、急に膨らもうとしている。
日本の文化を海外に売り込むクールジャパン戦略では、昨年度補正予算と今年度予算で840億円以上が計上された。
一方で下村博文・文部科学相は、2020年までに文化庁の予算を倍増させる「文化芸術立国中期プラン」を私的懇話会で打ち出した。
今年度の文化庁予算は1033億円。10年以上にわたり、約1千億円でほぼ変わらない。一般会計に占める比率は、0・11%にすぎない。
他国の文化予算は、別格のフランスが4474億円で1・06%。映画やテレビドラマで「韓流」ブームを世界に起こした韓国は、1418億円で0・87%だ(12年、文化庁調べ)。
心の豊かさに満ちた社会をつくるため、これまで抑え込まれてきた文化予算を増やすことは歓迎したい。
だが、肝心なのはその中身だ。真に文化の質を高めたり、海外の日本への理解を深めたりすることにつながる施策に、効率的に配分すべきだ。
例えば、クールジャパン戦略では、輸出する映画やテレビ番組に、外国語の字幕や吹き替えを付ける補助金(約95億円)への評価が高い。「韓流」が成功した理由の一つとして、翻訳付きで作品を外国に売り込んだことは、よく知られている。
ただ、経済的な成果は、期待しすぎないほうがいい。当たるか当たらないか、予想が難しいのが文化や芸能の世界だ。
クールジャパンと名付けられた海外の日本ブームは、近年は息切れも指摘されている。
コンテンツ輸出で9割以上を占めるゲームソフトは売り上げが停滞し、アニメの海外販売もピークだった05年の半分程度に落ち込んだ。
クールジャパン戦略を所管する内閣府も「経済成長にどれくらい貢献するか、という数字は持ちあわせていない」という。
政府のクールジャパン推進会議は、アクションプランで正統な日本料理の「食の伝道師」育成を打ち出した。複数の民間議員が指摘したように、海外での正しさの押しつけは逆効果だろう。謙虚さこそ、日本文化のクール(良さ)だ。
韓国では毎年、コンテンツ振興院が白書を発行し、文化政策を点検している。邦訳された10年度版は500ページ以上。よく整理されて読み応えがある。
膨らんだ予算がどのように使われたか、継続的な検証も欠かせない。