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【社会】

「原発さえなければ」書き残し自殺 酪農家遺族が東電提訴

東電への損害賠償請求訴訟で、菅野重清さんの遺影を手に東京地裁に向かう妻バネッサ・アボルドさん(手前右)ら=30日午後

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 東京電力福島第一原発事故で将来を悲観して自殺した福島県相馬市の酪農家菅野重清さん=当時(54)=の妻バネッサさん(35)と二人の息子が三十日、東電に約一億二千六百万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

 訴状によると、菅野さんは乳牛約四十頭を飼育していたが、原発事故で原乳が出荷停止となり、牛の処分に追い込まれた。フィリピン国籍のバネッサさんと息子たちを一時帰国させていた二〇一一年六月、酪農場の堆肥小屋で首をつって自殺した。小屋の壁には「原発さえなければ」などと書かれていた。

 訴状は「事故で酪農経営の先行きが見えず、家族もフィリピンに避難して菅野さん一人に重圧がかかった。心身ともに疲弊し、うつ病にかかって自殺した」と指摘し「事故と自殺には因果関係がある」と主張している。

 提訴後に東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見したバネッサさんは「原発さえなければ私の旦那は今も生きていた。夢もなくなったが、二人の子どものために裁判を闘いたい」と涙ぐみながら語った。

 東電広報部は「訴訟においてご事情を伺った上で真摯(しんし)に対応する」としている。

 

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